高校サークル
が札幌大通り西12丁目の北海道高等学校教職員センターで結成総会を開いたのが1994年11月12日です。第一回目の例会が、道数教の冬期研究会とあわ
せてその年の12月28日に開かれています。そのときのテーマが「内包量から微積分へ」でした。その時、札幌琴似工業におられた渡邉勝さんから、理論的背
景と豊富な実践を報告してもらいました。その時のまとめが翌年の1995年1月15日発行の「高校サークルだより」第一号に掲載されています。
当時のことが、内容はもちろん、日時も含めてきちんと再現できるのは、少々手前味噌になりますが『高校サークルだより』の正確な記事のおかげです。今回
50号を迎えるに当たって、これまで原稿を書いて頂いた会員の皆さまにこころより感謝申し上げます。これからも簡潔でわかりやすい誌面をめざして、編集人
一同頑張っていきたいと思いますので、宜しくお願いいたします。
高校サークル結成10周年記念祝賀会来年1月上旬予定(場所未定)
今
年の11月でサークル結成10周年を迎え、記念祝賀会の話が持ち上がっていましたが、事務局で相談した結果、全道合研とぶつかってしまうため、来年一月の
2005年度総会の時に、盛大にやろうと言うことに決定しました。日時や場所(札幌市周辺を予定)はこれから検討します。10周年記念にふさわしい趣向を
凝らした物にしたいと思います。良いアイデアがあれば、事務局までお願いします。
ブックレット『高校サークル10年の歩み』の.発行の遅れについて
今年11月の発行をめざして編集をすすめてきたところですが、主に編集責任者(真鍋)の怠慢により11月中の発行がで
きなくなりました。お待ち頂いた皆さまに、お詫び申し上げます。来年の一月発行を目指して努力しているところです。予定価格1000円で300部印刷の予
定です。サークルの会員には割引価格で販売する予定です。購入・販売についても宜しくお願いいたします。
Information
(研究会のお知ら
せ)
2004札幌
子育て・教育・文化フェスティヴァル |
10月10日
(日)〜11日(月) 札幌市社会福祉総合センター(札幌市中央区西19丁目) 二日目の「ワンデーすくーる」で道数協の会員が下記の内容で数学の市民講座をおこないます。子ども達の参加もお願いします。 9:50〜10:50 講師 菊池三郎 「魔法陣から、完全?魔法陣へ」(小学〜大学、一般) 11:00〜12:00 講師 真鍋和弘 「素数からの出発〜オイラーの完全数解明の夢」(中学〜一般) 13:00〜15:00 講師 成田 収 「対数の誕生」(中学〜一般) |
2004年合 同教育研究全道集会 | 11月12日(金) 17:30〜21:00 共済ホール 記念講演 高橋哲哉氏(東京大学総合文化)「平和と平等をあきあらめない」 11月13日(土) 9:30〜17:00 札幌大学 テーマ討論・分科会 11月14日(日) 9:30〜15:00 札幌大学 分科会 |
2004
道数協冬期研究会 |
12月27日(月)〜28日(火) あけぼ
の旅館 |
全国大会参加報告 清水貞人 | ||
8月3日から3日間、飛騨高山で行われた全国大会に、成田さんと一緒に参加してきました。千歳から飛行機で名古屋へ跳び、名古屋からJRで約2
時間半のところに高山はありました。途中から線路が単線になり山奥へ入っていったので、突然大きな町が出現したのには驚きました。駅前のホテルに着いてか
ら時間があったので高山市街を散策したところ、思っていたよりもこじんまりしていて、丸1日あればほとんど見てまわることができる広さだということがわか
りました。高山陣屋をはじめとする古い町並みを歩きながら、地ビール、地酒、飛騨牛の串焼きなどを堪能していたら、藻岩の川内さんとバッタリ出会い、その
