アルコールに関してお困りの方



 アルコール依存症の患者は、アルコールによって自らの身体を壊してしまうのを始め、家族に迷惑をかけたり、様々な事件や事故・問題を引き起こしたりして社会的・人間的信用を失ったりすることがある。症状が進行すると身体とともに精神にも異常を来たす深刻な疾患。
 以前はアル中とも呼ばれていたが、現在では通常患者を侮蔑したり患者自身が自己卑下してつかう差別的表現であるとみなされている。かつては、このような状態になってしまうのは本人の意志が弱く、道徳観念や人間性が欠けているからだと考えられてきたが、最近では医学的見地から精神疾患の一つとして考えられるようになっている。飲酒が自分の意志でコントロールできなくなる症状を精神的依存、震顫妄想などの退薬症状を身体的依存と言い、アルコール依存に限らず他の様々な薬物依存症も同じような特徴を持っている。 日本のアルコール依存症の患者は230万人程度であると言われている。飲酒者の26人に1人がアルコール依存症という計算になり、精神疾患の中でも罹患率が高く、各人の性格や意志にかかわらず誰でもかかる可能性がある病気であるとも言える。
 

<アルコール依存症の症状>
○自分の意志で飲酒のコントロールが出来なくなる。
 アルコール依存症の人も、何とかして適量のアルコールで済ませておこうとか、あるいは今日は飲まずにいようかと考えていることが多い。過剰な飲酒がもたらすさまざまな有害な結果を知っているにもかかわらず、飲み始めると自分の意志では止まらなくなって酩酊するまで飲んでしまう。このような飲酒状態を「強迫的飲酒」という。
○目が覚めている間、常にアルコールに対する強い渇望感が生じる。
 強迫的飲酒が進んでくると常にアルコールに酔った状態・体内にアルコールがある状態にならないと気がすまなくなったり、調子が出ないと思うようになったりして、目が覚めている間は飲んではいけない時であろうとずっと飲酒を続けるという「連続飲酒発作」がしばしば起こることがある。さらに症状が進むと身体的限界が来るまで常に「連続飲酒」を続けるようになり、体がアルコールを受け付けなくなるとしばらく断酒し、回復するとまた連続飲酒を続ける。ここまで症状が進むとかなりの重度である。
○飲酒で様々なトラブルを起こし後で激しく後悔するも、それを忘れようとまた飲酒を続ける。
 飲酒量が極端に増えると、やがて自分の体を壊したり、社会的・経済的問題を引き起こしたり、家族とのトラブルを起こすようになったりする。それでさらにストレスを感じたり、激しく後悔したりするものの、その精神的苦痛を和らげようとまたさらに飲酒を繰り返す。
○退薬・禁断症状が出る。
 アルコール摂取を中断した際、様々な症状が生じる。軽いものであれば、頭痛、不眠、イライラ感、発汗、手指や全身のふるえ(振戦)、めまい、吐き気などがあるが、重度になってくると「誰かに狙われている」といった妄想や幻覚・幻聴を伴った振戦せん妄、けいれん発作なども起こるようになる。患者にとってこれらは苦痛である為、それから逃れる為に飲酒をすることになる。


<アルコール依存症の治療>
 アルコール依存症の治療でまず大事なのが、「本人の認識」である。多くのケースでは、アルコール依存症の患者は自分がアルコール依存症であることを認めたがらない。何よりもまず、本人に疾患の自覚と治療の意思を持たせることが大切である。アルコール依存症の人の過剰な飲酒は、意志が弱いから・道徳感が低いからと言われたり、不幸な心理的・社会的問題が原因であると考えられがちだが実際はそうではなく、多くの場合この病気の結果であることが多い。つまり、アルコールによって病的な変化が身体や精神に生じ、そのために過剰な飲酒行動が起こるということである。このことをまず本人や周囲の者が理解し、認めることが、この病気から回復する上での欠かせない第一歩となる。
 ただ、一度アルコール依存症になってしまうと治療は難しく、根本的な治療法といえるものは現在のところ、断酒しかない。しかし本人の意志だけでは解決することが難しい為、周囲の理解や協力が求められる。重度の場合は入院治療が必要な場合もある。但しそれでも完治する事はなく、断酒をして何年・十何年と長期間経過した後でも、たった一口酒を飲んだだけでも早かれ遅かれ、また以前の状態に逆戻りしてしまう。そのため、治療によって回復した場合であっても、アルコール依存症者が一生涯断酒を続ける事は大変な困難を要する。

<医療機関への受診>
 以上のように、本人の認識が非常に重要となってくるアルコール依存症であるため、医療機関への受診もスムーズに行かないケースが非常に多い。そこで医療機関への受診には次のようなことを考慮しなければならない。
@本人が酒を辞めたいという意思がある
Aアルコール専門病棟及びプログラムのある精神科出なければ受け入れてが難しい場合が多い
 しかしながら、アルコールを摂取して暴れている家族から受ける弊害は非常に大きい。また、本人を無理やり病院に連れて行ったところで、アルコール依存症が困難な精神科やベットが満床のため受け入れが出来ない医療機関もある。このようなケースでは、家族関係の悪化や、受け入れ先がなくやむを得ず自宅に連れ帰った場合の対応など大きなトラブルとなる場合も多い。そのため、保健所の酒害相談や精神科病院のケースワーカーに事前に受診の相談をすることも望ましいだろう。
 最終的な手段として、警察官通報(精神保健福祉法第24条:通称24条通報)という方法もある。精神障害のため、自傷他害の危険性がある場合には、警察官から保健所の通報により都道府県の権限で入院になることもある。あくまでこれは最終手段であるが、命の危険が迫っている場合には考慮すべきである。







あなたは 人目の訪問者です。