第1期マイナビ女子オープン予選07.10.20


写真は予選勝ち抜き者。
トップ左は中井・船戸・中村真・鈴木・石橋。
トップ右は8人全員(+貞升・上田・早水)。
写真左は石橋・貞升・上田。

 女流の大型新棋戦が誕生した。
 予選は公開で一斉対局。
 その組み合わせは前夜祭で抽選会を行って決める。
 公式サイトが立ち上がっていた。
 昨10.19、予選の組み合わせ表が発表された。
 前夜祭の写真も数葉アップされたが、約束の動画はなかった。
 今日10:00から、1回戦のインターネット中継が始まった。
 見ているうちに、NHKの「囲碁将棋ジャーナル」が始まり、前夜祭の映像が流れた。
 ドレスアップした女流棋士が一同に会した様子は壮観であった。
 公式サイトの写真で、今日の予選の様子を見ると、客はかなり近いところで対局を見ている。
 行ってみたくなった。
 2回戦は14:00からである。
 13:30過ぎ、地下鉄東西線の竹橋駅を下車。
 会場のパレスサイドビルには毎日新聞社があり、毎日ホールで名人戦の解説会を見たことがある。
 まん丸のエレベーターホールが東西の両端にある。
 その西側を3Fまで上ると、大盤解説会場兼受付があった。
 お金を払って客の証しのリボンをもらい、胸につける。
 紙を3枚もらった。
1.トーナメント表。1回戦の結果が既に記入してある。
2.大盤解説会場←→対局場の移動経路。裏に諸注意が書いてある。
3.クイズの投票用紙。2回戦で一番早く勝つ人を当てる。
 投票を早々に済ませる。
 投票箱らしきものがあったので入れようとする。
 が、外に何も書いてないし、先に入れている人もいない。
 投票用紙ではない小さな紙切れが入っている。
 違うところに、本当の投票箱があった。
 投函して、対局場へ移動する。
 階段を下り、長い廊下を通って、東側のエレベーターホールの先。
 ドアを抜け、将棋連盟、LPSA、毎日コミュニケーションそれぞれの控え室が並ぶ中を更に進む。
 棋士とスタッフも控え室が別れている。
 休憩所のようなオープンスペースも抜け、どん詰まりのドアを抜けると、対局場があった。
 時間もそろそろである。
 ぶらぶらしていると、報道陣と客は対局場に入るように言われる。
 報道の人が多く、客の方が少ない。
 ちょっと待つとドアが開き、女流棋士が2列隊伍で入ってきた。
 入室後、列ごとに左右に分かれて進む。
 華やかで、ちょっと感動ものであった。
 壁と窓に沿って対局用の机・椅子が並んでおり、女流棋士が着席する。
 客と報道陣は長机で囲われた真ん中のスペースにいる。
 一斉に振り駒が始まる。
 真ん中(客側)から見て、先手が左側に座る規則らしい。
 とりあえず座った席が逆ならば移動(交換)する。
 駒を並べる。
 アナウンスとともに、一斉に対局開始。
 4局だけがインターネットで生中継される。
 その対局には、盤側に記録係のほかノートパソコンに入力する人が付いている。
 2回戦では、島井−伊奈川、熊倉−神田、上田−中倉彰、坂東−貞升であった。

第1期マイナビ女子オープン予選2回戦 対局席配置

松 長  北 中  鈴 藤  早 藤  安 大  中 石  室 山
尾 沢  尾 村  木 森  水 田  食 庭  井 高  田 田

――      熊倉               島井
 ―      神田               伊奈川

        藤田綾              中倉宏
――      石橋               船戸

――      上田               坂東
―       中倉彰              貞升

―       高群               中村桃
――      小野               岩根


 真ん中のスペースは椅子も置いてあるのだが、座る人はあまりいない。
 立っていないと盤面が見づらいからである。
 突き当たりの両端の各2局は、遠くて全然見えない。
 向こうを向いている人は顔も見えない。
 例えば室田女流1級は後姿を遠くに見るだけである。

 持ち時間は40分。秒読みは1分。
 チェスクロックを使用する。
 開始時は11:20に針があり、12:00まで来ると持ち時間が切れたことになる。
 もっとも12:20からスタートしている時計もある。
 どちらもあるらしい。大橋流と伊藤流、といったところか。

