9月例会 2011年9月3日(土)
13:30〜18:15+α 札幌市 大通高等学校 |
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題 名 |
掲載 |
氏 名 |
所 属 |
内 容 |
1 |
バカロレアS2011年紹介 |
渡邊 勝 |
(岩見沢市) 名寄市立大学 短期大学部 非常勤講師 |
問題文を和訳。その前に、日仏間での記法の相違点を指摘:
3.14159:3,14159、(a,b):(a;b)、a≡3(mod.5):a≡3[5]、数列の収束における「挟み撃ちの定理」:「憲兵の定
理」、
関数のグラフ:関数を表す曲線、座標軸・関数の曲線を含む全体の画像:グラフ 特徴点:記述式、選択問題でも、正しい答えを選んでそれを確りと書かせている。採点に手間暇掛けている様子が見て取れる。 日本の高校にない項目が幾つかある。整数論、微分方程式、複素数による変換、確率論は数え上げから独立している。 |
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1′ |
いきなりルベーグ積分ver.3.0 第五章 確率論への応用(デッサン) |
渡邊 勝 | (岩見沢市) 名寄市立大学 短期大学部非 常勤講師 |
コルモゴロフの公理による確率論を導入。初めから、全ての道具立てを見
せるのではなく、必要に応じて理論的な基礎固めをするように構成している。ただし、この報告は未完で言わば「デッサン」段階。これから肉付けが始まる。 確率は根元事象から実数への関数と位置づけ。初めから均等確率を導入しない。「同様に確からしい」事象は例外的に扱う。 離散的な確率分布を先に扱い、後に連続確率分布が出たところで、事象の連続を載せる「ボレル集合族」を取り扱う。 情報理論に言及し、情報量の定義、その期待値としてのエントロピーを扱う。 |
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2 |
連立不等式を解くちょっとした工夫 |
及川 剛志 |
釧路東高校 |
生徒が躓きやすい箇所として、不等式を図示することがある。それをうま
く乗り越えさせるために、未知数は必ず左に置く、不等号を矢印と見なす。x<2は、x←2のようにみて、矢印の方向に領域を取る。そのために、不等号<に
赤チョークで中に線を入れて、←に見立てる。これについて、異論も出て、不等号指導の奥行きの深さを確認しあった。 |
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3 |
集合の定義と授業での導入 |
立花 悠 |
札幌大通高校 |
後期授業の最初の時間に扱うテーマ。それなりの工夫が要ると考えて、授
業案を作った。「集合とは、内容のはっきりした物の集まり」として、集合となるものと、ならないものとの違い、見分け方を練習する。:例示:A={x│x
は十分大きな数} ならば10000∈A、10000∉Aどちらか分からない。生徒から出されると予想される集合例:A={x│xはAKB48のメン
バー}、B=}x│ビートルズのメンバー│={ジョン、ポール、ジョージ、リンゴ}、C={x│xは日本のプロ野球のチーム}
など。部分集合もこれらを
使って説明する予定。 |
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3′ |
無限とは 見果てぬ夢を 夢想する |
立花 悠 | 札幌大通高校 | なぜ無限が人間を魅了するのか?それは「無限を見たことがないから」、
無限への接近その一:近似による。例:√2を上下から挟んでいく中で、その操作が無限であること、得られた数値に実用性のあることを知る。無限への接近そ
の二:ε−δあるいは、ε−N法、これは対抗する二人の人物の対話を定式化したもの。無限への接近その三:無限について、あれこれ自由に考えること。G.
