第28回JT将棋日本シリーズ東海大会 2007.10.8
於 名古屋市公会堂(解説・加藤一二三九段)
          (1)レポート
プロ公式戦準決勝第1局 佐藤JT杯覇者−森下九段
こども大会(低学年部門・高学年部門)決勝

トップの写真・左は、入場者を出迎える加藤九段と、募金箱を抱えた室田伊緒女流1級。
トップ・右は、加藤九段と、山田女流三段。

左の写真は、プロ公式戦優勝者に与えられるJT杯。。


JT将棋日本シリーズでは、プロ公式戦が公開対局で行われる。
第1回は1981年に、当時のタイトルホルダー4人だけでトーナメントが行われた。
子供だったわたしが、決勝の棋譜をとったものが残っている。
見に行ったわけではない。テレビ放送があったようだ。
もっともわたしの地元・仙台で行われたので、ローカル放送の可能性もある。
加藤十段が米長棋王に敗れ、優勝を逃した。
それから27年が過ぎた。
加藤先生は将棋一筋、今も現役でがんばっておられる。
そんな先生を、わたしは中年になった今も応援している。
今年は第28回。東海大会で先生が解説を努められる。
祝日である。行くことにした。

前日の7日(日)には、ポートメッセなごやで、こども大会の予選が行われた。
出場する子供の付き添いでない大人の見学は不可、とのことで行けなかった。

8日(月・祝)、名古屋は朝から雨であった。
しかしわたしが会場に向かう頃は、ちょうど小止みになっていた。
名古屋市公会堂は、鶴舞公園の中にある。
開場1時間前の11:30頃に行くと、入り口の前には、既に100人弱の行列が。
おやじの熱気でムンムンである。
12:00頃には200人以上になり、折り返して隙間なくびっちり並んでも、屋根のあるエントランスから列がはみ出て雨に当たるようになった。
おやじの熱気に押され、予定より10分ほど早く開場となった。

建物に入ると、JTガール(ほんとにそう言うかは知りません)のきれいなお姉さんが、パンフレットなどをくれる。
次いでホールの入り口の手前に、解説の加藤一二三先生、聞き手の山田久美女流三段が並んで、入場者を出迎える。
大きな募金箱を抱えた、棋譜読み上げの室田伊緒女流1級もいる。
初めてお見掛けする山田さんは、船戸女流流に言うと大変「カコイイ」大人の女性で、室田さんはスーツ姿も初々しい、とてもかわいい女の子であった。

とりあえず席の確保に走る。
ホールは2000名弱のキャパで大変大きいので、1時間も行列した割りには、座る席がなくなることはなかった。
わたしはあっさり最前列の席をゲット。
先に並んでいた100人の人達は、どこに行っているのだろう。
いささか拍子抜けであった。
ただ、大盤の前に大きなモニターが置いてあり(解説者のために天井のカメラで盤面を映し出しているようだった)、わたしの席からだと▲8九、9九辺りが見えないのが些か不便。

ホールの入り口に戻り、携帯で写真を撮らせてもらう。
能登半島と新潟地震の被災者のためのチャリティーとして、棋士の色紙を売っていた。
「直感精読」
「花鳥風月」
「剛毅」
「勇気を持って
 弱気を出さないで
 あわてないでおち
 ついて戦う」
の4種類を加藤先生は書いておられた。

パンフレットはA4版、22頁フルカラーで、写真も多く、大変立派である。
勝利者と封じ手の予想の投票用紙が同封されている。
勝利者予想は、早々に「佐藤康光棋聖」と書いて応募箱に入れた。

13:00、開演。
はまぐちくみさんと言う、ちょっと山田久美似の美人が司会であった。
中日新聞社の鈴木事業局次長より、主催者挨拶。
プロ棋界のことはよく知らないらしく、
「十段以外のタイトルホルダーが全て参加」
と、とんちんかんなことを言っていた。
中原永世十段をタイトルホルダーと思っていたのかもしれない。

もっとも主催者挨拶は一人だけでさっさと終わり、すぐ対局に。
まずスタッフが紹介される。

棋譜読み上げ 室田伊緒女流1級
――記録―― 竹内貴浩三段
−大盤操作− 船江恒平三段 松井義信三段
---聞き手--- 山田久美女流三段
――解説―― 加藤一二三九段

加藤九段挨拶
 第1回から28回まで、対局・解説で欠かさず出ている。
 あと2年で30周年。
 この名古屋大会では優勝もしている。
 他の棋戦の対局もしており、名古屋界隈では勝率9割。
 昨日は孫ぐらいの子供達と4枚落ち、6枚落ちで対局した。
 ご父兄から、子供に先生と同じように、うなぎを食べさせています、と言われたが、最近、2ヶ月ぐらい前から、お寿司に切り替えていますので。

