1915.11.30 アド・サンテル 対 野口清(1)

 

 

Stanford University

HOOVER INSTITUTION LIBRARY&ARCHIVES

邦字新聞デジタル・コレクション

Hoji Shinbun Digital Collection

Japanese Diaspora Initiative

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Nippu Jiji / 日布時事 [The Nippu Jiji], (Honolulu, HI)

Shin Sekai / 新世界 [The New World], (San Francisco, CA)

Nichibei Shinbun / 日米新聞 [The Japanese-American News], (San Francisco, CA)

 

 

日布時事 Nippu Jiji, 1915.11.30 Edition 02  Page 1

https://hojishinbun.hoover.org/?a=d&d=tnj19151130-02.1.1&e=-------ja-10--1-----------

(左下隅の記事。)

 

本 社 桑 港 特 電

□野ロC見苦しく敗る

十二月一日午前八時十八分着日布時事桑港特置員發

我~道六合流の開祖と稱する八段野口C氏と太平洋沿岸に於る白人角力チャンピヨンの稱あるアド、サンテルの兩名は双方何れか体の自由を失ひ抵抗力無きに至らしむるを條件とし昨夜當市ドリームランド、リングに於て眞劍勝負を行ひたるが野口八段は豫期に反し余りに脆く見苦しき敗を招きしため約二千の同胞観客は大に失望し悄然として退場せり

 

 

※桑港=サンフランシスコ

 

新世界 Shin Sekai, 1915.12.01  Page 3

https://hojishinbun.hoover.org/?a=d&d=tnw19151201-01.1.3&e=-------ja-10--1-----------

(上から5段目の記事。)

 

●サンテルの金剛力の爲めに

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  ▼野口氏手出しが出來ぬ

落機以西では向ふ所敵なく此の數年來土付かずにて日の出の勢ひなるアドサンテル氏と短軀なりと云へども六合~道流の開祖として堪能なる野口C氏との顔合せが日白人間の人氣を引いてさしもに廣いドリームランドも定刻前既に余地もないと云ふ素晴らしい人氣であた八時頃から前座連の鶏の蹴合ひの様なだるい三四回の勝負に次いで高橋二段と手島初段其の二組の柔術試合ありて外に一つレスリングマツチあり次いで愈々

▲サンテル對野口氏

 との試合である事が満場に通告された遉かの鐵骨ドリームランドが揺れんばかりの拍手雷の如く鳴り響た一見鬼をも挫く様なサンテル氏に續いで虎髯を撫しながら短軀の野口氏土俵に表はれた入場客中の三分通りを占領して居つた日本人は

▲熱狂極度に達し

 總立ちになつて野口氏を應援し互に握手を交はしてコテーハレル氏審判の下に龍攘虎撃の活劇は開始せられた一方一萬余の観客片唾を呑んで観客の視線はサーチライトの様に土俵の上に集中された暫時睨み合ひの凄ひ光景を見せたがサンテルのために土俵へねぢ伏せられ上になり下になり虚々實々秘術を盡したが何分にも

▲サンテルの金剛力

 のために野口氏の技術を應用する事能はず殆んど野口氏の兩手はサンテルのためにねぢ伏せられ約十五分間の後終に首じめの爲野口無惨にも負を取る観客中の白人總立ちになつて喜ぶ日本人観客顔色蒼然として再度の勝負を見ず逃げるが如く歸途に就けるもの多し休憩三十分の後第二回の勝負あり野口氏善く闘いたれども 約十分余にしてサンテルの胴じめのため又もや止めを刺さる日本人観客の間の惡ひ事云はん方なし

 

 

※「遉」さすが

 落機=ロッキー(山脈)

 

 

新世界 Shin Sekai, 1915.12.03  Page 3

https://hojishinbun.hoover.org/?a=d&d=tnw19151203-01.1.3&e=-------ja-10--1-----------

(上から6段目の記事。)

 

 ●野口自稱八段逃出す

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   ▼身が危險で居られず

よせばよいのに盲目蛇に恐ぢずとやらでサンテル氏に慘めな負け様をした自稱八段野口C氏は其後一部同胞より初めの大言壮語の故に非常なる非難を買ひ現に一昨晩も午前四時頃ピストルを以て同氏の室をねらひしものあり同氏の友人は二晩三晩眠らずに番を爲しゐたりとの事なるが身體非常に危險なり且は三十六計逃ぐるに若かずとばかり今度は實際に柔道の奥の手を出して今様僞権現様を極め込み昨朝羅府へ落ち延びたとの事にて身から出た錆とは云ひ乍ら氣の毒