カントールの「数学は自由である」精神を発揮すること。 |
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4 |
ジレンマが理解を深める−確率の授業− |
林 大輔 |
小樽明峰高校 |
「モンティホール・ジレンマ」の授業実践報告。3人一組にトランプカー
ドの絵札1枚:これが当たり:と絵札でない札2枚:これが外れ:を配る。ディーラーとプレイヤーそして記録係をおく。ディラーが用意した3枚のカードから
プレイヤーが1枚を引き伏せておく。ディーラーは、手元の外れカードを1枚抜いて手元に1枚を残す。そして、プレイヤーに「さっき引いたカードとこのカー
ドを交換しますか」と問う。ここで、プレイヤーを「そのまま」派の組と「とりかえ」派の組、そして、折衷派の組に分ける。各組毎、次に、伏せていたカード
の表を出して、プレイヤーの当たり外れが分かる。これらを記録係が記録していく。この試行を100回行う。その結果、当たりの率は、反抗無し場合43%、
変更有りの場合63%。この違いを考えさせる。いろいろな意見が出された。注目すべき意見:”1000回やる事を想定して、「親」は1/998、「自分」
は1/1000の確率で当たりを持つ”が出た。 |
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5 |
全国大会からのお土産 |
清水 貞人 |
札幌大通高校 | 「皮むき正多面体」:正二十面体を糊無しで組み立てる展開図を紹介。参
加者一同鋏を持って作業に没頭。 「嘘発見器付き誕生日当てカード」実演により、参加者の興味が増した様子。 全国大会報告とは別に、大通高校の科目「数学工房」での授業案「正多面体の不思議〜オイラーの多面体定理〜」の紹介 |
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6 |
7色ペンの代わりに |
大谷 健介 |
友朋高校 |
数A実践報告:順列組み合わせ教材として、清水貞人先生考案の7色ペン
を追実践しようとしたが、そもそも7色ペン百円ショップにない!「さては、清水先生に買い占められたか?」と思いつつ、代用品を考えていた。授業直前にレ
ゴブロックを思い出した。授業では、「6色のレゴから4色選んで繋げてみよう」と始める。一致する組は無かった。「残った2色が先生と同じ組なら『今日は
運の良い日ですよ』」とやる気を引き出す。1人同じ生徒がいた。@6P4、
A6C2 を問題として、最初にAを手作業で書き出す。
その後、@に戻る流れを設定した。 余談:レゴを預けておいたら、生徒は実に様々な造形をしていた。レゴの魅力を再認識した。 |
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7 |
「ちょっとしたチャンス」をみのがさない ”ゲリラ数学教育”を今こそ |
平岩 恒逸 |
札幌大通高校 | 先の8月大坂で開かれた「アジア・太平洋ESDワークショップ」に2名
の生徒引率して参加。その準備中に、生徒とのやりとりに「ゲリラ的」数学教育の実践をしたことの紹介。生徒は印度の識字率74%と日本の99%とを比較し
て、印度教育の環境問題を提起したかった。 そこで、生徒に意地悪な質問をした。「識字率って何?」「印度の人口は何人?」「それじゃ印度では字が読めない人は何人?」 生徒は計算に戸惑った様子、そこで指数を使って、12億人×74%を12×108×74×10− 2人=888×106人。これは、888の後に0を6個並べればよい。つまり8’8800’0000人引き算して、 3’1200’0000人。「この数じみて何か感じない?」「数学大国のイメージあったんですけど意外ですね」と生徒の答え。上記のように「ちょっとした すき間時間」に「数学って役に立つんだ!」を伝えることができる。 |
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8 |
「確率」についてのメモ その4 ”確率とは何か”、ふたたび |
松本 弘文 |
札幌西陵高校 |
「確率試論」:天気予報の確率と宝籤当選の確率は意味合いが違う。前者
は統計に基づいているが後者は抽選の行為はそれぞれが独立である。このように、対象の偶然事象の質の違いにより「確率」に意味合いの違いが出てくる。公理
論的確率は、現実の確率事象とは一旦切り離して、数学理論として内容豊かな世界を産み出した。ジョン・タバクを引用して「確率をどうやって手に入れるか、
得られた確率が何を表しているか、あまり見通しを与えない」と指摘。つまり、確率の内容を考えること、その先の偶然とは何かを考究することが今後の課題で
あるとする。高校生相手の授業では、相対頻度の安定値を実感させることから入るべきであると考える。正四面体骰子を見やすく透明の材料を使って改良した。 |
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9 |
記号論理と背理法 |
真鍋 和弘 |
札幌篠路高校 |
記号論理によって高校段階で使う「論理」を洗い直す試論。ハイライト部
