■[個別式]
・知能検査 ■ 知的な操作能力、認知的な情報処理能力に焦点を当てたアセスメント用具である。
そこで測られる能力や知能の概念は、検査によって多少異なるが、学習などの基本的な潜在能力、あるいは課題解決のための基本能力を測るという意味で、その 能力感はほぼ一致している。
■ ・ビネー式知能検査 ■ ビネーが僚友の医師シモンの協力を得て1905年に作成した、世界で最初の知能検査およびその基本的な考えと方式を踏襲して 作成された知能検査を総称して、ビネー式知能検査と呼ぶ。
日本においては、「全訂版田中=ビネー知能検査」や「鈴木=ビネー式知能検査」がよく用いられている。
ビネー式知能検査は、1904年にフランスの小学校の特殊学級設置のための教育当局の諮問委員会に嘱されたことが、知能測定法を考案する契機。
それまでは医師による主観的印象に基づいての精神遅滞者の振り分けが行われていた。
ビネーらは知能を単一の能力的な実体とみなさず、多面的な高次精神過程の複合体であるととらえ、これを客観的に測定する基準を作った。
すなわち、教科の学力水準、学校で習う知識とは独立した知的能力尺度を考えた。
検査は、オムニバスな形で配列されており、全体としてどの程度の問題までができたかを基に精神年齢や知能指数が算出されるようになっている。
そのため、幼稚園から小学校中学年の児童の一般知能の測定には適しているが、成人の知能測定や知能の診断的把握には向かない。
・知能指数 intelligence quotient; IQ Stern, W. 1912 ■ 知能検査を受けた個人の実際の年齢を生活年齢(CA)、検査結果から判定される知能を精神年齢(MA)とすると き、知能指数は
IQ=(MA/CA)×100
で表される。
知能指数の考え方はドイツのシュテルンの創案によるが、フランスで開発された最初の知能検査であるビネー=シモン尺度がアメリカに渡り、ターマンらによっ てスタンフォード=ビネー知能検査に発展していったときに取り入れられ実用化された。
■ ・ウェクスラー式知能検査 ■ ニューヨークのベルヴュー病院で心理臨床の仕事をしていたウェクスラーは、1939年に個人の知能を診断的に捉えるための診 断性知能検査であるウェクスラー=ベルヴュー知能検査を作成した。
これが最初のウェクスラー式知能検査である。
6種類の言語性検査と5種類の動作性検査によって構成された、10歳から60歳までを適用範囲とする個別検査である。
言語性IQ、動作性IQ、全体IQの3種類の知能指数が求められるほか、下位検査のプロフィール表示や偏差値指数の採用などの点で従来の知能検査になかっ た新しい特徴を持っている。
・偏差IQ ■ [(各個人の得点−当該年齢段階の平均点)/当該年齢段階の標準偏差]×15+100
特定の年齢集団の中でどのくらいの位置にいるかを出す。
・テストの種類 ■ WAIS(現在はWAIS−R):成人用(16歳以上) WISC(現在はWISC−III):児童用(5〜15歳) WPPSI:幼児用(4〜6歳6ヵ月)
■ ・改訂版言語学習能力検査 Illinois Test Psycholinguistic Abilities; ITPA ■ イリノイ大学のカークによって1961年に開発された、児童の知的能力を言語隔週能力の側面から測定するための診断テストで ある。
その点では、知能検査の一種であるが、発達診断の要素が強い検査である。
適用年齢は3歳〜9歳11ヵ月である。
子どもがどの領域を苦手とし、どの領域が優れているかという、子どもの能力の「個人内差」を見ることに主眼が置かれている。
知的な発達に部分的な偏りを持つ子どもたちのアセスメントに利用されている。
ITPAはコミュニケーションに関する言語能力を回路、過程、水準の三次元でモデル化している。
日本版では、10の下位尺度があり、この下位尺度間のプロフィールを分析することで、どのレベルでの発達の遅れがあるかがわかり、その領域への補償教育な どの有効性が認められている。
テストの理論的背景が単なる経験則ではなく、言語能力の過程に関するモデルが備わっている点が優れた特徴であり、実際の教育場面への適用もなされている点 が長所である。
このように構成概念妥当性の点では比較的優れているものの、プロフィールの診断に関して、全体的な把握に関しての類型化、使いやすい範例があまりない点が 短所といえる。
