公益目的事業に係る収入は費用を上回ってはならない 08.6.22


公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律
(平成十八年六月二日法律第四十九号)
最終改正:平成二〇年五月二日法律第二八号

第二章 公益法人の認定等
 第一節 公益法人の認定

(公益認定)
第四条  公益目的事業を行う一般社団法人又は一般財団法人は、行政庁の認定を受けることができる。

(公益認定の基準)
第五条  行政庁は、前条の認定(以下「公益認定」という。)の申請をした一般社団法人又は一般財団法人が次に掲げる基準に適合すると認めるときは、当該法人について公益認定をするものとする。
 :
六  その行う公益目的事業について、当該公益目的事業に係る収入がその実施に要する適正な費用を償う額を超えないと見込まれるものであること。



 上記(認定法第五条第六号)の判断のため、移行認定に当たっては、以下の書類を添付して申請します。


別紙3 法人の財務に関する公益認定の基準に係る書類について
 別表A 収支相償の計算
(1) 収益事業等の利益額の50%を繰り入れる場合
(2) 収益事業等の利益額の50%を超えて繰り入れる場合


 同時に提出する収支予算書の金額を元に計算します。
 (1)と(2)では様式(計算方法)に若干の違いがありますが、基本的には同じです。


 移行認定申請書(様式)
(特例民法法人が公益認定の申請をする場合の申請書です。)
http://www.cao.go.jp/picc/seisaku/sinsei/001.html

 別表A 収支相償(6月13日版)(PDF)
http://www.cao.go.jp/picc/seisaku/sinsei/pdf/nintei_005.pdf


 申請の手引き(公益移行認定編)
http://www.cao.go.jp/picc/seisaku/sinsei/003.html

 II -5-2別表A 収支相償について(PDF:449KB)
http://www.cao.go.jp/picc/seisaku/sinsei/pdf/tebiki_004.pdf


 まず、第一段階として、個々の公益目的事業ごとに収支相償を判定します。

  経常収益計
 −経常費用計
(+その事業に係る特定費用準備資金の当期取崩額:認定初年度はなし)
 −その事業に係る特定費用準備資金の当期積立額
 =第一段階の判定

 次に、第二段階として公益目的事業会計全体の収支相償を判定します。
(計算式は略。(1)と(2)で違いがあります。)

 簡単に言うと、収益−費用=利益が、0円以下なら「適合」ということです。
 ただし、毎期毎期、単年度できっちり収支が相償するとは限らないため、その調整のために「特定費用準備資金」という勘定が設けられています。

 例えば、毎年一定の会費収入が上がるが、2年に1回大きな大会をやるため、費用の方は隔年で大きく計上される法人があったとします。

X年度 収益 100円
     費用  40円
     利益  60円

X+1年度 収益  100円
      費用 160円
      利益 −60円

 各年度ごとに収支を見ると相償しているとは言えませんが、2年を通してみると、相償しています。
 これを「特定費用準備資金」で調整した場合の損益計算は、次のようになるのでしょう。

X年度    収益       100円
         費用         40円
  特定費用準備資金積立  60円
        利益         0円

X+1年度    収益       100円
   特定費用準備資金取崩  60円
         費用       160円
         利益         0円


 特定費用準備資金については、「別表C(5)」という別の添付資料が求められます。


 移行認定申請書(様式)
 (特例民法法人が公益認定の申請をする場合の申請書です。)
http://www.cao.go.jp/picc/seisaku/sinsei/001.html

 別表C 遊休財産額(6月13日版)(PDF)
http://www.cao.go.jp/picc/seisaku/sinsei/pdf/nintei_007.pdf
 別表C(5) 特定費用準備資金


 申請の手引き(公益移行認定編)
http://www.cao.go.jp/picc/seisaku/sinsei/003.html

 II -5-4別表C遊休財産額について(PDF:496KB)
http://www.cao.go.jp/picc/seisaku/sinsei/pdf/tebiki_006.pdf
 別表C(5) 特定費用準備資金

