忘れもしない高校1年生のクリスマスの日、子供の頃に通っていた近所の書道教室の先生に頼まれて、小学生の大書きの手伝いをしました。
先生には、男のお子さん、といっても私より5歳以上は上のお兄さん方なんですが、下のつよし兄さんがプロのカメラマンになるべく大学の芸術科で勉強中でした。
つよし兄 |
「コットン、写真やってるんだって?」 |
コットン |
「はい、写真部にはいってます」 |
つよし兄 |
「カメラ何使ってるだ?」 |
コットン |
「C社のAE-1です」 |
つよし兄 |
「C社か・・・どこがいい? |
私は当時、鉄道写真をやってましたので、鉄道雑誌に広告が載っているC社しか知らなかったんですし、カメラに関する知識は皆無でした^^;
と、知っていることだけ答えると
つよし兄 |
「FDマウントがいいのか?俺はあれが嫌いだよ」 |
一応、カチンときまして反撃を試みますが…
コットン |
「あれは、マウントが擦れなくていいって聞いたんで」 |
つよし兄 |
「ハハハ、あれは安定感ないし、マウントは擦れるもんなんだよ。お前な、カメラならNikonだろ。サービス体制は整ってるし」 |
そういうと、つよし兄は奥に引っ込み、しばらくすると手にカメラを持って戻ってきました。
そういうと、無造作に私にカメラを手渡しました。
ズッシリと重い初めての感覚につつまれました。
前に傾斜したモードラ、ボディ前面には赤いライン。その上にプロ機をあらわすF1桁の文字が。
コットン |
「これって、もしかして、え、えふすりー、ですか?」 |
あまりの感動にどもりながらもどうにかたずねました。
つよし兄 |
「そうだよ。いいから、シャッター押してみろ」 |
いわれるままにシャッターを押すと、カシャッ、カシャッ、カシャッ、と大きな動作音ながら、精密な硬性感のある音と振動が五感を刺激しました。
このとき、私の心にNikonF3というカメラが刻み込まれたのでした。
それは、運命の人にでも出会ったような衝撃でした。
その後、勉強と仕事が忙しくなって写真は一時中断となりました。
|