高校サークルだよリ
No.38 文責・成田 收
☆3月例会レポート紹介
<2次関数(宍戸さん)>
2次関数のグラフの書き方を、3点法なども取り上げて丁寧に指導したプリント教材です。報告は、膨大なプリント教材から一部のみの抜粋でしたので十分その考え方を理解できたとは思えませんが、3点法をさらに改良して丁寧な指導過程が組まれています。その後、平方完成も扱うようにしているとのことでした。
各所に工夫がみられ、数学が恐怖の対象ではなく、わかる教科として生徒に受け入れられているのだろうなという印象を持ちました。
この報告に、いくつかの議論と検討が加えられましたが、学習者が、2次関数のグラフがかけるようになったとして、どうして2次関数のグラフが必要なのかということについて、納得して取り組んだかどうかという点が議論されました。この学びの動機付けとなる具体的で理解しやすいモデルを学習の導入で提示することはいつも求められていることとはいえ、なかなか難しいものです。ここでは、増島氏の2次関数プランや高教祖札幌支部教文推進委員会数学部会のプランなども例にあげて検討されました。
<観覧車で三角カンスー(清水さん)>
郵便局が郵便貯金の宣伝用に作った観覧車の模型を使って、三角関数を、観覧車をベースに教材化しようという試案の報告です。乗り場を観覧車の真下ではなく、真横に設定し、回転速度を一秒に1度とすれば、観覧車に乗り込んでから$t$秒後に、自分がいる位置を考えることによって、自然に三角関数の概念を導入することができます。
たいへん優れた方法ですが、この設定では、三角関数の合成や加法定理をどう扱うかという問題が残ります。今後の課題として、検討しようということになりました。
<じゃんけんについて(徳江さん)>
3人でじゃんけんをすると、一人だけが勝つ場合と二人が勝つ場合とあいこになる場合がありそれらの確率がみな
1/3 であることについてはよく扱われます。しかし、これが、4人、5人、6人となった場合の確率について考えた例はあまり見かけません。この報告は、それを、7人の場合まで拡張して考えたものです。
題材が、高校生に提示する問題としてちょうど良さそうなこともあって、一般の
n 人でじゃんけんを行った場合のあいこになる確率についてひとしきり話題になりました。
<7で始まる数字(真鍋さん)>
昨年の合同教研で高校サークルの長谷川さんが問題にして以来、真鍋さんが継続的に取り組んでいるテーマの現在までの進捗状況の報告です。
長谷川さんは「nを自然数とし、2nを10進数で表したとき、その数字が7で始まるようなnを求めよ。」という2001年度の京都大学の入試問題を授業で扱ったことを報告してくれました。その後、真鍋さんがこの問題の背景を探ってみると、log102が無理数であることがその背景になっているということがわかりました。どんな無理数も何倍かするとその小数部が任意の有理数に限りなく近い値をとります。このことが、nをうまく選ぶと、7やその他の数のどんな正の整数を指定しても、その数で始まるような2nのnを見つけることができることにつながります。そのことを保証するのが、ヤコビの定理です。今回の報告では、その証明の中心部は「鳩ノ巣原理」あるいは「ディリクレの抽出し法」によるものだということが述べられています。さらに、無理数の整数倍の数列の小数部が区間[0,1)に均等に分布していることを示すことができれば、自然界に分布する数は確率的に1で始まることが多いことを主張する吉田知行氏の「1で始まる数が多いのはなぜか」という記事も納得できるわけです。このことを保証するのが、ワイルの均等分布定理であるということです。今回の報告はここで中断しておりワイルの定理の証明にはふれていません。いつものように、真鍋さんの手にかかれば、ワイルの均等分布定理が、ほとんど自明のこととして解説され、パッと霧が晴れたように理解できるのではないかと期待されます。次回の報告が今から楽しみです。
<秋葉さんからの手紙(清水さん)>
