30回JT将棋日本シリーズ 2009.11.22(日)

於 東京ビッグサイト 東4ホール (1)

プロ公式戦決勝・深浦康市王位−谷川浩司九段

東京こども大会決勝(低学年部門・高学年部門)

 

 

写真トップは、プロ公式戦対局と大盤解説の様子。

写真・左は、大盤解説聞き手の山田久美女流三段。

 

昨日は土曜日、明日は祝日でわたしは3連休。

銀座では巨人軍の日本一パレード。

倉敷では倉敷藤花戦第2局、里見香奈・倉敷藤花対中村真梨花女流二段

が公開対局で行われ、インターネット中継もある。

しかしわたしは、将棋日本シリーズを見に行った。

加藤先生が解説であった。

 

朝の雨は上がっていたが、寒い日であった。

 NHK杯のTV放送を見てから家を出、JR、地下鉄、モノレール(ゆりかもめ)

を乗り継いで、有明の東京ビッグサイトへ。

 ばかでかいホールが幾つもあって、展示会などが開かれている。

 東4ホールへ行くと、入り口からこども大会が行なわれている様子が覗けた。

 プロ公式戦観戦者の行列が既にできていた。

 13:40くらいだったか、80名ほど。

 入場予定は14:25。

 並んで待つ内に、最終的には200人以上になったであろうか。

 時間が近づくと、JTガールのきれいなおねえさんがやって来て、お土産の袋を

くれた

 中にはアンケートやクイズの応募用紙、パンフレット、週刊将棋等が入っていた。

週刊将棋は、昨年行った静岡大会、一昨年の東海大会ではもらわなかった。

この決勝を展望する記事もあった。

 A4版16ページフルカラーのパンフレットには、里見香奈・倉敷藤花とお母さん

のインタビュー記事もあった。

 里見倉敷藤花も、JTこども大会に出たことがあるそうである。

 広島大会で2002年小学五年生の時にベスト4。

2003年小六で準優勝とのこと。

 

50名ずつまとめて入場。

 コンクリートの床にパイプ椅子をギチギチに並べた客席は相当に狭い。

 ひしめき合って座る。

 こども大会をやっていた所と同じなので、席自体はたくさんある。

 行列する意味はひとえに前の方の席に座れる所にある。

 前から4、5列目になったが、もっと早く来ればよかったと思った。

 開演(15:40予定)まで時間があるので、トイレに行ってぶらぶらする。

 クイズに回答して用紙を出すと、JT飲料がもらえる。

 この手のものはすぐわかる問題が多いのだが、結構難しい。

 会場内に展示されたJTの活動を紹介するパネルを見て、「ひろえば街が好きに

なる」等、そのキャッチフレーズなどを記入する。

 パネルには、過去のJT将棋日本シリーズのポスターの展示もあり、毎年工夫を

凝らした図柄になっていて、面白かった。

 この大会は主催が日本将棋連盟、協賛がJTとなっているが(その他に地元の

役所が後援に入る)、実際の仕切りはJT(及び委託するイベント会社)がやって

いると思われる。

 お金も人手も掛け、きちっと運営されている。

開演に先立ち(時計を持っていず、携帯はしまっていたので、時間はわかり

ません。以下同じ)、女性司会者がステージ上に現れ、突然プレゼントの抽選を

始める。

 こども大会が予定通り終らず、時間つなぎだったのかもしれない。

 それも終り、やっと開演。

 大会の趣旨を司会者が説明するだけで、主催者挨拶などで時間をかけない

のが良い。

 スタッフが呼び込まれ紹介される。

 

解説:加藤一二三九段

聞き手:山田久美女流三段

読み上げ:安食総子女流初段

   

 記録、大盤操作の奨励会員も紹介されたがメモを取らなかった。

 それから、スペシャル・ゲストとしてつるの剛士さん。

 こども大会の解説に加わるほか、プレゼント抽選会にも参加。

 人気タレントらしく派手な格好だったが、プロ棋士のみならず女流棋士・奨励会員

にも敬意が感じられ、客(特に子供)への気配りも細やかで、好感が持てた。

 正直タレントとしての活動はよく知っているとは言えないけれど、ドラマ「ハチワン

ダイバー」でのプロ棋士役、特に1分切れ負け勝負の演技は、この人ならではで

素晴らしかった。

 第1回マイナビ女子オープンの前夜祭の司会も勤められていた。

 

 

 さて、こども大会の決勝。

 まずは低学年の部。

 先手・森田富裕君(千葉県)と後手・伊藤良真君(東京都)は共に小学三年生。

 後からプロが対局する同じ舞台上で、同じ盤駒を使って和装で対局する。

 持ち時間はなく1手30秒未満だが、30秒も使わない超早指し。

 

山 田 加藤先生が最初に羽織袴を着たのは?

