ブックレット 第2号

氏家英夫、須田勝彦著「量の解析に基づく指数関数・対数関数の指導」



室蘭工業大学・数理科学講座教授 山口格先生推薦
[高等学校の微積分の中心課題である指数関数・対数関数について、これらの概念の誕生と成長に立ち会うような臨場感を味わえる授業書です。著者達の数学観が鮮明に主張されるので、さわやかなわかりやすさを生みだしています。」
北海道大学名誉教授 高村康雄先生推薦
「近代科学の素晴らしさを実感してもらうには、原子論とともに、自然現象のもっとも基本的な量数関係である正比例と指数関数・対数関数への深い理解は欠かせません。このブックレットは、水準の高い『数学教育論』に基づいた明日からの授業を変革できる『授業書』です。すべての高校生を『数学大好き』にするために、多くの先生方がまず手にとって読まれることをおすすめします。」


はじめに
 このブックレットシリーズは、北海道数学教育協議会高校サークルの中で報告され検討された取り組みの中から、実践的で新しい提起を含んだ内容のものを広く紹介する目的で発行されている。
 シリーズ2となるこの小冊子では、これまでの関数指導について成果と課題を検討したうえで、解析学指導の一つの中心課題である指数関数・対数関数の指導に関する二つのプラン「指数関数とe」「指数現象のメガネとしての対数関数」の授業実践を報告する。
 数学教育改造運動以降、数教協をはじめとして関数指導全体に関する多くの検討がなされてきた。しかし関数指導の中心はやはり量から解析学へと発展する筋道であり、どのような量のどのような変化を解析するかという問題への、指導過程を含めた提案が求められている。
 指数関数の場合、バクテリアの増加など指数的変化を示す量の増加速度が現在量に比例するということが重要である。このときの比例定数−増加速度を現在量でわった値(相対変化率)−を1にすることによって自然指数関数の底eの値が自然に導かれる。
 これに対し対数関数は指数的変化を比例的変化に移す装置の役割を果たすことが本質的である。この対応のシェーマとして有効なのが等比−等差の対応表である。乗法と加法を対応させる簡単な操作によって、対数関数の基本的な性質をすべて導くことが出来る。またひとつの指数現象に対して底の異なる対数表どうしが比例しているということが、底の変換公式の意味付けとなる。
 この対数プランに関しては発表後すでに何人かの高校サークルのメンバーによって授業が取り組まれ豊にされている。ここでは、第二章の最後に、98年10月に行われた札幌星園高校における公開授業の座談会の様子を紹介する。
 二つのプランは、ほぼ同じ授業がどこの高校でも再現可能であることをめざして「授業書」の形でまとめられている。読者の授業づくりになんらかの参考になれば幸いである。
2000年6月
氏家英夫


道数協高校サークルのページへ戻る

マサルさんのページに戻る