1995.4.20(木)VTジャパン'95を中井祐樹が語る
テレビ東京「スポーツTODAY」BATTLE WEEKLY


 テレビ東京で毎日夜に放送していたスポーツ番組「スポーツTODAY」で、毎週1回、「BATTLE WEEKLY」というコーナーがあり、プロレス・格闘技の情報を伝えていた。
 取り上げる対象は、(TV局がついている)全日本・新日本以外のプロレス団体、天龍のWARや大仁田のFMWが多かった。
 曜日は火曜日、という情報をネットで見つけたが、途中で変わったような記憶もあり、はっきりしない。
 「BATTLE WEEKLY」の録画は、1993〜1995のものが残っている。
 今回紹介するのは、1995年4月下旬の放送と思われる。

司会:池谷亨、横井ひろみ(何れもTV東京アナウンサー)


横井
 格闘技ファンの皆様、お待たせいたしました。
 バトル・ウィークリーです。
 今週もですね、バトル・キャスターの斎藤アナウンサーが海外取材に出ていますので、わたし達2人でお伝えします。
池谷
 今日はですね、先週木曜日の20日に行われましたバーリ・トゥード・ジャパンオープン'95の特集をお送りしたいと思うのですけども、まずはこちらをご覧下さい。
横井
 どうぞ。
(来日するヒクソンの様子〜大会の映像。以下はナレーション。)
横井
 グレイシー柔術最強の男、そして400戦負けなしという脅威の記録を持つ男、ヒクソン・グレイシーが再び日本に上陸。
 先週の木曜日、日本武道館で行われたバーリ・トゥード・ジャパンオープン'95に登場しました。
 1回戦、リングス・山本宣久との試合は、長期戦になりながら最後はスリーパーでフィニッシュ。
 準決勝、木村浩一郎との対戦でも、全く危な気ない闘い振りで、決勝に駒を進めます。
 そのヒクソンと決勝で対したのが、体重わずか70キロのシューティング・ウェルター級王者、中井祐樹。
 1回戦はあのジェラルド・ゴルドーの打撃を受けながらも、最後はヒール・ホールドでギブ・アップ勝ち。
 準決勝、体重115キロのクレイグ・ピットマンにも、柔よく剛を制し、大和魂を我々に見せてくれました。
 そこで今日は、その中井選手がスタジオに生出演。
 何が本当に強いのか、打倒グレイシーの秘策など、たっぷり話して頂きます。
(中井が登場。テロップに「171p 71s 北海道出身」。)
横井
 中井さんは、あの今日はですね、サングラスで登場なんですが、まだ目の方が、かなり充血というか
池谷
 ちょっとねえ、してるということで
中井
 すみません、こんな**(聞き取れず)ですみません。
池谷・横井
 いえいえ。
横井
 まあね、顔を見たい人もいるでしょうけど、がまんして下さい。
(シューティングの説明、練習・試合の映像。
 VTジャパン'95の説明。
 以上、略。
 1回戦、ゴルドー戦の映像。)
 :
池谷
 中井選手、こういう顔をしているんですよ。
(一同、笑。)
池谷
 まず、すごい身長差がありますね。
(スタンドのままロープ際でもみ合っている。)
中井
 これはもういきなりですけど、目に親指をグーと入れて来られまして
池谷
 あ、目潰しにあって
中井
 これ何回もあったんですよね。
 2ラウンドは下から足関節狙うんですが、上からのパンチと、踏み潰しの餌食になりまして
池谷
 これよく耐えましたね。
中井
 このときばっかりはやっぱり戦意喪失しそうになりましたよね。
(顔がはれ上がり、血が流れる。)
横井
 もう途中で危ないと思う時は
中井
 危ないと思いましたけど、とりあえず足向けてなきゃいけないんで、それでそのまんま、こうして寝たままの体勢で誘ったんですけど
池谷
 かなり挑発してますよね。
中井
 ええ。相手も、僕の寝技が怖いのかわからないですけど、攻めて来なかったですね。
 これは最終ラウンドの4ラウンドで、両足タックル行って、ゴルドーが崩れたので、ペースが狂いましたね。
 それで首絞めに来たので僕ははずして足関節今度は取れると思って、これは定石通りのヒール・ホールドですね。
(テロップ「中井(4R2分41秒ヒールホールド)ゴルドー」)
横井
 あのゴルドーを倒したっていうので、お客さん大喜びだったんですけど
中井
 沸いてくれましたね。
 これは素直にうれしかったですね。
横井
 ほんとわたし達もうれしかったですハイ。
池谷
 試合後のアピール(ポーズ)もなかなかね。
横井
 ゴルドーはショックですね。
中井
 そうですね。
 70キロの人間には普通、負けませんよね。