分は、背理法の論理で、次のように展開する。以下、→ は ⇒、 ←→ は ⇔ と同じ。矛盾という命題を人で表す。(B人 ¬B) ←→ 人 これを恒偽式という。矛盾公理:(A→人)→¬A、この式でAを¬Aで置き換えると、(¬A→人)→¬¬A、二重否定は肯定になるので、 (¬A→人)→A これが背理法である。また、B∨¬B は「排中律」とよばれ る。これを式変形して、(B∨¬B) ←→ (¬B∨B)←→ (B→B) 最後の式が「同一律」。つまり、排中律と同一律は同値。 |
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10 |
Euler関数φ(n)の証明 |
関口 隆 |
(札幌市) |
オイラーの関数とは、自然数nに対して、n以下の自然数でnと互いに素
であるものの個数:これをφ(n)と表す。つまり、 φ(n)=#{a│(a、n)=1、1≦a≦n、a∈N}、ただし、φ(1)=1とする。例えば、n=12のとき、12と素な自然数は、1,5,7,11 と4個あるからφ(12)=4、次の定理がある。nの素因数分解をn=p1e1p2e2・・・ pkek とすると、 φ(n)=n(1−1/p1)(1−1/p2)・・・(1−1/pk) 、12=22× 3より φ(12)=12(1−1/2)(1−1/3)=12×(1/2)×(2/3))=4。これに関連した入試問題の回答例の紹介そして、上記定理の 証明の紹介。 |
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11 |
ピタゴラス数で遊ぼう |
成田 収 |
静内高校 |
単位制の下、2,3年生対象の選択科目「数学に楽しむ」の中の1テーマ
である。目標は、平方剰余の法則、2次体整数論、その入り口のピタゴラス数の授業書である。生徒への愛情を感じる丁寧な解説により、ピタゴラス数(a,
b,c)=(,2mn、m2−n2、m2+
n2)を導入。 さらに、右左見直英氏の手法:”三辺が整数の三角形を幾何的に見つける” を紹介。45度回転させた方眼紙に直角を挟む辺がm:nの三角形を描くことから 初めて、各辺が m2−n2、m2+ n2 となる三角形を作図できるもの。発表は時間の関係でここまでとなったが、レポートは、この先 続く。”ピタゴラス数の秘密” ”二つの平方数の和で表される素数” ”4で割ると1余る素数は二つの平方和で表される” ”原始ピタゴラス数の中のa2+b2=c2の cには、4n+3型の素因数は現れないこと” ”原始ピタゴラス数の中のa2+b2= c2のcには、4n+1型の素因数が全て現れること” とつづく。 |
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2 |
授業ノートより 「2円の交点を通る図形」 |
鈴木 邦彦 |
札幌白石高校 |
数学U、図形と方程式、「円の方程式」にあ
る”2円の交点を通る図形の方程式”の教材研究の報告。 二円:x2+y2−8x+4y+10=0, x2+y2−10=0の交点を通る図形の方 程式は、x2+y2−8x+4y+10+k (x2+y2−10)=0 (k:実数) 整理して、(k+1)x2+(k+1)y2− 8x+4y−10k+10=0、k=−1のとき、直線、それ以外は円であるが、k→−∞ のとき、k→ ∞ のときについて、挙動を考察している。 |
全道大会 高校分科会 2011年7月28
(木),29(金) 札幌市 白石中学校 |
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# |
題 名 |
掲載 |
氏 名 |
所 属 |
内 容 |
1 |
サイペタで大数の法則を実感 |
松本 弘文 |
(札幌市) 札幌西陵高校 札幌大通高校 |
『確率といえば場合の数をかぞえることだ、という理解は正しくない』、 『確率の授業は、相対度数から入った方が確率概念の理解を得やすい』。この二つの問題意識の下に導入を考えた。多数回試行による相対度数の収束状況を、硬 貨のトス、骰子ふりでやってみたが、生徒の反応がいまいちだった。そこで、正四面体骰子「サイペタ」を作成して、実験をする。その前にチェビシェフの定理 によって、「4700回の試行により0.9の確率で、1の目の出る相対頻度pが 0.23<p<0.27となる」ことを予測しておいた。参加者が夢中に なってやるために、発表割り当て時間をこえる。すでに試行した結果と合わせてみると、1の目の相対頻度は0.278と上限を超え、2の目が0.214と下 限を大幅に超えている。その理由は、サイペタの作り方にあった。紙をのりしろで糊付けして作成するがたまたま2の面には糊代がなくて、軽くなっていたため であった。 | |
2 |
2個の平方和の問題について |
関口 隆 |
(札幌市) | 「素数:p、二つの自然数:x、y として p=x2+ y2 ⇔ p=2 または p≡1(mod 4)」フェルマー。この証明に関連した2003年慶応大学医学部入試問題の解説。「p=4k+1を一つとる。a2+ 4bc=p となる(a, b, c)の全体を考える」この後は誘導式記述問題。変換T:(a, b, c)→(a′,b′,c′)を3つの条件下で定め、この変換のなかで不変な変換を見つけ、それにより(a, b, c)=(1, 1, k)を得る。このあと、幾つかの手続きを経て、p=a2+ (2b)2 と表す結論までに行き着く。討 論では、変換Tの論理が「天下り」。問題作成者の誘導に旨く従うかどうかを見ているにすぎないなどの意見が出された。 | |
3 |
オイラーの五角数定理 |
