TOPIC ESSAY 振魂(ふりたま)
御岳山山頂にある御岳神社の袂(たもと)に、宿坊が連なっている。
それぞれの宿坊は神官によって営まれていて、希望者は朝拝を受けること
ができる。
朝6時半、呼吸を整えることから始まるこの儀式に、振魂(ふりたま)という
行があるのをご存知だろうか。合気道ではよく知られているらしい。
左手は手のひらを上向き、右手は手のひらを下向きにして、おにぎりをにぎ
るような形を、臍の前あたりで作る。手の中に自分の魂を置いたつもりで、 ゆっくり上下に振り続ける。子供でもできる単純な所作だ。
魂を置くなんて面白〜い、と思って振りはじめる。
最初のうちは、「自分の魂って、どんな大きさかな、どんな重さだろう、色
は?」などと思い巡らしながら揺すっているのだけれど、段々そういう思い が遠のいて、ゆする行為自体が心地よくなっていく。
揺すっている自分自身がゆりかごで揺られているような、そんな感じ。
ふと気がつくと、手の中の魂は透明になって喜んでいた。
身体を動かすところが印象に残った。身体を使い、声を出して唱える・・・
何でもないようでいて、普段の生活ではあまり馴染みがないのだ。
朝の日の光を浴びながら、思い出したら又振ってみよう。
新しい一日、自分の魂が元気に過ごせるように。
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