現実世界を深く豊かにとらえなおす数学の授業を!
<2002年度活動計画>
1/12.13 総会・例会(札幌) 3/9.10 例会(新十津川) 6/8.9 例会(網走) 7/29.30 全道大会(小樽) 11/9.10 合同教研(札幌) 12月下旬 冬期研・例会(札幌) *3/23.24 全国高校集会(岩手県) *8/3.4.5 全国大会(沖縄県) |
<3月例会のご案内>
1.日 時 3月9日(土)〜10(日) 2.場 所 新十津川町「ヴィラ・トップ」 (新十津川町字総進 ふるさと公園内:? 0125‐76‐3000) 3.内 容 3/9 14:30 受付 15:00 2002全国教研参加報告(成田さん) 第1回サイコロ野球ゲーム大会 18:00 夕食・交流 3/10 9:00 レポート交流 12:00 終了・解散 4.参加費 7.000円(1泊2食) 5.申込み 2月28日(木)までに別紙FAX用紙にて |
☆12月例会レポート紹介
<三角比の授業の取り組み(成田さん)>
この取り組みをすることになったきっかけは、高教組札幌支部数学部会の今年度の重点研究テーマが三角比であったことと、夏の全道大会で紹介された三角比の増島実践との衝撃的な出会いだったようです。
取り組みの特徴は、
@初めに、三角比を学ぶことによって解決できる測量などの具体的問題を紹介し、三角比を学ぶ目標が明らかになるようにした。
A古代ギリシアの天文計算を呈示し、その解決の中に三角比の定義の必要性とともに三角比の文化を学ぶ方法をとったことです。
注目したいのは、「わかりそうでわからないところがムカツク。でもいまやってることは楽しいです」、「初めはできるわけがないと思ったが、やってみると止まらなく面白かったです」という生徒の感想が示す通り、リアリティーのある良問に触れ、知的刺激を受けたとき人は初めて能動的に学習するということ、そこには「なぜ数学を勉強しなければならないの?」という疑問は存在しないことです。また、クラス日誌に生徒が書いた「だんだん数学わかってきたー!ウレシー!」という記述を見た担任が「20年教師をやっているが、数学がプラスの意味で日誌に書かれるなんてことはこれまで一度もなかった。初めての経験だ!」と驚いていたという話も紹介されました。
<市民講座『塩が教える幾何学』の取り組み(成田さん)>
「現在、高校で行われている授業は、いろいろな意味でうまくいっているとは思われない。これらのことを完全にフリーにしてくれるのが市民講座型の教室空間であると考え、昨年まで高教組札幌支部が行っていた教研集会が、広く市民との対話を進めることを目的に実行委員会形式で運営される教育集会『札幌子育て・教育・文化フェスティバル』にリニューアルされたのを機に、この教育集会の中に市民講座の枠を確保してもらうことができた」と、市民講座設立の経緯がはじめに紹介されました。
成田さんが担当した『塩が教える幾何学』の案内文は次のようなものです。
“数学を学ぶことが学生、生徒の苦役になっている現状に一石を投じるために企画したもの。「数学は、楽しい」、「数学を学ぶことは、心に『癒し』の時間と空間をもたらす」、「分らなくても楽しい、分るともっと楽しい、数学の世界」を体験してもらい、数学は、人間の精神活動にとって本質的なものであることを体感してもらう。砂遊びならぬ、塩遊びで、数学の世界をのぞくことができます。さらさらと落ちて行く塩は、自然の法則にしたがって、私たちを対称性の世界へさそいます。”講座を終えた成田さんは、「自分でも驚いたのは、この講座で使う言葉と、ふだんの教室で使う言葉遣いが違うことである。やはり、ふだんの教室では権力関係が生じていて、その権力関係を背景に言葉遣いが変化するもののように思われた。ふだんもっとも注意してはまらぬようにしていた穴に気付かずに落ち込んでいたことになる。このことからも、授業をする環境作り、民主的学校作りや教室作りが大切だとあらためて感じた」と振り返っています。また、他の講師の多くが「この企画は、なぜ我々が授業をするのかということに対して根源的な問いかけをする。何にもとらわれない、本来伝えたいことを伝えるという授業の原点がある。何を伝えようか考えると、始まる一週間前からわくわくどきどきした」などと感想を述べています。
<総合学習におけるコンピューターシュミレーション授業(成田さん)>