成田 収 |
静内高校 |
五角数数列の一般項1/2・n(3n−1)を導入し、これに−1,−
2,−3,・・・を代入する。得られた数をnが正の整数の場合の結果と合わせて「拡大五角数」1,2,5,7,12,15,22,・・・を得る。一方(1
−x)(1−x2)(1−x3)
(1−x4)・・・・を展開すると、1−x
−x2+x5+
x7−x12−
x15+x22+・・・
。指数に注目すると、なんと、五角数が表れる。オイラーが1748年に発表。証明は時間の制約で割愛次回以降に。内容が豊富で奥行きが深く、「保型形
式」歴史上最
初のものといわれているそう。 |
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4 |
命題と論理 |
真鍋 和弘 |
札幌篠路高校 |
予てから、命題と条件の区別と関連が現行教科書では曖昧にされているこ
とを問題にしていた。改めて、記号論理の基礎に立ち返って、 p⇒q は ¬p∨q に同値であることに着目。「述語論理」に則りxに関する「条件」P(x)、q(x)に依って作られる新しい条件:p(x)⇒q (x)に限定記号∀xを付加し、∀x[p(x)⇒q(x)]として初めて「命題」となることを強調。 |
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5 |
「学び合い」による数学の授業 |
沢尻 知徳 |
札幌新川高校 |
西川純氏の『学び合い』に触発されて始めた。授業実践を踏まえて、学び
合いの狙いと効用が報告された。目標:「全員が理解する」「できる生徒」が「できない生徒」に教えるが、その人間関係は自然発生的にしておく。それによっ
て「相性の良い」相手を選ぶようになり展開がよくなる。「できる生徒」には、余計な作業に見えるが、実は「教えることは学ぶこと」原理で不明点が解消さ
れ、彼らにも有利になる。 |
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7 |
「平均」ってすごい! |
西谷 優一 |
(函館市) サイエンス塾 |
最初に「連成振り子」のデモンストレーション:2個の錘A,Bそれぞれ
の最大振幅をa,bとすると、運動エネルギーに関して、a2+
b2=一定 となり、これより、a,b が
ある円周上を移動していることが判る。 平均を次のように定義する。集合Xの任意の要素a,bに対して、a*b=b*a∈X を満たす演算*を定義。a*b=b*a=x*x を満たすx∈Xが只 一つ存在するとき、xをa,bの平均とよぶ。この定義から「相加平均」「相乗平均」「調和平均」が直ちに導かれる。 相加平均に関して「等差数列について、両端の相加平均は、全体の相加平均に等しい」さらに拡張して「公差が等しい等差数列を階段状に並べてぎざぎざ三角形 をつくる。3頂点の相加平均が全体の相加平均になる。」 {an} が等差数列であるとき、Σ(k=1〜n)kak=1/2・n(n+ 1)・1/3・(2an+a1) この定理を使うと、12+22+ 32+・・・+n2 や1・(2n−1)+2・(2n−3)+3・(2n−5)+・・・+n・1などを簡単に求めることができる。 加重平均についても言及。 |
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8 |
仏国高校教科書に見る確率 |
渡邊 勝 |
(岩見沢市) 名寄市立大短大部 |
フランスの高校リセ使用理系用教科書、確率単元部分を翻訳紹介。あわせ
て、日本のカリキュラムと比較。特徴点は、統計の後に確率をやる。つまり、数え上げを前提としていない。確率を直接定義せずに「確率規定」として、全事象
に測度としての確率を割り当てている。全事象から実数への写像として捉えている。確率分布に絶えず注意を向けて、確率分布の平均、分散、標準偏差を学び、
確率変数へ向かう。この後の二項分布などは三学年に学習する。 |
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9 |
「自由研究レポート」のこと |
清水 貞人 |
札幌大通高校 | 科目「数学基礎」の実践として、自由にテーマを選ばせ、それを研究し
A4に納めてレポートする作業を課した。生徒が選んだテーマは実に様々「銀行とサラ金の金利比較」「面積1/2のいろいろ」「5個のリンゴを切らずに
1/3と1/2に分ける話」「長さの単位」「紙笛の長さと音程が本当に比例しているか」「線対称な図形」「ありえない図形」「マジックローズキューブ」
「曲線について」「円周率を書けるところまで書いてみる」。また現代子らしく、イラストに長けているので、楽
しく、判りやすい表現が多い。討論では、「口頭発表までもっていったら良かったのではないか」との意見も出た。 |
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10 |
授業ノートから |
鈴木 邦彦 |
札幌白石高校 |
一定点から直線までの距離を求める公式の導入。直線の傾きを表す三角形
を利用した相似比を使って求める方法を実践した。討論では、「直接公式を導かず幾つかの具体例をやってから公式に入る方がいいのではないか」、「全てベク
トルの正射影でやってしまう実践をしている」などが出た。 |