 

(上から4段目の記事。)

 

●柔道報復戰か

    ◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎

▼目下某氏と交渉中なり

柔道八段と自稱せる野口氏がサンテル氏と戰ふて無残の敗を取れるに對し斯かる勝負事には馬鹿に力瘤を入れたがる一部同胞の憤慨は其極に達し居るが之が復讐戰を爲さしむる爲め某氏は目下紐育にありて此道には余程名を知られたりと云ふ某氏と交渉してクリスマス前に再びサンテル氏と試合せしむる筈にて或は此交渉纏まるやも知れずと云ふ

 

 

※羅府=ロサンゼルス

 

日米新聞 Nichibei Shinbun, 1915.12.06  Page 3

https://hojishinbun.hoover.org/?a=d&d=jan19151206-01.1.3&e=-------ja-10--1-----------

(上から5〜6段目の記事。)

 

●柔道復讐戰に就て

    ・・・・・・・・・・・・・・・・

▲斯道経験者の注意

自稱野口八段が去る卅日夜アド・サンテルと眞劍勝負を爲し二回續け様に見苦しき敗北を招きたる爲め桑港法人の憤慨極度に達し近く紐育より新手を呼寄せサンテルに對し復讐戰を申込む可しとの風説あり右に關し斯道に経験ある某は語つて曰く

▲獨逸人サンテル

 の力量技術に就ては數ヶ月前大博場内四十九キヤンプにて其の花々しき角力振りを観たるを始めとして對英選手、對希選手及びローカル選手對一夕三抜の大試合に於て親しく其實力に接し敵ながら彼の非凡なる修養と天晴なる奮闘振には敬服の外なし先夜の

▲野口對試合に

 際しても單に~道六合流とか八段とかのおどし文句は抜きにしても定めし世話人間に於て相當信ずる所ありての事と思ひ居たるは何たる醜態なるか野口が試合後某に對し酒が少し利き過ぎたりしかと申したる由なるが人を馬鹿にするも程こそあれ断じて武士道の名譽にあらず左ればとて此際

▲紐育より新手

 を呼寄せ復讐戰を申込むなどは更に慎重に考量を要する可きものにて決して輕々になす可きものにあらず只だ柔道の心得もある強力の者、體量百八十封などと雲を攫かむが如き者との試合は此際断然中止するを可とす徒らに金儲的の試合は日本人全體の恥辱なるのみならず前途有望なる在留少年の胸中に一種悲惨にして屈辱的なる印象を與ふる恐あり眞に

▲サンテルに對し

 堂々の勝負を争ひ得るは手近の所伊藤、前田の兩五段あるのみ尚ほ白人間にはサンテル以上未々強力無双のフランクヤガツチの如き斯界の大選手あるとぞ覺悟せざる可からず徒らに血氣の勇に驅られ再び取返しの付かざる失敗を演ずるが如きとあらば夫れこそ吾柔道の名譽を根本的に破壊するものなり云々

 

 

新世界 Shin Sekai, 1915.12.13  Page 3

https://hojishinbun.hoover.org/?a=d&d=tnw19151213-01.1.3&e=-------ja-10--1-----------

(上から5段目の記事。)

 

●柔道とサンテル氏

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▼來年始めには再試合か

野口自稱八段が脆き敗を遂げたるよりサンテルの名は日本人間に有名となれるが同氏は記者に語て曰く予は全く柔道を知らず是非習得したしと思ひ居れり野口氏は中々強けれど予とは全く體格が違ふが故にあの敗を取りたるものにて組合ひながらも氣の毒に感じたり日本人とは何方とでも御合手すべきが一度は柔術で二度目は予の流儀のレスリングで三度目に對手の云ふ通りにやる事を得ば猶結構なりと思ふ云々と語り居たるが柔道は全く知らずと云へどブレツテン紙には同氏の名を署して柔道の逆手の説明を爲し居れば謙遜には非ざるか因に今年の末か來年の始めには確實なる柔道家と試合すべく目下交渉進み居れりと云ふ

 

 

 

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神道六合流

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帝國尚武會

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B8%9D%E5%9C%8B%E5%B0%9A%E6%AD%A6%E6%9C%83

 

 

 

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