北海道地区数学教育協議会(道数協)
高校サークル発行 2002.12.7
高校サークルだより
No.41文責・清水貞人


<道数協冬期研究会>
日時 12目26目(木)・27日(金)場所 あけぼの旅館(北区北13条西4丁目) 747一1225
内容<12/26>15:00 「市民のための数学講座」19:00 全国大会について21:00 交流会 <12/27> 9:00 「中学校幾何に学ぷ」12:00 終了・解散
会費1000円(宿泊者はプラス6500円)

 1日目は、前回に続いて、校種の違いを越えて学び合います。昨年から、日常的な小・中高・六学のつながりの大切さを主張してきだのですが、今回も実現されたことになります。 高教組札幌支部数学部会では、「市民を対象とした本当に意味のある数学教育の内容はどうあるべきかを問うことが、学校数学・受験体制に歪められている私達の毎日の授業の改善につながる」と考え、「市民講座の取り組み」を開始しました。この取り組みの中心人物でもある高校サークルの成田さん・真鍋さんが、「循環小数の謎」・「1で始まる数が多いのは本当か」という講座を披露してくれます。
 後半は、来年8月に北大で開催される数教協全国大会の詳細と係分担こついて決定します。 2日目は、中学校サークルと合同で分散会を企画しました。新課程では、中学校の教材が高校に上がって<ることも考慮し、高橋さん(稚内北星大学)・藤崎さん(音更中学)から、「中来年は、函館(イカソーメン)・根室(タラパガニ)・稚内(ウニ丼)あたりに出没したい(を腹一杯食べたい)と考えています。現地準備を担当していただける方、2002年中に事務局までご一報下さい。

<高校サークル総会・例会>
日時 1目11日(土)・12日(日)場所 あけぼの旅館(北区北13条西4丁目) п@747-1225
 
内容<1/11>15:00 総会16:00 レポ一ト18:00 新年会 <1/12> 9:00 レポート12:00 終了・解散
会費650O円(1泊朝食付)

総会の楽しみは、なんといって普段おあいする機会の少ない方との再会・交流です。地酒・肴の持ち込み大歓迎!新年会だけでも顔を見せてて下さいね。私事になりますが、念願だった「中学校での授業」を案現する機会が11月に与えられました。9月のある日、白石中学校の三輪さんから「高橋さんのプランを、藤崎さんの学校で、清水さんが授業するの、いつにします?」という趣旨の手紙が届き、夏の小樽大会の宴席で「約束した?」のを思いだしました。当日は、音更中学3年生に、「観覧車と三角関数の話をしました。授業研究の資料としてビデオを撮りましたので、例会で報告します。

2002年合研数学教育分科会報告11/9〜10 会場・札南高校(1)全体的な様子参加者は30名十αで、例年より若干少ない感じでした。レポ1一トが15本(小A中B、商I)と、これまた減りました。共同研究者の参加も60%で、昨年より20%減でした。<5人中2人欠席>でも、次に掲げるような特徴があって記憶に残る素敵な分科会になりました。
(2)今回の分科会の特徴
@はっきり「主張」する「賢い」高校生が参加してくれたこと。<共同研究者の真鍋先生が、引率してきた生徒です。>間「賢いとはどういうことですか?」問「引き算は『増補』が分かりやすいのではないでしょうか?」等々の、「radical」な質問で、分科会に刺激を与えてくれました。
A成田先生が、新共同研究者として、登場されたこと。「癒し系」の容貌・語り口<しかし、いったん語りはじめると、とっても難しい。教学の用語を使用するから。流石に森毅さんの「お弟子さん」です。そして、「酒」にも強い>
B今年も、小学校・中学校・高校・大学の「子ども達」の状況を交流することが出来たこと。全道各地く宗谷、根室、釧路等々>からの参加とともに、合同研案集会の「名」に相応しい分科会になりました。

