理事の選任 2009.11.19(木)

 

 

 旧民法においては、社団法人の理事の選任について、任免に関する

規定を定款に記載しなければならない(37条)、とあるだけでした。

どう規定すべきという決まりは、法的にはありませんでした。

平成8年に閣議決定された「公益法人の設立許可及び指導監督基準」

において、「社団法人の理事は、総会で選任すること」と定められました。

 新法においては、この指導監督基準の内容が法制化されました。

 

 

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律

(平成十八年六月二日法律第四十八号)

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H18/H18HO048.html

(議決権の数)

第四十八条  社員は、各一個の議決権を有する。

ただし、定款で別段の定めをすることを妨げない。

2 前項ただし書の規定にかかわらず、社員総会において決議をする

事項の全部につき社員が議決権を行使することができない旨の定款

の定めは、その効力を有しない。

(社員総会の決議)

第四十九条  社員総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、

総社員の議決権の過半数を有する社員が出席し、出席した当該社員の

議決権の過半数をもって行う。

 :

(選任)

第六十三条  役員(理事及び監事をいう。以下この款において同じ。)

及び会計監査人は、社員総会の決議によって選任する。

 

 

 議決権は原則社員1人につき1個ですが、定款の定めにより変える

ことができます。

 基金の拠出額に比例させる、あるいは法人と自然人で差をつける、等

が考えられます。

 もっともこれは一般社団法人の場合であり、公益社団法人になると

少し違います。

 

参照サイト:一般社団法人設立手続

http://ishs.office-segawa.com/222.html

議決権の数 (公益社団法人に移行する場合は注意)

 

 

公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律

(平成十八年六月二日法律第四十九号)

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H18/H18HO049.html

(公益認定の基準)

第五条     行政庁は、前条の認定(以下「公益認定」という。)の申請を

した一般社団法人又は一般財団法人が次に掲げる基準に適合すると

認めるときは、当該法人について公益認定をするものとする。

 :

十四 一般社団法人にあっては、次のいずれにも該当するものであること。

イ 社員の資格の得喪に関して、当該法人の目的に照らし、不当に差別的

な取扱いをする条件その他の不当な条件を付していないものであること。

ロ 社員総会において行使できる議決権の数、議決権を行使することが

できる事項、議決権の行使の条件その他の社員の議決権に関する定款

の定めがある場合には、その定めが次のいずれにも該当するもので

あること。

(1)社員の議決権に関して、当該法人の目的に照らし、不当に差別的

な取扱いをしないものであること。

(2)社員の議決権に関して、社員が当該法人に対して提供した金銭

その他の財産の価額に応じて異なる取扱いを行わないものであること。

 

 基金の拠出額に比例させて議決権を付与することは禁じられています。

 「不当に差別的な取扱い」があるかどうかは、公益認定の際に個別に

判断されるのだろうと思います。

 

 株式会社においては、株主の請求により、累積投票による取締役の選任

も認められます(会社法342条)。

 これは少数派株主の保護を目的としたものです。

 その意味は、下記にわかりやすく書かれています。

 

取締役の累積投票 - 教えて!goo

http://oshiete1.goo.ne.jp/qa1827003.html

 

 ただし定款であらかじめ排除することも認められています。

 法律の条文は、当ページの一番下をご覧下さい。

 

 一般法人法、公益認定法(平成18年法律第48号、第49号)には、

累積投票に関する条文はありません。

 一般法人法49条(社員総会の決議)には、「定款に別段の定めが

ある場合を除き」とありますので、では定款に書いてしまえばどう

かというと、これも万能ではないようです。

 

 

公益法人Information

https://www.koeki-info.go.jp/pictis_portal/common/portal.do

ホーム > 内閣府 > 法令・ガイドライン等

 

移行認定又は移行認可の申請に当たって定款の変更の案

を作成するに際し特に留意すべき事項について

平成20 年10 月10 日

内閣府公益認定等委員会

 

U 各論(定款の変更の案を作成するに際し特に留意すべき事項)

4 社員総会及び評議員会の決議要件(定足数)及び理事の選任議案の

決議方法

 

問題の所在

@  (略)

A  理事の選任議案を社員総会(評議員会)で決議する方法について、   

例えば、4人の理事の選任議案の決議方法を4人一括で決議する方法は

許されるか。例えば、4人の理事候補者のうち、1名については反対、  

3名については賛成の議決権の行使をしたいと考えている社員(評議員)