(準決勝の映像。)
横井
 そして準決勝、ですけども、ピットマン選手とこれ体重差がだいぶあって
中井
 かなりありましたけど、これはピットマン選手がこういう風にラフな戦法に来ると思っていましたので、とにかく下でしのいで、攻め疲れを待とうという作戦でした。
 これはもうそのまんまですね。
(腕十時にとらえられたピットマンが中井を持ち上げ、ロープまで運んだ所でレフリーがストップ。)
 こんなに早く決まると思わなかったですよ。
 もっと、もっとやるつもりだったので。
(テロップ「中井(2R7分30秒腕ひしぎ十字固め)ピットマン」)
 あまりやったことのない下からの十字なんですけど、これはまず定石通り
池谷
 ちょっとピットマンはねえ、納得行かないというような顔をしてましたけどもねえ。
中井
 でも、がまんは、すると危ないですからね。
 止めて、レフリーが、正しい判断だと思うんですけど、はい。
横井
 そして見事に決勝に進んだわけですが、一方のヒクソン・グレイシーなんですが、1回戦はリングスの山本宣久選手と対戦したんですけども、これ中井さんいっしょに見てもらえますか。
中井
 あ、はい。見てなかったんですけどね。
池谷
 あ、当日はね。
横井
 じゃあ、今見て下さい。
中井
 初めてです。

(ヒクソンの試合の映像。)
池谷
 これはもう試合前から盛り上がりましたね。
 会場沸きに沸きましたけどもね。
中井
 人気者でしょうからね。
横井
 さあこのグレイシーと対戦した山本選手なんですが、かなりロープを
(つかんでテイクダウンを防ぐ。)
中井
 ええ、僕がゴルドーにやられた戦法と同じ、戦法っていうのか、防御法ですね。
池谷
 うーん。
中井
 こうされると、試合時間を長引かせるのには有効だと思います。
横井
 はい。そしてこのときにヒクソンが
池谷
 怒ったんですよねー。
横井
 怒って、それで
(山本をロープの外に落とす。)
池谷
 これなかなか攻めて来ないという意味だったんですかね。
中井
 そうでしょうねー。
横井
 やっぱり消極的だ、という怒りなんですか?
中井
 そうだと思います。
 でも、つかんでいる内は守れるかもしれないけど攻めれないですよね。
 時間を長引かせるのみだと思います。
横井
 そしてここで
池谷
 ついに、あ、まだ、まだつかんでますねー。
横井
 まだねー。
(ヒクソン、タックル。山本、右手でロープをかかえて踏ん張り、そのままフロント・チョークに行く。)
中井
 でもこれは、まだ決まらないでしょう。
池谷
 なかなかヒクソンも、こうつかまらないんですよね。 
 首の辺りを絞めてもねー。
中井
 こっからは普通
(ヒクソン、外掛けで山本をテークダウン。)
池谷
 で、とうとうつかまってしまって
横井
 こうなったらもう
中井
 そうですね。
 もうマウントを簡単に許しちゃうと後は**(聞き取れず)だけかもしれない。
(テロップ「ヒクソン(3R3分49秒スリーパーホールド)山本」)
横井
 ほんとに長い間がんばった山本選手ですが、ヒクソンに敗れてしまいました。
 いやあでも会場はね、こんなに長い間もって、という感じだったんですけども。
 この後は準決勝です。
 木村浩一郎選手と対戦しました。
(木村がヒクソンを持ち上げる。)
中井
 あ、リフトしましたよ。
 でも、でも特に、リフトしてもなんてことはないですね。
横井
 なんてことない!
池谷
 でも馬乗りになったら、ヒクソンのやりたい放題ですものね。
横井
 どうですかこの…どうなんでしょう、見てて木村選手の
中井
 えーと、これはちょっと、あごを上げてしまったんで、まずこれはもう決まるしかない、ですね。
(テロップ「ヒクソン(1R2分7秒スリーパーホールド)木村」)
池谷
 2分7秒ですからね、簡単に決まってしまったという感じですけどね。
中井
 ほとんど技は使ってないんじゃないですかね。

