公益認定取り消し後の財産の行方 07.5.28
(補足 07.6.16) (再補足 07.12.5)


公益法人改革については、公益認定等委員会(内閣府)のHPができています。
http://www.cao.go.jp/picc/index.html

▲公益認定取り消し時における財産の行方

 新制度下では、公益法人が公益認定の取り消しをされた場合、公益目的で取得した財産の残額を、類似の事業を目的とする他の公益法人か、国などに贈与しなければなりません。
 そのことを定款に定めないと、そもそも公益法人として認定されないのです(認定法5条17)。
 仮に日本将棋連盟が、公益法人に移行したのちに、何らかの理由で公益認定を取り消されてしまったとすると、その資産の少なくともある程度の部分を、どこかに寄贈しなければならなくなります。
 類似の公益法人といえば、現在は北海道将棋連盟だけですが、例えば仮に将棋会館をもらったとしても、(全国組織に改組する申請をしない限り)使い道に困るでしょう。
 日本棋院に寄贈して、その代わり将棋部をつくってもらう方が、現実的でしょうか。
 女流新団体が公益法人に認定されていれば、寄贈先として適当かもしれません。
 もちろん、国に寄贈するという道は常にあります。
 なお、定款の条文上で、あらかじめ具体的に寄贈先を特定しておく必要はないようです。

 関係する法律の条文を、以下に記しておきます。
 全文は、「公益認定等委員会」HPのトップページ、中央の
政策→法令等→法律 と辿って読むことができます。

 なお、上記は公益法人に移行した(新制度下で一旦認定された)のちに取り消された場合で、そもそも移行が認められず、一般社団法人への移行をした場合には、その認可申請時に提出した「公益目的支出計画」に基づいて、公益目的財産額に相当する額を、公益的な団体に寄附するほか、自分で公益目的事業のために支出することができます。
 「公益認定等委員会」HPのトップページ、中央の
政策→改革の概要→パンフレット(公益法人制度改革の概要)参照 ※下の方
公益法人制度改革の概要(パンフレット)(平成18年9月)
http://www.gyoukaku.go.jp/siryou/koueki/index_pamphlet.html
一般社団法人・一般財団法人への移行の手続(8ページ)
を参照のこと。


公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律
(平成十八年六月二日法律第四十九号)

(公益認定)
第四条  公益目的事業を行う一般社団法人又は一般財団法人は、行政庁の認定を受けることができる。
(公益認定の基準)
第五条  行政庁は、前条の認定(以下「公益認定」という。)の申請をした一般社団法人又は一般財団法人が次に掲げる基準に適合すると認めるときは、当該法人について公益認定をするものとする。
 :
十六  公益目的事業を行うために不可欠な特定の財産があるときは、その旨並びにその維持及び処分の制限について、必要な事項を定款で定めているものであること。
十七  第二十九条第一項若しくは第二項の規定による公益認定の取消しの処分を受けた場合又は合併により法人が消滅する場合(その権利義務を承継する法人が公益法人であるときを除く。)において、公益目的取得財産残額(第三十条第二項に規定する公益目的取得財産残額をいう。)があるときは、これに相当する額の財産を当該公益認定の取消しの日又は当該合併の日から一箇月以内に類似の事業を目的とする他の公益法人若しくは次に掲げる法人又は国若しくは地方公共団体に贈与する旨を定款で定めているものであること。
イ 私立学校法(昭和二十四年法律第二百七十号)第三条に規定する学校法人
ロ 社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)第二十二条に規定する社会福祉法人
ハ 更生保護事業法(平成七年法律第八十六号)第二条第六項に規定する更生保護法人
ニ 独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人
ホ 国立大学法人法(平成十五年法律第百十二号)第二条第一項に規定する国立大学法人又は同条第三項に規定する大学共同利用機関法人
ヘ 地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第一項に規定する地方独立行政法人
ト その他イからヘまでに掲げる法人に準ずるものとして政令で定める法人