まま3人で夜の高山を研修することにしました。 今回はサブテーマ「〜だれもがやってみたくなる『数楽』〜」にもあるように、市民や子供たちを対象にした企 画がとても斬新でした。そのうちのひとつ「数学の散歩道では、高山駅前をスタートし市内を1時間ほど巡りながら、国分寺の高さをカクシリキと歩幅だけで測 量したり、市内に13あるという酒蔵のお酒の銘柄を当てる確率の計算をしたり、高山ラーメンを題材にした組合せを考えたりしました。猛暑の中を移動しなが らの解答は結構大変でしたが、案内役の勝野先生や他県の方々と楽しく交流しながら高山の街を散策できました。 大会1日目の記念講演は、泡宇宙論で有名な名 古屋大学の池内了さんでした。講演「21世紀の科学・技術と教育」の中で、「現代は金儲けのための科学に偏っている。私は等身大の科学を提唱したい。等身 大の科学は文化としての科学でもある。日常の身辺のものに歴史が詰まっている。それらを全体とつなげて物語を作る新しい博物学を作りたい」と述べていまし た。「文化としての数学を生徒に伝えたい」という私達の想いと重なり、数教協が目指している数学教育と同じ志しを感じずにはいられませんでした。 |
最後に、
これからの教育についても触れ、「ゆっくりだってよいじゃないか」、「明日のことではな
く、50年、100年先を見据える」、「新品よりも使い古した物を選ぶ」というメッセージと共に、「子供たちが物質的に貧しくとも知的に豊かになることを
願っている」と結ぱれた 大会2日目は、初等関数分科会を成田さんと担当しました。増島さんから基調報告「中高の関数指導について」があり、「タン チョウの個体数変化を考える」(小寺)、「指数関数」(増島)、「対数関数」(成田)、「三角関数」(清水)などのレポートを中心に進めました。私が興味 を持った小寺さんの実践は、現実のデータを数学で読み解くために差分という視点を生徒に獲得させようとするものです。まず、タンチヨウの数の変化のグラフ を示し、増加数は全体数に比例するというモデルを導き差分方程式を得ます。次に近似 解を電卓を用いて遂次代入により求め、ロジステック曲線を完成させます。小寺さんは、この実践を通して「将来の個体数変化を数量的に分析し、差分方程式や グラフでとらえることで、変化カ環境との相互作用で決まることを生徒は理解した。ロジステック式カ凌化を見る基本的なモデルとなることが理解された」とま とめています百そして、この実践が生まれたきっかけが、昨年の札幌大会のあとに釧路湿原を訪れたことであったというエピソードも紹介されました。この実践 は明治図書「数学で考える環境問題」に収録されていますのでご覧下さい。
大会来年の全国大会は8/8(月)〜10(水)広島市の鈴峯女子短大で開催されます。終戦60周年に合わせての開催で、「元気」、「数楽」、「平和」を3
本柱に計画中ということです。
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全国大会報告 成田牧 | ||
今年2004年の全国大会は連日
34℃を越える猛暑の高山で行われました。暑さにもめげず、
全国から800人が集まり、市民参加の催しである数学の広場、数学の散歩道への参加者を含めると1000人規模の大会になりました。私の参加した範囲で大
会の様子を紹介します。 基礎講座(1日目) 大会初日は、黒田俊郎先生の基礎講座を聞きました。数教協の歴史を、彼が学び、開発した高校教材を通して概観しました。印象的だったのは、「生徒に学 べ」という言葉をキーワードに、生徒が発想したちょっとしたアイデアを発展させて、斬新な教材を作ってきた彼の教材開発法でした。 教学の散歩道 高山市内を散策しながら、数学の問題を解き歩く企画が持たれました。参加者は、問題を楽しみながら、高山通になれたようです。 書籍コーナー・教具コーナー 私は、書籍コーナー、教具コーナーで楽しみました。いつもながら、ここにいると数教協の大会に来たなーという感じがします。数学関連の本も選りすぐら れて並んでいるので、目移りして購入する本を決めるまでに2時間ほど立ち読みをしてしまいました。 記念講演 池内了氏の記念講演は、現代の科学が巨大になりすぎて、人の手の屈かない領域に踏み込みつつある。これからは、等身大の科学に目を向けるときがきてい る、と警告しています。等身大の科学とは、サイズと費用が等身大で誰でも参加できる生態系のことや、環境などを対象とするもので、文化としての科学、アカ デミーに閉じてしまわないもの、いってみれば現代の博物学を人間の文化と物語の中に取りもどすことが必要だと述べています。 細分化から再度、.総合化の道 をたどらなければならないといっています。このことは、数学にもいえることのような気がして、数学も、市民的物語の中に復活させることが必要な時期に来て いるのかな、などと感じました。 |
