1973.10.9<USヘビー級選手権・覆面世界一決定戦>
(王者)ザ・デストロイヤー 対(挑戦者)ミル・マスカラス
 於 蔵前国技館


{1本目}

 ゴングと同時に反時計回りに回る両者。
 デストがタックルを狙うフェイント。
 立ち上がる所をマスカラスが組み付き、ロープに押し込む。
 クリーンにブレイク。

 ロック・アップ。
 1度ブレイクの後、再び。
 マスカラス、巻き投げを狙うがすかされる。
 
 ロック・アップ。
 デストが相手の左腕を撥ね上げ、右足を踏み込んでバックに回り、スクール・ボーイからピン。
 右肩を上げるマスカラス。
 カウント1が繰り返される。
 横四方でのしかかるデストの右肩を固め、下からヘッド・シザースをかけるマスカラス。
 ロープ・ブレイク。
 
 手四つから、頭をつけ合って、差し合い。
 両者右差し、左は相手の右腕を抱える。
 デスト、捨て身の後方への投げ。
 上になる。
 マスカラス、ブリッジでピンを逃れる。
 ブリッジしたまま足を左に運び、相手の体と垂直になる方向に移動して、体を返す。
 デスト、前回りで反転、体勢は逆転。
 下になったデストもブリッジするが、つぶされる。
 右差し、左で相手の右を抱え、袈裟固めに似た格好。
 力任せの反転を繰り返して、ロープ・ブレイク。
 
 ロック・アップから、ロープ・ブレイク。

 デスト、手四つから相手の左腕を取り、リスト・ロックでテイク・ダウン。
 そのままスタンドに戻り、片腕での力比べの格好。
 デスト、相手の膝裏を足で押してテイク・ダウンを狙うが、マスカラスはこらえてバックを取る。
 デストはリスト・ロックを狙いながら腰を落として踏ん張る。
 左腕を抱えて捨て身の投げ、マスカラスはロックをはずさず、いっしょに転がる。
 デストが上になったが、ロープ・ブレイク。
 
 マスカラス、ロック・アップからがぶり、左手で相手の右足を取りに行く。
 膝をついてこらえるデスト、右手を相手の左足にかけるが、マスカラスは左足を引いて切り、バックに回る。
 胴をロックして反ろうとするが、デストの腰は重い。
 左手でデストの左のつま先を狙うが、攻めあぐむ。
 その隙に、デストは左手でマスカラスの右手首をとらえ、強引にテイク・ダウンするが、マスカラスもバックを取り返そうとする。
 両者膝をついたまま、デストの右の小手投げとマスカラスの左のすくい投げの打ち合い。
 マスカラスがデストの右肩をきめようとするが、ロープ・ブレイク。
 
 手四つから頭をつけ合って、力比べ。
 マスカラスがデストをロープに押し込んで、モンキー・フリップ。
 
 手四つから、マスカラスがデストをロープに押し込んで、ブレイク。
 
 ロック・アップから、デストが左腕でヘッド・ロック。
 マスカラスがロープに振るが、デストのショルダー・ブロッキングにダウン。
 デスト、再びヘッド・ロックから投げてテイク・ダウンするが、マスカラスはすかさずヘッド・シザースで切り返す。
 デスト、しばらく絞められていたが、ジャンプして脱出。
 
 手四つに行きかけるが、やめるデスト。
 両手の指をくるくる回すしぐさ。
 (そろそろ違う展開に行こうぜ、という意味か?)

 再び手四つに行きかけて、やめる両者。
 ロック・アップ。
 デスト、相手の左腕をとらえてバックに回り、サーフ・ボード・ストレッチに行くが、マスカラスは一瞬の隙をとらえてデストの左足を取ってテイク・ダウン。
 逆方エビ固めを狙うが、ステップ・オーバーしようと浮いた右足を、デストが左手で押さえて阻止。
 ならばと両足を抱えるマスカラス。
 デストの両肩がついて、フォール・カウントが入る。
 デストはマスカラスの両のかかとをつかんで倒し、上になってピンを狙う。
 両者とも相手の両足を抱え、シーソーのように上になったり下になったりの応酬。
 最後は両者、尻もちの状態で、両足を抱え合ったままにらみ合い。
 レフリーの指示で、両手を上げてクリーンにブレイク。
 (歓声と拍手。)

