心因反応



 心因反応とは、心理的原因によって反応性(精神的ストレスやショックによって引き起こされること)に生じた精神障害をいいます。比較的最近の直接的な心理的原因によって生じた、神経症よりは重症の精神病状態をさして用いられます。


<特徴>
・発症の原因となりうる明かな心理的情動的体験があること。
・症状は神経症より重く、精神病状態といえるほど重症であること。
・原因となった心理的情動的体験と精神症状の発現と内容との間に、ある程度関連のあること。
・症状は原因がなくなるか、時間的経過により希薄になるにつれ軽快すること。
・症状は原則として可逆性であり完全に元に戻ること。



<症状>
・原始反応(驚愕反応)
 大災害や戦場などその人の生命が脅かされるような突発的状況に直面して、あまりにも強い感情体験のために、精神機能全体の統制が失われ、一過性に原始的な生物学的反応を示す場合をいいます。
 極度の興奮や錯乱、無目的な運動乱発や逆に茫然自失として周囲からの働きかけにまったく反応しない昏迷状態、あるいは反応性すべての感情が起こらなくなる常道麻痺や意識混濁など。
 身体症状として、動機、発汗、ふるえ、けいれん、呼吸困難、脱力など。
 
・感応精神病
 ある精神病者の精神病的症状が、その人と情緒的な結びつきを持った人に取り込まれることによって、同じ症状が現れることをいいます。
 感応しやすい精神症状は、被害妄想、宗教妄想、憑依妄想、好訴妄想、誇大妄想などの妄想がもっとも多く、ときに錯乱状態や幻想、幻覚、恍惚状態などもみられることがあります。

・拘禁精神病
 刑務所や拘置所、あるいは強制収用所や人質としてある場所に拘禁されることによって生じる精神障害です。
 突発的な怒りや叫び泣き笑うなどの感情の爆発、壁や扉を乱打し器物を破壊するなどの運動乱発がみられたり、逆に周囲の刺激にまったく反応せず、食事もとらずに寝たきりになる昏迷状態がみられることもあります。

・祈祷性精神病
 加持祈祷、まじないなどの際に、その場の雰囲気や祈祷師の言葉などに暗示されて反応性に生じる精神病状態をいいます。
 自分が神や動物あるいは別の人物に変換してしまったり(人格変換)、キツネやイヌ、神などのとりつかれたり(憑依妄想)、言わされる行動させられる(させられ体験)などが特徴的ですが、奇異な行動や興奮状態をしめしたり、動きが止まり周囲に反応しない昏迷状態になることもあります。

・統合失調症性反応、抑うつ反応
 統合失調症性反応というのは、発病の契機となるような明確な心理的原因や環境の負荷があって急性に幻覚や妄想、不安や興奮状態あるいは昏迷状態などの統合失調症状態を現すものをいいます。
 統合失調症と比較して感情的接触がよいこと、また病状は完全に回復するとされています。
 抑うつ反応は、反応性うつ病ともいわれるもので、近親者との離別やその他の喪失体験などの情動体験に引き続いて抑うつ状態におちいるものをいいます。

・妄想反応
 敏感関係妄想・・・敏感性格(一方では内気、控えめ、対人関係に敏感で傷つきやすいが、他方では強い道徳心や名誉心、自己主張をもつ安定度のよくない性格)の人がある困難な状況に置かれ、その状況から長期間逃れることができないとき、関係妄想を生じ、その病状は統合失調症の妄想型やパラノイア(妄想症)と区別しにくいとされています。
 好訴妄想/難聴者の迫害妄想/海外渡航者の急性妄想反応

・解離性障害
 解離性健忘・・・最近の苦痛をともなう不快な体験や心的外傷的出来事についての記憶喪失のことで、通常は部分的で選択的ですが、完全な健忘もあります。
 解離性遁走・・・耐え難い現実から逃れ数日から数ヶ月間家庭や職場を捨てて意図的に放浪する場合で、その遁走期間中、解離性健忘が存在しますが、基本的な自己管理ができ対人関係ももてることが特徴的です。健忘から改善されたあとで、逆にその間のことはまったく思い出せなかったり、部分的にしか思い出せないのが普通です。
 解離性もうろう状態・・・強い情動体験の際に解離症状としてみられる意識障害です。意識野が狭くなった意識狭窄を主としたもうろう状態です。


<対処法>
 周囲の人たちが直面するのは、さまざまな精神病状態におちいっている人に向かい合い世話しなければいけないという現実です。実際周囲の人たちは、原因となった出来事や置かれている状況からその人がなぜそうなったかを十分理解でき、共感できることが多く、つきっきりで世話をやきながら慰めたり励ましたりして何とか本人を立ち直らせようとつとめます。
 しかし、現在起こっている異常な興奮や極度の不眠、摂食拒否などの異常行動、働きかけに対する無反応、あるいは幻覚や妄想に振り回されている人を、どうしてあげたらいいかわからないという状況におちいることが多いと思います。本人は病識をもてないのが普通ですし、また周囲の働きかけを受け入れ理解できる状態にないのが精神病状態だからです。
 したがって、ます第一にするべきなのはしかるべき精神科の診察を受けさせるように努力することです。たとえ、反応性だとしても他の精神病のときの対処の仕方と同じに考えるべきです。本人の身体状態を改善し、生命身体の安全を確保するとともに精神病状態を改善し、さまざまな働きかけが可能となるようにするためには、薬物療法を欠かすことができません。
 それと同時に、できるかぎり原因となった心因の除去あるいは環境の調整につとめることが大切です。






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