精神障害者保健福祉手帳の顔写真貼り付けについて

 
<事例>
 40代男性、長期入院患者。前回の更新までは顔写真が不要だったため、障害年金の証書の写し等で家族が更新手続きをしていた。しかし、この度、更新時には顔写真が必要ということもあり、家族が入院病棟で顔写真の撮影を行なおうとしたところ、いきなり暴れだしてしまった。
 

<顔写真の貼り付けについて>
 障害者自立支援法の施行に伴い、三障害者(身体・知的・精神の各障害者)に関する福祉サービスなどの一元化が進んでいるが、わが国では障害者への各種サービスの対象者を明確にするため、障害の種類に応じて、身体障害者手帳、療育手帳(知的障害者)、精神障害者保健福祉手帳の3種類を発行してきた。このうち、精神障害者保健福祉手帳については、プライバシーや人権への配慮などの理由から、手帳への顔写真の貼付を義務づけられていなかった。
 しかし、その一方で、公共交通機関を利用する際の運賃割引制度など、身体障害者や知的障害者には適用されるのに、精神障害者には適用されない優遇措置やサービスを生み出し、長い間にわたり関係者から改善を求める意見が出されていた。このため厚生労働省では、身体障害者手帳、療育手帳と同じように、精神障害者保健福祉手帳にも顔写真を貼付することとし、施行規則の見直しを検討してきた。原則は平成18年10月から…ということであったが、各都道府県の足並みは揃わず、顔写真の貼り付け開始時期はバラバラとなっていた。


<顔写真貼り付けによるメリット>
 先述したように、身体障害者手帳や療育手帳とのサービス格差是正という意味で顔写真の貼り付けを義務化する方向となったものの、実際にどういったサービスが利用可能かということになると写真貼り付けのメリットは見えてきていない。
 しかし、今後は公共交通機関の割引などの制度導入が現実的になるように思われる。


<顔写真貼り付けによる弊害>
 今までは顔写真が貼り付けられていなかったため、比較的容易に申請ができていたものの、新規申請や更新時に写真が必要ということになると、長期入院中の患者、家族が遠方に住んでいる、家族が高齢であるという場合には写真1枚の撮影ですら大きな困難を伴う。病院側が代行を行なうにしても、病床数が500近くもあった場合には、他業務が滞ってしまうこともあり、なかなか引き受けにくい。
 まして、今回の事例のように、患者に刺激となってしまい暴れてしまうことも予想される。入院中の患者にとって顔写真貼り付けのメリットは皆無に等しいのである。


<このケースにおける対応>
 病棟の看護師協力の元、撮影を行なうこととなったが、このようなケースが次々と予想されるだけに、今後何かしらの対策を考えなければならないだろう。。
 

<最後に>
 行政の考えることは現場の状況は網羅されていない?そう感じた今日この頃でした。




(2007年2月作成)

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