第41回東急東横店将棋まつり 07.8.7
個性派対局 加藤九段−先崎八段


写真トップ・左は、対局前にネクタイを直す加藤九段。
写真トップ・右は、振り駒を見る両対局者と大盤解説聞き手の中村女流初段。
写真左は対局中の加藤九段と先崎八段。

 15:45より、「個性派対局」。
 振り駒の結果、先崎学八段が先手に。
 解説は北浜健介七段、聞き手は先ほど行われた白瀧あゆみ杯争奪戦の勝者、ということで中村真梨花女流初段。
 対局開始後、加藤先生は天井の方を見上げていたかと思うと、控え室の方に向かって叫び声を発する。
 はっきり聞き取れなかったが、あそこの空調(もしくは風)を止めて、とおっしゃったのではなかろうか。
 恐らく、空調の風が顔に直撃して、それが気になったのではないか、と思う。
 その後、加藤先生は時々あぐらをかいたり、中腰になってズボンを上げたり、じっと対局時計を見つめたりされていたが、これというハプニングもなく、静かに対局が行われた。
 終局するや否や、興奮で真っ赤な顔をした加藤先生が、いきなり大声&早口でしゃべりだしたので驚いた。
 盤上の感想戦は、しかしそこそこにして、すぐ隣の大盤の前で、両対局者とも快活にお話くださった。

(以下、断り無きは北浜七段の解説。)

 先ほどの対局では、解説が加藤先生だったので、意地でも棒銀にしようと思ったが、ゴキゲン中飛車にされたのでできなかった。

写真は大盤の前で勝局を振り返る加藤九段。

1▲7六歩
2△8四歩
3▲7八銀
4△3四歩
5▲6六歩
6△6二銀
7▲6八飛
8△5四歩
9▲4八玉
10△4二玉
11▲3八銀
12△3二玉
13▲3九玉
14△5二金右
15▲2八玉
16△7四歩
17▲5八金左
18△4二銀
19▲1六歩
20△8五歩
21▲7七角
22△1四歩
23▲4六歩
24△5三銀左
25▲5六歩
26△4二金上
27▲6七銀
28△7三銀  お二人の対戦成績は5勝5敗の五分。
29▲9八香
30△8四銀
31▲7八飛
32△6四歩
33▲9六歩
34△7五歩
35▲5九角
36△7二飛
37▲4八角
38△7六歩
39▲同 銀
40△6五歩
41▲6七金
42△6六歩
43▲同 金
44△6五歩
45▲6七金  定跡書にありそうな形。
        加藤先生も意外にこの形の実戦は少ないのでは。
46△7三銀
47▲6五銀
48△9九角成
49▲7七桂
50△7四銀
51▲7三歩
52△同 飛
53▲7五歩
54△6五銀
55▲同 桂
56△6三飛 (先崎、先に持ち時間が切れ30秒将棋に。)
57▲6六歩  ▲5三桂成なら△6七飛成だった。落ち着いた手。
58△8九馬
59▲6八飛
60△4四銀
61▲7二銀
62△6四飛
63▲8一銀不成 成って香を取る順は、成銀がそっぽに行くので避けたか。
64△8六歩  ▲同歩なら△8四飛。
65▲7六桂
66△6一飛
67▲7二銀成 不成とした効果が。
68△3一飛
69▲8六歩
70△7九馬 △7九銀もあった。以下▲6九飛に△7八馬。
71▲7四歩
72△6八馬
73▲同 金
74△8八飛
75▲5八金寄
76△6七歩
77▲7三歩成
78△6八歩成
79▲5七金
80△5八銀
81▲3九金 (加藤も持ち時間が切れ30秒将棋に。)
82△6七と
83▲6二と
84△5七と
85▲5二と
86△同 金
87▲5七角
88△4七銀成
89▲4八角打
90△5七成銀
91▲同 角
92△5八金
93▲6四桂
94△5一金
95▲4五歩
96△3三銀
97▲4八銀
98△5七金
99▲同 銀
100△7九角
101▲4八金打
102△5七角成
103▲同 金
104△4八銀
105▲同 金
106△同飛成
107▲3九角
108△9八龍
109▲5三桂成
110△4八金
111▲同 角
112△同 龍
113▲4九金
114△5七龍
115▲5二銀
116△4六香
117▲4三成桂
118△2二玉
119▲5一銀不成
120△4九香成
121▲同 銀
122△4八歩 (加藤、間髪入れず着手。)
123▲3二金
124△1三玉
125▲3八金
126△4九歩成
127▲3三成桂
128△4八と
まで、128手で後手・加藤九段の勝ち。