写真はこども大会優勝者を表彰する加藤九段。

まずは東海こども大会・低学年部門決勝。
▲宮田だいき君(名古屋市・小3)対△三輪ひろき君(大垣市・小3)

事前に加藤九段立会いの下、振り駒が行われたのことで、先後は決定済み。
対局者は羽織袴にたすきがけ。
簡単なインタビューの後、速やかに対局が始まる。
(以上は高学年部門も同様。)
初手▲5六歩にどよめく場内。
ゴキゲン中飛車に。両少年の指し手が早い。
「加藤先生なら?」と山田女流が話を振ると
「5手目くらいで2時間くらい考えます。考えすぎです。」
意外な自虐に場内爆笑。

感想戦は加藤先生の一人舞台に。
締めの言葉も言い、場内拍手…の後で
「二人の声を聞かなかったかな?
何かありませんか?」

次いで14:00頃、東海こども大会・高学年部門決勝。
▲松岡えいしん君(小牧市・小5)対△鈴木たかひろ君(岡崎市・小5)

前局に続いてゴキゲン中飛車(ただし後手)に。
意外にも居飛車側に穴熊を推奨する加藤先生。
局後、感想戦で(今度は子供にもしゃべらせていた)。
加藤「穴熊は考えなかった?やらない?」
松岡君「前やってたけどやらなくなった」

両局とも、後手番が勝って優勝。
14:30頃から、表彰式。
加藤九段より、優勝者・準優勝者に、賞状の授与。
JT名古屋支店長より、優勝者にこどもJT杯の授与。
壇上は暑かったのか、子供の頭が汗でキラキラ輝いていたのが印象的であった。
14:37に終了し、15分間の休憩に。
14:52、きっちり15分後、2度目のブザー音と共に舞台の幕が上がり、再開。

プロ公式戦・準決勝第1局、佐藤康光JT杯覇者(棋聖棋王)対森下卓九段。 

両対局者は、客席の通路を歩いて登壇。
抱負を語る。
佐藤「ハラハラドキドキさせるような将棋を指したい」
森下「佐藤さんの将棋に対する情熱に負けないように」
室田女流1級の振り駒、歩が3枚で佐藤先手。
15:00頃、対局開始。

(以下は解説中の加藤先生のお話。)

居飛車側がどうするか。わたしなら急戦。
棒銀をして、苦しい思いをすることもあるのですが。
プロで棒銀が好きでやる人が3人。
わたし、飯塚祐紀六段…もう1人、確かいる。
3人ぐらいしかいない。
面白いと思うんですけど。
今のプロは長期戦が好き。穴熊が多い。

序盤早々から作戦的に工夫している。佐藤さんの特徴。
佐藤さんの素晴らしい所は、恐らく1人で研究して新手を出す所。
序盤でどうなろうと(中終盤に)自信がある。
(だから序盤で新手を出す冒険ができる。)
わたしなら序盤では早く形を決めたい。
(※棋士仲間の研究会には、否定的のご様子。)

対局中大きい動きをするのは、佐藤、羽生、わたし。
1番が佐藤さんかもしれない。わたしは3番。
羽生さんは何時間もせんすをパタパタしている。
それに比べるとわたしなんかは子供みたいなもんで。
(わたしは)動いている方が調子がよい。
(※以前は、羽生、わたし、佐藤の順、と言っておられたが…
  佐藤棋聖の近年の実績を認めておられるようである。)

対局姿勢が変わらないのは森内名人か、森下九段か。
NHK杯で森下九段を見ていても、動きがないので面白くない。(笑)

プロは勝った時は98点、負けた時も80点の将棋を指している。
だから負けるのも大したものなんです。
千敗して久しぶりに取材が増えた。
明日発売の文芸春秋に随筆が載ります。
一番深刻だったのは20連敗した時で、あの時に比べれば千敗は何でもない。
(※負ければ0点、勝ちさえすれば100点満点、ではないのですね。
  残り2点を追求するのが、加藤将棋の理想主義なのでしょう。
  でも2点、ってとこが微妙な量ではあります。)