 組み合い、ロープに押し込むマスカラス。
 ブレイクの後、平手で軽くデストの胸を叩く。
 
 マスカラス、手四つからがぶりに行き、そのまま後方に投げ、上になってピンを狙う。
 ブリッジから体を返して逃れるデスト。

 ロック・アップからデスト、左腕を取ってバックに回り、サーフ・ボードを狙う。
 マスカラス、股下からデストの足取りを狙うが果たせず。
 ブレイク後、「惜しかった!」と指を鳴らすデスト。

 手四つから、マスカラスがタックル。
 股下に頭を突っ込み、頭でお尻を押し上げるようにしながら右手で左足をとらえるが、デストはけんけんしながら回ってこれを切る。
 四つんばいのマスマラスの頭に手を置くデスト、払いのけるマスカラス。

 ロック・アップからデスト、巻き投げでテイク・ダウン。
 マスカラスはヘッド・シザースで切り返す。
 三点倒立…とまでは行かないが、ジャンプして脱出したデスト。
 マスカラス、すぐ首をとらえて巴投げに行くが、デストも投げられずにがぶりに行く。
 回転して逃れるマスカラス。

 ロック・アップから、マスカラスが左腕でヘッド・ロック。
 ロープに飛ばすデストだが、ショルダー・ブロッキングでダウン。
 再びマスカラスがヘッド・ロック。
 左から右腕にスイッチして投げ、袈裟固め。
 マスカラスの頭を押し離そうとするデストの右腕をずらして、肩固めのような格好に。
 中腰からスタンドへ。
 その間にマスカラスは再び、頭に巻く腕を左にスイッチ。
 デスト、ロープに振ってキッチン・シンク。
 続いて腹に肩をぶちかます。
 左腕でマスカラスの頭を抱え、右手ですくって後方に投げ、続いてニー・ドロップを狙うがかわされる。
 マスカラス、デストの頭を抱えてブレーン・バスター。
 体固めはカウント2。
 マスカラスはチョップ、デストはエルボー・バットの殴り合いから、デストがヘッド・ロック。
 マスカラスがロープに飛ばして、デストのショルダー・ブロッキングにダウン。
 自らロープに飛んだデストを、リープ・フロッグで飛び越えた後、戻る所にフライング・クロス・チョップ。
 自ら助走してもう一発。
 片エビ固めでカウント3、ピンフォール勝ち。
 (試合時間は12分くらい。)


{2本目}

 手四つから、いきなロープに振ってフライング・クロス・チョップ。
 体固めはカウント2。

 フライング・メーヤーから、メキシカン・ストレッチ。
 しゃがんだデストの後頭部に腰かける形のサーフ・ボード・ストレッチ。
 (「リバース・ダブル・アーム・ロック」と、解説の山田隆さん。)
 デスト、逃れんと前屈し頭をマットにつけると、上からのしかかる形のリバース・フル・ネルソンに移行。
 デスト、立ち上がり、リバース・スープレックスで返すが、マスカラスは回転エビ固めの形でピンする。
 体を斜めに倒して逃れるデスト。
 崩れた形でロープ・ブレイク。
 上になっているマスカラスは、デストのお尻を軽くポンポンと叩く。
 それでも離れる際には、素早い動きですぐ身構える。

 ロック・アップからデスト、フライング・メーヤーで投げ、ニー・ドロップを一発落としてから、スリーパー・ホールド。
 続いて両腕で相手の右腕を、両足で左腕を固め、腹に相手の背をのっけるようにしてピンする十字架固め。
 マスカラス、右腕を抜いて逃れ、続いて左腕も抜いて四つんばいに。
 デストは右足でマスカラスの左足に絡み、上からのしかかって右腕を取りに行くが、マスカラスは頭を伏せてこらえる。
 ハーフ・ネルソンに行く所、マスカラスは自ら体を返し(回転させ)、デストの右足を絡んだままの自分の左足と左手とで撥ね上げ、デストの下から脱出。
 すかさず背中の上からのしかかるも、デストも胴に回った相手の腕を抱えつつ、自らの下半身を前に投げ出すようにして体を回転させ、逃れる。
 ひざまずいた形で見合う両者。
 マスカラスは、ポンと手拍子の後、デストのほっぺをなでるような動き。
 (先輩のデストに対し、「なかなかやるね」とでも言うようなジェスチャー。)