(公益認定の取消し等に伴う贈与)
第三十条  行政庁が前条第一項若しくは第二項の規定による公益認定の取消しをした場合又は公益法人が合併により消滅する場合(その権利義務を承継する法人が公益法人であるときを除く。)において、第五条第十七号に規定する定款の定めに従い、当該公益認定の取消しの日又は当該合併の日から一箇月以内に公益目的取得財産残額に相当する額の財産の贈与に係る書面による契約が成立しないときは、内閣総理大臣が行政庁である場合にあっては国、都道府県知事が行政庁である場合にあっては当該都道府県が当該公益目的取得財産残額に相当する額の金銭について、同号に規定する定款で定める贈与を当該公益認定の取消しを受けた法人又は当該合併により消滅する公益法人の権利義務を承継する法人(第四項において「認定取消法人等」という。)から受ける旨の書面による契約が成立したものとみなす。当該公益認定の取消しの日又は当該合併の日から一箇月以内に当該公益目的取得財産残額の一部に相当する額の財産について同号に規定する定款で定める贈与に係る書面による契約が成立した場合における残余の部分についても、同様とする。
2  前項に規定する「公益目的取得財産残額」とは、第一号に掲げる財産から第二号に掲げる財産を除外した残余の財産の価額の合計額から第三号に掲げる額を控除して得た額をいう。
一  当該公益法人が取得したすべての公益目的事業財産(第十八条第六号に掲げる財産にあっては、公益認定を受けた日前に取得したものを除く。)
二  当該公益法人が公益認定を受けた日以後に公益目的事業を行うために費消し、又は譲渡した公益目的事業財産
三  公益目的事業財産以外の財産であって当該公益法人が公益認定を受けた日以後に公益目的事業を行うために費消し、又は譲渡したもの及び同日以後に公益目的事業の実施に伴い負担した公租公課の支払その他内閣府令で定めるものの額の合計額
3  前項に規定する額の算定の細目その他公益目的取得財産残額の算定に関し必要な事項は、内閣府令で定める。
4  行政庁は、第一項の場合には、認定取消法人等に対し、前二項の規定により算定した公益目的取得財産残額及び第一項の規定により当該認定取消法人等と国又は都道府県との間に当該公益目的取得財産残額又はその一部に相当する額の金銭の贈与に係る契約が成立した旨を通知しなければならない。
5  公益法人は、第五条第十七号に規定する定款の定めを変更することができない。


第十八条  公益法人は、次に掲げる財産(以下「公益目的事業財産」という。)を公益目的事業を行うために使用し、又は処分しなければならない。ただし、内閣府令で定める正当な理由がある場合は、この限りでない。
一  公益認定を受けた日以後に寄附を受けた財産(寄附をした者が公益目的事業以外のために使用すべき旨を定めたものを除く。)
二  公益認定を受けた日以後に交付を受けた補助金その他の財産(財産を交付した者が公益目的事業以外のために使用すべき旨を定めたものを除く。)
三  公益認定を受けた日以後に行った公益目的事業に係る活動の対価として得た財産
四  公益認定を受けた日以後に行った収益事業等から生じた収益に内閣府令で定める割合を乗じて得た額に相当する財産
五  前各号に掲げる財産を支出することにより取得した財産
六  第五条第十六号に規定する財産(前各号に掲げるものを除く。)
七  公益認定を受けた日の前に取得した財産であって同日以後に内閣府令で定める方法により公益目的事業の用に供するものである旨を表示した財産
八  前各号に掲げるもののほか、当該公益法人が公益目的事業を行うことにより取得し、又は公益目的事業を行うために保有していると認められるものとして内閣府令で定める財産

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律 
(平成十八年六月二日法律第五十号)

(公益目的事業財産等に関する特則)
第百十三条  第百六条第一項の登記をした公益法人については、公益法人認定法第十八条第一号から第四号まで及び第七号並びに第二十一条第一項及び第二項中「公益認定を受けた日」とあるのは「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第百六条第一項の登記をした日」と、同条第一項及び第二項中「公益認定を受けた後」とあるのは「登記をした日以後」とする。
(認定の取消し等に伴う贈与に関する特則)
第百十四条  第百六条第一項の登記をした公益法人については、公益法人認定法第三十条第二項各号中「公益認定を受けた日」とあるのは、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第百六条第一項の登記をした日」とする。

