第65期名人戦七番勝負
第5局 大盤解説会 於 将棋会館   07.5.31(木)
第6局 大盤解説会 於 毎日ホール 07.6.15(金)
第7局 大盤解説会 於 毎日ホール 07.6.29(金)


07.5.31
 名人戦は、挑戦者・郷田九段が2連勝のあと2連敗。
 勢いのでてきた森内名人が、防衛を果たすと永世名人の資格を得る。
 毎日新聞や新橋(大内九段)で無料の解説会もあったが、二千円払っても将棋会館に行ったのは、この日は竜王戦4組昇級者決定戦2回戦、加藤先生対田中寅九段の対局もあり、同じ建物内にいて念を送ることもできよう、と思ったからである。
 決してバンカナちゃん目当てではない。加藤一筋である。
 
 会社が引けてからなので、それでも早く出たのだが、7時過ぎになっていた。
 「次の一手」の出題には間に合った。
 道場のモニター(特別対局室の盤面が映る)をのぞいてみたが、ついていなかった。
 
 これまで大盤解説会には、加藤先生のときしか来たことがない。
 いつも同じ人が来ている感じがしていたが、この日は違ったようだった。
 といっても客層が違うわけではなく、やはり年配の人が多いのだが、若干平均年齢は低かった。
 バンカナちゃん目当て?の若い男性もいたが、若いお母さんに連れられた女の子もいた。
 連盟道場で三段だという。 「次の一手」が当たってせんすをもらっていた。
 わたしははずれた。
 人数は20人から30人の間ぐらいで、これまでと大体同じであった。

 加藤先生の場合は、奨励会員が台に上って大盤を操作し、ご自分は下から解説をされるのだが、この日は解説者と聞き手の2人が台に上っていた。
 坂東香菜子女流二級は、すらっとして背が高く、色白でかわいらしい顔で、声は少し小さめだけど、面白いことも言う、現代的なお嬢さんであった。
 飄々とした中村修八段とのやりとりは楽しかったが、残念ながら客がついてこない感じであった。
 発言を聞く限り、客はひたすら読み筋だけを求める傾向にあるようである。
 今回は、ほとんどメモを取らずに聞いていた。
 特に印象深い発言だけをここに記すこととする。

中村八段
 (33手目、郷田九段の)▲7四歩は手筋だが、森内名人の気風を考えると、▲5六銀のような手で、△7五銀と出させた方がよかったのではないか。
 こうなると後手は攻めて行かなければならなくなり、受けの気風の森内名人のペースを乱せる。
 ただ、郷田九段は相手の気風を考えて指すタイプではない。
 
 :
 
 将棋界にも「ハンカチ王子」のような人がでれば。「ナマイキ王子」はたくさんいるが。
 「振り飛車王子」とか…

坂東女流二級
 わたしが某四段を「振り飛車王子」とブログで書いたので…

 中村八段は知っていて話を振ったようであるが、某四段が誰かは明かされなかった。
 記事はこれであろう(06.10.21の項)。
 http://bankana.cocolog-nifty.com/bankana/2006/10/index.html

 将棋は森内名人が優勢で、飛車を切って決めに出、早々に終りそうなムードだったが、郷田九段が粘り、10時過ぎまでかかった。
 勝った森内名人は、ついにあと1勝で防衛である。

 
 出ると、辺りは暗い。雨が降っている。
 振り返って、会館を見上げる。
 加藤先生の対局はどうであろうか。
 勝ったであろうか。優勢であろうか。

 おなかが空いたので、うなぎが食べたくなった。
 お店は営業していた。お酒を飲んで談笑するお客さんがいた。
 卓上のメニューが、パウチされた新しいものになっている。
 聞くと中身は同じ、とのこと。
 うなぎ料理のメニューのほかに、つまみとお酒が各1枚で3枚。こちらは夜のみ。
 営業時間が夜9時までだったのが、12時までに延びたとのこと。
 ラストオーダーは11時半まで。
 うな重の松(3,100円)を注文する。赤だし(200円)をつける。
 以前は、5千円ぐらいのうな重もあったはずだが、ない。
 聞くと、うな重の松に、白焼きをつけたものなので、メニューからはずした、とのこと。
 それぞれ単品で頼めばよい、ということであろう。

 お重は長方形。長辺がテーブルの縁に平行になるように置くと、
 竹(2,100円)の場合、蒲焼が2切れ、ニの字に並ぶ。
 松(3,100円)だと、蒲焼が3切れ、川の字に並ぶのである。
 さすがのボリュームであり、堪能した。
 楽しくときを過ごし、満足して帰った。


