1916.12.12 アド・サンテル 対 エド・ルイス

 

 

Stanford University

HOOVER INSTITUTION LIBRARY&ARCHIVES

邦字新聞デジタル・コレクション

Hoji Shinbun Digital Collection

Japanese Diaspora Initiative

https://hojishinbun.hoover.org/

 

Shin Sekai / 新世界 [The New World], (San Francisco, CA)

Nichibei Shinbun / 日米新聞 [The Japanese-American News], (San Francisco, CA)

 

 

 

新世界 Shin Sekai, 1916.12.04 Page 3

https://hojishinbun.hoover.org/?a=d&d=tnw19161204-01.1.3&e=------191-en-10--31-----------

 

●サンテル撰手たるか

   ▼十二日勝負で運命決定

桑港スポート社界に於てレツスリングなる者は全く勢力を失ひ偶々試合あるも見に行く者少なかりしに獨逸人アド、サンテルが現はれて以來俄かに此方面に活氣あがりサンテルは連戰連勝にて遂には米國のチヤンピオン株たるストレンジヤー、レウイスと來る十二日の夜ドリーム、ランドリンクに決戰する事となり此レウイスと云ふはジヨー、ステツチヤーと米國レスリングの覇権を争ひ居る者にて之に勝てばステツヂヤー無論決戰を申込むべく斯くして勝たばサンテルはチヤンピオンと名乗り得るものなりと尚亦サンテルが意外なる手を出して強敵を破るは全く柔術の手を参考せるなりとの評あり

 

 

 

The Tacoma times. (Tacoma, Wash.) December 12, 1916, Page 6

https://chroniclingamerica.loc.gov/lccn/sn88085187/1916-12-12/ed-1/seq-6/

(下部の写真の記事)

 

WINNER OF BOUT TONIGHT

WILL MEET JOE STECHER

 

今宵の試合の勝利者が立ち合おうはジョー・ステッカー

 

 AD SANTWLL, at right, and "STRANGLER" ED LEWIS, topnotchers in the wrestling game, who will meet in a two-hour heavy-weight championship match in San Francisco this evening. Both Santell and Lewis are on the trail of Joe Stecher, Nebraska wonder, and claimant of the world title since the retirement of Frank Gotch.

 Western fans are looking for a hot fight. Since one of the two contenders in the race for Stecher's scalp stands a chance of being eliminated, the contest looms up as the most important in years on the west coast.

 Santell is considered one of the cleverest men in the country in the technique of wrestling. He has downed all comers in his matches in San Francisco during the last two years. He will, however, enter the match with Lewis under a 45-pound handicap, weighing 185 pounds to 230 for his opponent.

 Lewis wrestled Stecher to a five-hour draw last Fourth of July and has pinned the best of the mat man in the past.

 

 アド・サンテル、右側、そして「締め殺し」エド・ルイス、レスリング勝負に於ける一流選手達が、サンフランシスコに於いて今晩二時間重量級選手権試合にて立ち合うであろう。サンテルとルイス両者共が後を追っているのはジョー・ステッカー、ネブラスカの驚異にして、フランク・ゴッチの引退以来世界選手権者を主張する者である。

 西部のファン達は熱い闘いを期待している。ステッカーの戦利品を求める競争に於ける二人の競争者の内の一人が敗退させられる可能性がある為、その競技は西海岸に於いて数年の内に最も重要なものとして現れて来ている。

 サンテルはレスリングの技術に於いて国内で最も巧みな者の一人と見なされている。彼はサンフランシスコでこの二年間あらゆる応戦者を試合に於いて倒して来た。彼は、しかしながら、ルイスとの試合に45ポンドの不利を負って出場する。体重185ポンドに対して彼の敵は230ポンドである。

 ルイスがステッカーと五時間レスリングして引き分けたのはこの七月の四日でありその最高のマット・マンを過去には押さえ込んでいる。

 

 

 

Omaha daily bee. (Omaha [Neb.]) December 12, 1916, Page 9

https://chroniclingamerica.loc.gov/lccn/sn99021999/1916-12-12/ed-1/seq-9/

(中央列上部)

 

Lewis and Santell,

Alias Ernst, Clash

In a Decision Bout

 

ルイスとサンテル、別名アーンストが、決着戦で激突

 

 San Francisco, Cal., Dec. 11.―The wrestling match scheduled here tomorrow night between "Strangler" Lewis, the Kentuckian, and Ad Santell, regarded as the Pacific coast champion, will be in the nature of a championship contest, according to local sporting authorities.

