TOPIC ESSAY おばあちゃんの誕生日
今は宿泊が可能なリゾート施設として整備・運営されていて、一帯のコンドミ
ニアムを購入することもできる。「荒涼とした自然が売り物の観光地」といっ た感もあるが、特にアウトドア派でもない私達には、心地よく泊まれるのが ありがたかった。
埃っぽいジーンズから少しだけきれいな服に着替えて食事に行った帰り、
ほろ酔い気分で歩いていると、ある部屋の前でおばあちゃんに声をかけら れた。そのおばあちゃんは、なんと西海岸では大胆なことに、壁に寄りかか ってタバコをぷかぷか吸っている。白髪をきれいに巻き上げ、赤いパンツ姿 の結構かっとんだスタイルだ。
”今日は、アタシの誕生日たったのよ。いくつに見える? あらまぁ、そんな
若く見えて? もう90よ、90〜! それで、子供たちがここでお祝いをしてく れたの。たくさん飲んですっかり出来上がっちゃったわ。部屋じゃタバコは吸 えないし、だからこんな表で吸ってるわけ。ほんと迷惑な法律。 ところでア ナタ達、どこから来たの? あら〜日本!?”
・・・といったかどうか分からないが(だって英語だし、ちょっとヨレてるし
^^;)、想像するに、そんなことを上機嫌で言ったのだろう。
だからこちらも盛大に 「ハッピー・バースデー!!」と答えた。
そういえばレストランでは家族連れが多かった。5〜6人で食事をしている
グループが珍しくない。孫におじいちゃん、おばあちゃん、兄弟たち。1人立 ちした子供と同居することがないアメリカでは、機会をみつけては、こんな風 に集まるのだろう。
半ば義務感から、無理やり都合をつけて集まっているのかもしれない。
それぞれが抱える事情も、実は半端でないかもしれない。
しかし、ともかくそこには”皆がいる”というエネルギー、温かさがある。たくさ
ん食べて飲んで、夜更けまでしゃべり続けるパワーは、生命力といってもよ いだろう。
コースのディナー如きでぐったりして、段々無口になるようでは、いけないの
だ。 もっとタフになろう、タフに。
来年も、再来年も、おばあちゃんがド派手で素敵なバースデーを迎えられま
すように!
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