 以下は対局者について特に気づいた点。

中村桃子女流2級
 今日デビュー戦の新人。
 カラーマニキュアをした長い爪で、上手に駒を摘んでいた。

坂東香菜子女流2級
 将棋まつりでも感じたが、人目が気になるのか、きょろきょろしている。
 ただし対局前だけで、対局中は盤面に集中していたようだ。

船戸陽子女流二段(左の写真)
 公式サイトでは、女流棋界のサトエリ、と紹介されている(ご本人もブログで照れていた)。
 その影響かどうかわからないが、胸元の開いたお衣装で、せんすを落として拾ったときなど、特にどきっとさせられた。

中倉宏美女流初段
 NHK杯の司会でおなじみ。
 色白。テレビで見る以上におきれい(もっとも皆さんそうかもしれない。)
 写真などではそう思わないのだけれど、実際にお会いしてお顔(特に対局中の横顔)を拝見すると、お姉さん(中倉彰子女流初段)に似ていると思う。

伊奈川愛果女流2級
 学校の制服(ブレザー)で対局。
 同じ高校生でも、室田女流1級はドレスアップしている。
 ここらはキャリアの違いから来るプロ意識の違いか、それともご家族や師匠の方針によるものか。
 まだ服を買えるほど将棋で稼いでない、とは言えるかもしれない。
 一方、室田さんはイベントにもよく出ている。
 伊奈川さんは化粧っ気もないようなので、おしゃれにあまり関心がないのかもしれない。
 だとすると、むしろ(今どきの)高校生らしくない、とも言えるか。

室田伊緒女流1級
 対局態度が美しかった。
 姿勢がよく、動じない。
 駒音も小さく、軽く打つ。
 加藤一二三先生とは対極にあるので、加藤ファンとしてはほめてはいけないかもしれないが。
 髪を後ろでまとめていて、白いうなじが美しい。

 以上でおわかりのように、入って右側の対局を中心に見ていた。

 途中、抜け出して大盤解説会場へ戻った。
 薄暗い会場で先崎学八段が解説していた。
 聞き手は村田智穂女流初段。
 藤井猛九段も解説らしかったが、このときは休みらしく客席の後の方に座っていた。
 大盤は、インターネット中継の画面を壁のスクリーンに投影しているだけで、本譜以外の手順で動かせない。
 先崎八段は、指し手に付けられているコメントを読んで、あまり強くない人が書いている、などとけちをつけていた。

 見に来ているプロ棋士が何人かいて、そのうち高橋道雄九段がゲスト解説をしてくれた(熊倉−神田戦)。
 面白かったので紹介する。
 (弟子の熊倉紫野女流2級について)
 師匠の言うことを聞いてくれない。
 こう指した方がいいよと言っても、自分の思った通りにする。
 わたしも一応、九段、なんですが。
 高橋一門の技術部門担当は中村亮介(四段)。
 バリバリの四間飛車党。
 熊倉も、中村桃子も四間飛車党。
 だから中村亮介の言うことは聞く。
 矢倉とかはやってくれないから、わたしの言うことは聞いてくれない。
 研究会で、女の子だてらにあぐらをかいたりする。
 昇級して半年たつが1局こつんと負けてから対局がなくなっちゃって、中村桃子にプロ初勝利を先に上げられちゃった。
(注・中村女流2級は1回戦がプロデビューで勝利。熊倉女流2級は2回戦から。)
 もっとも中村桃子の方が育成会に入ったのは早い。姉弟子。
 「2人とも美少女で、師匠幸せですね」と言われる。
 (対戦相手の)神田さん(真由美女流初段)は居飛車党で右四間一本。
 これを伝えるのを忘れていた。
 もっとも本人は聞かないだろうけど。
 熊倉は振り飛車だけど攻め将棋。
 焦り気味で攻めに出ちゃうところがある。
 (本局も)その匂いがする。

 再び先崎八段の解説になったところで、対局場に戻ることにした。
 本当は行ったり来たりできればいいのだけれど、あまりにも離れているので、客も解説会と対局場とで二極分化している。
 両方合わせれば50〜60人はいたか。
 なお、他に来ていたプロ棋士は、石川陽生六段、関浩六段、片上大輔五段。
 青野照市九段は理事としての立会いか。
 対局場では一般客といっしょのスペースで盤を覗く。