がいるときに、4人一括で決議する方法が採用された場合には、その  

ような意思を反映した議決権の行使をすることができないこととなる   

ため、社員総会又は評議員会の議事の運営方法についての定款の定め

の在り方が問題となる。

 

(考え方)

また、理事の選任議案を社員総会(評議員会)で決議する方法について、

例えば、4人の理事の選任議案の決議(採決)を4人一括で決議(採決)

することとした場合には、本来、1つ1つの議案(1人1人の理事の

選任議案)ごとに賛成又は反対の意思を表明することができるはずの社員

(評議員)に対して、全議案についてすべて賛成か又はすべて反対かという

投票を強制することとなり、上記の法の趣旨が没却されることとなる。

このような法の趣旨及び考え方を踏まえ、

@ (略)

A 社員総会又は評議員会で理事の選任議案を採決する場合には、各候補者

ごとに決議する方法を採ることが望ましく 、特例民法法人の移行に際し、

その定款(の変更の案)に、社員総会又は評議員会の議事の運営方法に

関する定めの一つとして、「理事の選任議案の決議に際し候補者を一括

して採決(決議)すること」を一般的に許容する旨の定めを設けることは

許されない(問題の所在A)こととなる。

 

(定款審査における取扱い)

上記の考え方と異なる運用を選択する場合、すなわち、@(略)、A定款

に、社員総会又は評議員会の議事の運営方法に関する定めの一つとして、

「理事の選任議案の決議に際し候補者を一括して採決(決議)すること」

を一般的に許容する旨の定めを設けた場合には、不認定又は不認可の対象

となるものとする。

 

(注)

 :

問題の所在Aについての本文の考え方の趣旨を踏まえ、定款に社員総会

又は評議員会の議事の運営方法に関する定めを設けることとする場合には、

下記の定款の定めの例のように、「理事の選任議案の採決は各候補者ごと

に採決(決議)する方法とする」旨を定めておくことも考えられる。

5 定款の定めの例

第○条 社員総会の決議は、次項に規定する場合を除き、総社員の議決権

の過半数を有する社員が出席し、出席した当該社員の議決権の過半数を

もって行う。

2(略)

3 理事又は監事を選任する議案を決議するに際しては、各候補者ごとに

第1項の決議を行わなければならない。理事又は監事の候補者の合計数

が第○条に定める員数を上回る場合には、過半数の賛成を得た候補者

の中から得票数の多い順に員数の枠に達するまでの者を選任すること

とする。

 

 株式会社の取締役の選任については、議決権行使書面に記載すべき

事項を定めた会社法施行規則第66条により(根拠としては些か間接的

に思えますが)、「1人の取締役の選任が1つの議案となる」とみなされ

るようです(「新会社法の完全解説」太田達也著、税務研究会出版会)。

 議決権行使書面には、議案毎に賛否を記載する欄を設けるのですが、

取締役の選任については、議案が仮に「取締役○名選任の件」と一括り

にされていても、選任の賛否は候補者一人一人毎に記載できるように

する、ということです。

 会社法施行規則のそのような記述は、一般法人法の施行規則には明記

がないのですが、上記を読む限り、考え方は一般社団法人(引いては

公益社団法人)においても変わらない(と公益認定等委員会は考えて

いる)ようです。

 

 

会社法施行規則 (平成十八年二月七日法務省令第十二号)

(議決権行使書面)

第六十六条 法第三百一条第一項の規定により交付すべき議決権行使書面

に記載すべき事項又は法第三百二条第三項若しくは第四項の規定により

電磁的方法により提供すべき議決権行使書面に記載すべき事項は、次に

掲げる事項とする。

一 各議案(次のイからハまでに掲げる場合にあっては、当該イからハ

までに定めるもの)についての賛否(棄権の欄を設ける場合にあって

は、棄権を含む。)を記載する欄

イ 二以上の役員等の選任に関する議案である場合 各候補者の選任

ロ 二以上の役員等の解任に関する議案である場合 各役員等の解任

ハ 二以上の会計監査人の不再任に関する議案である場合 各会計監査人

の不再任

 

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律施行規則

(平成十九年四月二十日法務省令第二十八号)

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H19/H19F12001000028.html

(議決権行使書面)