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11 |
2次関数のグラフの描き方 |
平岩 恒逸 |
札幌大通高校 | 二次関数のグラフを描くためには、次の三つさえ判ればよい@上に凸か下
に凸か(x2の係数を見ろ!)A頂点の座標(p、q):y=a(x−p)2+
qに平方完成By切片(x=0を代入!) 平方完成の具体的手順について、論議。「グラフを(x、y)に対応する点の集合とするのではなく、関数値を棒グラフにすると分かりが良いのではないか」と の意見もあった。平方完成の問題に習熟するためには、(x−a)2の 型の因数分解を確りやる必要。などが出た。 |
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6月例会 2011年6月11(土),12
(日) |
富良野高校 二階会議室 |
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# | 題 名 |
掲載 |
氏 名 |
所 属 |
内 容 |
1 |
物理学科から数学教員への道 |
桶谷 真平 |
富良野高校 |
中学校時代「角を三等分せよ」との課題が出され懸命に取り組んだ、遠山
啓「数学入門」を読み、矢野健太郎「アインシュタインの不思議な世界l」にふれた経験を持ったこと。高校時代には、授業とは違う数学の奥行き、歴史的背景
を武藤徹「高校数学の基礎」で学んだこと。大学入学後専攻を数学にするか物理にするかで迷ったが、勉強しやすそうに感じた物理を選んだ。勝友との出会い。
物理数学、量子力学の学習中に使われている数学に興味が移って行ったこと。大学院は数学科への編入ではなくやはり、物理に。修士課程終了後。自宅で農業手
伝いの傍ら数学書に親しんでいた。東北大学の聴講生になり、数学教員免許を取得。渡道して高校教師に。北見に初赴任、稚内f勤務を経て、富良野に。高校
サークルから刺激を受けている。 |
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2 |
いきなりルベーグ積分ver.2 |
渡邊 勝 |
(岩見沢市) | 今回は次の三点が特徴:「基本定理の証明」を採り入れて、定義による積
分の煩瑣な計算部分を削除したこと。、スティルチェス積分の具体例に、経済問題:所得分布と消費関数が所与の時、一国の消費量を計算する:を付け加えたこ
と。ウイリアム・ダンハム「微積分名作ギャラリー」を種本にして、ニュートンからルベーグまでの積分の歴史を概観したこと。 |
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3 |
nCrとフェルマーの小定理 |
関口 隆 |
(札幌市) | [フェルマーの小定理] p:素数、aがpで割り切れない整数ならば、 ap−1≡1(mod p) 即 ち、ap≡a(mod p) を 下敷きにした問題が大学入試で出されている。例として、09年度東大理系の問題「自然数m≧2に対してm-1個の二項係数:mC1、mC2、・・・、mCm-1 を考え、これらの最大公約数をdmとする。(2)すべての自然数kに対して km−k が dm で割り切れることをkに関する数学 的帰納法で照明せよ」(解)(前略) km−k が dm で割り切れると仮定して、(k+1)m− (k+1)=(km−k)+mC1km−1mC2km−2+・・・+mCm-1k;km− k、mC1、mC2、・・・、mCm−1 は dm で割り切れるので、 (k+1)m−(k+1) も dm で割り切れる。(以下略) | |
4 |
五角数について |
成田 収 |
静内高校 |
ピュタゴラス以来の五角数に現代数学の糸口がある。高校生または一般市
民向け講座案 |
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5 |
論理・命題・集合について | 真鍋 和弘 | 札幌篠路高校 | 高校教科書では「命題」と「条件」の区別と関連が曖昧なために、生徒も
教師も困惑している。ラッセル、ホワイトヘッドによる[命題論理]を見た後、ヒルベルト、ベルナイスによる[述語論理]を参照すると、「xは日本国籍を持
つ」「yは無理数である」ような文、式を述語または条件と呼ぶ。条件は広い意味で命題である。「X>3 ならば X>1 である」は ∀X[X>3 ⇒
X>1]のことであるが、高校では∀は使わないために、混乱する。すくなくとも「全てのXについて」を必ず補足すべきである。 |
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6 |
授業「数学工房」 | 清水 貞人 | 札幌大通高校 | 科目「数学工房」設定、実践の報告。「今日からあなたもマジシャン」二
進法がタネ、「トイレットペーパーの巻数を当てよう」、「世界が消滅する日はくるか」ハノイの塔、「平和を願う千羽鶴」三角形、円形の色紙から折り出す。
「
面積が1/2のカ・タ・チ」、「六個の凹凸が表すもの」点字の原理、「億万長者になる方法」指数関数的増加、「ピタゴラスの定理の証明」、「”恋占い”に
も使
える!?」メビウスの輪、「猫を写す魔法の呪文」小沢ネコ写し行列、「紙を折って一回切るだけで・・・」と惹句も良くて、生徒諸君の好奇心をかき立てる様
子が報告された。 * 参加者一同二重メビウスの輪を切ってハート形が出来るかどうかやってみました。楽しいですね。 |
