○地域福祉計画策定への協力ならびに地域福祉活動計画推進における社会福祉協議会の取り組み方針 


1.地域福祉計画および地域福祉活動計画の一体的策定の意味
本年4月1日より、地域福祉計画に関する社会福祉法の規定が施行された。この社会福祉法制定に伴い、今後の社会福祉の基本理念の一つとして「地域福祉の推進」が掲げられ、その方法 として「地域福祉計画」が市町村の行政計画に位置づけられた意義は大きい。これは、社協設立以来進めてきた地域福祉(活動)計画の取り組みが法定化され、住民参加を基調に自治体の責任としての計画づくりが着実に進められることとなるからである。市町村地域福祉計画は、地域福祉推進の主体である住民等の参加を得て地域の要支援者の生活上の解決すべき課題とそれに対応する必要なサービスの内容や量、その現状を明らかにし、かつ、確保し提供する体制を計画的に整備することを内容とする行政計画である。一方、市区町村社協を中心に取り組んできた地域福祉活動計画は、地域住民や各種団体が主体的に策定する民間の活動・行動計画である。2つの計画は、ともに地域住民等の参加を得て策定されるものであり、当該市町村における地域福祉の推進を目的として互いに補完・補強しあう関係にある。このため、市町村自治体と市区町村社協の協働による計画づくりが重要となる。このため、社会福祉法における市町村地域福祉計画に係る規定の施行を契機に、行政と社協の協働による計画づくりを一歩進め、計画策定過程やその内容を一部共有化するなど、市町村自治体と市区町村社協による市町村地域福祉計画および地域福祉活動計画の一体的策定を提案したい。

2.市町村地域福祉計画および地域福祉活動計画の関係
元来、市区町村社協は住民の参加や公私協働により、地域の福祉課題の把握・明確化、課題解決のための計画の策定、計画の実施、評価といった一連のプロセスにより活動を行うなど、地域福祉(活動)計画の策定を市区町村社協の基本機能に位置づけてきた。全社協では、平成4年にまとめた「地域福祉活動計画策定の手引」において、市町村自治体の策定するものを「地域福祉計画」、市区町村社協が中心となり、住民等の活動・行動を計画化したものを「地域福祉活動計画」として整理した。そこでは、地域福祉計画は公的なサービス、およびそれと住民等による福祉活動との連結による総合的なサービスを内容とし、地域福祉活動計画は住民等による福祉活動、および地域福祉計画の実現を支援するための活動を内容とした。このうち特に住民等による福祉活動自体は地域福祉活動計画に盛り込むこととし、当該福祉活動に対する行政による支援は地域福祉計画に盛り込むよう整理している。今回の地域福祉計画に関する社会福祉法の規定の特徴は、地域福祉計画の策定過程に住民の意見を反映させるために必要な措置を講ずること=「住民参加」を強調したこととならんで、その内容に、地域福祉活動に関する活動への住民の参加の促進に関する事項を盛り込んだ点にある。さらに、策定過程で合意された場合には、住民等による福祉活動自体も市町村地域福祉計画に盛り込むことも想定されている。したがって、計画作りのプロセスや計画に盛り込まれる事項について、これまで以上に共通するものが増えることから、そのプロセスおよび地域福祉推進の基本理念等を共有化するなど、地域福祉計画および地域福祉活動計画の一体的策定が重要となる。計画の取りまとめにあたっては、地域福祉を総合的かつ計画的に推進するための行政計画としての市町村地域福祉計画の性格と、地域住民や福祉活動を行う団体等が「地域福祉の担い手」として主体的に策定する民間の活動・行動計画である地域福祉活動計画の性格を考慮し、最終的にそれぞれの計画を市町村自治体あるいは住民(社協)の責任で取りまとめることが原則であるが、2つの計画を一本化した「地域福祉推進計画」としての策定が最終的に合意されるのであれば、必ずしもそれぞれの計画を分離する必要はない。

3.市町村地域福祉計画および地域福祉活動計画の一体的策定の方法
(1)基本的考え方
地域福祉計画は、その策定を通じて「住民参加」と「福祉の総合化」の推進を図るものであり、市町村における地域福祉を具体化するために不可欠なものである。地域福祉を推進する団体として社会福祉法に明確に位置づけられた市区町村社協は、その使命として市町村地域福祉計画策定に協力するとともに、これにあわせ地域福祉活動計画を策定することが必要である。なお、既に地域福祉活動計画を策定している市区町村社協にあっても、社会福祉法の施行、市町村合併の進捗に伴って、地域福祉活動計画を見直す必要がある。市区町村社協は、元来、地域住民主体を旨とした地域住民参加の推進やボランティア、福祉教育、まちづくり等の実績を有している。また、市区町村社協においては、問題析出・ニーズ把握のための調査活動、住民の合意を促進する集団討議・委員会の組織運営の技法、情報提供・福祉教育の技法等コミュニティワークの専門性を活かした計画づくりを進めている。このため、市町村地域福祉計画策定への協力にあたっては、これまで市区町村社協が培ってきた地域住民の参加の推進等の実績やコミュニティワークの専門性を活かして取り組むこととなる。
(2)一体的策定の具体的方法
市町村地域福祉計画および地域福祉活動計画の一体的策定にあたっては、各地域の状況に応じ具体的に以下を組み合わせて進めることが考えられる。
 @ 計画策定に係る住民懇談会やワークショップ、各種調査等を共同実施する
 ・市区町村社協が実績を有する住民参加の機能を活用し、住民の主体的参画のために設けられる懇談会、交流会等を共同して開催することにより、効果的、効率的に住民等の意見を集約
  する。
 ・住民ニーズの把握のために実施する各種調査を共同実施し、より効果的、効率的にニーズ把握する。
 A 合同事務局を設置し、社協はその事務局機能を担う
 ・市町村自治体と市区町村社協が協働して計画を策定するために互いに職員を出し合い合同事務局を設置する。
 ・2つの計画策定に係る業務をすすめるために、社協は事務局機能を積極的に担う。
 B 市町村地域福祉計画および地域福祉活動計画を同じ委員会で検討する
 ・市町村地域福祉計画策定および地域福祉活動計画を策定するにあたって、策定委員会を一本化し、同じ委員会のなかで両計画の内容を検討する。必要に応じて、小委員会を開催する。
 C 市町村地域福祉計画および地域福祉活動計画を一体化した計画案を作成する
 ・市町村における地域福祉の総合的推進のため、「市町村地域福祉計画」および「地域福祉活動計画」を一体化した「地域福祉推進計画案」を策定する。
 ・それをもとに市町村自治体は、行政計画としての「市町村地域福祉計画」を市区町村社協は、住民等の活動計画としての「地域福祉活動計画」を策定する。

4.市町村合併と計画づくりの必要性
市町村合併が進展する中、市町村が合併前に地域福祉計画を策定することに必ずしも積極的でない場合も多い。これは地域福祉活動計画を中心的に策定する市区町村社協においても同様である。しかし、市町村合併は新しい地域づくりともいえるものであり、地域に密着した福祉サービスや住民参加の福祉活動などを空洞化させないためにも合併前に市町村地域福祉計画や地域福祉活動計画策定作業をすすめておくことが有効である。計画策定を通じ地域住民の合併後の期待や不安をきめ細かく把握し、対応策を事前に検討していくことが、合併後の地域づくり、地域福祉の推進につながるものと考える。


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