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アルケミストの旅 1

夢を運ぶ風 : レバンタール

2002. 12

”羊飼いのサンチャゴ少年は、彼を待つ宝物を求めて、アンダルシアからエ
ジプトへ旅をする。前兆に導かれながら、さまざまな冒険と出会い・別れを
経て、少年が見つけたものは・・・” 

現代の「星の王子さま」とも称される「アルケミスト - 夢を旅した少年 -」
(パウロ・コエーリョ作)を読んだのは、飛行機の中でした。友人から薦めら
れ、内容もよく知らないままバッグに入れて、スペインに向かいました。
灯りが消された薄暗い機内で、低く響くエンジン音を聞きながら本を読んで
いると、遠くの見知らぬ土地へ運ばれていく自分が、サンチャゴ少年と重な
りました。

旅に出てから8日目、スペイン南端の町アルへシラスに着きました。ここは
かつて数世紀、アラブ人の支配下にあった港町。様々な人種が行き交い、
アラビア語の看板も多く見うけられます。お天気が良い日は、タリファの岬
からモロッコが肉眼で見えます。その距離わずか15km。日帰りツァーでア
フリカを垣間見ることにしました。

               <ホテルから見た桟橋の風景 昼&夜>
      
                               ↑
                         <写っているのは、”たまゆら”?>

アルヘシラスから高速フェリーに乗って約1時間、ジブラルタル海峡を越え
セウタに到着。セウタはモロッコ内に飛び地のように存在しているスペイン
領です。入国手続きを済ませ、ワゴン車に乗り換えてタンジェに向かいまし
た。。


          
   
”見るもの聞くもの、どれも既に知っているような気がするのはなぜだろ
う・・・?”モロッコにきてから、ずっと不思議に思っていた私は、突然気がつ
きました。

”自分は、アルケミストの少年と全く同じルートを旅している!” 
慌てて持ってきた文庫本をめくってみると、本当にその通りでした。

私もアンダルシアの平原からやってきた。タリファからアフリカを望み、船で
モロッコに渡った。そして丘の上にあるタンジェの町で、心地よい風を感じな
がら海を見下ろした。暑さのなか、港から狭い上り坂を上がってくる人はさ
ぞ大変だろうと思いながら。タンジェのクリスタル屋で働くサンチャゴ少年
は、苦労して坂を上ってきた人たちに、ミント・ティーをふるまったのだっ
た・・・
メディナ、スーク、お土産屋さん、クスクスとシシカバブのレストランなどに立
ち寄りながら、私はこの符合に感動していました。

『何かを強く望めば宇宙のすべてが協力して実現するように助けてくれる』
『前兆にしたがうこと』

本の中で少年に語られた言葉は、そのまま私に贈られた言葉でした。自分
は独りぼっちではなく、宇宙と響きあって存在し、宇宙はいつも自分を温か
く見守っている・・・ そんな思いが心と身体いっぱいに広がりました。とても
幸せでした。
一見不公平にみえる人生でも、祝福はすべての人に惜しみなく与えられて
います。気づくだけで良いのに、素直な心で受け入れることは、なかなか難
しい・・・
       
帰り道、私の目にサンチャゴ少年が飛び込んできました。モロッコでは、羊
の世話は子供の仕事のようです。驚かせては申し訳ないので、後ろの建物
を撮るふりをして写真をとりました。きっとこの少年も、羊のことなら何でも知
っているのでしょう。


      


”君にとって夢、宝物はなに・・・?” 


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