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NAGH ( Network for the Action against Geo-hazards)

 NAGHは、地盤工学の専門家らが、防災研究成果の普及により、地域の安全・安心へ貢献するための事業に取り組むために設立された特定非営利活動法人です。



法人概要

1.名  称
「地盤防災ネットワーク」
2.目  的
 この法人は、住民ならびに地域に対して、地盤災害の危険性に関する情報を提供するとともに、具体的に実現可能な災害対策の実施を促進する事業を行い、地域防災力の向上に寄与することを目的とする。
3.活動の種類
 次の種類の特定非営利活動を行う。
 (1) まちづくりの推進を図る活動
 (2) 環境の保全を図る活動
 (3) 地域安全活動
 (4) 国際協力の活動
 (5) 科学技術の振興を図る活動
 (6) 消費者の保護を図る活動
4.事業内容
 特定非営利活動に係る事業として、次の事業を行う。
 (1) 地盤災害リスク評価事業
 (2) 土砂災害予測支援事業
 (3) 防災技術普及事業
 (4) 防災技術に係る研究開発事業
 (5) 減災のための里山復興事業
5.設立時役員
  理事長   村田 芳信 (技術士建設部門)
  副理事長 八嶋 厚 (博士(工学)岐阜大学工学部教授)
  理 事   沢田 和秀(博士(工学)岐阜大学工学部附属インフラマネジメント技術研究センター教授)
  監 事   高原 利幸(博士(工学)金沢工業大学工学部助教)
6.会員および会費他
 正会員を特定非営利活動推進法上の社員とする。
 (1) 正会員  個人:入会金1万円、年会費1万円
 (2) 賛助会員 個人:入会金1口1千円を5口以上、年会費1口1千円を2口以上
          団体:入会金1口1万円を10口以上、年会費1口1万円を5口以上


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背景と趣旨

 近年、地球上で異常気象に伴う局地的災害が多発しています。国内においては、精力的に国土整備が図られているにもかかわらず、豪雨による土砂災害が毎年のように頻発し、大変残念なことに犠牲者が後を絶たちません。また、岐阜県を含む東海地区は、過去に大きな地震災害を繰返し経験しており、将来の東海地震や東南海地震に対する切迫性も高いことから、地震災害に対する地域防災力の強化が喫緊の課題となっている地域です。
 洪水氾濫や規模の大きな土砂災害または高潮や津波に対する災害対策は、行政による堤防や護岸の整備ならびに急傾斜地崩壊対策や避難勧告などによる危険回避に頼らざる得ないと考えられますが、豪雨による土砂災害や地震時の揺れや液状化によってもたらされる個人の財産や生命に及ぶ危害については、基本的に住民自らが災害対策に取り組む必要があります。そして、この自主的な災害対策は、とくに広域災害においては大きな地域防災力として機能します。
 しかし、自主的な災害対策は、以下の主な理由により進んでいません。
  @ 住民に正確で実感のもてる危険性が知らされないもしくは分からない。
  A 地盤災害への対策は、大掛かりで費用がかかるので、行政の災害対策に頼っている。
 @は、行政の防災関係部局からハザードマップなどの情報が周知されても、その精度が汎用であることや危険性に対する実感がイメージでき無いこと、さらに具体的な防災対策を提供するまでに到っていないことから、自主的な防災行動の動機付けにならないことが多いようです。また、自然災害の被災確率が事故や事件(放火、盗難や強盗など)に比べて低いことや、それゆえに過去の被災による教訓が継続的に受け継がれにくいことも危機意識が希薄となりやすい原因であると言えます。
 Aは、地盤災害の対策にかかる費用と先の被災確率を勘案した場合に、自主的な防災対策を断念せざる得ない場合が多いとされます。行政では、土砂災害予防法による急傾斜地崩壊危険箇所(県が指定)の整備を進めていますが、一方で新たな宅地開発が進み、それに伴って土砂災害の発生する恐れがある危険な箇所は年々増加し続けています。これら全ての危険箇所を対策するためには膨大な時間と費用を必要としますので、警戒避難体制の整備や新規住宅の立地抑制などのソフト対策が進められています。しかし、土砂災害は指定区域特有のものではありません。さらに、地震災害はその事前予測が困難であるばかりか、発生場所・規模も不確実で、言い換えれば何時どこで起きても不思議ではありません。
 このため、自主的な防災対策の推進を図るためには、住民ならびに地域の要望に応じて、その土地の地盤災害に対する危険度を、確かな地盤情報と専門的知見に基づいて、分かり易く説明できることが必要と考えます。さらに、その危険を低減するための実現可能な具体的方法をその費用と併せて提案することが大切です。その結果、個人ひいては行政と連携した具体的な災害対策の実施を促進させることで、地域防災力の向上に大きな効果を及ぼすことが期待できると考えます。このような住民や地域の要望に応えるため、産官学が協働して取り組む事業として、NPO法人による活動が有効であると考えます。


