第28回JT将棋日本シリーズ東海大会 2007.10.8
於 名古屋市公会堂(解説・加藤一二三九段)
          (2)棋譜・解説
プロ公式戦準決勝第1局 佐藤JT杯覇者−森下九段


トップの写真・左は、感想戦での森下九段と佐藤JT杯覇者。
トップ・右は、表彰式での両プロ棋士。

左の写真は、解説用の大盤。

棋譜・解説
 コメントは、基本的には加藤九段の解説。
 名前とカギ括弧付は、感想戦でのコメント。

プロ公式戦 ルール
 持ち時間10分→1手30秒未満。
 ただし1分×5回の考慮時間あり。

プロ公式戦 準決勝第1局
▲佐藤康光JT杯覇者(棋聖棋王)
△森下卓九段 

1▲7六歩   
2△8四歩
3▲1六歩   
4△8五歩
5▲7七角   
6△3四歩
7▲8八飛 (客がどよめく)
        緊迫感が一気に増して来ましたね。
8△4二玉
9▲6八銀   
10△1四歩
11▲5六歩   
12△3二玉 居飛車側がどうするか。
        わたしなら急戦。棒銀をして、苦
        しい思いをすることもあるのですが。
        プロで棒銀が好きでやる人が3人。
        わたし、飯塚祐紀六段…もう一人、
        確かいる。3人ぐらいしかいない。
        面白いと思うんですけど。
        今のプロは長期戦が好き。
        穴熊が多い。
13▲5七銀 序盤早々から作戦的に工夫している。
        佐藤さんの特徴。
        佐藤さんの素晴らしい所は、恐らく
        一人で研究して新手を出す所。
        序盤でどうなろうと自信がある。
        わたしなら序盤では早く形を決めたい。
14△6二銀
15▲4八玉   
16△5四歩 対局中大きい動きをするのは、
        佐藤、羽生、わたし。
        1番が佐藤さんかもしれない。
        わたしは3番。
        羽生さんは何時間もせんすを
        パタパタしている。
        それに比べるとわたしなんか
        は子供みたいなもんで。
        動いている方が調子がよい。
17▲3八玉   
18△5三銀
(ここで次の一手の出題。封じ手後休憩)
19▲2八玉   
20△5二金右
21▲3八銀 次は△4四歩なのか△7四歩なのか。
        △7四歩なら▲6六歩
        △7五歩▲同歩△6四銀。
22△4四歩 森下九段らしい長期戦略。
        わたしなら△7四歩。 
        結構得意になって
        (急戦を)やっています。

プロは勝った時は98点、
負けた時も80点の将棋を指している。
だから負けるのも大したものなんです。
千敗して久しぶりに取材が増えた。
明日発売の文芸春秋に随筆が載ります。
一番深刻だったのは20連敗した時で、
あの時に比べれば千敗は何でもない。

JT杯でわたしだけが持っている記録。
解説が好評で、決勝もしろということで
事務局のご指名で(1期で)2回解説をした。
2度とないと思う。

23▲4六歩   
24△3三角
25▲5八金左  
26△2二玉
27▲4七金   
28△3二銀
29▲3六歩   
30△4三金
31▲3七桂   
32△2四歩
33▲6六銀   
34△6四銀
35▲2六歩   
36△9四歩 この辺りで端を突くのは森下流。
37▲9六歩   
38△2三銀

JT杯は事務局が気を使って設営してくれて
いて、気持ちよく対局ができる。ありがたい。
土地の名産品を勝利者賞として頂ける。
妻がJT杯でいいものが揃えられてよかったね、
と今でも言っている。
解説者には何にもないんだけれども。

39▲5八飛   
40△3二金
41▲5五歩   
42△同 歩
43▲同 銀   
44△同 銀
45▲同 飛   
46△5四歩 △7八銀があるから
        ▲5八飛でしょう。
47▲5九飛  △5五銀もありますね。
         珍しい手だけれども実戦的な手。
         相手の手を封じる。
         △6五銀だと、▲4五歩
         △7六銀▲4四歩…
48△8六歩
49▲同 歩   
50△7八銀 攻め合いの手。(対して)
        △6五銀はがんばる手。
        △8六歩▲同歩の後△6五銀だと
        ▲8七銀もあるので△7八銀とした。
        ここで▲4五歩だと、△6七銀成
        ▲4四歩△同金▲同角△同角▲5四飛
        △9九角成▲5一飛成で優劣不明。
51▲5三歩 高等戦術で難しい手。
        △6七銀成だと▲5ニ歩成△7七成銀
        ▲同桂△5ニ飛▲6九飛、こんな感じ
        なんですかねえ。△5三同金だと…