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7 |
階差数列に関する一考察 |
平岩 恒逸 |
札幌大通高校 | 階差数列bnを
用いて数列anの一般項を求める公式は an=a1+ΣbK(k=1からn−1まで)であるが、生徒にはこのΣの運用が難しい。そこで、 an+1=a1+Σbk(k=1からnまで)としてみてはどうかという試案。 |
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8 |
「確率」についてのメモ |
松本 弘文 |
札幌市内公立高校 非常勤講師 |
”概念形成の立場で「確率」の授業を作りたい”という問題意識の下に、
行われた実践の報告。『確率と言えば場合の数を数えることだ、という理解は正しくない』として授業を構成する。実験で得た相対度数は確率の「測定値」の集
まりと考える。硬貨トスによる裏表出現相対頻度を求める実験をした。さいころ振りで各目の出方を観測した。ところが、根元事象の同様に確からしい、相対度
数が多数回試行で安定するが果たして実感できただろうかという問題意識で、大数の弱法則(チェビシェフの不等式)で調べてみた。1000回程度の試行でサ
イコロ振りのある目の出方の相対度数は、確率0.9で0.129≦X/n≦0.199の範囲になる。コイントスの場合、0.49≦X/n≦0.51にする
ためには25000回程度の試行が必要である。正六面体のサイコロでなく正四面体の「サイペタ」を作って、300回それを振り、それぞれの目の出方の相対
頻度は、確率0.9で 0.2421≦X/n≦0.2579となる。 * 参加者一同サイペタで試行をしてみました。楽しいですね。 |
5月例会 2011年5月7(土) |
北海道大学 理学3号棟 |
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# | 題 名 | 掲載 | 氏 名 |
所 属 |
内 容 |
1 |
教科通信発行の勧め |
渡邊 勝 |
(岩見沢市) | 当日参加者に高校数学教師志望者が多いことを聞いて、参考になればと提
出。立命館慶高校で発行した二年分教科化通信を紹介。 その狙いは、数学の歴史、文化を紹介し、数学の「根」の部分の認識。数学者の「人間」を照射、教科書にない接近法を紹介。生徒からの質問に答える形をとっ て、疑問を喚起させること。教師と生徒との「紙面対話」をはかる。教師から「生活の知恵」、生き方の一端を示す。 |
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2 |
小学校の面積と高校の積分 |
氏家 英夫 |
白樺学園高校 |
授業プラン:小学校段階では、@面積が持つ基本性質「合同変換に於ける
保存性」「二つの図形が合同な図形に分解できれば同じ面積を持つ」を具体的な操作を通じて指導。A単位導入は、「面積を数で表す」問題設定の中で、面積の
複比例構造に基づいて行う。高校段階では、「全ての多角形をある長方形に分解合同にできる」定理を具体的操作で確認。曲線図形を多数の長方形で近似しリー
マン和を定義。その極限値としての定積分を具体的に計算する。 |
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3 |
一刀切り |
成田 収 |
静内高校 |
授業実践報告:例えば、一枚の紙に書かれた太いTの字がある。書かれて
いる紙を工夫して折って、一回だけ鋏を入れて、太いTの字を切り出す。この作業をアルファベット全部でやってみる。ただし、丸みを帯びた部分は直線で近似
する。これが「一刀切り」。「一枚の紙の上に平面グラフが与えられたとき、そのグラフの全ての頂点と辺が共通の線の上に乗り、かつそれ以外のどの部分もそ
の直線上に乗らないような紙の兵站折りを見つける」問題と同値。 *参加者一同夢中になって挑戦、暫く時の経つのを忘れてしまいました。 |
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4 |
命題の定義について |
真鍋 和弘 |
札幌篠路高校 |
単元「集合と論理」の既成教科書を批判的に検討。「命題」と「条件」を 過度に区別することで、論理単元全体の理解を妨げていると感じている。「条件」も広い意味で「命題」と扱って実践している。xについての条件p(x)、q (x)から、「p(x)⇒q(x)」という条件を作ることが出来る。これを∀x[p(x)⇒q(x)]とすれば、これは命題になる。必要十分条件の場合、 p (x)⇔q(x) とするが、教科書によっては、「全てのxについて」さえ省略していて問題だ。授業では、この点を確り確認すべきだ。 | |
5 |
北見での数学教員生活一ヶ月 |
渡辺 雄太 |
北見藤女子高校 |
2011年四月から赴任した北見藤女子高校での体験と将来の希望。 |
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6 |
Dirichletの算術級数定理について | 渡辺 雄太 | 北見藤女子高校 | ディリクレの算術級数定理「初項、公差を0でない自然数とする。初項と
公差が互いに素である等差数列には素数が無数に存在する」この定理の特別な場合に「∀(≠0)∈Nに対して、p≡1(mod n) 型の素数pは無数に存