 With Frank Gotch apparently retired and Lewis and Joe Stecher, considered the two men next in line for the heavyweight crown, credited with a five-hour draw bout, Santell, in the event of a victory over Lewis, would be considered considerable right to the title.

 The bout is limited to two hours and calls for a decision whether or not there is a fall. Should neither man succeed in throwing the other, the contest will be awarded to the man making the better showing.

 Lewis will have an advantage in weight of forty or forty-five pounds over his rival.

 

 サンフランシスコ、加州、12月11日。…この地にて明夜予定されるレスリング試合は、ケンタッキー人の、「締め殺し」ルイスと、太平洋沿岸王者と目される、アド・サンテルとの間で、地元運動界の情報筋によれば、事実上の選手権試合として行なわれよう。

 どうやら引退したらしいフランク・ゴッチそしてルイスとジョー・ステッカー、次に重量級王座戦線にあると見なされ、五時間引き分け勝負で高い評価を得ている二人と共に、サンテルは、ルイスに勝利した場合には、選手権に対する相当の権利を認められよう。

 勝負は二時間に限定されそして一本があったかどうかに関わりなく決着が求められる。何れの者も他者を倒すことに成功しなかったら、戦勝はより良い成果を出した者に贈られよう。

 ルイスは体重に於いて彼の好敵手に四十ないし四十五ポンドの有利を持つであろう。

 

 

 フランク・ゴッチの引退後、世界ヘビー級のタイトルは、チャーリー・カトラーを経てジョー・ステッカーに渡っていました。「ストラングラー」(締め殺し屋)ことエド・ルイスは、1916年7月にステッカーと5時間闘って引き分けており、次期王者の第一候補者でした。

そこにサンテルが割って入るべく、ルイスを招聘しての一戦が組まれました。閑古鳥が鳴いていたサンフランシスコ・マットを一人で立て直したサンテルに、大きなチャンスの到来。入場料の高さにも、地元ファンの期待の大きさがうかがわれます。

 試合時間は二時間ですが、両者ノー・フォールないしフォールが同数だった場合は、レフェリーによる判定で決着をつける条件だったようです。体重はサンテル185ポンド(約84kg)に対してルイス230ポンド(約104kg)と、45ポンド(約20kg)の差がありました。

 

日米新聞 Nichibei Shinbun, 1916.12.14 Page 3

https://hojishinbun.hoover.org/?a=d&d=jan19161214-01.1.3&e=------191-en-10--61-----------

 

●常陸と荒岩の様な

  米國の大相撲

  =血の汗を搾りし勝負に

    サンテル遂に敗る=

昨今賣出しの桑港の大關サンテルと米國での横綱株のルイスとの大勝負は一昨夜市公會堂にて行はれ遂にサンテルは敗を採つたが近來になき大試合であつた

▲ルイス は世界撰手ガツチより強いと評せられて居る目方が二百廿五斤圓滿に綺麗に肥つた體格は先づ日本の常陸山に相當するサンテルはルイスより四十五斤輕いが筋肉鐵の如く強健なのは日本の荒岩の様だルイスの悠々迫らざる所サンテルの機敏でスマートの所

▲常陸と荒岩 の相撲を見る様な氣がした七千人の観客は堂に滿ちた二弗から五弗の入場料であつた故先づ収入は二萬弗に達したサンテルは

▲柔術の手で 逆手(ぎやくて)、締首(しめくび)、手責(てぜめ)を行ひルイスを苦しめ十回も同人を窮地に陥れたが何せルイスの力が優り居る事(こと)故六回危險を免かれたが七回目の顔押しで一時間四十二分四十秒でサンテルの敗となつた、敗けてもサンテルの強さを示した度々ルイスを柔術の巧妙な手で

▲泣く目に 逢はし烈しき取組に雙方とも汗は盡きて血の汗を搾つた一生懸命の勝負、さしも多數の観客も一危一安に汗を握り狂氣の如く力瘤を入れて堂も破れん計りスマートの點はサンテルはルイスの上であつた二回目は十五分の勝負であつたが時間が來て引分け遂にルイスの勝利、近來の観物であつた(一記者)

