2005年介護保険法改正ポイント



 2005(平成17)年6月29 日に「介護保険法等の一部を改正する法律」が公布された。改正の注目すべき点を示したが、施行はそれぞれの文末にあるように段階的であり、具体化される通知等もまだ出ていないものがあるので注意を要する。

<POINT1>
 2005(平成17)年の改正によって、介護保険法の目的に要介護状態となった高齢者等の「尊厳の保持」を明確化する趣旨が盛り込まれた(2006(平成18)年4月1日施行)。
 改正の中心は、
1 予防重視型システムへの転換
2 利用者負担の見直し
3 新たなサービス体系の確立
4 サービスの質の確保・向上
5 制度運営・保険料の見直し
である。

<POINT2>
 介護保険法において用いられている「痴呆」という用語が見直され、併せて老人福祉法の改正も行われ、「認知症対応型老人共同生活援助事業」となった。また、「認知症の状態」に関して、「要介護者であって、脳血管疾患、アルツハイマー病その他の要因に基づく脳の器質的な変化により日常生活に支障が生じる程度にまで記憶機能及びその他の認知機能が低下した状態(以下「認知症」という。)であるもの(その者の認知症の原因となる疾患が急性の状態にある者を除く。)」として、具体的な内容となった(2005(平成17)年6月29 日施行)。

<POINT3>
 介護保険施設等における食事の提供に要した費用および居住等に要した費用について、施設介護サービス費等の対象としないこととなり、ホテルコストに係る費用について利用者が負担することとなった。その際、所得の状況その他の事情をしん酌して厚生労働大臣が定めるものに対し、特定入所者介護サービス費などを支給することとなった(2005(平成17)年10 月1日施行)。

<POINT4>
 第2 条の保険給付に関し、「要介護状態」と「要介護状態となるおそれがある状態」から、「要介護状態」と「要支援状態」に改められ、新たに「要支援状態」の定義がなされた。それによると、常時介護を要する状態の軽減もしくは悪化の防止に特に資する支援を要する状態または身体上もしくは精神上の障害があるために一定期間日常生活を営むのに支障があると見込まれる状態とすることとされ、要介護状態以外の状態を指す(2006(平成18)年4月1日施行)。

<POINT5>
 新たに「介護予防サービス」が設けられた。「介護予防サービス」とは、介護予防訪問介護、介護予防訪問入浴介護、介護予防訪問看護、介護予防訪問リハビリテーション、介護予防居宅療養管理指導、介護予防通所介護、介護予防通所リハビリテーション、介護予防短期入所生活介護、介護予防短期入所療養介護、介護予防特定施設入居者生活介護、介護予防福祉用具貸与および特定介護予防福祉用具販売とするとし、市町村は、居宅要支援被保険者が指定介護予防サービス事業者から介護予防サービスを受けたときは、介護予防サービス費を支給することとなった。なお、この指定介護予防サービス事業者の指定は、申請により事業所ごとに都道府県知事が行う(2006(平成18)年4月1日施行)。

<POINT6>
 新たに「地域密着型介護予防サービス」が設けられた。「地域密着型介護予防サービス」とは、介護予防認知症対応型通所介護、介護予防小規模多機能型居宅介護および介護予防認知症対応型共同生活介護とするとし、市町村は、居宅要支援被保険者が指定地域密着型介護予防サービス事業者から地域密着型介護予防サービスを受けたときは、地域密着型介護予防サービス費を支給することとなった。なお、この指定地域密着型介護予防サービス事業者の指定は、申請により、事業所ごとに市町村長が行い、その市町村内で効力を有する(2006(平成18)年4月1日施行)。

<POINT7>
 新たに「介護予防支援」が設けられた。
 「介護予防支援」とは、居宅要支援者が介護予防サービス等の適切な利用等をすることができるよう、地域包括支援センターの職員のうち厚生労働省令で定める者が、利用する介護予防サービス等の種類および内容、担当者等を定めた計画を作成するとともに、介護予防サービス等の提供が確保されるよう、介護予防サービス事業者等との連絡調整等を行うこととすることとなった。また、市町村は、居宅要支援被保険者が指定介護予防支援事業者から介護予防支援を受けたときは、介護予防サービス計画費を支給することとなった。この指定介護予防支援事業者の指定は、地域包括支援センターの設置者の申請により、介護予防支援事業を行う事業所ごとに市町村長が行うこととなった(2006(平成18)年4月1日施行)。