(3)分科会の報告」・討議の様子一日目<文責は菊地>参加者の自己紹介から始まった分科会の

@トップは、開会前に必ず「飴を配る」人札幌の菊地さんの報告でした。
口試してみよう大地(北海道)一算数を柱にした総合学習一〔私案〕
夏以来3回目の報告で、以前より幾分整理された報告でした。30時間くコマ>の内容を一時間ごとに「何」をするのかが明示されていました。北海道とノーベル賞や、バランス北海道北海道の面積を「水」でも見つけよう等、荒唐無稽とも思える内容ではりましたが「何となく褒められ」ていました。「初めて褒められた」と、報告者は申しておリました。

A一昨年、北海道の代表として全国の集会に参加された宮田先生(宗谷・稚内)が、
複式学級での取リ組み、しかも前日に授業された「新鮮な実践」を報告されました。
口楽しく分かる授業をめざして一〈1年・ひきざん、2年・かけざん>」
求差の問題に「雪達磨の頭」と「胴体」の「数の差」を選び、「頭と胴体の合体」と言う状況から、式と計算へ導く授業の有様が討議の対象になりました。「求差」と「求残」の違いと関連を明確にしつつ授業を組む必要性があるとの指摘がありました。
 B進学校の立命館慶祥高校の渡邊勝先生の報告は、
口計算術から入る対教関数入門
対象生徒が文系の二年生。大航海時代に必要だったものは?に一定の解答をあたえつつ、ネイピア(1550〜1617)が発明した対数により、乗除累乗の計算が著しく容易になり、天文学に多大な貢献をしたこと等を「歴史的事実」としてふれます。そして、対数による計算簡易化の実際を「見せる」。計算の例から「定理:法則」を見つけ出させ、地震規模の確定に応用する。ワクワクするような「授業展開」に思えるのに「受験校」に見られがちな「解法」にのみ固執する傾向が顕著で「それとの戦い」が必要との「状況」を率直に語っておられました。

 C高校生を引率された真鍋先生〈札幌篠路高校)は、
口1で始まる数が多いのは本当か?
と言う、衝撃的なタイトルの報告をされました。真鍋先生は、この現象が初めて報告されたのは、1881年。そのことが証明されたのは1904年。との簡単な説明の後に、n!と2のべき(2n)を例にして、'それぞれnが1〜100、1〜1000で最上位の数に「1」が出てくることが、一番多いことをlogくロガリズム>を駆使し「証明」してくれました。五者択一問題なら、<1>を選ぶと、一香点数が高い(?)。と言うこともあるらしいようなことも語られました。(?)

D巷には、何があっても参加する者に与えられる「衣笠賞」があるのです?が
佐々木先生(旭川北高校)は、この「賞」にぴったりです。今回も、実践レポートを持って参加きれました。

口実数の絶対値について
絶対値│a│の値が、aがO以上か、O未溝かで別けて「解く」考えでは、│a+2│+│a−3│の問題で定着しにくいとして、│a│の導入を原点からの距離で定義しいるのであるから、はじめから2点A(a)、B(b)の距離をAB=│a−b│として導入する。1alは、その特別の場合と考える。こうすると、澱みなく授業が進んだ案践でした。

2日目(以下、文責・清水)
 @「週に一度は永山小学校、月に一度は旭川東高校」
旭川・旭川農業高 田中先生レポートのタイトルには「!?」と思わされましたが、勉強をしたがらない農業高校の生徒を相手に、数学の授業をどうするか、悩みを抱えながらも丁寧な指導をされている様子が紹介されました。今後は、「出来て嬉しい」から「納得できて嬉しい」への実践を期待したいと感じました。

 A「受験体制を乗り越える実践を目指して5」
札幌・道高教組札幌支部4年前、「受験体制を乗り越えるというより、どのようにして本質的な数学を子供のものにしていくかが大切ではないか」という批判を受けながらスタートしたこの取り組みも、B〜Eの実践を生んだことが示す通り、着実な歩みを続けてきたことが確認されました・レポートの最後は、「これからも、できることからやっていきたい。豊かな学ぴのために。数学のために」と結ばれています。