加 藤 20歳のときの――

つるの 成人式?

加 藤 名人戦の第1局です。

 

 対局は相矢倉に。

 123手で先手・森田君の勝ち。

 終局後大盤で感想戦、のはずが…

 

加藤 矢倉詳しいですね。

    よく指してんでしょ?

    (返事なし)

    指してないの?

    (返事なし)

    これからもがんばって下さいね。

 

 マイクを持たされても、状況に戸惑ったか2人ともしゃべれなかった。

 

つるの (感想を聞かれて)

早いですねー。(対局も)

加藤先生の解説も。

山 田  わたしも今日はしゃべる役でなく(加藤先生のしゃべりを)止める役で

来てますから。

 

 次いで高学年部門の決勝。

 先手・山根ことみさん(愛媛県)は小学六年生の女の子。

 女流棋士志望、との由。

 後手・川村悠人君(神奈川県)は五年生。

 対局は低学年よりは落ち着いてゆっくり目。

先手が四間飛車に。

 すかさず、

 

山田 加藤先生は四間飛車には

加藤 棒銀です。何と言っても棒銀!

 

客、大喜び。

 ところが後手は、△5三銀と右銀を上がる。

 

加藤 (左銀を上がる)△4ニ銀だったら棒銀の可能性があったんだけれども。

 

残念そうな先生。

 後手は左美濃に玉を囲う。

 

加藤 わたしは後手のこの形は指したことがない。

山田 なぜですか?

加藤 いい感じなんだけども、とにかくねえ…(笑)

 

加藤 山根君は…

山田 山根さん。

 

 加藤先生は男女をずっと逆だと勘違いしていたようだ。

 

つるの 先生今日はネクタイの長さがちょうどよいですね。

加 藤 ネクタイは普通の長さで。

対局の時だけなんですよ。

普段から長くしていると、家族から変わってるって言われるんですよ。

山 田 対局の時だけ長くするのは?

加 藤 習慣です。

 

 対局は居飛車側の後手・川村君が74手で勝って優勝。

 大盤で少しだけ感想戦。

 

加藤 いつもこういう指し方をしてるんですか?

    棒銀なんかはすることないんですか。

川村 するときもあるんですけど、じっくりした方がいいかと…

 

写真は、羽生名人(左)と、つるの剛士さん(右)。

 

 こども大会決勝の表彰式。

 「スペシャル・ゲスト」として呼び込まれたプレゼンターは、羽生善治名人。

 つるのさんと少しトーク。

 

次いで、休みなくプロ公式戦の決勝へ。

見所を語る解説陣と、抱負を語る両対局者。

 

加藤 お二人は20回程戦っていい勝負。

    ここ5局程は谷川九段が中飛車に振っている。

    今日もその可能性がある。

 

山田 解説のこのコンビも3年連続。

    そちらも楽しんでほしい。

 

深浦 25年程前、福岡で初めてJT杯を見たのが大山-谷川戦。

    谷川先生は当時名人だった。

    決勝で対局できる喜びがかなりある。

    昨年決勝(対森下九段)で負けた悔しさもある。

 

谷川 (予選をふり返っていかがでしたか、と聞かれ)

    どうしてわたしがここにいるのかと…(笑)

    深浦王位は王位戦三連覇。

    今期は三連敗からの四連勝。

    わたしに足りないと言われる精神力を持っている。

    見習いたい。

33年の棋士生活でこれ程多くのファンの前で指すのは初めて。

    嬉しいと同時にプレッシャーも。

    全力を尽くしたい。

 

安食女流初段による振駒は、振り直しをして(1度目は駒が立ったのか?)、

と金が3枚。

谷川九段が先手に。

すぐ対局開始。

持ち時間10分、切れたら30秒未満、ただし1分×5回の考慮時間あり。

脇の大盤で、加藤先生が解説する。

対局者に聞こえるので符号は言わず、指し手は棒で動きを示す。

 