 :
ⓑ 特定費用準備資金の名称
 貸借対照表又は財産目録と一致した記載にしてください。
 例えば、○○事業拡大資金、○○事業開催資金など具体的な用途がわかる名称を使用してください。
 なお、一括りとした事業の中で複数の特定費用準備資金を設定する場合には、それぞれの資金が判別できる名称を使用してください。
 …
ⓒ 将来の特定の活動の名称
 当該特定費用準備資金により実施する活動の名称を記載してください。
 ただし、活動の名称が未定の場合、仮称でも構いません。
 …
ⓓ 当該活動の内容
 当該資金を使用する活動の内容について記載してください。
 …
ⓔ 積立期間(事業年度)
 将来の特定の活動のためにこれまでに積み立ててあった積立金を特定費用準備資金に替える場合であっても、当該積立金を取り崩し、新規に特定費用準備資金を積み立てることとなるため、過去の積立期間は含めず、申請書に添付した事業計画書の事業年度以降の年度を記載してください。
 …
ⓕ 当該活動の実施予定時期
 特定費用準備資金の対象となる活動の実施予定時期を記載してください。
 …
ⓖ 積立限度額の算定方法
 事業の実施に必要な額をどのように算定したのか、算定根拠を示して説明してください。
 …

              
 別表Aに戻ります。
 第一段階の判定で、収支相償と認められない(個々の)公益目的事業については、公益目的事業比率及び遊休財産額の計算(何れも公益認定の判定ポイント)において、公益目的事業ではなく収益事業等として扱われることになります。
 その結果によっては、公益認定が受けられない場合もあり得ます。
 公益目的事業比率が50%以上であること、遊休財産額が1年分の公益目的事業費相当額(若干の調整あり)を超えないことが、公益認定の条件になっています。

 第二段階の判定で、公益目的事業会計全体で剰余金が生じる(収入−費用がプラスとなる)場合、その扱いの計画を別表Aに記入します。
 

 別表A 収支相償(6月13日版)(PDF)
http://www.cao.go.jp/picc/seisaku/sinsei/pdf/nintei_005.pdf

※第二段階における剰余金の扱い
 剰余が生じる場合(収入−費用欄の数値がプラスの場合)は、その剰余相当額を公益目的保有財産に係る資産取得、改良に充てるための資金に繰り入れたり、公益目的保有財産の取得に充てたりするか、翌年度の事業拡大を行うことにより同額程度の損失となるようにしなければなりません。
 収入−費用欄の数値がプラスの場合、法人における剰余金の扱いの計画等を記入してください。


{参考}
 民による公益の増進を目指して(パンフレット)
http://www.cao.go.jp/picc/seisaku/panflet/panflet.html

 ガイドライン、会計基準
http://www.cao.go.jp/picc/seisaku/guide/guide.html

 公益認定等に関する運用について(公益認定等ガイドライン:認定法関連部分)
http://www.cao.go.jp/picc/seisaku/guide/001.html

5.認定法第5条第6号、第14 条関係<公益目的事業の収入>

(1) 判定方法
 認定法第5条第6号の「公益目的事業に係る収入がその実施に要する適正な費用を償う額を超えない」(認定法第14 条にて同旨の規定)(以下「収支相償」)かどうかについては、二段階で判断する。
 まず第一段階では、公益目的事業単位で事業に特に関連付けられる収入と費用とを比較し、次に第二段階で、第一段階を満たす事業の収入、費用も含め、公益目的事業を経理する会計全体の収入、費用を比較する。
 申請時には、認定法第7条第2項第2号により提出する収支予算書の対象事業年度に係る見込み額を計算し、認定規則第5条第3項(認定法第7条第2項第6号の書類を定めるもの)第3号の「書類」に記載する。
 認定後においては、認定規則第28 条第1項(認定法第21 条第2項第4号の書類を定めるもの)第2号の「運営組織及び事業活動の概要及びこれらに関する数値のうち重要なものを記載した書類」に実績値を記載する。

@ 第一段階においては、公益性が認められる公益目的事業(公益目的事業のチェックポイントにおける事業の単位と同様の考え方に基づいて、事業の目的や実施の態様等から関連する事業もまとめたものを含む)を単位として、当該事業に関連付けられた収入と費用とを比較する。
 当該事業に関連付けられた収入と費用は、法人の損益計算書(正味財産増減計算書)におけるそれぞれ当該事業に係る経常収益、経常費用とする。
 収入が費用を上回る場合には、当該事業に係る特定費用準備資金への積立て額として整理する。

A 第二段階においては、第一段階の収支相償を満たす事業に係る経常収益及び経常費用に加え、公益目的事業に係る会計に属するが、特定の事業と関連付けられない公益に係るその他の経常収益及び経常費用を合計し、特定費用準備資金、公益目的保有財産等に係る一定の調整計算を行った上で収支を比較する。
 この段階において、法人が収益事業等を行っている場合には、収益事業等の利益から公益目的事業財産に繰入れた額も収入に含めるが、当該繰入れが認定法第18 条第4号に基づく利益額の50%の繰入れか、認定規則第26 条7号、8号に基づく利益額の50%超の繰入れかに応じて、2つの計算方法がある(下記(2)、(3))。
 また、法人が収益事業等を行っていない場合は、下記(2)に準ずる。
 なお、収益事業等会計から公益目的事業会計への繰入れは、内部振替であり、公益目的事業比率(認定法第15 条)の算定上、当該収益事業等の事業費には含まれない。

