精神保健福祉法による入院形態



1.任意入院
(1)根拠法令:法第22条の3および4
本人の同意に基づく入院。原則は本人の意思により入院が行なわれるように努めなければならないと定められている。
(2)基本的な考え
@任意入院者は、原則として、開放的な環境での処遇(本人の求めに応じ、夜間を除いて病院の出入りが自由に可能な処遇をいう。以下「開放処遇」という。) を受けるものとされている。
A任意入院者は開放処遇を受けることを、文書により、当該任意入院者に伝えるものとされている。
B任意入院者の開放処遇の制限は、当該任意入院者の症状からみて、その開放処遇を制限しなければその医療又は保護を図ることが著しく困難であると医師が判 断する場合にのみ行なわれるものであって、制裁や懲罰あるいは見せしめのために行なわれるようなことは厳にあってはならないものとされている。
C任意入院者の開放処遇の制限は、医師の判断によって始められるが、その後、概ね72時間以内に、精神保健指定医は、当該任意入院者の診察を行なうものと されている。
Dなお、任意入院者本人の意思により開放処遇が制限される環境に入院させる事もあり得るが、この場合には開放処遇の制限に当たらないものとする。この場合 においては、本人の意思による開放処遇の制限である旨の書面を得なければならないものとされている。


2.医療保護入院
(1)根拠法令:法第33条
 自傷他害のおそれはないが、患者本人の同意が得られない場合に、指定医の診察の結果、医療及び保護のため入院が必要と認められた患者について、保護者の 同意により行われる入院。
(2)保護者と扶養義務者
 保護者となる優先順位は@後見人(保佐人)A配偶者B親権者C扶養義務者(2人以上の場合は家庭裁判所から保護者として選任された者)である。尚、保護 者になることが出来ない者については、法20条1項を参照のこと。
 扶養義務者については、3親等以内の直系血族に限るとされている。このため、3親等以内の血族が保護者になることが出来ない場合には市町村長同意となり うる場合もある。
(3)扶養義務者による同意
保護者につき家庭裁判所の選任を要する場合であって、かつ、当該選任がなされていないときは、当該選任までの間、4週間に限り扶養義務者の同意を得て入院 させることができる。これは家庭裁判所による選任を受けるまでには一定の日時を要すること等を考慮してのいわば経過的な措置であり、扶養義務者の同意を得 て入院が行われている間においてもできるだけ早期に保護者の選任を受けた上、その者の同意を得て入院を行うことが望ましい。

※4週間を経過しても保護者の選任が完了しない場合には、市町村長が一時的に保護者となってしまうので注意が必要である。


3.措置入院
(1)根拠法令:法第29条
 入院させなければ自傷他害のおそれのある患者に対して知事の権限で行われる入院である。
(2)措置通報
 @警察官通報:法第24条
 A検察官通報:法第25条
 B保護観察所長通報:法第25条の2
 C矯正施設長通報:法第26条
(3)措置入院の判定 
 厚生労働大臣の定める基準にしたがって、二人以上の指定医の診察の結果認められることが必要である。 なお、都道府県知事及び指定都市の市長は、自傷他 害のおそれのある精神障害者について、急速を要する場合には、72時間を限って、指定医一名の診察の結果に基づいて、緊急措置入院させることができる。
(4)自傷他害の判定 
 自傷他害のおそれの認定に当たっては、厚生大臣の定める基準によるが、当該者の既往歴、現病歴及びこれらに関連する事実行為等が考慮される。
 措置入院のための診察は都道府県知事等が警察官等の申請・通報届出等に基づいて調査のうえ、必要と認めた時に、知事等が指定する指定医によって行われ る。
(5)入院費用
 国:都道府県=3:1で全額公費負担となる。


4.応急入院
(1)根拠法令:法第33条の4
診察医(指定医)の診察の結果、自傷他害の恐れはないものの、緊急に入院措置をとらなければ、自身の医療及び保護に著しい支障が生じる際、保護者の同意を 得る事が出来ない場合でも、本人の同意なしに、72時間に限り入院させることができる。また、身元不明で家族などがわからない時にも応急入院が用いられ る。
時間の猶予が72時間であるので、その間に多くは医療保護入院(稀に任意入院)に切り替えられる。入院に際しては指定医1名の診察が必要。
尚、応急入院は応急入院指定病院でのみ実施できる入院形態である。




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