 手四つの状態からデスト、自ら回転してマスカラスの両手をひねる。
 マスカラスはヘッド・シザースで返す。
 (「クロス・シザース・ドロップ」と、解説の山田隆さん。)
 デスト、はずして足四の字固めを狙うが、マスカラス、回転して逃れる。
 「惜しかった!」と指を鳴らすデスト。

 デスト、左手でマスカラスの右手首をつかみ、右手で右腕を手繰ってバックに回り、サーフ・ボード・ストレッチ。
 左足、続いて頭をマスカラスの背中につけて絞り上げる。
 マスカラス、腰を落とし、力で返そうとする。
 力比べの格好。
 一進一退の後、マスカラスが勝ってデストを羽交い絞め。
 デスト、体を落として両足を上げ、回転エビ固めを狙うが、マスカラスはこれをはずしてバックを取り、後方に倒れこんでグラウンドに、
 しかしロープ・ブレイク。

 ロック・アップからロープに押し込むマスカラス。
 離れ際、頭とほっぺを軽くポンポンと叩く。
 目を剥くデスト。

 再び、ロック・アップからロープ・ブレイク。
 離れ際、今度はデストが左肘をマスカラスの顔に押し当て、右手で自分の左拳を叩いて左肘をヒットさせる。

 三たび、ロック・アップからロープ・ブレイク。
 マスカラスは、デストの背後に回した右手でコツンと後頭部へパンチ。
 「誰か後ろから殴ったのか?」と振り返るジェスチャーを見せるデスト。
 客は笑うが、マスカラスはデストの胸を軽くぴちゃんと平手で叩く追い討ち。

 四たび、ロック・アップからロープ・ブレイク。
 今度はおちょくりでなく、エルボー・バットをかませるデストに、マスカラスもチョップで応戦。
 デストがロック・アップに行くと、マスカラスは応じず首根っこをつかむが、デストもがぶらせず、ロープに押し込む。
 レフリーの指示で今度はクリーンにブレイクするものの、マスカラスはいざとなればエルボーを打つそぶり。

 片手でフィンガー・ロックに組み掛けるが、首を振ってやめるデスト。
 ロック・アップに切り替え、マスカラスの右肘を抱えて決め、膝をつかせる。
 マスカラス、立ち上がり腰投げ。
 上になる、あるいはバックを取るのを回転して逃れ合う両者。

 マスカラス、ロック・アップからバックを取ってフル・ネルソン。
 右足をデストの左足に絡ませ、フル・ネルソンで締め上げる。
 マスカラスが(何を考えたか)右足のフックをはずした瞬間、デストはマスカラスの左足を左腕で外から抱えるように取りに行くが、マスカラスはデストの右足をクラッチし、レッグ・ホールドで裏返す。
 しかしロープ際でピンならず、ブレイク。
 ひざまずいたまま、デストはエルボー・バットを連発。
 マスカラスも、チョップ、パンチで応戦。
 デスト、ロープに押し込んで反動を利用してすくい投げ。
 立ち上がる所をモンキー・フリップ。
 足を取って足四の字を狙うが、キックで倒される。
 マスカラス、左腕でデストの首を抱え、右ですくって後方に投げ、のしかかってピンを狙う。
 デストが起き上がり、マスカラスも諦めるが、離れ際に軽く頬をなでるような平手打ち。

 マスカラス、ロック・アップから左腕でヘッド・ロック。
 デスト、ロープに飛ばして返る所を一度は身を伏せてやり過ごし、次にはリープ・フロッグで飛び越え、三たび返る所にドロップ・キック。
 ダウンしたマスカラスの左足をとらえて一発ヒップ・ドロップの後、足四の字固め。
 マスカラス、ひっくり返そうとしたり立ち上がろうとしたり、もがいて耐えるも、遂にギブ・アップ。
 (2本目も12分くらいか。)
 山田隆さん「ざっとねえ、40秒以上もねえ、がまんしてましたねえ。」
.