 翌日、将棋連盟のHPで結果を見た。
 残念ながら、加藤先生の敗局であった。
 わたしがバンカナちゃんにうつつを抜かし、念を送るのを文字通り失念したせいもあったろうか、と反省した。
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07.6.15
 名人戦第6局があった。
 新橋の大内九段の解説会もあったが、毎日新聞に行った。
 同日、将棋会館で加藤先生の順位戦B級2組の対局があった。
 前回は、同じ建物の内にいて、念を送ろうとした。
 しかし加藤先生の敗局であった。
 そこで、今回は避けた。
 仕事を済ませてから遅く行ったので、次の一手の出題に間に合わなかった。
 竹橋の毎日ホールには、客が150人ほどいた。
 大盤は、パソコン画面の投影であった。将棋会館と違って、差し手の情報が早い。
 解説は千葉幸生五段。千葉涼子女流王将の夫君である。
 聞き手は船戸陽子女流二段。ブログで知っている。
 パソコン操作には、田中寅彦理事自らがあたった。
 初めてお会いしたが、快活な好漢で、若く見えた。
 解説に口を挟んで、座を盛り上げていた。
 将棋は、森内名人が永世名人を手中にしたはずが、最後の最後で逆転負けを喫した。
 解説会は沸いた。
 その様子を書こうとしたが、上手に書いたブログを発見したので、やめることとした。
 http://smmd.cute.bz/blog/archives/cat_.html 「Cablog」

 遅くなったので、まっすぐ帰宅した。
 加藤先生は、順位戦初戦に白星を上げられた。
 出前は昼、夜とも特上寿司、だったそうである。
 5.31の竜王戦でも、そうだったのではなかろうか。
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07.6.29
 十八世名人か、新しい実力制名人か。今日、どちらかが誕生する。
 前回に引き続き、毎日ホールの大盤解説会(無料)に行った。
 伊藤果七段と、伊藤明日香女流一級の親子解説。
 明日香女流は、NHKの「囲碁将棋ジャーナル」で、今月の司会を務めている。
 明日の生放送、加藤先生の解説でこの名人戦を取り上げる、と言う。

伊藤七段
 昔々、加藤先生とは兄弟弟子だった。
 わたしは今は高柳門下だが、元は京都で南口門下。
 南口先生の一番弟子が加藤先生。
 わたしは東京に移って、師匠が変わった。
 NHK杯の決勝で、加藤先生と対局した。
 加藤先生は、大きくてライオンのようだった。
 打ち付ける駒が割れそう。
 立ち上がり、ズボンを直し、ネクタイを直し、駒台に手をやって、駒をびしっと打ち付ける。
 駒音で鼓膜が破れそうになり、一瞬盤面が見えなくなる。
 秒読みでこれは厳しい。
 本人は何かありましたか、という顔で全然気にしていない。
 あれは反則だ。

 ほかにも珍しい話が聞けた。

 わたしの前の家は、一番近くに森内先生、二番目に羽生先生、三番目に佐藤康光先生が住んでいた。
 森内君は、独身時代、週に3日は家に来て、ご飯を食べていた。
 対局が終ったあとも、家に来る。
 森内君は酒をあまり飲まないし、わたしも家では飲まない。
 男二人で話をしていると、突然詰め将棋を出してくれ、と言う。
 出すと、解けるまで黙っていてくれ、と言って、考えている。
 何年か、家で忘年会をやっていた。
 A級棋士が7人来たこともある。
 普通夜になると帰るものだが、棋士は帰らない。
 翌日の昼までいるので、さすがに追い出す。
 家族は寝てしまうので、男だけで一晩中、何をしているかというと、将棋を指す。
 どれだけ将棋が好きなのか。
 郷田君は、飲むと人が変わる。
 いばりだす。
 夜中の3時ぐらいに、
 「おい北浜、こっちに来い」
 と言って、寝ているところを起こし、
 「詰め将棋を出せ」
と言い、解くと、
 「こんな簡単なの出しやがって」
とまたいばる。

 こういうことを話しておきながら、

 どちらかと言えば、新名人の誕生を期待したい。

となぜか郷田贔屓であった。

 将棋は森内名人が勝勢となったが、終盤粘られて逆転しそうになり、
 「第6局の再現か?」
と異様な盛り上がりの場内(立ち見もたくさんいて、200人超の観衆)だったが、郷田九段も間違えたようで、最後は森内名人が勝利。
 名人位通算5期獲得により、永世名人の資格を獲得した。
 おめでとうございます。

 パソコンの操作は、前回に続き田中誠初段(前回、田中寅彦理事、と書いたのは誤り。本当に親子そっくり)。
 伊藤親子の息の合った解説は楽しかったが、前回同様、終局するとすぐお開きになり、物足りない。
 が、田中初段は撤収作業が進む中もずっと残って、客の質問に答えてくれた。
 ここはこう指せば勝っていた、こう指した方がよかった、ここでは勝ちになっていた、などとはっきり教えてくれるのでありがたかった。

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