<POINT8>
 新たに「地域密着型サービス」が設けられた。「地域密着型サービス」とは、夜間対応型訪問介護、認知症対応型通所介護、小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護および地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護とするとし、市町村は、要介護被保険者が指定地域密着型サービス事業者から地域密着型サービスを受けたときは、地域密着型介護サービス費を支給することとなった。なお、この指定地域密着型サービス事業者の指定は、申請により、事業所ごとに市町村長が行い、その市町村内で効力を有する(2006(平成18)年4月1日施行)。

<POINT9>
 新たに「指定市町村事務受託法人」の制度が設けられた。
 市町村は、要介護認定調査等の実施等の事務について、当該事務を適正に実施することができると認められるものとして都道府県知事が指定する指定市町村事務受託法人に委託することができることとなった。そして、要介護認定等における認定調査について、指定市町村事務受託法人に委託することができることとし、更新認定等の場合は指定居宅介護支援事業者等であって厚生労働省令で定めるもの等に委託できることとした。法人の役員または職員に秘密保持義務等が規定されている。なお、申請者の入所している施設・事業者等への委託は禁止され、原則として市町村が行う(2006(平成18)年4月1日施行)。

<POINT10>
 介護支援専門員の登録、介護支援専門員証の交付等についての規定が設けられ、秘密保持義務等が課され、名義貸しの禁止、5 年ごとの更新、登録の消除の規定も設けられた(2006(平成18)年4月1日施行)。

<POINT11>
 指定居宅サービス事業者等の指定等について、欠格要件を追加し、更新制、指定の取消し、介護サービス情報の公表などの規定が設けられた(2006(平成18)年4月1日施行)。

<POINT12>
 都道府県知事は、介護保険施設等の指定等をしようとするときは、関係市町村に対し意見を求めることとなった。そして、市町村長は、指定居宅サービス事業者等に対し立入検査等を行うことができることとなった。また、都道府県知事の勧告、命令等の権限を定めている(2006(平成18)年4月1日施行)。



<POINT13>
 新たに「地域支援事業」が行われることとなった。市町村は、被保険者が要介護状態等となることを予防するとともに、要介護状態等となった場合においても、可能な限り、地域において自立した日常生活を営むことができるよう支援するため、介護予防事業、包括的支援事業(介護予防マネジメント事業、総合相談・支援事業および包括的・継続的マネジメント支援事業をいう)その他の地域支援事業を行う。利用者に利用料を請求できるとともに、老人介護支援センター等に事業の委託ができる(2006(平成18)年4月1日施行)。


<POINT14>
 新たに「地域包括支援センター」が設けられることとなった。
 地域包括支援センターは、包括的支援事業その他厚生労働省令で定める事業を実施し、地域住民の心身の健康の保持および生活の安定のために必要な援助を行うことにより、その保健医療の向上および福祉の増進を包括的に支援することを目的とする施設である。市町村および老人介護支援センターの設置者など市町村から包括的支援事業の実施の委託を受けた者は、地域包括支援センターを設置することができる。同センターは、要介護認定等の申請に関する手続きを代行できる。なお、職員等に守秘義務が課されている。センターでは、@総合的な相談窓口、A介護予防マネジメント、B包括的・継続的マネジメント、といった援助を行う(2006(平成18)年4月1日施行)。

<POINT15>
 市町村は、市町村介護保険事業計画において、当該市町村が定める日常生活圏域ごとの介護給付等対象サービスの種類ごとの量の見込み、地域支援事業の量見込みその他の事項を定めることとなった(2006(平成18)年4月1日施行)。

<POINT16>
 介護給付の種類に、「特定入所者介護サービス費の支給」「特例特定入所者介護サービス費の支給」(2005(平成17)年10 月1日施行)「地域密着型介護サービス費の支給」「特例地域密着型介護サービス費の支給」(2006(平成18)年4月1日施行)の四つが新たに加わった。

<POINT17>
 予防給付の種類は、介護予防サービス費の支給、特例介護予防サービス費の支給、地域密着型介護予防サービス費の支給、特例地域密着型介護予防サービス費の支給、介護予防福祉用具購入費の支給、介護予防住宅改修費の支給、介護予防サービス計画費の支給、特例介護予防サービス計画費の支給、高額介護予防サービス費の支給、特定入所者介護予防サービス費の支給、特例特定入所者介護予防サービス費の支給の11 種類となった(2006(平成18)年4月1日施行)。