分科会(大会2日目) 北海道地区数教協(清水、成田)は高校の分野では、初等関数(2次関数、三角関数、指数対数関数)分科会の運営を担当しました。埼玉の増島高敬が基調 報告をし、東京の小寺隆幸が「丹頂の個体数変化を考える」で、差分手法でロジスティック曲線の変化までを扱う関数指導の展望を示し、清水貞人が「観覧車で 三角関数」、成田が「市民の数学−対数」、東北の伊藤潤一が「三角関数表を作ろう」、増島高敬が全生徒が取り組んだ「数学レポート集」をそれぞれ報告しま した。 参加者からは、「良かった、来て良かった。この夏休み数日しか休めないのに無理してきて良かった。今日一日、一分一秒も無駄な時間はなかった。」「中 高一貫カリキュラムとして関数を考えるという方針に大賛成です。指数・対数関数の扱いを柱に微積分を再構成するという視点も大事です。」「やはり、白分で レポートを用意しなければダメですね。」などの感想を頂きました。 2日目の夜は、世界遺産「白川郷」を支えている人たちの話を聞く会に参加しました。白川郷を支えているのは、「ゆい」という協業組織で あり、白川郷は、この、人々の営みを含めて世界遺産に指定されたのだということを知りました 教学の広場(大会3日目)の教具づくりや、高山近郊出身の高木貞治について詳細な調査をした上垣渉の数楽サロン「高木貞治を訪ねて」も 大変興味深いものでした。 しかし、大会3日間で、なんといっても良かったの`は、高山の地酒と朴葉みそ、高山そば、高山ラーメンなどの食べ物と伝統的建造物群保存地区や、朝市 の様子でした。 |
7月29日〜30日
札幌星園高校
第44回
道数協全道大会の報告
文責・真鍋 |
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◆わくわく講座
整数の世界(真鍋和弘)
参加者は1〜2名だろうと予想していたら、6名もの参加がありました準傭不足で中身
も支離滅裂なものとなり反省しています。
内容は「魔方陣」「ひとふで書き」「1で始まる数」「1で終わる数」「循環小数;ガウスの正17角形の作図」「平方剰余の相互法則」などです。 これまでサークルで報告したものや,成田さんから教えてもらったものです。小学生
にぜひ整数諭の面白さを教えてみたいと考えています。
◆大会記念講演
「算数・教学教育の目標
野崎昭弘(数教協委員長・大妻女子大学)
私は数学者で,数学教育に関してはずぶの素人です、という柔らかい切り出しで始ま
りました。
講演は「数学」が本来持っている教育力を丁寧にわかり易く説明されましたとても68歳とば思えない力強く明噺なお語でした。 大会前日には、校サークルの何人かで、会場近くのビアガーデンや郷土料理店で一緒にお酒を飲む機会があり、先生の人柄に直接触れることもできました。 先生は東大を出られた後、山梨大学やICUを経て、現在の大妻女子大で数学や情報
理論に関する授業をもたれています。
山梨大は4年間でしたが、美味しいワインや果実など随分よい思いをしたそうです。 フランスのグルノーブル大学で授業された経験もあり、日本とフランスの学生気質の違いを強調されていました。日本 の学生ほ意見が言えても、なぜそうなのかを説明できないが、フランスの学生は間違っ
た意見でも、なぜそうなのかを全員が説明できる。
以前、先生が『数学教室』に書かれたことで手紙で質問したら、丁寧な返事がきて、
翌月の同誌にきちんとコメントして頂いたことがありました。今回、直接お会いできて、ますます先生の魅力にひかれました。
◆高校分科会
野崎委員長も含めて全部で16名が参加しました.最初に基調報告が成田牧さんから
ありました(大会要項参照)。レポートは6本と少なめでしたが、議論が盛り上がり、もっと時間が欲しいという感想が多くありました。
以下、発表順にレポートの概要を報告します. @組み合わせから順列へ
澤尻知徳(札幌星園高校)
教科書の記述とは反対に、組合せから順列へ
nPr=r!・nCr
