2020ヨットレース

2020別府ゆけむりシルバーカップヨットレース

2020.10.24(土)

新体制での別府ゆけむりレースが開催されることになりました。
今年はないだろうと思っていただけに非常に嬉しく思います。
レースがあるとなったら気合を入れて、少しづつですが「ホワイトホーク」の整備を進め、一週間前には潜って船底掃除もしました。
高知と長崎から頼りになる先輩方が応援に来てくださることも決定し、良いメンバーと良いコンデションでレースに挑めます。

別府へ回航のため、土曜日の朝宇和島を出港しました。
前日から寒気が流れ込み海上の時化は続いています。
悪いことに別府へ向かうには真正面から強い波と風を受けることになり難航することは間違いありません。
覚悟を決めて海に出ましたが、予想どおり強い風で海面は一面の白波。
安全のためライフハーネスを着用し、デッキにはジャックラインを這わせました。
入江の真珠いかだ群を抜け、広い海域に出たところでメインセイルを3ポイントにリーフしてアップ。
すでに高い波が立ち、まっすぐ走ることが出来ません。
メインセイルに少しだけ風を入れ、タックしながら間切って走ります。

 

 


風速は27〜28ノット。
たまに20ノットぐらいまで落ちるとホッとします。
目が開けられないほど海水を浴び続け、5時間かけてやっと佐田岬灯台にたどり着きました。
速吸瀬戸は順潮で抜けられますが、潮と風が逆のため強烈な潮波に揉まれます。
別府湾に入っても風は収まらず、10時間かかってようやく別府に到着しました。

しんどい回航でしたが、レース前夜祭で良い肉をいっぱい食べさせてもらって元気になりました。
明日のレースは風も収まりそう。
さて、どんなレースになるのか?

 

 

2020.10.25(日)

出艇受付を済ませ、艇長会議。
今回はスタートの混雑を避けるためCクラスとSクラスにグループ分けし10分ずらしてスタートするそうです。
成績はクラスに関係なく、各艇の所要時間に応じて順位を決定するのだとか。
昨日までの強い風はなくなり海面は穏やかです。
地元のベテランセイラーが「今日は風がなくなる」と言っていました。

 

09:30、Cクラスがスタート。
弱いながらもまずまずの風が吹いています。

スタートラインが偏って設定されており、本部船側が有利なエンドになることに少し危機感を覚えました。
本部船側が混雑することは間違いありません。

「さて、どうする? 混雑を避けて空いたところから出るか、それとも攻めるか。」
答えはすぐに出ました。
予想に反して場所取りは簡単。有利なエンドの下側はガラガラでカミイチを狙えます。

ちょっと気になったのは我々の風上に5隻ほどがアビームで突っ込んできていること。
「まさか無理やり割り込んでくるようなことはないだろう・・・」と思った瞬間に「シモーーー!!シモーーーー!!」と叫んでいました。
我々の後ろを回ろうとする意志は全くないようで、風上の艇団はさらにバウアップして強引に我々と本部艇の間に突っ込んできます。
「入れないぞーーーー!」さらに声は大きくなります。
『危ないっ!!』
とっさに舵を切って避航。

ついムカッ!!ときて汚い言葉を投げつけてやろうかと思いましたが堪えました。
今まで別府や佐伯のレースに何度も出場していますが、こういうケースがしょっちゅう起こり、その度にヒヤヒヤし不愉快な思いをします。
今回の艇長会議では基本的なヨットレースのルール解説、スタート時やマーク回航時の注意事項についての説明がありました。
おそらくレース委員会もこういう危険なケースが多発していたことを危惧して説明してくださり、レースに不慣れな艇が多く参加するためスタートのクラス分けをしたのだと思います。
しかしながら、また今回もこんなことになってしまいとても残念に思いました。
所詮お遊びのクラブレースなので目くじらを立てて邪魔されたことに腹を立てるわけではありませんが、ルールを守らないと必ず事故は起こります。
事故が起これば楽しいはずのヨットレースが台無しです。
ルールを守ることはシーマンにとってのマナー。他人に迷惑をかけて良い成績をあげたところで、ちっとも嬉しくはありません。
是非ともフェアーな精神でレースを戦っていただきたいと思います。

 

さて、スタートの危機を回避し落ち着きを取り戻してレースに集中です。
なんと言っても、一番良い位置からスタートしトップを快走しています。

しばらくすると10分前にスタートしたCクラス艇にも追いつき始めますが、第一マーク手前でCクラスの先頭艇団が苦しんでいるのが見えます。
海面はギラギラしていて風が止んでいる。
せっかくトップをキープしてアプローチしていたのに第一マーク手前でストップ。
後ろから来た艇に完全に追いつかれ、アドバンテージを失ってしまいました。