 B「わかる楽しい授業をめざして」
札幌・札幌工業高 中浦先生
上の取り組みの中から生まれた「2次関数」の授業プリントを、札幌工業建築科1年生2クラスを対象に実施した報告です。「投げ上げの問題の導入」、「3点法」、「面積図を用いた平方完成」・「面白い2次関数の問題」について検討が加えられ、いよいよ完成間近かとなりました。

 C「古代ギリシアの天文計算と三角比」
札幌'・札幌啓成高成 成田先生
今年は、「三角比」の授業プリント作りに着手しました。導入にギリシア時代の天文計算を用い、.加法定理はプトレマイオスの数表作りの追体験を盛り込んだ授業プランを啓成高校1年生に実施。人類はなぜ三角比を必要としたのか、その根源的な問いを中心に授業を構成していくと、生徒の学習意欲がその質の高さを保ちながらも長い期問維持されることが示されました

 D「観覧車で三角関数」
札幌・札幌新川高 清水先生
観覧章のゴンドラの位置を考える中で三角関数の定義を行い、その性質まで扱うというプランの紹介です。早期の実践報告が待たれます。

 E「市民講座『数学』の取り組み」
札幌・札幌啓成高 成田先生
「受験体制…」の取り組みの中に、今年度から3つめの柱として「市民講座の取り組み」が新設されました。市民を対象とした本当に意味のある数学教育の内容はどうあるべきかを問うことが、学校数学・受験数学に歪められている私達の毎日の授業の改善につながると考えています。

 F「模型による考察テトラパックの通り道」
胆振・追分高 長谷川先生
3次元の世界で生活しているのに私達が空間図形に弱い理由は、図が描きにくくイメージが湧きにくいことに触れ、模型による考察がその解決の一助となることを東大の入試問題なを引用して具体的に示してくれました。

 G「選択数学の楽しみ」 
檜山・丹羽中 大竹先生
初めて選択数学の時間を担当することになり、単なる復習・補習ではなく、教科書では伝えられない数学の楽しさを生徒に感じさせる時間にしたいと思い、「パズル」、「循環小数」、「数列」、「パスカルの三角形」など高校の内容にまで触れてみたところ好感触を得ることができた。「選択数学をポクが一番楽しみたい。それがきっと生徒に伝わると思う」と胸を張る大竹先生に是非、道数協の仲間になっていただきたいと思いました。

 H「数学の評価の実際について」 
根室・啓雲中 飛川先生
中学校では、今年度から絶対評価が導入された結果、意欲・関心・態度の数値化をはじめ資料の収集に追われてしまい、理解させるための授業というより、評価をいかにするかの授業になってしまっているという報告がされました。

 I「1あたり量を重視した関数の指導」 
釧路・別保中 山田先生標準学カテストの結果、数量関係(特に1次関数〉を苦手とする生徒が多いことが判明し、1あたり量を重視した関数の指導を通して生徒の力量を高めようと取り組んだ実践の報告です。比例→1次関数をスムーズにするために、比例を「xが2倍、3倍…になるとき、yも2倍、3倍…となる」ととらえるのではなく、「y=aXと表されるとき、yはXに比例する」と定義し、比例水槽を用いて一定の割合で水を入れたときの時問と水位の関係を取り上げるのがポイントで、グラフについても、初めの水位を切片、一定の割合を傾きとすることで徹底した。

●雑感年々レポート数は減少の傾向にありますが、質は上がっており、討議時間にも余裕が生まれ良かったのではないかと思います。また、小学校から大学までの教員が一堂に会し、互いの実践から学ぴ合えるのが給研の最大の魅力と感じていましたが、特に今回、真鍋さんが連れてきた教え子の保田君が、高校2年生の視点から堂々と意見を述べてくれたことは、生徒とともに楽しい授業を作ることを目指している数教協にとって嬉しいことであり、これからも歓迎していきたいと思います。



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