として順列へ進むプランの報告です。この流れの方が生徒にとって自然であると澤尻さ
んほ主張します。岩波ジュニア新書『数学はともだち』もこの順に展開しているそうです。いろいろな楽しい例題を通してnCrを
計算し、パスカルの3角形の性質
nCr=nCn
−r
nCr=n−1Cr
−1+n−1Cr
を導きます。次にn=6の場合の規則性を考察します。この段のnCrの
値が
6C0=1
6C1=1×(6/1)
6C2=1×(6/1)×
(5/2)
6C3=1×(6/1)×
(5/2)×(4/3)
・・・・・・・・・・・・・・・・
6C6=1×(6/1)×
(5/2)×(4/3)×・・・×(1/6)
と書けることから,
nCr=n/1×(n−1)
/2×…×(n−r+1)/r
を推測することは可能です。議論のな
かでは,順列・組合せの教科書の内容が公式を暗記し,例題を解いて終わりとなっていることに批判が集中しました。公式を自分で発見する喜びを大切にするこ
とが重要であるという指摘がありました。
A三角比の授業について
清水貞人(札幌新川高校)
この報告は,清水さんが新川高校で実際におこなっている三角比+三角関数の授業を
まとめたものです。
今回ほとくに、正弦定理と余弦定理の導入について詳しい説明がありました。教科書での天下
り的な取り扱
いに対して,正弦定理では、与えられた円に内接する三角形を描き、角度と辺の長さを測定することによって定理を予感することができるようになっています。タンジェントの導入として、古代ギリシヤの エラトステネスによる地球半径の算出をあっかっています。また、ヒッパルコスがおこなったとされる地球と月との距離の算出によって、サインとコサインを導 入しています。 手作りの三角関数表をはじめ、生徒が三角比を体感できるよう随所に工夫がこらされています。 余弦定理では、任意の三角形の各辺を一辺とする正方形の面積を測定することにより、余弦定理が「ピタゴラスの定理」の拡張(スーパーピタゴラスの定理)で あることが、自然に了解できるようになっています。 後段は正弦・余弦定理に限らず、一般に定理の証明を授業でどう扱うかということに
議論が集中しました。生徒や学生に証明がなかなか受け入れられない現状で、どうしたら証明してみたいという気持ちにさせることができるか?様々な工夫が求
められています。
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B確率の実段
河田憲二(虻田高校)
TVドラマや授業では導入が大切であるという河田さんの考えに基づいて、コイン
や画びょうの
表裏、サイコロや将棋の駒の各面がでる確率を最初に実験によってもとめた実践の報告です。確率を実験回数を無限大としたときの相対度数の極限として定義し
ています。確率とは可能性の割合を表すアバウトなものであるという河田さんの主張が貫かれています。野崎委員長も指摘するように、学生に「確率が1/2と
はどういうこと?」と質問すると、「2回のうち必ず1回は起こる場合をいう」と答える者が多いそうです。確率の法則とは個々の現象にあてはまるものではな
く、統計的現象に適用されるものです。
後段は,ハノイの塔のゲームによって漸化式 an+1=2an+1
を理解する実験です。教科書では漸化式がが最後に登場し、しかも入試問題として扱わ
れることが多
く、徒たちには不人気です。しかし、高橋哲男さんのプランのように、漸化式を最初から導入しておけぱ抵抗も少なくなると考えられます。例えぱ初項a。,公
差dの等差数列の定義は、
an+1=an+d
となります。n=0,1,2,3,・・・を代入していくと、漸化式によって次々とと
等差数列が作られていく様子がわかります。
C再び微積分マスターテストの取り組みについて
渡邊勝(立命館慶祥高校)
渡邊さんが講師として勤務する立命館慶祥高校は、札幌でも人気を集めている新設の
中高一貫の進学校ですが、数学の授業は習熟度別でおこなっているそうです。今回の報告は、文系の2年生に対しておこなった微穫分の授業のとりくみです。渡
邊さんは微積分学習の最終目標として徴分方程式をとりあげ、ニュートン,ライプニッツに代表される17世紀の科学革命との関係を重視しています.