その後はほぼ全艇ストップし膠着状態でしたが、マーク手前まで来ていたCクラス艇が動き出しました。
我々のところまで風が来た時には順位はかなり入れ替わりましたが、マークを回航しスピンアップ。

風が弱いため角度よりスピードを落とさないようVMGを意識してどんどん上らせます。
「何度かジャイブが必要だろうねぇ」とコクピットではジャイブのタイミングをうかがっていましたが、我が艇のタクティシャンは地形からして陸に近づくと風は前にシフトするだろうと読んでいました。
それがバッチリ当りノージャイブで第2マークを回航することが出来ました。
さすがは大先輩の経験。私には全く読めませんでした。

 

引き離されてはならない「ユリカゴン」(J/V9.6CR)と「小春」(CAPE35)は我々の少し前にいます。
そして、決してリードを許してはならない同レーティング艇の「薫風」(SWING31)や「Daisy」(YAMAHA31S)は少し引き離しました。
第2マーク回航後は完全なクローズホールドで陸岸に近い分かなり風が触れ回ります。
次のマークでコース短縮になる可能性もあり、気を緩めることなく現状で最高のパフォーマンスを維持すれば優勝の可能性もあります。
ただし、当初の予定どおり最後のソーセージを回ることになれば、前を行く2艇にリードを広げられ、逃げ切られる可能性もあります。
もちろん、同じレーティングの他艇にリードを許せばその時点で終わり。

前を行く2艇の状況を見ていると「ユリカゴン」が最初にマーク回航し、セイリングを続行している様子を見ればコース短縮はなさそうです。
「ちょっとヤバいね」

 

「ホワイトホーク」は3番手でマーク回航し、最初に回った第1マークを回って帰ってくる最後のソーセージのレグに入ります。
レーティング上位の前を行く2艇にはちょっと厳しいぐらいの差をつけられましたが、後続との差は明らかに広げています。
つまり、3位を独走中。

嫌な予感がしていましたが、最終マークを手前に先の2艇が止まっています。
チャンスではありますが我々も同じ運命をたどることになるためピンチでもあります。
「あらららら〜〜〜」
やっぱり完全にストップしました。

3隻がもがきながら風を探している中で後続艇団はまだ走っていて近づいてきます。
なんとかかんとか「小春」と「ユリカゴン」が最終マークを回った頃、西と北に軽い風の筋、東に少し濃いめのブローが出現しました。
どの風でもいいから早く我々のところに届いてくれ!!
そよそよそよ〜〜〜っと吹き出したのは東海面からのブローでした。
「よし、これで行ける」
「小春」、「ユリカゴン」と「ホワイトホーク」との差は縮まりました。
しかも風は全く反対方向にシフトし最終レグが上りになったため、そんなに引き離されることはないでしょう。
後続艇はストップすることなく最終マークを回航することができるでしょうが、もはや追いつかれる心配はなし。

ファーストフィニッシュは「小春」でした。
2着は「ユリカゴン」。それから遅れること約3分で「ホワイトホーク」がフィニッシュしました。

レーティングを考慮すると計算するまでもなく完全な勝利です。
問題は後続艇ですが気になるのはCクラスの「SACHII-V」(バンドフェット30+PB)ぐらいか?
計算するとフィニッシュタイムで10分引き離していれば十分なので、それを見届けてからハーバーへ戻ります。
昨年と一昨年は台風のためレースは中止になりましたが、2016年と2017年は「ホワイトホーク」が優勝しています。
3年ぶりに開催された今回も優勝はほぼ確実で3連覇を祝して乾杯!!

 

表彰式は17時からですが、手ごたえ十分の時は楽しみでしょうがありません。
表彰式が始まり、
優勝は「LONGLONG」・・・
「はぁ?」ズッコケそうでしたが嘘ではなさそうです。
2位は「海言」・・・
やられたぁ、レーティングで小型艇にひっくり返されています。
3位「ホワイトホーク」
良かったぁ!!何とか踏みとどまったぁ。

 

今回のレースで優勝を逃したのは残念でしたが、それ以上に良い思い出を作ることができてハッピーです。
レースは時の運。こういうこともあります。
このレースを参考に、来シーズンはすべてのヨットレースが再開することを願っています。