第七条  法第四十一条第一項 の規定により交付すべき議決権行使書面

(同項 に規定する議決権行使書面をいう。以下同じ。)に記載すべき

事項又は法第四十二条第三項 若しくは第四項 の規定により電磁的方法

により提供すべき議決権行使書面に記載すべき事項は、次に掲げる事項

とする。

一 各議案についての賛否(棄権の欄を設ける場合にあっては、棄権を

含む。)を記載する欄

二 議決権の行使の期限

三 議決権を行使すべき社員の氏名又は名称(法第四十八条第一項

ただし書に規定する場合にあっては、行使することができる議決権の

数を含む。)

 

 

 累積投票では、個々の候補者に投票することができるので、上記で禁止

されている「一括決議」には当たらないかもしれません。

しかし、会社法のような明記された条文がない以上、

「出席した当該社員の議決権の過半数をもって行う」(一般法人法49条)

という原則に反し、「議決権の過半数」の票を得ていない当選者が出得る

累積投票の類の決議方法は、認められにくいのではないか、と素人なりに

考えますがいかがでしょうか。

 

 

例)理事3名選任 

候補者4名(A、B、C、D) 社員5名(イ、ロ、ハ、ニ、ホ)

 

 

1)累積投票

総議決権数 各議決権1個×選任数3×社員5=15

   A   B   C   D

 イ 3票

 ロ 1票 2票

 ハ     2票 1票

 ニ        1票  2票

 ホ        1票  2票

 計 4票 4票 3票 4票   A、B、Dが当選。

 

 

2)一括投票、選任数連記(≒大選挙区制)

総議決権数 各議決権1個×選任数3×社員5=15

   A   B   C   D

 イ 1票 1票 1票

 ロ 1票 1票 1票

 ハ 1票 1票 1票

 ニ     1票 1票 1票

 ホ     1票 1票 1票

 計 3票 5票 5票 2票   A、B、Cが当選。

 

 

3)一括投票、1人1票(≒中選挙区制)

総議決権数 各議決権1個×社員5=5

   A   B   C   D

 イ 1票 

 ロ     1票 

 ハ     1票

 ニ            1票

 ホ            1票

 計 1票 2票 0票 2票   A、B、Dが当選。

 

 

4)個別投票

総議決権数 各議決権1個×社員5=5(×4回)

   A   B   C   D

 イ 1票 1票 1票

 ロ 1票 1票 1票

 ハ 1票 1票 1票 1票

 ニ 1票 1票 1票 1票

 ホ     1票 1票 1票

 計 4票 5票 5票 3票   A、B、Cが当選。

 

 

会社法 (平成十七年七月二十六日法律第八十六号)

 

(役員の選任及び解任の株主総会の決議)

第三百四十一条  第三百九条第一項の規定にかかわらず、役員を選任し、

又は解任する株主総会の決議は、議決権を行使することができる株主の

議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、

その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の

過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合

以上)をもって行わなければならない。

 

(累積投票による取締役の選任)

第三百四十二条  株主総会の目的である事項が二人以上の取締役の選任

である場合には、株主(取締役の選任について議決権を行使すること

ができる株主に限る。以下この条において同じ。)は、定款に別段の

定めがあるときを除き、株式会社に対し、第三項から第五項までに規定

するところにより取締役を選任すべきことを請求することができる。

2 前項の規定による請求は、同項の株主総会の日の五日前までにしな

ければならない。

3 第三百八条第一項の規定にかかわらず、第一項の規定による請求が

あった場合には、取締役の選任の決議については、株主は、その有する

株式一株(単元株式数を定款で定めている場合にあっては、一単元の

株式)につき、当該株主総会において選任する取締役の数と同数の

議決権を有する。この場合においては、株主は、一人のみに投票し、

又は二人以上に投票して、その議決権を行使することができる。

4 前項の場合には、投票の最多数を得た者から順次取締役に選任された

ものとする。

5 前二項に定めるもののほか、第一項の規定による請求があった場合

における取締役の選任に関し必要な事項は、法務省令で定める。

6  前条の規定は、前三項に規定するところにより選任された取締役の

解任の決議については、適用しない。

 

 

(議決権の数)

第三百八条  株主(株式会社がその総株主の議決権の四分の一以上を有

することその他の事由を通じて株式会社がその経営を実質的に支配する

ことが可能な関係にあるものとして法務省令で定める株主を除く。)は、

株主総会において、その有する株式一株につき一個の議決権を有する。

ただし、単元株式数を定款で定めている場合には、一単元の株式につき

一個の議決権を有する。

2 前項の規定にかかわらず、株式会社は、自己株式については、議決権

を有しない。

 

(株主総会の決議)

第三百九条  株主総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、

議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が

出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。

 

 

 

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