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傍 証 神経伝達物質 脳が機能しているとき、各神経細胞からのびている神経繊維(ニューロン)の中を電気パルスが流れる。特定の神経細胞から特定のニューロンを通して特定の神経細胞にパルスが伝達されるとき、それに呼応した思考が出来る。ニューロンの先端は他のニューロンあるいは神経細胞に直接つながっているのではなく、ごくわずかの隙間を介している。その隙間(シナプス)は、神経伝達物質で連絡している。具体的には、電気パルスの刺激によって伝達物質がニューロンの先端から放出され、シナプスを飛び越え、反対側にある受容体に吸収され、そこからまた新しい電気パルスが発生する。受容体に吸収されなかった伝達物質は、放出した側の受容体に再吸収される。 この神経伝達物質が正確には何種類あるのか、それぞれどんな役割があるのかはまだ初歩的なことしか分かっていないが、例えばノルアドレナリン、アセチルコリン、セロトニンなどなどがあり、ADDの場合、セロトニンが関わっている場合が多いとされている。セロトニンの関わっている神経系は脳全体に及んでいるが、とくに扁桃核、視床下部、大脳皮質に集中しており、これらは感情に関わっていることから、セロトニンの不足は感情の落ち込みの原因になる。 その結果、セロトニン不足により鬱病になるとされ、セロトニンを補う薬が鬱病治療薬として使用される。が、もう一つ、計画性や感情の抑制などを司る前頭葉でセロトニンが不足すると、行動に衝動、無計画性などが現れこれがADDの原因となっているらしい。セロトニンだけではないが、神経伝達物質の働きが悪いと全体に脳の機能は低下するだろうから、これが知能レベルの低くなる原因、また感情が落ち込むので鬱病になり、人に対する愛情も無くなり犯罪を犯すなど結びつくのだが、現実には同じセロトニンの機能障害でもADDの場合知能レベルには異常はないし、犯罪性も高まっているという兆候はない。結局、セロトニンが脳の全ての部位で機能低下なのではなく、極めて限られた部位でそれが起きているのではないだろうか。 脳自体の機能解明もまだまだ始まったばかりだ。セロトニン機能低下すなわち鬱病、半社会性と結びつけるわけにはいかないはずなのに、その決め付けが一人歩きしている感がある。それに、セロトニンが関わっているのは確かだろうが、他の原因も重なっている可能性も大いにある。 本稿を読み終わったら、ブラウザの(戻る)で元に戻って下さい。 |