 対局が佳境に入る。
 時間が切れ、あちこちで秒読みが始まる。
 他所の秒読みが結構うるさい。
 混乱しないかと思うのだが、考えてみると将棋会館での対局も、このような感じなのかもしれない。
 一番先に終ったのは坂東−貞升戦であった。
 もっとも他所を見ていて、投了の瞬間を見逃した。
 対局者がしゃべり始めるので、終ったとわかる。
 しかしどちらが勝ったのかわからない。
 記者の人が双方からコメントを取る。
 その後で感想戦を行ってから駒をしまい、席を立つ。
 (貞升南女流1級の勝ちだった。)
 島井−伊奈川、中倉宏−船戸戦は投了の瞬間を見ることができた(島井、船戸勝ち)。
 初め知らなかったのだが、インターネット中継をしている組は、終局後大盤解説会場に顔を出して感想を述べるらしい。
 熊倉−神田戦も終っており(熊倉勝ち)、これから行くというので先回りして戻り、聞いた。

 以下は大盤解説会場でのやり取り。
(公開対局について)
神田 経験が1度あるので気にならなかった。
熊倉 アマの大会に出ていたので、普通の対局よりやりやすかった。
   (注・もしかすると正座が苦手?)
   でも初勝利がかかっていたので緊張した。
(決勝への決意)
熊倉 神田さんの分までがんばって来たい。
(次いで来るはずの島井・伊奈川の2人を待って、解説陣がつなぎのトーク。)
村田 伊奈川さんは学校のブレザー、制服で対局。
    前夜祭でも1人だけ制服で、初々しかった。
先崎 あー、あれ制服なんだ。
村田 里見さん(香奈女流初段)も制服ですね。セーラー服ですが。
先崎 セーラー服と言うと、林葉さんの残像が…。
    こんなことを言うと、里見さん怒るかな。
    (林葉さんを)知らないか。
(ここで室田勝ち、次は中井女流六段と決勝、という情報が入る。)
村田 室田さんは、師匠・杉本七段譲りの四間飛車しかやらない。
    穴熊にされても玉を囲ってから攻める。
先崎 藤井システムはやらないということですか。
(中井女流六段について)
先崎 最近は貫禄がついて。女帝、と呼んでいる。
    子供の頃からよく知っている。幼馴染みたいなもの。
(島井咲緒里女流初段、伊奈川愛菓女流2級が到着。)
島井 作戦負けかな。中盤からずっと苦しくて。
(公開対局について)
伊奈川 結構緊張しました。
島井 最近は見られることを怖がらないようにしようと。
    見られて気持ちいい、と思うように。

 大盤解説は終了(結局わたしは藤井九段の解説は聞かず)。
 対局場へ戻ると、しかしまだやっている対局がある。
 最後までかかったのが、安食総子女流初段−大庭美樹女流初段戦。
 はっきり覚えていないが、16:30頃までかかったか。

 予選決勝の早抜け予想を出し(ちなみに2回戦同様はずれた)、ビル内の1Fのコンビニでパンを買って食べた。
 開始予定の17:00前に対局場へ行くと、少し遅かったようで、対局場への入り口前に女流棋士が並んでスタンバイしている状態で、その後で止められてしまった。
 2回戦同様、本当は中に入って対局者の入場を待ち受けていなければならなかったのだが。
 後から(少し遅れて)ついて入る格好になった。
 2回戦と同じ運びで、対局開始となった。
 今回は解説会場へは行かず、女流棋士たちの真剣勝負の様を最初から最後まで見届けることにした。

第1期マイナビ女子オープン予選決勝 対局席配置

             古 鈴  安 早
             河 木  食 水

――      上田             中井
――      松尾             室田

―       中村真            船戸
――      熊倉             島井

――      石橋             貞升
―       高群             中村桃

写真は本戦組み合わせ抽選会でくじを引く石橋女流四段。

 2回戦は相振飛車が多かったが、決勝は対抗形が多かった。
 早水千紗女流二段や貞升南女流初段は、四間飛車に対し棒銀をしていた。
 穴熊は相変わらず多く、船戸−島井戦は居飛車穴熊対振飛車穴熊だったし、上田初美女流初段は、相振飛車で穴熊に組み、有利に戦っていたと思う。
 最初に投了したのは室田女流1級で、得意の四間飛車だったが、中井広恵女流六段の飛車を切っての猛攻に逃げ切れなかった。
 感想戦は貫禄の違いから、指導将棋のような感じにも見えた。
 序盤は安食−早水、貞升−中村桃戦なども見ていたが、中終盤は船戸−島井、中井−室田戦に集中した。
 結局のところ、将棋そのものを玩味するには、ずっと大盤解説を聞いているか、家にいてインターネット中継を見ているほうがいいのである。
 しかしプロの対局を見る機会は、めったにないので、ずっと対局場にいて、その雰囲気を堪能したのである。
 最後に終ったのはやはり安食女流初段で、早水女流二段に、今度は負けた。