在する」証明は円分多項式Φn(X)=Π(X−ζjn)
を使って、背理法で行う。 |
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7 |
相加平均と調和平均はお友達! |
西谷 優一 |
サイエンス塾 | 教材の開発。高校では相加平均、相乗平均に較べて影の薄い調和平均に光
を当てる。例1.凸レンズから実体までの距離をa、実像までの距離をb,、焦点までの距離をfとすると、1/a + 1/b = 1/f となるが、a=
b のとき、この距離をxとすると、、 1/a + 1/b =1/x + 1/x = 1/f これより x=2ab/(a+b) これは、a,bの調和平均。二個のバネを直列に繋ぎ一個のバ ネと見立てます。最初のバネ定数をそれぞれa,bとし、見かけのバネ定数をkとすると、1/a + 1/b = 1/k、いま、a=b=xとすると、 、1/a + 1/b =1/x + 1/x = 1/k これより、x=2ab/(a+b) これも、a,bの調和平均。 |
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8 |
素数の入り口の指導 |
林 大輔 |
小樽明峰高校 |
素数の入り口の授業実践報告:。黒板に次のカードを貼る。I、○、△、
○○、*、○△、□、○○○、△△、○* これを見て、何を表しているかを考える。1〜10の列であることを発見させる。記号が一つだけの数を素数とす
る。この後20までの数をこれらの記号で表す。さらに、1〜100までの記号による表現にも挑戦。「素数は全部でいくつあるか?次の内どれ?@100個ぐ
らいA1000個くらいBいくらでも」 リーマン予想の話まで。 |
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9 |
教員に求められることは? |
平岩 恒逸 |
札幌大通高校 |
日頃考えていることを参加者と共に考えて貰う話題提供。採用試験に合格
したと教員としてやっていくことは別で、特に後者がやりづらい時代になったと言われている。それで改めて教員という仕事を分析してみた。@人を創るA人を
指導するB組織で仕事するC経営者。 教員の仕事のやりがい@お金に換えられない。A苦労が報われたとき、感謝されたとき。B自分自身が成長したと実感した とき。教員に必要な力とは何だろうかと自問。 |
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10 |
数学工房『ピタゴラスのクイズ『 |
立花 悠 | 札幌大通高校 | 科目「数学工房」での実践紹介。正方形の折り紙に鋏を入れて「ピタゴラ
パズル」を作る。つぎに、「はとめ返し」作り、それでピタゴラスの定理を楽しむ。手作り数学の良き実践例。 |
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11 |
nCrについての等式 |
関口 隆 |
(札幌市) | 大学入試に表れたnCrについての等式を使う問題の紹介。例示多数。
[89年神奈川大] 次の等式を証明せよ。 (nC0)2+ (nC1)2+・・・ +(nCn)2=2nCn これについて3個の解法を紹介。その他12以上の問題を 紹介。 |
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12 |
くるくるジャンケン |
清水 貞人 |
札幌大通高校 | レバーを握るとグーチョキパーのいずれかがランダムに表れるオモチャ。
確率の授業に使えそう。 |
1月例会 2011年1月9日(日)、 10日(月) | 札幌 あけぼの旅館 | ||||
# | 題 名 | 掲載 | 氏 名 | 所 属 | 内 容 |
1 |
作図の利用 |
津嶋 正顕 |
おといねっぷ 美術工芸高校 |
学校の特徴から科目「図法・製図」がある。数学科では、そこにない基礎
的な作図を数学Aで扱う。垂直二等分線、角の二等分線、一点から直線へ垂線を下ろす(以上中学校での復習)、線分のn等分、三角形の重心、外接円、内接
円。「図法・製図」には、近似的な作図法である角の5等分、二円から楕円(楕円もどき)をつくるがある。 生徒に与えた課題の紹介。一辺が与えられたとき、対角線が与えられたとき、ある円に内接する五角形を作図する課題。丁寧な解説が仕様書があって、取り組み やすい。 |
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2 |
nCrは偶数か奇数か |
関口 隆 |
(札幌市) | ヴィノグラードフ「整数論入門」共立出版復刻版から、「m=2n−
1のとき mCr (0≦r<2n)
は奇数である」これの証明を紹介し、99年度東大理系の問題「m=2k 、0<n<m のとき mCn
は偶数であることを証明せよ」など、3大学の類題を解説。 「ヴィノグラード」はブドウの意味だと教えてくれました。 |
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3 |
確率についてのメモ |
松本 弘文 |
札幌市内公立高校 |
副題は「概念形成の立場で<確率>の授業を作りたい」 教科書では相対