写真はファンの求めに応じ揮毫をする加藤九段。


 終局後、両対局者も大盤の前で検討。

先崎 加藤先生の棒銀を見事に食らってしまった。
    棒銀を受けて立とうと思っていた。
    絶対なると思って対策を立てて来たが。
加藤 棒銀は100、200局は戦っているが、この形は2局目。
先崎 ベーシックな形は、加藤先生も珍しいかと思った。
    定跡を間違えてしまった。
    51▲7三歩からの順は、△8九馬▲6八飛が入っている形と勘違いした。
    その形なら△6三飛のとき▲5三桂成と銀を取れる。
    ▲6七金に紐がついているので。
加藤 前局は馬が寄ってよくなかったので変えた。
先崎 57▲6六歩と打つんでは…泣きながら打った。
    ひどいけどしょうがない。
    ▲7四歩突くと△7ニ歩と打たれるので、61▲7二銀と打った。
客  馬寄った(58△8九馬)ときに、桂成る(▲5三桂成)手は?
加藤 △5三同飛と取る一手。それもありますね。
先崎 70△7九馬のところ、△7七歩なら投了かな。
    でも加藤先生だから△7九銀かな、と思った。
加藤 △7九銀▲6九飛△7八馬▲5九金に△7七歩と打って、
    △8八馬寄って△7八歩成を考えた。
先崎 凝ってますねー。
    どこかで端攻めが来るのが怖かった。
    端で負けるなら本望だが、本譜横から攻められて負けたんでいかんかった。
北島 56△6三飛はすごい手だったんですね。
加藤 棒銀がやたら好きで、得意になって指す棋士が3人いる。
    わたしがその中の先輩格。
    (あとの2人については、客が聞いても明かさず。)
    指してまして、作戦負けになったことはないですね。
    他に穴熊とかありますけど。
    棒銀は相手の飛車と角を目標にしている。
    玉と遠いところを攻めているから、デメリットはありますけど。

 時間が来たため、拍手で終演。


 帰宅後、「棋譜でーたべーす」で似た局面のある対局を一つ見つけた。
1986.10.13 第5回全日本プロトーナメント 対飯田弘之四段戦
http://wiki.optus.nu/shogi/index.php?cmd=kif&cmds=display&kid=28560

 本譜38△7六歩の局面が、途中の手順は違うものの、全日プロ飯田戦の37手目とほぼ同じ。
 先後が逆で、振飛車側の飛車側の端歩突きが入っているか否かが違う。
 その後も同じ手順で進むが、本譜50△7四銀(居飛車側が角を成り込み、振飛車側が取られそうな桂をはねた後)のところ、前局では先に飛車取りに馬を寄った。
 振飛車側はそれに対して飛車底に歩を打って受け、この後の展開は本譜と違ったものになっている。
 もっとも先生の著書「加藤流振り飛車撃破」(毎日コミュニケーションズ、2003)の
「第2章 四間飛車△1四歩型」には、
▲1一角成△3三桂▲2一馬△4ニ飛▲3六銀で先手十分、とあり、
「私はこの将棋も指しているが、先手が強く戦える」と書かれているので、もっとそのものずばりの対局があったのかもしれない。
 何れにせよ、馬寄りを後回しにしたのが先生の新工夫のようだ。


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