JT杯でわたしだけが持っている記録。
解説が好評で、決勝もしろということで、事務局のご指名で(1期で)2回解説をした。
2度とないと思う。 

JT杯は事務局が気を使って設営してくれていて、気持ちよく対局ができる。
ありがたい。
土地の名産品を勝利者賞として頂ける。
妻がJT杯でいいものが揃えられてよかったね、と今でも言っている。
解説者には何にもないんだけれども。
(※聞きようによっては、林家こん平師匠っぽくもあります。)

写真は帰る客を握手で送る森下九段。

18手目△5三銀の所で、次の一手の出題。
先手・佐藤棋聖が封じ手を行う。
色々ある所で少し早い気もするが、早々に済ませて対局に集中してもらおう、という配慮ではなかろうか。
15:24から15:39まで15分間の休憩。
対局者、解説陣も控え室へ戻る。
封じ手予想の投票用紙はJTガール(繰り返しますがほんとにそう言うかは知りません)のきれいなお姉さんが集めて回る。
中でも一番おきれいなお姉さんの所に、わざわざ持って行って投票した。
時間が来て再開。
タイトル戦はもちろん、「将棋の日」の「次の一手名人」でも、立会人が封じ手の開封を行なうが、立会人のいないJT杯では読み上げが開いて読むだけで、あっさりしている。
室田女流1級は、▲2八玉を▲2ニ玉と読み間違えてしまった。
佐藤棋聖が驚いて覗き込んでいたが、自分が書き間違えたのか、と思ったのだろう。
解説者は立会人を兼ねることにして、この時だけでも盤側に座って、封じ手の開封を行うようにしてはどうだろうか。
今期のシリーズでは、郷田九段の二歩による反則負けもあった。
天変地異も含め思わぬトラブルがあった場合に、対局について判断する権限を持った人がいた方がいいと思う。
なお、半数以上の485名が正解したとのこと。
客数は1000人以上とのことだから、投票しなかった人も多かったようだ。

終盤、対局者に影響を与えないよう、解説は無言に。
大盤の駒を動かして、読み筋を示すのみ。
104手目△3七銀の所で、加藤先生が先の手順を示すが、△2八飛の所△2九飛と打ってしまう。
すかさず山田女流が▲6五の馬筋を斜めになぞる。
飛車、当たってます!
加藤先生びっくり、頭をなでなでして反省の図。
これが全て無言劇、場内大爆笑。
先日亡くなったマルセル・マルソーも、「よき後継者を得た」とご満足でしょう。
もっともその後は見事、詰みまで読み切っておられました。

感想戦では
加藤「森下九段は久々の決勝進出で」
森下「初めてです」

終局後、表彰式。
勝った森下九段に勝利者賞のクリスタルトロフィー、副賞のJT飲料一年分が贈られる。
負けた佐藤棋聖にも敢闘賞としてクリスタルトロフィー。

次いで、抽選会。(16:50頃)
封じ手予想の正解者から10名に、出場12棋士の署名入りせんす。
勝利者予想の正解者から1名に、対局棋士の署名入り盤駒セット。
最後にお楽しみ抽選会。不正解も含め投票者全ての中から、各2名にJT飲料詰め合わせ。
抽選は森下九段が行い、当たった人を壇上に呼んで、手ずから贈呈する。

最後の最後に、森下九段から、決勝への決意表明。
「初めて出てから12年。決勝に出るのは初めて。
 せっかく運に恵まれたので、決勝もがんばりたい」

17:00頃、終演。ぴったり予定通りである。
帰り口で、森下九段が客に握手するサービス。
行列が長々とできている。
並ぶのを諦めて、そこらをぶらぶらしている内に、行列が尽き掛けていたので、急遽並ぶ。
森下九段は顔が赤くなって、疲れた様子であったが、一人一人に大きな声を掛けていた。
わたしも「決勝がんばって下さい」と言って、その大きな手で握手をしてもらった。
17:15頃、握手での送り出しも終了。
森下九段、お疲れ様でした。
曇っていたこともあったが、辺りは薄暗くなっていた。
大変充実した一日であった。


※本大会に関連するサイト

JT将棋日本シリーズ公式HP
http://www.jti.co.jp/JTI/shogi/result/2007/3-1kyoku.html
キラリっ娘のそよ風日記(室田伊緒女流1級ほかのブログ)
http://kics.jugem.jp/?eid=715
駒魂(山田女流三段の応援サイト)
http://www.venus.dti.ne.jp/~asai/shogi/
JTの公式HPや、日本将棋連盟のHPで発表されるかなり前に、加藤先生と山田女流三段が、東海大会の解説をされることが「駒魂」で告知されていました。
山田さんは加藤先生のお気に入りで、聞き手を「ご指名」されることもあった、とのことなので、これからも要チェックです。


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