強迫性障害



 強迫神経症(強迫性障害)とは、簡単にいうと「わかっちゃいるけどやめられない症候群」です。自分でも不合理だと思いながら何回も繰り返すので、本人にとっては大変つらいです。
 よくみられるものは、トイレに入った後何回も手を洗う、ドアのカギをかけたかどうか、ガス栓をしめたかどうか何回も確認するというものです。本来これらの行為は安全を確保するために誰でも行いますが、それが何回も何十回も確認しないと気がすまない状態になると社会的に支障をきたすことになり、何らかの治療が必要となります。
 私も家を出るときはガスの栓や家の鍵を何度も確認してしまいます。車を降りるときも鍵を閉めたかとか…。誰しもが必ずこういった症状があるとは思いますが、それが何回も繰り返してしまう本人にとっては心配でたまらない病気なのです。




<症状> 
 強迫には、強迫観念と強迫行為があります。
 強迫観念とは、特定の考え(観念)が頭に思い浮かび、何回も同じ考えを繰り返すものです。そして、「夜、泥棒に入られたらどうしよう」とか「明日、大震災が起きたらどうしよう」というような不安に悩まされるようになります。
 強迫行為とは、不潔を恐れて何回も手を洗う、火事にならないように火の元を何回も確認する、仕事でミスをしないように書類を何回も見直すといったものです。普通の人は1、2回確認すると安心して次の行動に移れますが、強迫の人は1時間も2時間も同じことを繰り返して次に進めなくなります。神経心理学の研究によれば、強迫性障害の人は「カギをかけた」という自分の行動を脳の記憶の中にしまいこむことには異常はないのですが、「カギをかけた」記憶を思い出す(想起する)ことが困難になっていることがわかっています。そのために、カギをかけたかどうかという疑問が生じ、「泥棒に入られるかも知れない」という不安が強くなって、またカギを確認するということを繰り返します。


<診断> 
 このように強迫観念や強迫行為があって社会的な生活が支障をきたしている場合に、強迫神経症(強迫性障害)と診断します。強迫に関連する病気としては、摂食障害、書痙(しょけい)、痙性斜頸(けいせいしゃせい)、アルコール依存症、ギャンブル依存症、小児のチックや抜毛症などがあります。これらは、いずれも自分でも不合理だと思いながらも同じ行動を繰り返して自分でコントロールできない病態と考えられます。



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