 

 

 

新世界 Shin Sekai, 1916.12.14 Page 3

https://hojishinbun.hoover.org/?a=d&d=tnw19161214-01.1.3&e=-------en-10--1--img---------

 

●サンテル敗戰

――名譽の敗戰の一般の批評

一昨夜エキスポジシヨン、オーデトリアムに於て催したるジヨー、ストラングラー、レウス對アド、サンテルのレツスリング試合はさしも廣き同會堂(ほーる)も定刻までには滿員となりて約七千人の群衆と註せられたり八時半に開始なりとプレミアーとしてアンドリユー、ホムラーとヤング、サムソン氏の競技ありて引分けとなり次いで新聞配達ボーイ、フレデツキ、リーが歌を歌い見物人は之に降る如く銀貨を抛げ與へたり九時十分迄にレイス、サンテル拍手喝采の裡に登場競技は始まりサンテル常に攻撃的に出で流石に強力なるレイスも如何ともなし難き有様にて何回かレウイスをホールし殆んど身動きも出來ざるやうなしたりしがレウイスは辛うじて之を免れたりサンテルはハーフ、ネルソン、ヘッド、ロツク、トーホール等あらゆるホールを取りたりしが怪力の上に技倆もあるレウイスは善く此危急を脱し最後にレウイス得意のストラグル、ホールと稱する手を以て猛虎の小獣を搏(う)つ如く電光石火の間に飛び込んでサンテルの首を捲き込み仰け様に押へつけたりサンテルは之を脱せんとしてもがくもレウスは更に動かさずサンテルは兩脚を屈めブリツヂとして防がんとしたるが遂に押へつけられ審判官はレウスの第一回勝利を宣言したり此時タイムを見れば一時間四十二分四十秒なりき是より八分間の休憩の後再戰となりサンテル又アーム、ロックを取らんとしたりしに危く免がして十七分間の規定時間到來せし爲試合は遂にレウイスの勝と宣言せられたるがサンテルの技倆はレウイスも非常に感服し見物人も亦此敗戰を以て名譽の敗戰と批評したり

 

 

 「日米新聞」の記者はサンテルの攻撃を「柔術の手」と説明していますが、「新世界」の記者はレスリング用語を使って書いています。

 

 

Grand Forks herald. (Grand Forks, N.D.) December 14, 1916, Image 2

https://chroniclingamerica.loc.gov/lccn/sn85042414/1916-12-14/ed-1/seq-2/

(左から2列目中程)

 

San Francisco Has

Good Wrestling Card

in Santell and Lewis

 

サンフランシスコが得たレスリング好試合はサンテル対ルイス

 

 San Francisco, Dec. 14.―With an advantage of 42 pounds in weight "Strangler" Lewis of Kentucky defeated Ad Santell, champion of the Pacific Coast, here in a two-hours' limit wrestling bout. Lewis secured his first―and the only fall of the bout―in one hour, 42 minutes and 40 seconds with a head lock and face hold which he secured by a cross-buttock while the men were on their feet.

 Up to this time, according to the referee Santell had won 10 points against Lewis' seven. During the remaining time Santell tried unsuccessfully for a fall and on two occasions nearly succeeded.

 

 サンフランシスコ、12月14日。…体重に於ける42ポンドの有利を以ってケンタッキーの「締め殺し」ルイスがアド・サンテル、太平洋沿岸王者を打ち負かしたのは、この地にて二時間制限レスリング勝負に於いてであった。ルイスが最初の…そしてその勝負に於ける唯一の一本…を決めたのは一時間、42分40秒に頭蓋骨締めと顔極めにてでありそれを彼は両者が立っている時の腰投げによって掛け得た。

 この時まで、行司によればサンテルが10点を得ていたのに対してルイスは七点であった。残りの時間中サンテルは一本を得ようとして失敗したものの二度はほぼ成功しかけた。

 

 

 サンテルは善戦したものの敗退。ステッカーへの挑戦権はルイスの手に…とは、すんなりとは行きませんでした。サンフランシスコのプロモーターとしては、やはり何としても地元のサンテルに挑戦させたかったようです。

 

 

 

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