○パターナリズム paternalism

 パターナリズム(父権主義、 温情主義)とは、 言葉どおりには、 「父親が自分の子供に対してするような仕方で、 ある人に対してふるまうこと」 を指す。 医療においては、 患者に対して、その人のためになるとして医師(又は、その他の患者以外の人々)の裁量で処置をすることを指すことになる。これはもちろん患者のインフォームドコンセントを得ずに処置することを意味する。医療におけるインフォームド・コンセントとは、「十分な説明を受けた上での同意」すなわち患者が医師からその医療方針について十分な説明を受け、十分な情報を与えられて納得した上で一つ一つの治療行為ないし処置を受け入れる決定を自分で下し、同意することである。医師はこの同意なしには当該処置を行ってはならないというのがインフォームドコンセントが原則である。 パターナリズムとインフォームドコンセントとは共に 「患者の利益」 という医療の基本を守ろうとする点では同じである。 では、 なぜこの同じ基本から異なる二つの立場が生まれてしまうのか。 それぞれの立場が言わんとするポイントは何か。そして、この二つの立場を合わせ見た上で、医療システムはどのようなものであるべきかは今後の課題であろう。




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