写真は客席を通って登場する佐藤JT杯覇者。

52△6七銀成 1回▲8八角でしょうか?
         △8六飛なら▲9七角。
         △8七歩なら▲9七角△9五歩
         ▲8五歩△同飛▲5ニ歩成
         これは先手理想的な捌き。
53▲8八角   
54△8六飛 強気の指し方。▲5ニ歩成が見えて
        いる(のに飛車を出るのは)。
55▲9七角   
56△8七飛成
57▲5二歩成 手堅くなら△8六歩。
58△8六歩  候補手は▲4一銀、▲4四歩…
59▲5五歩 △同歩▲同飛△5四歩なら▲8五飛。
        △6八成銀なら▲5六飛。
60△同 歩
61▲同 飛 こうなったら△4五歩▲8五飛
        △4六歩で▲同金なら△4八歩。
62△4五歩
63▲同 飛 (推奨の▲8五飛でなく)うーん。
64△5七歩  利かし。普通は▲5九歩。
65▲5九歩   
66△8九龍 △9九角成と迷う所。
        狙いは△5五桂▲4八金引△4七歩。
67▲4一銀  
68△5八歩成 ▲同歩△5五桂▲3二銀成
         △同銀▲4二金 さぁて。
         △4四銀でがんばれるか。
         この局面、どうでしょうか?
69▲同歩   
70△5五桂
71▲3二銀成  
72△同 銀
73▲4二金   
74△4四金 持ち駒の銀を残して置きたかった
        のでしょう。
        森下「△4四銀だと▲5五飛△同銀
           ▲4五桂と捌かれると思った」
        佐藤「△4四金がいい手だった。
           最後は一瞬チャンスが
           来たかなと思ったが」
75▲3二金   
76△同 玉
77▲4二銀   
78△2二角 ▲4一銀不成△4三玉
        ▲4四飛△同玉…
79▲5七金 佐藤「金寄りではだめですね」   
80△4五金
81▲同 桂   
82△4四角 森下「△5七成銀▲同歩だと
           △3七金から詰みだった。
           角を出てから気付いた」
83▲7九金 難しい所、もうちょっと時間が欲しい。
84△8七龍 これなかなか微妙な所でしたよね。
85▲8八金 
86△7六龍
87▲7七歩 仮に△6五竜だと▲8六角△6四歩
        ▲6六歩△同成銀▲同金△同竜。
        この後▲4六竜なら必至。
88△6五龍
89▲8六角   
90△5七成銀
91▲同 歩   
92△2六角 次に△3七銀を狙ってます。
        ▲3三銀成があるかな?
93▲3三銀成  
94△同 桂
95▲4二角成(ここら辺りから解説は
         無言に。駒を動かして
         読み筋を示すのみ)
96△2一玉
97▲4三馬   
98△1二玉
99▲2三銀   
100△同 玉
101▲3三桂成  
102△1三玉
103▲6五馬   
104△3七銀
 
(加藤先生が以下の手順を示すが、
 △2八飛の所△2九飛と打ってしまう。
 すかさず山田女流が▲6五の馬筋を
 斜めになぞる。飛車、当たってます!
 加藤先生びっくり、
 頭をなでなでして反省の図。
 これが全て無言劇、場内大爆笑。
 先日亡くなったマルセル・マルソーも、
「よき後継者を得た」とご満足でしょう。
 もっともその後は詰みまで読み切っておられました)

105▲同 銀   
106△同角成
107▲同 玉   
108△2六銀
109▲同 玉   
110△2八飛
111▲2七歩   
112△2五銀
まで▲森下九段の勝ち。

以下は
▲3七玉△2七飛成 ここで
A▲同玉なら
 △2六銀
 ▲3八玉
 △3七金
 ▲2九玉
 △2八金まで
B▲4八玉なら
 △4七銀
 ▲5九玉
 △5八金
 ▲同金
 △同銀成
 ▲同玉
 △6七金
 ▲4九玉
 △4八歩
 ▲同玉
 △4七歩
 ▲5九玉 どこに逃げても頭金まで。
 △5八金打まで

写真は帰る客を握手で送る森下九段。



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