■ ・K-ABC心理アセスメントバッテリー Kaufman Assessment Battery for Children ■ 最近の認知心理学、脳神経科学の知見を組み入れた診断的な知能検査として、1983年にカウフマン夫妻がテストバッテリーを 組むところから作成したものである。
K-ABCは2歳半〜12歳半まで使用できる。
16種類の下位検査からこのテストバッテリーは構成され、大まかに学力尺度と知的情報処理能力を測定する2つに分けられ、知的情報処理能力は、さらに逐次 的なものと同時的なものに分けられる。
これは認知プロセスに着目した点で新しいタイプの知能検査であり、WISCと比較されながら、両者の併存的妥当性が検証されるという研究結果も数多くあ る。■[集団式]
■ ・グッドイナフ 人物画知能検査 Draw-A-Person Test(DAP)/Draw-A-Man(DAM) ■ 幼児・児童の知能を測定する検査として描画の手法を導入。
人物像を描かせ、その描画を身体各部分の抽出の有無・描出法などで採点する。
DAM採点項目が50項目用意されており、そこから被検者のMA(精神年齢)が算出できる。
MAは3歳くらいにならないと検査困難だが、幼児への発達診断としての利用可能性においては優れている。
このように幼児・児童でも容易に回答可能である点が優れた特徴であり、知能検査ができない成人にも適用可能である。
■ ・数研式学年別知能検査 など ・様々な集団式学年別知能検査
cf. アーミー・テスト ヤーキーズらが作成した、アメリカ陸軍式知能検査。
言語性の問題のみを使用するα(アルファ)検査(A式知能検査)と言語をまったく使用しない(非言語性)β(ベータ)検査(B式知能検査)の2種類から なっている。
この検査の成功が契機となって、その後多くの集団式知能検査が作成された。
■[直接観察]
・発達検査 ■ 子どもの心身発達の状態や程度を測定・診断するための標準化された検査法。
多くの場合、あらかじめ設定された標準的な心身発達段階との比較により発達年齢(発達の相当年齢;DA)や発達指数((発達 年齢/生活年齢)×100;DQ)を算出し、個人の発達の遅・早を判断することが可能であり、発達危険児のスクリーニングや早期介入に役立てられる。
■[問診]
■ ・MCCベビーテスト ■ 2ヵ月〜30ヵ月の乳幼児を対象とし、119項目の問題から構成されており、主に感覚運動的知能を測定する内容になってい る。 ・新版K式発達検査 など
■ ・津守式乳幼児精神発達診断法 ・遠城式乳幼児分析的発達検査法 ・改訂日本版デンバー式スクリーニング検査 など
・適性検査 ■ 適性検査はAptitude testの訳であり、何らかの課題や仕事に適性があるかどうかを判定する検査である。
■ ・VPI Vocational Preference Inventory ■ 様々な職業活動への興味を測定するために作成された主として質問紙法検査である。
日本でVPIという場合には、厚生労働省が関与して大学生向きに作成したものを指すVPI職業興味検査のことを指すのが一般的である。
この日本語版VPIは、J.L.ホランドの理論に基づき、彼の1978年版VPIを基に作成され、人間は6つの人格型(現実、研究、芸術、社会、企業、習 慣)のどれかを志向するというものである。
これはE.シュプランガーの価値志向性の類型とも関連しており、実証的にもある程度の信頼性、妥当性が検証されており、比較的短時間で実施可能である。
■ ・GATB General Aptitude Test Battery ■ アメリカ労働省による「一般職業適性検査」を一般には指す。
これを日本用にしたものが厚生労働省版の一般職業適性検査である。
多くの職業の中から、ある職務を遂行するにあたっての必要な能力を測定する検査であり、職業適性検査の最も代表的なものである。
日本における厚生労働省編一般職業適性検査は、15種類の下位検査からなり、ここから9つの適性を求めて、どの職業群に合格するかを判定する。
ただし、将来において適性のある職務を予測するという予測的妥当性はそもそもの検査の設計方針からして備わっていない。
現時点でのある職業に必要な能力を備えているか否かを判定するものだからである。
※ 学力検査なども能力テストに含まれる。