01年度全道合研報告
11l日(日)札幌学院大学などを会場に’01合同教育研究全道集会がひらかれました.数学教育の分科会には道数協委員長の須田勝彦氏(北大)をはじめ多くの会員が参加しました.分科会に先立ち,午前中にテーマ討論「学カ問題と教育課程づくり」があり,パネリストとして山口格氏(室工大)も参加しました.
山口氏は最近話題となっている数学の基礎学カ崩壊にふれ.「学カ問題に関して多くの人々の発言があってもよいが,危機を感じている入の多くは大学の経済学部等で数学を教えている先生たちであり,それを解消するためには大学入試で数学を課せぱよい」と明解に指摘しました.また「基礎学力をつけるためなら,かつての詰め込み教育も必要」という議論に対しては,「科学的な数学教育に基づく方法こそが最善である」と,いつになくカづよい発言で聴衆を圧倒しました.
午後からの分科会でば2日間で20本ほどの報告がありましたが,高校の会員のレポートを中心にいくつかを簡単に紹介することにします.
■受験体制を乗り越える実践をめざしてC
清水貞人(新川高校)、成田収(啓成高校)、清水貞人(新川高校)、成田収(啓成高校)、片岸洋(厚別高校)
高教組札幌支部の教文推進委員会数学部会で年4回定期的に話し合われている内容の報告で,今回で4回めになります,
清水さんからは,星の等級を題材にした対数関数の人試問題(弘前大学)の紹介,春期の進学講習で2次関数の「ソファーの問題」をとりあげたところ,参加した生徒から「久し振りに面自い問題だった」という感想があったという報告がありました.
成田さんからは,5月の連休に展開公式
(a+b)n,
(a+b+c+…)2,
(x+a)(x+b)(x+c)…,
(a一b)(an+an−1b+…)
などについてのレポートを課題として生徒に提出させたところ,多くのカ作が寄せられたという報告がありました.中には自分で公式を発見したものもあり,そのひとつひとつにコメントをつけて返したそうです.
片岸さんからは,組合せや確率のテストで,生徒の素晴らしい解答に出会ったという話しや,統計的確率や大数の法則の意味を考えさせる実験の報告がありました.例えば,赤白合計10個の球の,それぞれ赤白の個数を予想する確率の実験などです.
今後の検討課題として数Tの2次関数,三角比の授業プラン,授業書づくりをめざすことなどが報告されまし
■1次関数と2次関数 氏家英夫(白樺学園高校)
教科書風の代数的,グラフ中心の2次関数ではなく,「自然の量的変化の法則の解析」に基づく関数指導の報告です.等速度逮動から1次関数,等加遠度遷動から2次関数を導きます.その際,1次関数の標準形として,
y一q=a(x一p)
2次関数の標準形として,
y一q=a(x一p)2
という形を解析することがポイントとなります。どちらも初期条件が(p,q)で与えられることなど,教科書流の放物線の頂点と考えるより,ずっと関数の本質にせまる優れたプランだと思います.
■微分積分表示器の作成 渡邊 勝(立命館慶祥高校)
微分とは差分の無限小への極限であり,積分とは積和の無限小への極限であるという考え方を,一目で分かるようにしてくれる表示器です.数式でかけば,
Δx=x−p,△y=y−q
として,
△y=f’(x)・△x
ということですが,やはり具体的な‘実物’で示すことが大切です.今回の作品は,前回の厚紙の部分を木製に変えてあり,動きもスムーズになっています,
■常用対数の効カ 長谷川貢(追分高校)
今年度の京大の理系の入試問題:「2nを10進法で表したとき,7で始まるようなnをlつ求めよ」を生徒たちに考えさせたという報告でした.小学生でもできそうな問題ですが,電卓を使ってもそう簡単には答えはでてきません.例えば,
1og10246=46×0.3010
=13,846
=0.846+13
=log1O7+log1O1013
=log10(7×1013)
ですから,lつの答は46となりますが,完全に解けるためには,長谷川さんも述べているように,常用対数と数値計算に対する鋭い感覚のようなものが必要なのでしょう.いつもながら,今回も長谷川さんの説明には全くついて行けませんでいた.
■集合の高校でのとりあつかいについて 松澤健吾(静内高校)
スペインのEGB5年のクラスで集合を学んだ松澤さんは,日本での計算重視の算数・数学教育とのギャップに戸惑ったそうです.300ぺージある教科書のうち,100ページ以上が集合,論理,命題,関係,写像,・・・などの基礎的な内容に当てられており,当時はフランスに始まる数学教育現代化の影響を受けていたのかもしれません,「論理的思考を鍛えるということであれば,徴積分をゴールとする日本の高校数学を見直して」集合を教えることも必要ではないかと,松澤さんは述べています.
■受験数学における問題点 関ロ隆(札幌南高校)
関口さんが日ごろ感じている受験数学の問題点として,
@センター試験対策として,限られた時間で速答させる訓練の結果,思考力が減退する.
A二次試験対策では,教科書にない事項や公式を覚えることが強制され,負担が増す.
そして,教科書そのものが受験向きに書き換えられていくことを憂れいています.確かに,「大学で学ぶ数学に直結しない瑣末で雑多な事項」ぱかり勉強していると,ますます数学が嫌いになり,学力も低下します.関口さんが指摘するように,入試を資格検定的なものに変えることも必要でしょう.
■市民講座「塩が数える幾何学」の取り組み 成田牧(啓成高校)
これまで高教組札幌支部が行ってきた支部教研をひろく市民に公開し参加してもらう目的で,今年から「札幌子育て・教育・文化フェスティバル」と名称を変え,10月に実施しました.成田さんはフェスティバルで市民講座を開催することを提案し,自らも「塩が教える幾何学」の講師として参加しました.筆者も高校生たちと共にこの講座に参加して「癒しの空間と時間」の中にのんびりと浸ることができました。伝えたい内容をもって参加する講師と,それに興味をもって参加する市民との間をつなぐものとしての市民講座が,今後さらに発展することを期待したいと恩います,
■‘波動幾何学’の形成と衰退 真鍋和弘(篠路高校)
最近,日本人の知的水準が問題となっていますが,そんなに急に自信を失うこともないと思います,
数学者の上野健爾氏は「誰が数学嫌いにしたのかjのなかで,和算家の建部賢弘やの思想家の鈴木大拙などの例をひいて,科学や数学の学習が深くもの事を考えることの基礎となりうることを強調しています.そのような例として,昭和初期に誕生した物理学の理論である‘波動幾何学’と,その提唱者である三村剛昂をとりあげました.。”波動幾何学”そのものは日の目を見ることはありませんでしたが,後の広島大学に理論物理学研究所を設置させるきっかけとなり,多くの相対論や素粒子論の研究者を育てました.本格的に物理や数学が諸外国から日本へ輪入されて約100年たちますが,今後この時代の科学史および教育学史の研究がさらにすすむことを期待します.
日時02年1月12日(土〕、1月13日(日〕
会場あけぼの旅館、札爆市北区北13西4、T5011−747−1225、地下鉄北12条駅下車1
内容 l/12(土)
14:30〜 受付と連絡
15:00〜18:0C、総会
18:00〜 新年会
1/13(日)
9:00〜12:00、例会
宿泊査;7500円(新年会費含む)
申込み;12/25までに別紙(FAX用紙)で、新川高校・清水まで、宿泊の方ば必ずお願いします。l
レポート;大歓迎.80部郵送しやすい形式でお願いします.
その他;お酒・肴など新年会への持ち込み大歓迎です.