14.お食事のマナー
月曜日、どこの科も同じだろうが、皮膚科の待合室も朝早くから混んでいた。僕はその対策として、できるだけ診察終了間際に行くようにしているけど、この日は早めに終わらせたい理由があった。
なんて事情はともかく、待合室が混んでいるので、少し離れた
売店近くの椅子に座ることにした。そこは椅子が3席×4列くらいで全てが同じ方向を向いているところ。僕はその2列目に座る。しばらくすると、前の椅子、つまり最前列に年の頃なら60歳くらいのおばちゃんが座った。つまり、前におばちゃんが座れば、僕の目の前には彼女の後姿が見えているわけだ。
当然、最初はそういう光景だった。ところが、数分経つとこのおばちゃん。手持ちのバッグから何やらゴソゴソと取り出した。何気なく見ると
オニギリだ。
「あぁ、そうか、朝早くから来ているので朝食ってわけね」
ある程度名の知れた病院ならば、待ち時間も長いし遠方から来る人も多い。こうして院内の片隅で食事を摂っている人を見ることは珍しいことではなかったのだ。
ただ、おばちゃんは人の多いこの場所で食事をすることに遠慮していたのか、人前で食事をすることを恥ずかしいと思っていたのか・・・。オニギリを食べる時になると
体全体を横に向けて、前の通路を歩く人々の視線から逃れるようにして食べるのだ。まぁ、普通ならそれもいいでしょう。
でもね、おばちゃん。
アータが座っている席の後ろには僕をはじめ、5人は居たわけです。そちらにはまったく目を向けず、正面ばかりを気にして食事をされてもねー・・・。
おかげで僕は
食事をしているおばちゃんの横顔を1m以内の至近距離でずっと見続ける状態になってしまった。時折おばちゃんは僕の視線を気にしてコチラを睨むのだけど、こっちだって見たくて見ているわけじゃないのです。アータが僕の目の前にわざわざ横顔を持ってきて食事なんかするからイケナイのですよ。
席をすぐにでも変わりたかったくらいです。でも、この頃にはどこも満席で立ったら最後、しばらく放浪するしかない状態だったので、移動もできず。できるだけ目の前でもぐもぐと食べ続けるおばちゃんの横顔を見ないように気をつけていた。
(なんでオレが気を使わなきゃんならんねん!)
あぁ、それなのに、やってくれましたよ。おばちゃん、最後のシメでペットボトルのお茶を飲んだんですがね、焦って飲んだせいか、
見事にむせて咳と一緒に少量のご飯粒とお茶を同時に噴出してくれました。もち、僕のところにも少し飛んできました。あっ、と思ったらおばちゃんはどこかに逃亡してました。ズボンについた一片のご飯粒を見ながら、僕はしばらく身動きできませんでした。