度数が「数学的確率」に近付くと述べられているが、直ぐに場合の数の計算に終始している。これに対する批判的実践。目標は「<確率>は現実のどのような事
柄のどのような側面に着目して生まれた概念なのか?また、その概念によって、現実や、何かの事柄について、どのようなことが見えてくるのか?」 <確率>以前には、確たる法則によって予測可能性があった。偶然・ランダムとは何か?決定論(ラプラスが典型)と非決定論。 <確率>の対象:(大量×不確定)現象。導入は相対度数から、それが安定値に収束することを実感させるべきだ。「確率と言えば場合の数を数えることは正し くない」 |
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4 |
ネコ写し |
平岩 恒逸 |
札幌大通高校 |
授業実践報告:所属高では毎年「プレゼン大会」生徒が発表するのだが、
教師も公開授業の形で参加する。取り上げたのは、有名な「小沢ネコ写し」。ここで行列の有用性を体験することを目標にした。生徒は夢中になって計算に打ち
込んだ。まとめとして、パソコンで作成したCGを示した。生徒は、手計算だけでは「落ちず」CGを見て納得したとのこと。「小沢ネコ写し」のような優れた
教材を作りたいと思っている。そのために普段の学習が必要と。ただし、・・・ |
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4′ |
「連結ロケット」授業案 |
平岩 恒逸 |
札幌大通高校 | 授業案:連結している7色のクレヨンをバラバラにし、無作為に繋ぎ、こ
れをロケットに見立てる。生徒間で出来上がったロケットを比較する はたして同じ配色のものがあるだろうか。どのくらいの場合の数があるか樹形図を描く。これには、煩瑣に成りすぎるとの批判が出た。 7色全部を使わずに2色、3色、4色とより扱い易い方から接近する。次にロケットが環状になって土星の周りをまわる場面に入り、円順列をとりあげるが、こ れは欲張りすぎとの批判がでた。総じて、的を絞って、考える時間を与えるようにすべきとの意見が多数。 |
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5 |
4次元へ挑戦 |
渡邊 勝 |
(岩見沢市) 名寄市大短大部 |
名寄市立大学短期大学部での実践報告。科目「自然科学論」で数学部門を
担当している。4講の内第一講が幾何分野、そこで4次元空間の話をした。前回発表に引き続くテーマ:多次元の学史き。D.E.Smith A
Source Book in Mathematics から該当部分を翻訳し、原文になりイラストも入れて判りやすく紹介。 |
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6 |
やっぱりオイラーは凄い (三年生の授業から) |
真鍋 和弘 |
札幌篠路高校 |
高校三年生の「微分積分」で「ライプニッツ級数」1−1/3+1/5−
1/7+1/9+・・・=π/4を紹介。これを契機にオイラーがライプニッツ級数をどのように導いたかを調べた。「オイラーの等式」を使い、e2iθ=
eiθ・e−(−iθ)=eiθ/e−
iθ=(cosθ+isinθ)/(cosθ−isinθ) =(1+itanθ)/(1−itanθ)、両辺の対数をとって、θ=(1/2i)log{(1+itanθ)/(1−itanθ)} ここで tanθ =x とおくと、 θ=tan−1x =(1/2i)log{(1+ix)/(1−ix)}=tanθ−tan3θ/3 +tan5θ/5−tan7θ/7+tan9θ/9 +・・・ θ=π/4にすれば、「ライプニッツ級数」に。真鍋氏は「オイラーの数学にはどこにも無理がない。高校生でも論議をおうことができる。その特徴の一つは虚 数iの積極的しようである。オイラーは複素数の範囲で積分を考えることによって、いろいろなことが透明になることを初めて見抜いた人である。「オイラーに とっては、対数関数も三角関数も同じ一つのものに見えたに違いない」 |
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7 |
「数学工房」カーテンレールの実験 |
清水 貞人 |
札幌大通高校 | 科目「数学工房」実践報告:「あなたもガリレオ〜自然落下を考える〜」 と銘打っての一こま。200cmのカーテンレールとビー玉、空き缶、そしてメトロノームを道具にして次の設問を。@「丁度4秒後に缶に入るかどうか」A 「手放して2秒のときビー玉はどこに」B「3秒後にはどこに」<考察>「x秒後のとき、ycmのところに、xとyの関係式は?」C「手放して1秒後にはど こに」D「傾斜を急にして2秒で缶に入るようにして、手放し1秒後にビー玉はどこに」E「カーテンレールの傾斜を90°に、200cm落下の所要時間 は?」<考察>自由落下の関係式を使って、大通り高校の高さを求める。」<実験>考察の実践。 | |
8 |
整数係数多項式の因数分解から アイゼンシュタインの定理 |
成田 収 |
静内高校 |
アイゼンシュタインの定理「整数係数の多項式が、最高次の係数を除き、
すべてある素数pで割り切れるとき、もし定数項がp2で割り切れなければ、この多項式は既約であ
る」証明は、既約でなくこの多項式f(x)がf(x)=g(x)h(x)と因数分解できると仮定して導く。 |