2007.12.2(日) NOAH 日本武道館 


(※P:ピンフォール、ギブアップ)


 90年代中頃、全日本の武道館大会に、毎回のように行っていた。
 馬場が死に、三沢らが独立し、変貌した全日本は武道館でやらなくなった。
 代わりに、武道館は、三沢のNOAHの聖地となった。
 しかし、わたしは、1度も行ったことがなかった。
 今回初めて、NOAHの武道館大会に行った。
 この日、小橋建太が復帰した。
 癌に勝ったのである。

 谷口周平が怪我のため欠場。
 微妙にカードが変更された。
 第1試合出場予定の伊藤が、谷口の代わりに第4試合に。
 第1試合には平柳が出場。
 
 掛け値なしの満員。
 2階最後列までびっしり埋まり、その後ろには立ち見客も大勢。
 これほど入った武道館は記憶にない。
 (HPによると主催者発表は17,000人)


○川畑輝鎮 百田光雄 P 泉田純至 平柳努●

 永源は引退したが、百田はまだがんばっている。
 しかし、やはり永源相手でないとピリッとしない、ように見えるのは気のせいか。
 一人だけ若手の平柳。
 急所攻撃はいただけない。
 愚直にまじめにファイトするのが役どころである。
 川畑にコーナーからのダイビング・セントーンを食らってピンされた。
 

金丸義信 ○青木篤志 P 鈴木鼓太郎 太田一平●

 同行の友人が、若手をよく知らない、と言うので、
「青いタイツが青木、焼きそば色の黄色いタイツが一平ちゃん」
と説明した。
 焼きそばは、黄色というよりは茶色であろうが、物理学的に言うと、茶色の光の波長は黄色ないしは橙色と同じであり、周囲に比べ明度が暗いために茶色に見える(虹のスペクトルが茶色がないのはそのため)とのことである。
 試合は金丸x鼓太郎、青木x太田の絡みが主に続き、青木が腕十字で1本勝ち。


佐野巧真 ●井上雅央 P ダグ・ウィリアムス ブキャナン○

 正直言って、最近の流れは全く抑えていない。
 R.O.D.はどうなっているのだろう。
 ずば抜けて体格のよい、元WWEスーパースターのブキャナン。
 断崖のど輪落とし風に、コーナー上の相手をアイアンクローでつかんでマットに叩きつける荒業(「雪崩式アイアンボム」とのこと)で、雅央をピン。
 雅央は、レフリーのマイティ井上とお笑いに走る場面もあった。


杉浦貴 モハメド・ヨネ ●伊藤旭彦 P 本田多聞 菊地毅 潮崎豪○

 杉浦x多聞、ヨネx菊地、伊藤x潮崎の絡みが多かった6人タッグ。
 杉浦の五輪予選スラム、多聞のジャーマン(デッド・エンド)の応酬もあったが、フィニッシュに至らず。
 潮崎が、ブレンバスターの要領で持ち上げて前に落とす技(ゴーフラッシャー)で伊藤をピン。
 潮崎は、小橋譲りのチョップ、ラリアートを、今日をここぞとばかりに多用。
 しかし、もっともっと体をごつくしないと、本家のような説得力を持たないであろう。


小川良成 ○エディ・エドワーズ P KENTA 石森太二●

 先発した小川とKENTAは、終始感情的にも見える殴り合い、蹴り合い。
 エディと石森は、スピーディーな飛び技の応酬。
 友人に、こいつはすごいよ、と推奨した石森は、スーパースター・エルボーなど素晴らしい技の切れを見せたが、今日はエディが上回り、フィッシャーマンズ・バスターでピンされた。
 小川とKENTAは試合後も乱闘。


田上明 ●志賀賢太郎 P バイソン・スミス 齋藤彰俊○

 田上・志賀組は、普通にファイトしていても、どこかおかしい。
 狙って笑いを取っているであろう場面もあるが、狙わずして取ってしまっているような所も。
 いいのか悪いのか。
 いささか長く感じた試合。
 彰俊に「早く決めろ」の野次も。
 強烈な延髄斬り(スイクルデス)でピン。


●丸藤正道 P 森嶋猛○

 次代を担う2人のシングルがセミ・ファイナル。
 近い将来、このカードで武道館を満員にできなければ、NOAHの未来は暗い。
 しかし、体格とファイト・スタイルの違う2人。
 その相性はどうか。
 体格を利した大きな技で追い込む森嶋。
 受け続けながら、カウンターを返す丸藤。
 スタミナが切れかけたようにも見えたが、バック・ドロップの連発で、森嶋が押し切った。
 が、体力で劣る丸藤が、スピードでかき回して攻めまくり、森嶋がカウンターを狙う展開の方が、盛り上がったのではないかと思った。


○三沢光晴 秋山準 P 小橋建太● 高山善廣

 入場は、秋山、高山、三沢、小橋の順で1人づつ。
 電光掲示板に「小橋建太復帰戦」の文字。
 それだけだが、それだけでよい。
 待ちに待った小橋の入場。
 しかし、小橋コールに参加できず。
 涙が流れ、声にならない。
 長年プロレスを見て来て初めて、会場で泣いた。
 ややスリムになった小橋の体。
 しかし、恐れていた程ではない。
 少しぎこちない足の運び。
 しかし、やがて気にならなくなる。
 チョップの連打。
 以前の通り。
 投げられる。
 受け身はまず大丈夫。
 三沢のエルボー。
 ぶっ倒れる。
 打撃技はやはり痛そうだ。
 起き上がる。
 がんばれ。
 三沢のカット・プレーにブーイング。
 今日は仕方ない。
 捕まり出した。
 交互の攻撃を受ける。
 三沢のエメラルド・フロウジョン。
 肩を上げた。
 どよめく観衆。
 三沢がコーナーに上がる。
 秋山が小橋を抱え上げて渡す。
 雪崩式エメラルド・フロウジョン。
 3カウント。
 27分7秒。
 小橋コールの中、立ち上がり、高山に、そして三沢・秋山に、健闘を称えられ、彼らと抱き合う。
 1人、花道を帰る。

 闘病を経て、復帰戦、という背景。
 それ抜きに見たら、ことさらにレベルの高い試合とは言えないかもしれない。
 体力の点を置いても、実戦を積み重ねないと試合勘が戻らず、コンデションもつくれない部分があろう。
 しかし、その背景抜きに見る必要が、あるのだろうか。
 オリンピック競技であれば、採点は感情的背景を抜きにしなければならない。
 プロレスはそういうものではないであろう。
 レスラーの人間ドラマ。
 それをそのまま味わう。
 プロレスの醍醐味の1つであろう。
 癌になり、手術をし、長い闘病を経て、リングに復帰した。
 大勢のファンが、小橋を待っていた。
 小橋はその期待を裏切らず、帰って来た。
 チョップを連打し、ラリアートを放ち、ムーンソルト・プレスで宙を舞った。
 エクスプロイダーで投げられ、エルボーを食らい、エメラルド・フロウジョンを見舞われた。
 それだけ。
 と言えばそれだけのこと。
 それだけのことに、感動し、声を上げ、涙を流した。
 それでいいではないか。
 素晴らしいことだと思う。
 ありがとう小橋。
 ありがとうプロレス。


 帰宅後、「G+」の中継がまだやっていて、メインの試合のハイライトを再放送していた。
 それを見たらまたうるっと来た。
 興奮冷めやらぬまま、これを書いた。