この取り組みは、2003年度から導入される総合的学習の時間の試験的試みとして、1年生360名に行ったもので、5分野13コースから生徒の希望によって選択させています。このうちコンピューターシュミレーション数学分野には8名が希望し、「くじの当たる確率」、「係数が変化するときの二次関数のグラフの変化」、「循環小数の考察」、「ビュッフォンの針」、「モンティホールジレンマの考察」に挑戦しました。指導には時間がかかるようですが、自分で選んだ課題を自分なりに結論を追い求めてゆく形の“授業”に多くの生徒は新鮮さを覚えたようです。十分な時間とスタッフさえ整えば、結構教育的意味があるのではないかと感じたそうです。
<数学チャレンジ(真鍋さん)>
1 1月の合同教研のレポート「常用対数の効用」(追分高校・長谷川さん)の中で紹介されていた京都大学の問題「2のn乗の最高位の数字が7となる正の整数nを一つ求めよ」を“数学チャレンジ”として生徒に挑戦してもらったところ、とにかく力ずくで計算して2,30分ぐらいで答えを出してしまった生徒が各クラスに1〜2人出てきたそうです。北大院生の石川さんによると、実はもっともっと奥の深い面白い問題なのだそうですが…。
<対数関数における授業の実践から(真鍋さん)>
山形県の秋葉さんから、サークル仲間である土田美和(山本学園高校)さんの「対数の実践レポート」が真鍋さんのところに送られてきました。秋葉さん曰く「数学のよさを実感できる内容になっております。対数を自分で作る所はなかなかすごいと私は感心しました。道数協高校サークルの方にも御紹介して頂ければ幸いです」とコメントしています。
初めは「対数と聞いたら本気になっちゃうよ!」と鼻息の荒かった氏家さんが、「なんで底の変換公式を常用対数の前にやらないのかなあ?」と注文を付けつつも、最後には「たいへんしっかり考えられたプラン。ここまで一人でやったの?すごいなー!」と気持ち悪いくらいベタボメでした。お二人には氏家プラン(ブックレット2)を送ることにしました。2003年の全国大会(札幌)でお会いできるのを楽しみにしております。
<教科通信「待て待ち暇」(渡邊さん)>
多くの進学校・受験校は外部の模擬試験に合わせて進度を決めるので、その結果驚くほど速い進度をとります。授業は教科書をこなすだけで精一杯の状況で、思考の深まりよりは技能馴致になってしまいます。その教科書も、全ての定理は直感の補助もなしに直截に提示されており、生徒にとって「棒を飲まされる」ようなものです。高速進度に振り落とされそうになっている生徒に、手がかり・足場を与えたいと思い教科通信を発行しているという渡邊さんですが、発行の意欲も構想も有りながら実際には発行できないでいると胸のうちを話されました。
今回紹介してくれたのは、太陽から各惑星までの平均距離を地球―太陽間を10として表すと数列が存在する(チチウス=ボーデの法則)が、この法則によると火星と木星の間に惑星が存在することになる。その後の調査で小惑星ケレスが発見され太陽との距離を測ってみると想定値と近いものだったという話。「太陽系に数列?」というテーマに生徒達は大変興味を示したようです。
★1月例会レポート紹介
<てこの原理の数学的帰納法による証明(真鍋さん)>
アルキメデスのてこの原理(力のモーメントの法則)を数学的帰納法で証明する方法の紹介でした。一般に、数学的帰納法による証明問題は式の変形が中心で感動がない。技巧的な部分ではなく、使い方やアイディアが大事だということで、「数学教室12月号」の表紙を飾った問題を例にアイディアの大切さを示してくれました。
<等差数列の和(澤尻さん)>
夏の大会で増島さんが紹介してくれたアルバイトの問題をアレンジしたもの。あらためてこの問題の意外性を感じました。大会の講演で増島さんが「問題の提示の方法を含め、どのような授業を作っていくかがたえずセットで論じられなくてはならない」と言っていたのが思い出されます。
<定積分で表された関数について(長谷川さん)>
「複素数には多くの希望が入っている。高校から複素平面をなくすと現代数学は語れない!」定積分によって定義されたガンマ関数とベータ関数の関係式や、複素関数としての三角関数を通して、高校のカリキュラムに複素数を残すべきだというメッセージです。
<加法定理導入の優劣を論ず・補遺(渡邊さん)>
加法定理を今我々が見ている形で提起したとされる、レギオモンタヌスの著書「三角法全書」には加法定理が見つからない。それでは、何時だれがそれを成したのかと紐解いて行くと、「数学源泉辞典」の中のクラヴィウスとピティスクスの「加減法」に行き着いた。
そこでの彼らの問題意識は乗法を加法・減法で遂行することにあり、これはネイピアによる対数の発見前夜の歴史的出来事であったらしい。