TOPIC ESSAY てつがくの・・・
工藤直子の詩集「てつがくのライオン」が出たときは、ちょっとした事件だっ
たと思う。児童書にありがちな、甘く情緒的な作品とは違ったからだ。エバー グレーズ国立公園のことを書こうとして、ふと思い浮かんだのがこの詩だっ た。
アメリカの国立公園というと、メタセコイアの巨木や切り立った岩のある山々
が真っ先に思い浮かぶが、エバーグレーズは湿地帯という独特な存在。
熱帯から亜熱帯までの様々な生物(鳥400種、魚100種etc)が生息して
いる。といっても、ひしめき合って暮らしているわけではなく、広い湿原にぽ つんぽつんと見られる感じだ。
車で走っていると、人間よりも野生の生き物に出会うほうが多い。
初めのうちこそ、「あ、いたいた〜♪」とはしゃいでいたが、次第にそんな気
持ちがなくなってしまった。
人間に対してへつらいがないのだ。皆、媚びるでもなく、おびやかすでもな
く、淡々と存在している。自らの生き方にストーリーを付け加えることもなく、 食し食され、やがていなくなる・・・そんな姿に美しさと尊厳を感じた。
かつては人間も、この動物達と同じように存在していたのだろうか・・
フロリダ半島中央を水源に持つ幅150kmの湿原は、50マイル離れた南
端にいたるまで、なんと数十cmの高低差しかないという。絶妙なバランス の上になりたつ生態系は、主にマイアミの開発(水需要の増大・排水の汚 染)によって、かつてない危機に瀕している。環境ホルモンの働きで、ペニス が小さくなってしまったワニが報告されたのも、エバーグレーズだったそう だ。世界遺産に登録されたのは79年だが、93年以降は危機遺産に認定さ れている。
いつか再び、人が自然の添景にかえる日を願いつつ・・・
<追記> 2007年6月、危機遺産の指定が解除されました。
きっと地道な自然保護活動の成果ですね。
こういうニュースは嬉しいなあ!
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