B 費用は「適正な」範囲である必要から、謝金、礼金、人件費等について不相当に高い支出を公益目的事業の費用として計上することは適当ではない。
 なお、公益目的事業に付随して収益事業等を行っている場合に、その収益事業等に係る費用、収益を収支相償の計算に含めることはできない。

(以下略)


FAQ
 収支相償(公益法人認定法第5条第6号関係)に関する質問
http://www.cao.go.jp/picc/faq/25/25.html

問V-2-1(収支相償)
 収支相償の第一段階は事業毎に判定とのことですが、どういう単位で事業を考えればいいのでしょうか。

問V-2-2(収支相償)
 収支相償の計算方法として収益事業等からの利益の繰入れ額が50%の場合と50%を超える場合の2つの方法があるようですが、両者の違いがわかりません。(PDF)

問V-2-3(収支相償)
 公益目的事業に係る収入は費用を上回ってはならないという基準を厳格に運用すると、収支がゼロか損失を計上しなければならなくなってしまい、公益目的事業を継続的に実施できなくなってしまうのではないでしょうか。

問V-2-4(収支相償)
 収支相償を二段階でやる理由を教えて下さい。また第一段階と第二段階の関係についてもお願いします。

問V-2-5(収支相償)
 収支相償を計算した結果、収入が費用を上回って剰余金が出た場合はどうすればいいのでしょうか。またこの剰余金は遊休財産となるのでしょうか。

(※回答は略)


FAQ
 公益目的事業比率(公益法人認定法第5条第8号関係)に関する質問
http://www.cao.go.jp/picc/faq/26/26.html

問X‐3‐C(公益目的事業比率)
 法人が保有する資金のうち、どういうものが特定費用準備資金に当てはまるのかがわかりません。
 利用方法について教えて下さい。
http://www.cao.go.jp/picc/faq/26/004.pdf


1 将来の特定の事業費、管理費に特別に支出するために積み立てる資金で、新規事業の開始、既存事業の拡大、数年周期で開催するイベントや記念事業等の費用が対象となります。

2 特定費用準備資金への繰入れは、会計上は本来、貸借取引となるのですが、公益目的事業比率や収支相償といった認定基準においては、この繰入れを費用とみなして取り扱うこととしています。
 また特定費用準備資金を取り崩した時には、取崩しは費用額の減算や収入にみなすこととなります。

3 特定費用準備資金への繰入れについては、次の要件をすべて満たしていなければなりません(公益法人認定法施行規則第18 条第3項、公益認定等ガイドラインT7.(5)A)。
@ 資金の目的である活動を行うことが見込まれること。
A 資金の目的毎に他の資金と明確に区分して管理され、貸借対照表の特定資産に計上していること。
B 資金の目的である支出に充てる場合を除くほか、取り崩すことができないものであること又は目的外で取り崩す場合に理事会の決議を要するなど特別の手続きが定められていること(注)。
C 積立限度額が合理的に算定されていること。
D 特別の手続きの定め、積立限度額、その算定根拠について事業報告に準じた備置き、閲覧等の措置が講じられていること。
(注)目的外取崩しの特別な手続とは、例えば定款に「特定費用準備資金の管理は別途、理事会で定める手続による」と定め、目的外取崩しは理事会決議に委ねるということが考えられます。

4 例えば予備費等、将来の一般的な備えや資金繰りのために保有している資金は上記3の要件を満たさないため、該当しません(問X−4−C参照)。
 将来の収支の変動に備えて法人が自主的に積み立てる資金(基金)については、過去の実績や事業環境の見通しを踏まえて、活動見込みや限度額の見積もりが可能など要件を満たす限りで特定費用準備資金を用いることができます。

5 一事業年度の特定費用準備資金への繰入額は計画に定めた積立限度額の範囲内であれば、特に制限はありません。
 ただし収支相償の計算においては収益事業等の利益の50%超を公益目的事業財産に繰入れる場合には、積立て期間内で計画的に積立てる計算が必要になりますのでご注意ください(公益認定等ガイドラインT5.(3)A(注))。



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