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バルセロナ&マヨルカ '05 Aug.-Sep.


バルセロナマヨルカトランジットのパリ
のウェブアルバムをアップしました



TOPIC ESSAY

[ Paris ]   路地裏の定食屋さん

ダヴィンチ・コードで有名になったサン・シュルピュス教会のすぐ近くに、小さ
な定食屋さんがある。お店の名前は、庶民的なワインの銘柄だそうだ。
地図を頼りに道を曲がると、そこは真っ暗な路地裏。ほかにお店もなく、”ほ
んとうにこの通りであっているのかしら?”と心配しながら歩いていくと、ぽ
つんと小さなあかりを見つけた。柔らかなオレンジ色の灯りに引き寄せられ
るようにドアをあけると、こじんまりと和やかな空間が私達を迎えてくれた。

             


サービスしているのは、ちょっぴり太目のご主人と、娘さんらしき若い女性。
英語の分からないご主人と通じたような、通じていないようなオーダーのや
り取りをして、一息ついて狭い店内を眺めると、まだ夕食には早いせいか、
お客さんはまばらだった。

ドアに近い隅の席で、1人のおばあさんが、ゆっくり食事をとっていた。
互いに気になって時々目があってしまう。フランス語が話せない私は、とり
あえずニコッと微笑んで、ボナペティのご挨拶。きっと、近所に住んでいる常
連さんなのだろう。おばあさんが帰るとき、ご主人はコートを着せかけ、細い
肩を抱いて「寒いから気をつけてな・・」という二言三言を耳元でささやいて
送り出した。

武蔵丸風の濃い顔出ちのご主人は、一見とても怖そうに見えるのだが、実
は気が良くて優しいのだ。ドアが開くたびに冷気にさらされないないよう、ち
ゃんと厚手のカーテンもある。こんなお店で食事が出来たら、老いた独り身
でパリに暮らすのも悪くない気がする。

前の客が残したパンかごに、新しいパンをぽいぽいっと足して、「はいよ」と
無造作に持ってきたのには、ちょっと驚いたけど、食事はどれも素敵に美味
しかった!干ダラのブランダッド、ポワローのヴィネグレット、カスレ、デザー
トのアップルパイにコーヒー。何だか初めてパリで、”ご飯”を食べた気持ち
になった。純粋に食事を楽しみたくて、私達は珍しく一枚も写真を撮らなか
った。

壁の一方に雑誌棚があり、表紙が上半分ほど見えるようにして、雑多な冊
子や本、ちらしが並んでいる。カルチェラタンからもそう遠くないから、出版
関係、大学関係のお客さんも多いのだろう。
いつのまにか、店内は満席になっていた。

パリに行くと、必ずこのお店に寄ることにしている。
ある朝、リュクサンブール公園に向かう途中、お店の前を通ったら、なんと
愛犬とお散歩中のご主人にばったり出会ってしまった。
前の晩に食べに行ったばかりなので、私達のことを覚えてくれていたのだろ
う。互いに驚いた後で挨拶をすると、快くツーショット写真に納まってくれた。
遅くまで仕事をしていたはずなのに、元気だなぁ。

おじさん、またおいしい”ご飯”を食べさせて下さいね。
次はもう少し、フランス語が話せるようになって伺いま〜す!


         


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