山田 谷川九段は27回連続出場。

加藤 わたしは対局者・解説者で30回連続出場。

    谷川さんは優勝5回、準優勝5回。

    わたしは優勝2回、準優勝2回。

    優勝する人は準優勝も多い。

 

対局は横歩取りに。

 

加藤 谷川九段は過去JT杯で横歩取りの将棋を勝っている。

    相手は…誰だったかな。僕昨日調べたんですよ。

 

加藤 谷川九段は最年少で名人になった人。

    相手は、わたくし。

    わたしが43歳で、谷川九段が21歳の時。

    その後も勝ち続けて、十七世名人の称号を得ています。

 

 36手目の局面で対局を中断。

 次の手を谷川九段が封じる。

 客は封じ手を予想して紙に書いて出す。

 

加藤 まずは▲3五歩だが△3六歩の傷が残る。

△8四飛▲8五歩△2四飛と回る手もある。

▲3六歩と控えて打つのを推奨。

▲8ニ歩は△3六歩と打たれる。

山田 ▲4五桂?その後は▲6五桂と。

加藤 それもある。△4四角なら▲6五桂。

聞かれた客1 ▲8五飛?

加藤 それもあります。

2 ▲3五歩。

加藤 それもあります。先ほどわたし言いました。

 

10分の休憩の後、対局再開。

95手で谷川九段の勝ち。

時間が遅くなっていたようで感想戦はほんの少しだけ。

表彰に移る。

米長邦雄日本将棋連盟会長より賞状。

JT副社長よりJT杯と賞金500万円の目録。

準優勝の深浦王位にも賞金150万円の目録。

次いでプレゼント抽選会。

谷川九段が残り、つるのさんが加わる。

「封じ手予想クイズ」、「勝利者予想クイズ」、全員が大賞の「お楽しみ抽選

会」などの抽選。

賞品はJT飲料、プロ公式戦参加棋士12名のサイン入り扇子、つるのさん

のサイン入り扇子、決勝量対局者の揮毫入り将棋盤、JTバレーボール・

チームのマスコットのぬいぐるみ。

抽選も終った後、最後に谷川九段の挨拶。

 

谷川 こども大会は2000人の参加があって成功。

    心配は自分の対局だけだった。

    元々出られなかった棋戦。

    のびのび指せたのが勝因だった。

    出場繰上げということで、対局できることが喜び。

その上に優勝したことで来年も出場できる。

    これで賞金も頂いたらバチが当たる。

    前から考えていたことだが、賞金はJTさんにお預けしたい。

    JTさんには棋士の学校訪問などさせて頂いており、どういう風に

使って頂くか連盟とJTさんで話し合いたい。

 

写真は、観客を見送る谷川九段。

 

 パンフレットの出場棋士には、実は谷川九段の名前はない。

 その代わり紙が挟み込んであって、こう書いてある。

 

 

出場棋士変更のお知らせ

 

 「JT将棋日本シリーズ」福岡大会 プロ公式戦に出場を予定しておりました

渡辺 明竜王が欠場となりましたため、谷川浩司九段(08年度賞金ランキング

13位)の繰上げ出場を決定しました。

   

平成21年9月  社団法人 日本将棋連盟

 

 

 連続出場記録は途切れるはずであったが継続され、その上優勝。

 谷川九段にとっては久々の棋戦優勝でもある。

 今期は好調で、A級順位戦もトップ。

 来年は久しぶりに、羽生名人との名人戦も期待される。

 渡辺竜王の欠場の理由は、家族が新型インフルエンザに罹ったから。

 客との触れ合いを大切にする将棋日本シリーズでは、やむを得なかった

のかもしれない。

 この日も谷川九段が、握手で客を見送る。

 わたしもしてもらった。

嬉しいことだが、さすがに疲れた様子で、気の毒でもあった。

 「羽生さんと名人戦」云々と言おうと思ったが、やめた。

 客が出て会場のシャッターが下り始めたのが、18:48であった。

 

 

※本大会に関連するサイト

 

JT将棋日本シリーズ 公式HP

http://www.jti.co.jp/knowledge/shogi/

http://www.jti.co.jp/knowledge/shogi/professional/2009/final/index.html

駒魂(山田女流三段の応援サイト)

http://www.venus.dti.ne.jp/~asai/shogi/

 

 

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