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事業の説明

1.地盤災害リスク評価事業
(1)地震による地盤災害に対する危険度評価
 地震による揺れの強さは、地震の規模が大きいほど、また震源からの距離が近いほど大きくなるほか、表層地盤が軟らかいほど大きくなります。内閣府では、これを「表層地盤の揺れやすさ」と表現して全国マップを公表しており、岐阜県のものを下図に示します。図より、平野や段丘などの人口や産業が集積する地形ほど揺れやすいことが分かります。

表層地盤のゆれやすさ

 上図の揺れやすさは、1kmメッシュで代表される地盤情報に基づいて表現されていますが、今後地方自治体で地域の地盤特性を踏まえてより詳細なメッシュの揺れやすさの情報とすることで、住民への防災意識の普及・啓発とすることが望まれています。
 しかし、住民が揺れやすさの情報を信頼し、自主的な防災行動に至までの動機付けを図るためには、メッシュ情報が個々の宅地(土地)を実感できる必要があります。そのためには、個々の宅地(土地)の具体的な地形・地質や地盤情報を得ることと、その情報に基づいて専門家による揺れの評価と液状化や盛土の変形による地盤災害の予測が行われ、さらに必要に応じて対策の方法が示されなければならないと考えます。
 このために、地方自治体が保有する調査ボーリングや都市計画図などの地図情報を活用することで地域ならびに深い部分の地盤特性の精度を高め、建物の被害に影響の大きい極表層(10m程度)の地盤特性を簡易な調査(高精度表面波探査と貫入試験)で直接求めます。さらに、大学や研究者の保有する地盤解析などの基盤技術を活用することで、実体感のある揺れの評価や被害予測ならびに安価で効果的な対策工法の効果検討を行います。
(2)豪雨による土砂災害に対する危険度予測
 土砂災害防止法(以下土砂法)では、国が土砂災害防止対策の基本方針を立て、それに則って地方自治体が「土砂災害警戒区域」「土砂災害特別警戒区域」指定のための調査ならびに指定を行います。それぞれの区域指定の要件は以下のとおりです。
 ・「土砂災害警戒区域」
  急傾斜地の崩壊
  イ 傾斜度が30度以上で高さが5m以上の区域
  ロ 急傾斜地の上端から水平距離が10m以内の区域
  ハ 急傾斜地の下端から急傾斜地の高さの2倍以内(<50m)の区域
  土石流
  土石流の発生のおそれのある渓流において扇頂部から下流で勾配が2度以上の区域
  地滑り
  イ 地滑り区域(地滑りしている区域または地滑りするおそれがある区域)
  ロ 地滑り区域の下端から地滑り地塊の長さに相当する距離(<250m)の範囲内の区域
 ・「土砂災害特別警戒区域」
 急傾斜の崩壊に伴う土砂等の移動等により建築物に作用する力の大きさが、通常の建築物が土砂等の移動に対して住民の生命又は身体に著しい危害を生ずるおそれのある破損を生ずることなく耐えることのできる力の大きさを上回る区域。
 「土砂災害警戒区域」に指定されると、災害対策基本法に則り市町村地域防災計画が策定され、情報伝達ならびに警戒避難体制が整備されて警戒避難に関する事項が住民に周知されます。また、「土砂災害特別警戒区域」に指定されると、特定の開発行為に対する許可制(都市計画法、宅地建物取引業法)、建築物の構造規制(建築基準法)、土砂災害に著しい破損が生じる建築物に対する移転等の勧告や、勧告による移転者への融資、資金の確保(住宅金融公庫法)などが適用されます。 しかし、新しい宅地開発の進展や異状気象に伴う災害発生リスクの増加に対して、土砂災害防止法の指定区域の設定や警戒避難体制などの整備が追いつかず、毎年のように多くの犠牲者が生まれています。
 このため、住民ならびに地域からの要望に応じて、対象とする土地の地形や地質を簡便な手法で調査し、その情報に基づいた具体的な安定度の評価と安定性向上のための対策方法を提案します。この事業は、産官学の共同で開発された斜面形状を簡易に取得する技術や斜面安定評価のための数値解析技術の適用によって実現されるもので、土砂法の区域指定の考え方とは異なり、直接対象とする斜面を簡便な手法により調査することで信頼性を高めると伴に、具体的な対策方法を提案するところに特徴があります。
 対策の実施に当たっては、土砂法ならびに地権者との調整などを含めて、行政の防災担当者の理解と協力を得て推進する必要があると考えますので、NPO法人として産官学連携による地域防災力の向上を図る事業として取り組みます。

