サボテン今昔 No.9 アガベの開花
アガベの開花(1992年〜2005年の記録)
アガベの地植えを本格的に試みてから20年余りになる。
アガベ・吹上着蕾吹上A.strictaがはじめて花をつけたのは10年目くらいであった。実生苗を育てロゼットの径は80cm。株の中心に花梗が見えたかと思うとすくすくと伸び、1ヵ月くらいで高さ3mに達し、伸長は止まる。花梗の上部4分の1くらいに密生している蕾は下から上に向って順次開花して行く。花は紫褐色の雄しべが目立つ程度で華やかではない。自家受精はしないらしく種子はとれない。花が終ると花梗は次第に乾枯するが、植物体そのものはしっかりしている。そのころになると径約3cmの花梗の周囲に仔を生ずる。そのまま栽培を続ければ4〜5頭の群生株となるのだろうが、わが家では場所の関係もあって翌年1頭ずつ仔をはずし、親は捨てる。こうして育てたカキ仔は5〜6年で開花する。実生からだと10年かかったものがどうして約半分の年数で開花株になるのかよく分からないが、兎に角、開花、カキ仔、開花を繰り返して3回目の開花が見られたというわけである。
 ○ 吹上系は   A.dasylirioides ,
           A.striata,
           A.striata falcata ssp,.
            A.stricta
の4種(GENTRY:Agaves of Continentel North Americaによる)で、分布域はメキシコ中央部=コアウイラ砂漠の南からオアハカ州にかけてということになっていて、形態はよく似ている。吹上開花
わが家には別に葉が幾分細目で多少外反する個体もある。これがA.striataではなかろうかと思っているが耐寒力はやや劣る。
アガベ・開花遠景
 ○ アガベ類はひたすら生育を続け、ある時突然のように花梗を上げてくるので100年に一回花をつけ、そのあと枯れると言われているが、吹上のように身のほどを知ってささやかな花梗で済ます種類は枯死しないのである。全力をふりしぼって孟宗竹のような花梗を上げ盛大に開花する竜舌などは余力がないので死んでしまうわけだ。センベルビブム属も同じ理屈である。また開花まで、100年と言うのも疑わしい。素人の手に余る超巨大種は体験のしようがないので論じられないが、竜舌系の黒竜舌(メキシコ竜舌)が3年前に開花した。小苗を植えて25年目くらいだった。咲きかたは普通の竜舌蘭と同じ。雄大な花梗を二階の軒近くまで伸ばし、開花後大量の種子をばらまき、従容として死についた。植物には申しわけないが、持て余していたのでホッとした。こぼれダネが生えたら大変という心配も杞憂に終った。1粒も発芽しなかったのである。この黒竜舌に匹敵する大型種が後3種あるが、早く咲いてくれないかと願っている。 アガベ花
 ○ アガベ・ビルモリニアナA.vilmorinianaというものがある。白緑の美しい肌で葉縁にトゲがなく扱い易い。約30年前、アメリカのDodsonさんから入手した。わが家では大きくしないように努めているが、ロゼット径2mくらいにはなるらしい。戸外で越冬は難しいので冬は取込むのだが、生長につれて出し入れが厄介になり、棚下に放置した。数年前それが咲いたのである。推定年齢25〜26歳。棚につかえた花梗は曲がりくねって横に伸び、先のほうに20ほどの仔をつけた。 暖地の観光地で開花した竜舌系のアガベが穂先に沢山の仔をつけ、それが風に吹かれて落下する様子を見たことがあるが、タネでなくいきなり仔を生ずる場面をわが家で観察できたのは幸いであった。この仔の開花年限が吹上の場合のように短縮するかどうか興味があるが、自分で確かめるわけにはいきそうもない。
  ○ アガベに限らず大型種はとかく敬遠されがちであるが、戸外で越冬するものはこの限りでない。私の庭(ひと冬に何回かは−5℃にはなる。時にはそれ以下のことも。北風もかなり当る)で、いつも戸外にいるのは竜舌系を除いて次の各種である。吉祥天、頼光、王妃吉祥天(メリコ)、乱れ雪(大型、中型)、姫乱れ雪、滝の白糸、笹吹雪、吹上系その他若干。ロックガーデンなどを楽しまれるかたの参考になれば幸いである。               

★  あれから丁度10年。再度、大型アガベの開花に立ち会う日が巡って来た。2005年7月半ば、寿令43年のアガベ・アトロビレンスA.Atrovirensは猛暑の中、花梗を伸ばせるだけ伸ばして開花の最盛期を迎えている。  開花の兆しに気づいたのは昨年の11月15日、花梗は長さ約90cm、太さ13cm。その後低温にも拘らず、花梗の地上高は12月5日で4m。翌2005年4月30日には4m50cmに達した。以後の経過は写真をご覧願いたい。6月20日になると花梗を取り巻いて新たに発生した新葉が伸び上がり、結果として花梗の太さは20cmにもなった。花梗の肥大の影響は目に見えて葉の外見に表われた。開花まではがっしりと巨体を形成していた幅広で肉厚の葉のつけ根に異様な皺が生じたのである。それまで斜上していた葉の10枚近くが水平状態に姿を変えた。当然ながら人間の通行の邪魔になる。一念発起して10枚の巨大葉を切り捨て廃棄する羽目に(7月16日の写真)。いづれ、開花後本体は枯死する運命にある。そうなれば否応なしに片付け作業に取りかからねばならないが、今から思いやられる。
  

アガベの開花状況
2004年末〜2005年7月

開花1 開花2 開花3
開花4 開花5 開花7

最近の人気種(斑入り小型アガベ2種)
アガベ・ピンキー 王妃雷神錦
Agave filifera compacta
‘Pinky’
Agave potatorum compacta var.
王妃雷神錦

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