マスターテストとは各節におげる到達目標を明示した10段階に分類された連続テス
ト(A級は微分の概念、J級は簡単な微分方程式)のことです.生徒はどの級から始めてもよく,全級合格を目標としています。ほとんどの生徒が目標に達しま
したが,「微分の概念や微分と積分の関係」などの概念を問う問題の出来が悪かったそうです。その原因として,センターテストに代表される大学入試が求値問
題に偏重し
ていることを指摘しています。
D市民講座 数学・対数の世界
成田収(静内高校)
市民講座の中で、対数の歴史・内容・進化までを扱おうという壮大なレポートの紹介
です。
教科書に登場する対数は現実から遊離した形式的な扱いとなっており、高校生に感動
を与えるものになっていません。氏家英夫さんの対数のプランでは、指数構造を比例構造に対応させる対数の働きが生き生きと描かれています、成田さんのレポ
一トでも対数の導入に便われています。今回新しく付け加えられた内容は、
1)ネピアによる対数の発見 2)ブリッグスの常用対数
3)一般の場合の底の変換公式*
4)手作りの常用対数表
5)2nの先頭の数と常用対数との関係
などで,対数の全貌が明らかにされています.まだ未完成の部分が残っており,早い完
成が望まれます.
最近になって筆者は、対数関数を指数関数の逆関数として認識したのはオイラーが初
めてであるということを知りました。そのことは彼の主著『無限解析入門』に書いてあり、オイラーの対数関数をはじめとする一連の研究が関数概念
を一気に発展させたそうです。(W.ダンハム著『オイラー入門』シュプリンガー・
フェアラーク東京)。対数はまさに高校数学のかなめと言ってもよいでしょう.
*筆者注:オイラーはこの公式を「黄
金法則」と呼んだんだ.
E原始根が操る数の世界 真鍋和弘(札幌篠路高校)
原始根とは筆者が最近興味をもっている整数論の中にでてくる概念です。一言で述べ
るのは難しいのですが、素数pが7の場合を例に説明します。正の整数の集合を7で割った余りに注目すると,Oから6までの7つの部分集合に分かれます。こ
れらを7を法とする剰余類と呼びます。
いま、数列 30,31,32,・・・、3n を7で割った余りを[3n]で表すと,
[30]=1、[31]=3
[32]=2、[33]=6,
[34]=4、[35]=5,
[36]=1、…
となって周期6で繰り返すことがわかります。
このように、ある整数a(aは7の倍数ではない)のべきを7でわった余り[an]
が0以外のすべての余りを生成するとき、aのことを7の原始根と呼びます。p=7の場合、3と5が原始根となります。原始根はフェルマーによって発見さ
れ、オイラーやガウスによって整数論(=算数)の基礎として位置づけられました。すべての素数pに原始根が存在することはガウ
スによって初めて証明されました。
原始根は算数の世界を支配しています。例えばpを素数とするとき1÷pの循環小数
の節の長さは10がpの療始根になるかどうかで決まります。10は7の原始根ですが13の原始根ではありません。したがって、1÷7の循環節の長さは最大
の6ですが、1÷13の循環節は最大の12ではなくその半分の6です。一般に1÷pの循環節の長さば必ずp−1の約数となることが証明できます.
また,若きガウスが正17角形が定規とコンパスだけで作図できることを証明した際
にも,原始根が使われています。そのためにガウスはZの17次方程式
z17−1=(z−1)(z16+
z15+・・・+1)=0
を解いたときに現れる16個の虚数解が分数と平方根だけで表現できることを証明しま
した。このときに3が17の原始根である,つまり30,31,32,・・・、315を
17で割った余りが1か
ら16までのいずれかに等しくなるという事実を利用したのです。そのときにガウスは
17が素数であり、かっまた
17=24+1 と書けることが決定的に重要だということに気づいたのです. |