<POINT18>
 特定入所者介護サービス費は、市町村が、要介護被保険者のうち所得の状況その他の事情をしん酌して厚生労働省令で定めるものが、次に掲げる指定施設サービス等、指定地域密着型サービスまたは指定居宅サービス(以下「特定介護サービス」という)を受けたときに、当該要介護被保険者(以下「特定入所者」という)に対し、当該特定介護サービスを行う介護保険施設、指定地域密着型サービス事業者または指定居宅サービス事業者(以下「特定介護保険施設等」という)における食事の提供に要した費用および居住または滞在(以下「居住等」という)に要した費用について、特定入所者介護サービス費を支給される。ただし、当該特定入所者が、介護給付等対象サービスの種類の指定を受けている場合において、当該指定に係る種類以外の特定介護サービスを受けたときは、この限りでない。
一 指定介護福祉施設サービス
二 介護保健施設サービス
三 指定介護療養施設サービス
四 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
五 短期入所生活介護
六 短期入所療養介護
(2005(平成17)年10 月1日施行。一部2006(平成18)年4月1日施行)

<POINT19>
 特例特定入所者介護サービス費の支給は、市町村が、次に掲げる場合に、特定入所者に対し、特例特定入所者介護サービス費を支給される。
一 特定入所者が、当該要介護認定の効力が生じた日前に、緊急その他やむを得ない理由により特定介護サービスを受けた場合において、必要があると認めるとき。
二 その他政令で定めるとき。(2005(平成17)年10 月1日施行)

<POINT20>
 保険料の普通徴収はコンビニエンスストアなど私人に委託が可能となり(2005(平成17)年10 月1日施行)、特別徴収の対象として、遺族年金、障害年金等が追加された(2006(平成18)年4月1日施行)。


【介護保険法の改正に伴う老人福祉法の改正】
<POINT1>
 老人居宅生活支援事業の痴呆対応型老人共同生活援助事業が、認知症対応型老人共同生活援助事業となった(2005(平成17)年6月29 日施行)。また、小規模多機能型居宅介護事業が新たに加わった(2006(平成18)年4月1日施行)。

<POINT2>
 老人デイサービス事業等で「食事の提供」とあったのが、「排せつ、食事等の介護」と改められた。これは、食事の提供に要した費用、居住等に要した費用について、施設介護サービス費等の対象としないこととなったためである(2005(平成17)年10 月1日施行)。

<POINT3>
 老人福祉法第29 条の有料老人ホームの定義が見直され、10 人以上といった人数等が削除され、「有料老人ホーム」とは、老人を入居させ、入浴、排せつもしくは食事の介護、食事の提供またはその他の日常生活上必要な便宜の供与をする事業を行う施設であって、老人福祉施設等でないものとするとなった。また、有料老人ホームの設置者について、帳簿の作成および保存ならびに情報の開示を義務づけられた(2006(平成18)年4月1日施行)。

<POINT4>
 前払金の保全措置の規定が設けられ、認知症対応型老人共同生活援助事業を行う者または有料老人ホームの設置者のうち前払金を受領するものについて、当該前払金の保全措置を講ずることが義務づけられた(2006(平成18)年4月1日施行)。

<POINT5>
 養護老人ホームへの入所措置の対象者が、身体上、精神上の理由が削除され、65 歳以上の者であって、環境上の理由および経済的理由により居宅において養護を受けることが困難なものと改められた。また、利用者が自立した日常生活を営み、社会的活動に参加するために必要な指導および訓練その他の援助を行うことが目的に加えられた(2006(平成18)年4月1日施行)。

<POINT6>
 「小規模多機能型居宅介護事業」は、措置に係る者、介護保険法の規定による小規模多機能型居宅介護に係る地域密着型介護サービス費、介護予防小規模多機能型居宅介護に係る地域密着型介護予防サービス費の支給に係る者その他の政令で定める者を対象とし、心身の状況、置かれている環境等に応じて、それらの者の選択に基づき、居宅または厚生労働省令で定めるサービスの拠点に通わせ、短期間宿泊させ、入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活を営むのに必要な便宜であって厚生労働省令で定めるものおよび機能訓練を供与する事業をいう(2006(平成18)年4月1日施行)。


【介護保険法の改正に伴う社会福祉法の改正】
 小規模多機能型居宅介護事業が、第二種社会福祉事業となった(2006(平成18)年4月1日施行)。



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