認知症について


精神保健福祉士専門試験のみならず、
医学一般や老人福祉論などでも出題されることが多いようなので、
満を持して掲載したいと思います。



○認知症の原因
 認知症の原因となる病気には多くのものがありますが、特に多いのが脳血管性認知症とアルツハイマー型認知症です。この二つとその混合型(二つを合併している型)を合わせると、認知症全体の8割から9割を占めると考えられています。次いで3位となるのがレビー小体型認知症が多い。

脳血管性認知症
脳梗塞(脳の血管に血栓という血の固まりがつまった状態)、脳出血(脳の血管が破れて出血した状態)など脳の血管に異常が起きた結果、認知症になるもの。

<アルツハイマー型認知症>
脳の細胞が変性(性状、性質が変わる)したり消失した結果、脳が縮んで認知症になるもの。

<混合性認知症>
脳血管性認知症とアルツハイマー型認知症が合わさったもの

<レビー小体型認知症>
 レビー小体病は一次性認知症ではアルツハイマー病に次いで多い病気です(一次性認知症の約2割)。この病気はもの忘れもあり、一見アルツハイマー病に似ていますが、第一の特徴は、とても生々しい幻視がみえることです。第2に、日によって症状に変動があり、正常に思えるときと様子がおかしいときが繰返しみられます。第3に、歩きにくい、動きが遅い、手が不器用になる、など、パーキンソン症状がみられることがあります。
 脳血流検査ではアルツハイマー病に似た特徴(頭頂葉・側頭葉の血流低下)に加え、視覚に関連の深い後頭葉にも血流低下がみられます。適切な治療を受けると見違えるほど元気になる患者さんもおられるので、専門医に相談することが大切です。また、この病気で注意が必要なのは、幻覚があるからと安易に神経遮断薬を使うと、認知症やパーキンソン症状が悪化しやすいことです。


脳血管性認知症とアルツハイマー型認知症の違い
  脳血管性認知症 アルツハイマー型認知症
特徴
・まだら認知症
・急激に発症、段階的に悪化
・認知の欠損
・多発梗塞性認知症は高齢者に増加
・全般的認知症
・緩徐な発症
・初期症状は記憶低下や判断能力の低下

人格水準
・比較的保たれる ・早期に低下
・抑うつ、強迫的な人格変化を起こすことがある
神経症状の有無 ・手足が部分的に麻痺したりしびれたりすることが多い ・初期には少ない
危険因子 ・高血圧、糖尿病などの生活習慣病 ・近親者でアルツハイマー病発症
症状 ・記憶障害、判断能力低下、性格変化、情動失禁、うつ病状、夜間せん妄など ・記憶障害、見当障害、失語、失認、失行、妄想、幻覚など
・記憶、言語、視空間機能の欠損が続けて起こる。
検査 ・CT、MRI、脳血流量 ・CT、MRI、SPECT
男女比
・男性が多い ・女性が男性の2倍



○上記以外の認知症
・ 感染性の病気による認知症
進行まひ、エイズ脳症、単純ヘルペス脳炎、脳梅毒など

・代謝性・内分泌性の病気による認知症
肝性脳症、低血糖性脳症、甲状腺機能低下症、ダウン症など

・外傷性の病気による認知症
外傷性脳挫傷・慢性硬膜下血腫、ボクサー脳症など

・その他
脳腫瘍、正常圧水頭症、一酸化炭素中毒など


認知症の原因となる病気
慢性硬膜下血腫 頭を打った後しばらくしてから、脳内で出血した血の固まりが脳を圧迫するもの
頭蓋内新生物 髄膜や脳の腫瘍によって認知症症状が出ることがあります
正常圧水頭症 脳の脳室という場所に髄液という液が貯まるもの
甲状腺機能低下症 甲状腺ホルモンが低下して認知症症状が出ることがあります
ビタミン欠乏症 ビタミンB1、ビタミンB12、葉酸などのビタミン欠乏によるもの
低酸素血症 心不全や呼吸不全、重度の貧血で血液中の酸素濃度が低下して認知症症状が出ることがあります
電解質異常 血液中の電解質(ミネラル)のバランスが崩れて認知症症状が出ることがあります



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