{3本目}

 3本目開始後も、マスカラスはコーナーで膝をついたまま。
 デストは膝を一回蹴っておいて左足を取り、自らリングを下りて左足をエプロンの角に打ち付ける。
 リング・インしてフライング・メーヤー。
 足四の字を狙うも、マスカラスはパンチでデストをダウンさせる。
 マスカラス、立ち上がるが、よろけてリング外に転落。
 しかしすぐリングに戻って殴り合い。
 デストが打ち勝ち、ダウンしたマスカラスの足を取って四の字狙い。
 身を捩じらせて逃れるマスカラスに、デストは「ちぇっ!」とばかり指を鳴らす。

 ロック・アップから左足を取り、四の字狙い。
 マスカラスが体を回転させると、その勢いでデスト、場外に転落。
 リングに上がったデストに、マスカラス、右腕を振り回してからアッパー・カットのエルボー・スマッシュ。
 立ち上がりざまデスト、マスカラスの左足を取り、サード・ロープに乗せてヒップ・ドロップを狙うが、はずされる。
 マスカラス、デストをコーナー・マットにぶつけ、リバース・フルネルソンから足をフックしてのメキシカン・ストレッチ。
 ロープに逃れるデスト。
 立ち上がりざま、マスカラスの胸を蹴り上げる。
 マスカラスも、立ち上がりざまチョップ。
 エルボーの打ち合いから、パンチ。
 ロープに飛ばして、フライング・クロス・チョップ。
 体固めはカウント2。
 エプロンからロープ越しにボディ・プレスを狙うが、かわされる。
 マスカラス、ヘッド・ロック。
 デストはこれをはずしてコーナーへ振るが、マスカラスはコーナーに飛び上り、振り返りざまダイビング・ボディ・アタック。
 体固めはカウント2。
 ロープへ振って、フライング・クロス・チョップ。
 次は自らロープに飛んで、ロープ際のデストにアタックするが、ショルダー・スルーでかわされ場外に転落。
 10カウントでデストのリング・アウト勝ち。
 (試合時間は5分くらいか)
 マスカラスは指を10本上げて何やらアピールする(20カウントじゃないのか?と言うことか。10カウントはPWFルール。)ものの、デストと握手し、抱き合い、肩を組み、互いに互いの手を上げてエールを送り合う。
 


 1つの試合を、文章で完全に再現する試みである。
 この試合は、リアルタイムで視聴、録画したものではない。
 1990年代の初頭、日本テレビで「FULLすぽーつこれくしょん」という、過去のスポーツを見せる深夜番組があり、定期的にプロレスの試合も取り上げられていた。
 その際は若林健治アナウンサーとゴングの竹内宏介さんが司会であり、試合のセレクトは竹内さんがやっていたようだ。
 この番組内で見てからでも、既に10数年経っているわけだが、特に印象深いのは、両者の意地の張り合いである。
 体の小さなメキシカンが、全米どこに行っても、地元の白人レスラーを押しのけてトップを張り、自分のスタイルの闘いを貫く。
 並みの根性では、できない芸当であろう。
 前年(1972.12)には、マスクマンとして初めて、MSGに登場。
 厳格なニュー・ヨーク州の体育協会も、これを認めざるを得なかった。
 一方、デストロイヤーも、コワルスキー平手打ち事件でわかるように、気が強い。
 年齢、レスラー・マスクマンとしてのキャリアでも、先輩である。
 日本はホーム・リングでもある。
 そんな思いでいるはずのデストロイヤーに対し、格下のはずのマスカラスが、おちょくるような仕草をする。
 ラフ・ファイトになってもおかしくなかったが、意外にアマレスのような攻防が続く。
 一見静かで地味な闘いだが、その中にプライドのぶつかり合いが見てとれる。
 試合結果は、1本づつ取り合った後に、マスカラスのリング・アウト負け。
 デストロイヤーは、王者として防衛のために冷静に闘った、と言えるかもしれない。
 (2008.2.11)

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