 対局結果について感想。
 この日プロデビューの中村桃子女流2級が、強豪の岩根女流初段を破るなど、2連勝して本戦出場までもう一歩だった。
 また、船戸女流二段が、強敵相手に3連勝して本戦出場(他の7人は1回戦シード)。
 このお二人の活躍が目立った。

 全対局終了後、19:30から、大盤解説会場で、本戦組み合わせ抽選会が行われた。
 大きなトーナメント表があり、本戦シード者の名前が既にある。
 その相手に誰が入るか。
 予選を勝ち抜いた8人がくじを引いて決定する。
 順番は、早く勝った順である。
 くじを引き、その後抱負を一人づつ語る。
 くじ引きの箱は、わたしがクイズの投票箱と間違えたものであった。
 対局場では素人は写真を撮れなかったが、ここでは禁じられていない。
 わたしも携帯で撮った。
 この抽選会の模様は、公式サイトで動画がアップされたので、ここでは詳細は略。
 19:50頃、終了。
 受付でリボンを返す。
 予選トーナメント表が再び渡された。
 今日の結果が全て記載されている。
 この点は手回しがよく感心した。
 充実した時を過ごしたことに満足して帰宅した。

 イベント自体の感想。
 特に2回戦は、対局数が多すぎ、見切れなくてもったいない気もしたが、少ないと客が同じ盤側に集中してしまう。
 そうなると後ろの人は見えないので、客を分散させるため、ある程度、数は必要なのである。
 片上五段がブログで、客が少ないことを問題視されていたが、客が多すぎると、同じ問題が起きる。
 運営側としては難しいところであるが、一ファンとしてのみ言えば、こういう贅沢な企画があって、客が少なく、ゆったり見られるのは、うれしいことである。
 大盤解説は改善の余地があると思う。

結果(左が先手)

予選2回戦
●小野ゆかりアマ−高群佐知子女流三段○
○石橋幸緒女流四段―藤田綾女流初段●
●中倉彰子女流初段−上田初美女流初段○
○松尾香織女流初段―長沢千和子女流四段●
●北尾まどか女流初段―中村真梨花女流初段○
●神田真由美女流初段―熊倉紫野女流2級○
○古河彩子女流二段―本田小百合女流二段●
○鈴木環那女流初段―藤森奈津子女流三段●
○早水千紗女流二段―藤田麻衣子女流1級●
○安食総子女流初段−大庭美樹女流初段●
○室田伊緒女流1級―山田朱美女流初段●
○中井広恵女流六段―石高澄恵女流二段●
○島井咲緒里女流初段―伊奈川愛果女流2級●
●中倉宏美女流初段―船戸陽子女流二段○
●坂東香菜子女流2級―貞升南女流1級○
○中村桃子女流2級―岩根忍女流初段●

予選決勝
●高群佐知子女流三段―石橋幸緒女流四段○
●松尾香織女流初段―上田初美女流初段○
●熊倉紫野女流2級―中村真梨花女流初段○
●古河彩子女流二段―鈴木環那女流初段○
●安食総子女流初段―早水千紗女流二段○
○中井広恵女流六段―室田伊緒女流1級●
○船戸陽子女流二段―島井咲緒里女流初段●
○貞升南女流1級―中村桃子女流2級●


※本戦組み合わせ(左:シード、右:予選勝抜者)

矢内理絵子女流名人―上田初美女流初段
清水市代女流王将王位―中村真梨花女流初段

斎田晴子倉敷藤花―石橋幸緒女流四段
村田智穂女流初段―鈴木環那女流初段

山田久美女流三段−船戸陽子女流二段
千葉涼子女流三段―早水千紗女流二段

甲斐智美女流二段―貞升南女流1級
里見香奈女流初段―中井広恵女流六段


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