海道地区数学教育協議会(道数協)
高校サークル発行 2002.9.7
 
高校サークルだより

No.40 文責 氏家 英夫


基調報告
 7月29日、30日の全道数協大会での高校分科会は1日目、2日目とも12名の参加で行われました。
 1日目は、新川高校の清水さんの基調報告から始まりました。清水さんは増島さんの「現実世界を深く豊にとらえなおすような数学・・・を高校生に提供する(ために)小学校の重要教材の意味を徹底して深め・・・るという仕事をやるべきだと思う。しかも、それを授業の実践に則して、中高の教師の側からやるべきだと思う。」との発言を引用し、それに強い共感を示しました。その上で、自分自身の冬期研での取り組みなどを紹介し、小中高をつらぬく重要教材についての協同研究の必要を提起しました。

かけ算わり算から微積分へ       新川高校 清水 貞人
 清水さんの「微分はわり算の発展、積分はかけ算の発展」という立場からの、微積分の簡潔で分かりやすい授業プラントその実践結果の報告。
 微分の導入に学習プリント5年の内包量プランから「速さ比べ」「速度を求める」の問題を入れて、さらに「人類が瞬間速度をどのようにとらえたのかを微分の入り口にするのが最も自然でわかりやすい」ということから、ガリレオの斜面の実験を導入に用い、
 位置関数  s=f(t)
         ↓
 平均速度 {f(b)−f(a)}/(b−a)
         ↓
 瞬間速度 f′(a)=lim(h→0){f(b)−f(a)}/h
         ↓
 速度関数 f′(x)=lim(h→0){f(x+h)−f(x)}/h
という流れで微分を指導する。
 次に直線の速度グラフから距離を求める問題を導入に「積分とは細かく分けてたすということ」として区分求積法に移って行く。全体の流れは区分求積→微積分学の基本定理→面積を定積分でもとめるとなっている。
 全体として良く整理されつかいやすいる。しかし清水さんが「微分はわり算、積分はかけ算の発展という立場から」というのは、自分のおこなった仕事の総括としてはふさわしくないという気がする。この清水プランの積極性は、あくまでそれぞれの教材の選ぴ方や展開の仕方にあるのであって、この強調せれている立場が内容を生み出しているわけではないと私は思う。

観覧車で三角関数              新川高校   清水 貞人
 郵便局からもらってきた観覧車のモケイでsinの導入をしようという授業プランの報告。なんといっても面白いのは郵便局にもらいにいったら「新川高校清水様ご予約」と書かれていたという話で、まるで保険の予約みたいだ。

算数数学の基礎を身につける     虻田高校   河田 憲二
 「計算力は算数数学の学習の上で土台をなすもの」との考えから、いろいろなやりかたで、計算練習をさせたという報告。内容は10回足し算や文字の100マス計算。

計算カの実態ど1学年の授業     静内農業高校 石島 悟
 かけ算も満足に出来ないという生徒実態を前に、たし算とかけ算の100マス計算を実施し.「すべての者がかけ算九九をきちんと覚え、3分を切るようになった」という報告。
 上の河田さんの報告とあわせて議論したが、どちらも著しく基礎学カを欠く生徒の現実を前に、それをなんとかしようとする教師の熱意を感じさせる報告であった。
 しかし、たし算やかけ算の指導については、数教協に多くの実践の蓄積があり、それに学ばなければならないこと、計算ができないということにあまりとらわれるといつまでも中身に入れないことなどが指摘された。
 そもそも100マス計算は、かけ算九九をおぼえた子どもに、タイム競争を動機ににとりくませることに眼目があり、「かけ算ができない」「分数がわからない」高校生には別の手立てが必要だと私は思う。

7で姶まる数        札幌篠路高校    真鍋 和弘
 「nを自然数とする。2を10進法で表したとき、その数字が7で始まるようなnを求めよ。(京都大学2001年)」という問題を考える中で、この問題の意外なひろがりについてふれた報告。
 まず十分大きなnに対して2が7や9で始まることがあることは、ヤコビの定理「αが無理数のとき、nが自然数全体を動くときnαの小数部分〈nα}は区間[0、1)(微小な)区間の中にも存在する」によづて保証されている。
 さらにこの分布の様子を考えると、ワイルの一様分布定理に行き着き、この定理はカ学系のエルゴート問題やカオス理論とも深い関係があるという。

古代ギリシャの天文計算と三角比     札幌啓成高校    成田 収
 数I数Uの三角比、三角関数をまとめて指導した授業実践の報告。
 導入では増島実践を参考にエラトステネスの方法による地球の半径の計算によりtanを導入し、ヒッパルコスの方法による地球と月の距離の計算によりcosを導入する。次に大きな単位円の実測によりsin、cos、tanの値や相互関係を確認して行く。
 三角関数はバラパラサイン等で導入し、グラフや方程式などもそれぞれを具体的イメージにして進める。加法定理の導入にはブトレマイオスの数表づくりを例に導入し、具体角には角αの直角三角形のβ回転でもとめていく。
 全体にこの分野のこれまでの数教協が生み出してきた種々の実践を成田さんの視点からまとめ上げたすぐれた実践になっている。



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