※2007.12.31 大晦日のプロレス・格闘技


 力道山の頃だからテレビも黎明期、NHKの紅白歌合戦に、日本テレビがプロレス中継をぶつける計画があったという。
 反対意見のスポーツ紙にすっぱ抜かれて取り止めになったが、日本テレビの福井三郎編成局次長は、実現したら圧倒する自信があったと悔しがっていたそうである。
(田鶴浜弘「日本プロレス30年史」日本テレビ放送網、1984)

 1985の大晦日には「格闘技大戦争」(21〜23時TBSで放送)が企画された。
 これは当時、全日本プロレスのマットに上がりながら独立の動きを見せていた長州力率いるジャパン・プロレスを主体としたもの。
 結局これは実現せず、1986.1.1、全日本プロレスの後楽園ホール大会で、長州力対トム・マギーの異種格闘技戦が行われ、日本テレビが放送した。
 その内容からすれば、TBSは中止になってよかったと思ったであろう。
(小佐野景浩「昭和プロレス維新」日本スポーツ出版社、2000)

 ここ数年、大晦日の格闘技番組は恒例となり、定着している。
 これはTBSとK-1(FEG)の努力が大きいであろう。
 フジテレビは暴力団とつながりがあるとしてPRIDEの放送を打ち切り。
 大晦日の「男祭り」もなくなった。
 PRIDEはUFCに買収され、消滅。
 その残党が「やれんのか!」なるイベントを立ち上げ、大晦日さいたまスーパーアリーナで興行。
 K-1も協力。選手を送り、TBSでも一部放送。
 「やれんのか!」の前には、プロレスイベント「ハッスル」も開催され、こちらはテレビ東京で放送される。
 遂に大晦日のプロレス地上波放映が実現である。
 地上波以外では、後楽園ホールで行われるインディーのオールスター戦「プロレスサミット2007 カウンドダウンプロレス」が、CSチャンネル「GAORA」で生中継。
 同じくCS「日テレG+」では、中継ではないが「鉄人・小橋建太祭り」を放送。

 さて、わたしはと言うと、自室のテレビで18:00〜21:30まで「K-1 Dynamite!!」(TBS)、21:30〜23:30まで「ハッスル祭り」(テレビ東京)を録画。
 帰省した実家で21時頃から終了まで、「K-1 Dynamite!!」を視聴した。
 以下は、1.1に日記に書いた「K-1 Dynamite!!」の感想。

 話題性重視の人選、奇をてらったカード(体格差や力量差があるなど)が多く、それが皆順当な結果に終わり(サプライズがなく)、競った勝負が少なかったと思います。
 例外はヌル秋山が三崎に負けた試合ぐらいか?
 ヒョードルも順当勝ちだったけど、これは勝ち方が見所で、実際見事なものでした。
 (何年か前の曙−ホイス戦をほうふつとさせました)
 時間が余ってか、宮田−ハンセンが最後に放送されたけれど、これはいかにも総合らしい(いささか退屈な)試合で、まあこういうもんだ、という試合が最後にでもあったのは結果としては良かったかと思います。
 秋山戦では試合後高田がでてきて、三崎に何か声をかけたりだき合ったりしてたけど、裏ではハッスルをまだやっていたのではないか?
 三崎については何も知らなかったけど、PRIDEウェルター級王者というのは五味のあとということだったか?
 試合中に時々もも上げジャンプをしていたが、実況によるとひざが得意でそのフェイントらしい。
 元柔道家でかつ(そのくせ)打撃が得意、秋山とは似たタイプだったけど、パンチを当てて顔面げりでフィニッシュ。
 寝技の攻撃は全くなかった。
 いっしょに見ていた母はヌルヌル反則を試合前のVTRではじめて知って、三崎を応援していたようだった。


 ヒョードル−ホンマン戦と秋山−三崎戦は、K-1の選手がさいたまの「やれんのか!」に出場した試合。
 TBSでも大阪ドームの「K-1 Dynamite!!」のメイン、桜庭−船木戦のあと放送された。
 秋山−三崎戦は、見方としてK-1対PRIDE、日本対韓国(もっとも秋山は既に帰化しているが)という対立概念もあったが、何より秋山が前年の大晦日、桜庭戦で反則失格し、無期限出場停止になっての(些か早い)日本復帰戦で、会場でのブーイングを聞いてもわかるように、未だ秋山を許さず、その負ける所を見たい、という欲求を持って見ている人が多かったろうし、わたしもその一人であった。
 だから、あの結末には満足していた。
 ところが、実家から東京に戻り、インターネットを見ると、三崎の攻撃が反則との疑いが出ていることを知って、驚いた。
 ファンの間で論争が起きているが、ビデオも録画していず、わたし個人としては何ともいいがたい。
 秋山サイドからの正式な提訴も現時点(1.13)ではないようであるし、成り行きを見守るにとどめたい。
 1つだけ言うと、三崎の蹴り(顔に当たったと見えたが、それもはっきりしないようだ)について「サッカーボールキック」という表現が使われているのが驚きであった。
 これは純然たるプロレス用語だと思っていたからである。