(公益目的支出計画の作成)
第百十九条 第四十五条の認可を受けようとする特例民法法人は、当該認可を受けたときに解散するものとした場合において旧民法第七十二条の規定によれば当該特例民法法人の目的に類似する目的のために処分し、又は国庫に帰属すべきものとされる残余財産の額に相当するものとして当該特例民法法人の貸借対照表上の純資産額を基礎として内閣府令で定めるところにより算定した額が内閣府令で定める額を超える場合には、内閣府令で定めるところにより、当該算定した額(以下この款において「公益目的財産額」という。)に相当する金額を公益の目的のために支出することにより零とするための計画(以下この款において「公益目的支出計画」という。)を作成しなければならない。


補足(07.6.16)

 公益法人が公益認定を取り消された場合に、どこかに贈与しなければならない財産(公益目的取得財産残額)として、将棋連盟における将棋会館を例に上げましたが、認定法5条16号に基づき、公益目的事業を行うため不可欠な特定の財産、として処分の制限などを定款に定めておけば、新法における公益法人の認定前に取得した財産は、贈与の対象からはずされます(同30条2項1号)。

 一方、現行の社団法人が(公益社団法人への移行を認められなかった等で)一般社団法人に移行する際の「公益目的財産額」の計算においては、純資産額(資産−負債)を基礎とする、ということで、特定の財産が除外されることはないようです。
 借金があれば控除されますが、土地は時価評価になる予定です。
 ただし、繰り返しになりますが、この場合はこれを1ヶ月以内に全額贈与しろ、ということにはならず、「公益目的支出計画」に基づいて、0円になるまで公益目的のために自分で支出することができます。


更に補足(07.12.5)

 上記6.16の段階では、例えば将棋会館のような、認定前から保有する、公益目的事業を行うための重要な資産は、これを不可欠特定財産と定めることで、公益認定取り消し後も引き続き保有できるはず、と軽く考えていました。
 しかし、公益認定等委員会のその後の議事を見ますと、「不可欠特定」という意味がかなり限定されて考えられており、代替不可能なものでなければ認められないようです。
 改めてよく研究しなければならない、と考えています。


第18回 公益認定等委員会 07.9.27
http://www.cao.go.jp/picc/soshiki/iinkai/018/18siryou.html
議事録 5.審議経過

○事務局

 不可欠特定財産は、認定前だろうが後だろうが法人で定めることができる訳ですが、認定取消時において、他の公益法人等に贈与しなければいけない公益目的取得財産残額の計算からは、認定前から持っている財産については控除される規定になっています。
 法人において不可欠特定財産を定めても、法人が考えていた事業が結果として公益目的事業ではないとされる場合があり得る、あるいは不可欠特定だと法人の方で考えていても、その事業との関連性で不可欠特定であると認めない場合もあり得るということでありますので、そういう場合は不可欠特定財産にはならないということです。… (P2)


第23回 公益認定等委員会 07.11.2
http://www.cao.go.jp/picc/soshiki/iinkai/023/23siryou.html
議事録 5.審議経過

○佐竹委員長代理
 まさにそういうことだと思うのですけれども、ここの例示にあるように美術品とか、歴史的価値のある建物とか、そういうようなそこの法人が持っていないと価値が維持できないようなものということでかなり限定されていると思うのです。
 本当に特殊なもので、まさに不可欠特定だということで、ではその歴史的文化的価値のある建物はそうだけれども、その土地はどうかというと、そこまで限定されている土地ならば多分いいのでしょうが、普通の財団が持っている土地に普通の建物が建っているような土地などは決して不可欠特定ではないので、ならないということだと思うのです。
 この辺りで、不可欠特定という意味をかなり限定して考えてるということのメッセージを是非御理解頂きたいと思います。 (P12〜13)


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