山形県の秋葉さんに高校サークルとしてブックレット第2集の「量の解析に基づく指数関数・対数関数の指導」を送ったところ、秋葉先生から返信がありました。「量の解析〜」を丁寧に読み込んだ上でいくつかの重要な点にふれて議論されています。一読しただけで、ブックレットの主張する重要部分をすっかり理解してしまっているのに驚きました。著者の氏家さんもよき理解者を得て喜んでいるのではないかと思っています。また、一緒に送ってくれた資料中にある、携帯電話の生産台数の推移のグラフと指数関数
y=2^x のグラフを切り離して重ねてみるとぴったり重なるという授業実践の紹介は、その場でサークル参加者一同それぞれ体験してみましたが、まさにぴったりでした。その感動で時の流れが一瞬ゆるやかになったような錯覚に陥りました。
<消費者ローンと数列(澤尻さん)>
数列をやるなら等比数列で消費者ローンのことを取り上げなくてはいけない。なぜなら、他の教科でまともに取り組んでいるようにも思えないし、現代の若者に是非とも知っておいてもらわなければならない話題であるから。ここは、数学ががんばるしかない。・・・というわけで、例によって、澤尻さんの徹底的な研究が始まったようです。
お金を借りない人にローン会社が丁寧に情報提供してくれるはずもなく、結局、大通り西14丁目の消費者センターまで行って調べてきたということです。アドオン方式のことや年利から月利を計算するときの12で割る計算のまやかしや借金を借金で返す泥沼の話など、実生活に密着した話題が満載です。次回は、実際に授業にかけた印刷物付きの報告を期待したいところです。
<高校入試問題から(真鍋さん)>
今年度の高校入試に√(a+b)がもっとも小さな整数になる、連続する2つの自然数a,b(a<b)を求める問題が出題されました。
数学をするものの間では、自然数というと0以上の整数{0,1,2,3,・・・}をあらわすと考えるのが普通ですから、$a=0,b=1$と解答するのが適当であると考えられます。
しかし、道教委は「自然数の定義を0 以上の整数{0,1,2,3,・・・}とする。」という考え方があることは知っているが、現行の中学校教科書が「自然数という言葉で1以上の整数{1,2,3,・・・}をあらわす」と、しているため、a=0,b=1は正解としないという立場をとったという報告です。
「数学の立場から正解と考えられるもの」は高校入試の解答としても認めるべきだということや、誤解が生じないようにするためには、正の整数と表現するべきだなどいろいろ考えられます。しかし、実際、各学校に10名を越えて存在するa=0,b=1と答えた受検者は、かたくなな姿勢をとった方たちより、かなり本物の数学に近いところにいるのかもしれない、などと感じる報告でした。
<教育研究全国集会報告(成田)>
2002.1.10〜14に高知県高知市で行われた教育研究全国大会の数学分科会の報告です。
分科会ではたくさんのレポートが発表されましたが、筆者の発表の内容と印象的だった2レポートと1つの話題についての報告です。
<塩が教える幾何学(成田)>
2001年札幌子育て教育文化フェスティバルの市民講座で行われた数学の講座「塩が教える幾何学」の報告です。この報告では2つのことが取り上げられています。1つは、黒田俊郎氏の開発した「塩が教える幾何学」のもつ数学を伝える道具としてのすばらしい力について、もう一つは、市民講座の取り組みが持つ学校教育のゆがみをとらえる鏡としての役割についてです。
全国教研の会場でも「塩が教える幾何学」の実演をしましたが、参加者一同に、息を飲んだように見入っていただいたのは、支部教研の時と同様です。「確かにこれは癒しの数学だ。」との感想も聞かれました。参加者が、小中学校の先生方が多かったことなどを考えると、これでまた、「塩が教える幾何学」の伝道者が増えたかな、と感じることができました。
もう一つの点は、市民講座を作るときの意識のあり方です。いくつかありますが、
6月例会は網走管内清里町で行いたいと思います。この時期はたくさんの花が一斉に咲き乱れる美しい原生花園がみものです。また温泉にゆっくりつかって日頃の疲れを癒しましょう。 小清水高校 小林 隆