2007.12.25
『やれんのか!大晦日!2007』
オフィシャルルール・主要ポイントのご説明
 :
■4点ポジションおよび“猪木-アリ状態”における足による加撃について
いわゆる頭部・顔面へのサッカーボールキック・踏みつけは反則とする。だが、頭部・顔面への膝による攻撃は反則ではない。
 :
★このルールにより、想定されるシチュエーション
【有効】
○4点ポジションからのヒザ蹴り
グラウンド状態において、両手両足など身体の部位4点がマットについた状態、いわゆる「4点ポジション」状態にある相手へのヒザ蹴りを認める。
 :
【反則】
×4点ポジション・“猪木-アリ状態”から頭部・顔面へのサッカーボールキック、踏みつけ
 :
http://yarennoka.com/news/detail.php?id=1198590481


サッカーボールキック
  出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
 サッカーボールキックは、総合格闘技、プロレスの蹴り技の一種。
 グラウンド状態の相手に対して、サッカーボールを蹴るが如く足の甲でキックを放つ技。
 総合格闘技では頭を、プロレスでは背中や胸などを狙うことが多い。
 危険な技であるため、禁止されている団体もある。UFC、HERO'S、戦極などでは禁止技となっている。PRIDEでは、初期は禁止技であったがPRIDE.13のルール改正後、解禁となった。



 公式ルールでは、「いわゆる頭部・顔面へのサッカーボールキック」という表現をしていて、定義は省略している。
 ただしファンの論争では、そこではなく「4点ポジション」の定義が主な争点になっているようだ。

 1980年代後半、全日本プロレスの天龍が使い始めた技が、サッカーボールキックと呼ばれた。
 命名は、日本テレビの中継担当アナウンサーか、プロレス・マスコミの誰かであろう。
 ダウンした相手の背中を、サッカーボールを蹴るが如く、ステップを踏んで思い切り蹴り上げる。
 顔を蹴ることもあったが、こちらはひねりもなく「顔面蹴り」と呼ばれた。
 うつむいた相手の顔(主に額だが鼻に当たることも)を、下から足の甲でこつん、こつんと蹴り上げる。
 さすがにサッカーボールのようには蹴っていない。
 それでも顔にシューズの紐の跡が残るほどの威力で、前田日明はこれに対抗して、タッグマッチのカットプレーで背後から長州力の顔を蹴ってケガをさせ、新日本プロレスを追放された。
 それが高田延彦らとの第2次UWF旗揚げにつながる。

 それから20年ぐらいたっているが、天龍はまだプロレスをやっている。
 しかも「高田総統」率いるモンスター軍の一員としてである。
 「ハッスル」はPRIDE(DSE)の税金対策と言われ、結構前に始まったが、PRIDEがなくなってもまだ続いている。
 テレビ東京のレギュラー放送もつき、興行もコンスタントに行っているから、調子がいいのだろう。
 生で見たのは2005年の「ハッスル7」の1回だけ。
 プロレス・マニア向けではない、初めて見た人も楽しめるようなエンターテインメントを目指しているものと思っていたが、その割りに新日本プロレスのパロディなどをやっていて、志が低いように感じた。
 その後、芸能人を起用することで、話題になった。
 今や高田総統が、芸人(くりーむしちゅー有田)にまねされるようなところまで来た。
 と言っていいのだろうか。
 東京に戻ってから、大晦日の「ハッスル祭り」の録画を見た。
 ムタ・曙・インリン様 対 天龍・TAJIRI・RGの試合のほかは、(ストーリー展開も含めて)些か退屈に感じた。
 エンターテインメントに走るからつまらないのではなく、エンターテインメントとしてつまらないのである。
 そのこととは別に、天龍と川田については、やはり見ていて残念な気がするのである。
 これは面白い、つまらないとは別である。
 かつて天龍は、神取をぼこぼこにした(そんなことをするぐらいなら、初めから女子レスラーとやる話を受けるな、というのが正論ではあろうが)。
 しかし今は、ハードゲイにピンされる。
 その方が面白いとしても、さびしくはある。

 人気アニメのキャラクター「ケロロ軍曹」は、緑色のコスチュームからぽっこり膨らんだお腹を出し、「本家」フロッグ・スプラッシュでフィニッシュした。
 三沢を感じたのだが狙いだったのであろうか。
 ところで、小川直也はなぜいなくなったのだろう。

 大晦日の視聴率、「K-1 Dynamite!!」は14.7%で民放1位。
 「ハッスル祭り」は4.0%、NHK紅白1部32.8%、2部39.5%。


追記2008.1.19

 問題の場面の写真を幾つか見た。
 映像も見ることができ、何度も見直した。
 三崎の蹴りは、秋山の顔に当たっていない。
 肩口から胸にヒットしたようだ。
 あごにすら距離があるのではないだろうか。
 秋山は立ち上がり様で、更に蹴りをよけようとした様子も見える。
 だから、三崎が顔を狙ったとしても、当たらなかった。
 顔より下、かつ手前に当たった。
 相手の両手、両足が床についていた時に、顔を狙って蹴ったなら、結果として当たらなくても、反則ではないか。
 主張するならそこだろうか?
 しかし今回は、顔を狙った証明も難しそうだ。
 映像は三崎と秋山が、手前と奥とに重なるようなアングルで、見づらいし特に距離感がつかめない。
 立ち上がりかけの選手を蹴ったら、ふっ飛んだ。
 総合で胸を狙って蹴ることは、誰の頭にもない。
 はっきり見えてなくても、顔に当たった、と思うであろう。
 わたしもその一人であったから、今は驚いている。