池谷
 そして迎えたのが、中井選手とヒクソンの決勝戦なんですが、実は試合前にですね、こういう「格闘技通信」の見出しを見て頂きたいんですが。
(格通の表紙が大写しにされる。)
池谷
 「ヒクソンよ、ゴルドーという名の狂気をどう制す!」とまるでもう決勝戦が、ヒクソンとゴルドーかのような書かれ方をしていたわけですが。
横井
 これ知ってました?
中井
 ええ、知ってましたよ。
 これを見て、やっぱり、うーん、そう思ってるのか、と。
 僕なんかは、かえってやったろーと思ってかえって燃えましたですね。
池谷・横井
 かえって燃えたと。
横井
 「格闘技通信」ありがとうございましたって感じですけども。
 それでは決勝戦の方を、いっしょに振り返ってみたいと思います。
 決勝戦です。

(映像。)
横井
 この時の気持ちというか、どういう
中井
 えーと、真っ白でしたね。
横井
 まず初めは、どうしようと
中井
 えーと、どうしようということはなくて、僕、寝技で真っ向勝負しようと思って、思ったかどうかわからないですけど、そのまま行きましたんで、ヒクソンもそのまま、何も打撃のポーズしなかったでしょ。
 ヒクソンも、いきなり組みに来たし、寝技勝負で、寝技勝負で取られた。
 マウントは早かったですね。
 僕も、でもこの時点では、まだマウント返せると思ってまして、足を絡めて、何度か掛かってるんですよね。
 これが、うまく行けば、マウントも破れたはずなんですけど。
 次に絞めに来る、この辺うまいですよね。
 僕は足を返そうと思ってるんですけど、絞めで塞いじゃうんですね。
 この時点で、ちょっと危ないなとは思いましたけど、まだ、まだと思いましたけど
横井
 まだやれると
中井
 腕をはずして、はずしたんですけど、そっから逆の腕が伸びてきてスリーパ―に掛かってしまいまして、やっぱり、やっぱり1枚上でしたね。
(テロップ「ヒクソン(1R6分22秒スリーパーホールド)中井」)
横井
 うーん、やっぱり
池谷
 ヒクソン神話というのはね、今回も保たれたという感じがするんですけど
中井
 寝技の強さを磨かなきゃだめですね、まだ。
池谷
 まあ柔術というからにはですね、日本人が何とかしてほしいという所もあるんですが、あの骨法の選手なんかとね、交流して
中井
 あー、そういう話が今結構出て来てまして、僕として‥まあ僕が蒔いた種なんですけど、でもそれは大歓迎です。
 僕が試合に出てもいいと思いますし、えーと、骨法の選手にも、シューティングにどんどん参戦してほしいと思いますし、そして試合したり練習したり、言葉を交わしたりでもいいですからそういうので、どんどんできたら、いいと思いますね。
池谷
 一致団結して、当面の目標はやっぱり打倒グレイシー
中井
 そうですね、そのためにはもう日本がもう、団体とかで分かれてる場合じゃないと思うんで。
 これは、僕も声を大きくして言いたいと思いますね。
横井
 またバーリ・トゥード出て下さいね。
中井
 はい。ファンの人が望めば
横井
 望めば、ということで。
 はい、ありがとうございました。
池谷
 ありがとうございました。
中井
 どうも、ありがとうございました。

池谷
 さて、今日は
横井
 今日は、話題がもう1つあるんですが。
 5月5日の引退まであと10日となりましたFMWの大仁田厚選手ですが、ここに来て大きな動きがありました。
(以下略。
 格闘技・プロレスの話題は全部で13分ほど。
 その後CM、その後Jリーグの情報などが少しあり番組終了。)


 残酷なシーンが普通に流されていて、今見ると驚く。
 VTとは残酷なもの。
 残酷で当たり前。
 そういう認識が、まだ当時は見る側(ファン)にも、伝える側(メディア)にも、やる側(選手)にも、やらせる側(主催者)にもあったのではなかろうか。
 ルールやレフェリングも未整備で、問題があった。
 この大会のダメージにより中井選手は片目を失明したが、総合格闘技の危険性をアピールしその発展の妨げになることを恐れ、その事実を長く明かさなかったという。
(この稿2007.12.24)


メニューページ「テレビ放送アーカイブス」へ戻る