2.土砂災害予測支援事業
 降雨量に基づいて自主的な警戒避難を行うための支援システムを提供する事業です。
 システムのイメージを下図に示すように、局所化する豪雨災害に対して、その地域の降雨量の計測に基づいて災害の発生危険度を評価するシステムです。あらかじめ、その地域の地形・地質ならびに災害履歴などの情報と降雨強度(実効雨量)との関係を整理することで、より信頼性の高い災害発生予測が可能となります。

土砂災害予測支援システム

 このシステムは、「総合土石流対策(U)土砂災害情報の発令と避難指示のための降雨量設定指針(案)」建設省河川局砂防部監修・砂防広報センター企画部発行に準拠し、アメダス観測年報及び気象月報は、気象庁監修(財)気象業務支援センターが発行しています。
 具体的には、下図に横軸に実効雨量(事前降雨の影響を考慮した雨量の指数)、縦軸に時間雨量の関係を示すように、降雨の時間変化と伴に実効雨量が変化(黒太線)し、災害が発生しやすいとされる限界線(下図の斜め線)を目安に避難を行うものです。

スネーク曲線

 さらに、下図に示すように、流域の降水量をもとに、河川水位変化を予測することも可能です。

河川水位予測


3.防災技術普及事業
 地域防災力向上を目的とした、次の防災技術普及事業を行ないます。
 ・Webによる防災技術ならびにNPO事業の紹介 ・普及
 ・Webによる地盤防災問題に関する相談の実施
 ・防災対策相談会の開催
 ・防災技術普及講習会の開催
 ・法人の有する防災関連技術を用いた計画策定ならびに調査・設計などの実施
 ・特許取得による技術普及の実施

4.防災技術に関する研究開発事業
 防災技術に関する次の研究開発事業を、産学の協働のもとに行います。
 ・簡便で、設計に必要な情報を精度良く求めるための調査手法の研究開発
 ・地盤防災のための対策工法の効果判定技術の研究開発
 ・自然にやさしい安価な施工方法の研究開発
 ・災害発生後に、その被災実態ならびに災害要因の究明のための現地調査と研究報告

5.減災のための里山復興事業
 今後の地球環境の変化やわが国の国土の永続的安定を勘案した場合、人口や産業の集中する低平地の周辺に当たる中山間部−いわゆる里山の復興が極めて重要であると考えられます。
 中山間部は、洪水の抑制や農産物の安定供給に重要な役割を果たしているといわれています。さらに、長期的に見て地球温暖化による海面上昇と高潮や津波による浸水域の増大は避け難いといわれ、自然環境との共生を考えた計画的な里山の復興と、さらに安全で安心な新都市への発展を考えた基盤整備が必要となると考えます。
 そのためには、とくに土砂災害や地震災害に強く、自然との調和に優れた開発が行なわなければなりません。それを支える基盤技術の開発を里山の復興事業とともに推進します。
 この事業は、国や県の助成事業への企画提案により具体化を働きかけ実現します。


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