「殉愛」について(4)二人の貯金

 

 

 

 黒字が百田尚樹「殉愛」(幻冬舎、2014)からの引用。

 

 

「殉愛」に、やしきたかじんさんとさくらさんが、遺産について話し合う場面がある。

エンディングノートに書くべきこととして「たかじん名義の預金は全額寄付」とある。しかし一方、次のようなやり取りも記されている。

 

 

「ほんなら、お金は寄付してもええか」

「いいよ。ハニーが稼いできたお金だもん」

「でも二人の貯金はさくらのものや。(後略)」

P364)

 

 

ここに矛盾があるのではないか、という声もあるようだ。しかし「二人の貯金」を、海外で可能な共同名義口座の預金、と考えれば矛盾はないのではないか。

 

ご興味のある方もいるかもしれないので、それを説明しているサイトを紹介する。

 

 

キーライフジャパン 実家相続介護問題研究所

夫婦共有名義預金のジョイント口座で「夫婦で相続税が節税できる!?」

 

海外の金融機関で開設できる共同名義の口座(ジョイント口座)を開設しておけば、

「夫婦2人の共同名義で口座を開けば、夫が死亡しても相続税は発生しない」

「合法的に相続税を繰り延べできます」

そんなことを信用して、相続税の申告漏れが増えているようです。

 

 

海外送金.com 海外資産の税金対策サイト

共同名義の銀行口座

https://xn--7rs178bkgjf7vk8bba.com/trouble/danation03.php

 

海外の共同名義口座において、上記のような贈与事実がない場合には、相続の際にはあくまで、共同名義口座へ資金を入金した旦那さんの相続財産として申告する必要があります。

 

これを共同名義を理由に、相続財産として申告しない、あるいは海外だから名寄せができずバレないだろうと申告しないと、大きなペナルティを受けることになります。

 

 

ただし次のような判例もあり、口座の開設地によっては相続税対策として有効そうでもある。

 

 

相続弁護士 本橋総合法律事務所

夫婦がハワイ州で開設したジョイント・アカウント預金は夫の死亡による相続財産に該当しないとされた事例【東京地判H26.7.8】

 

 

もっとも、「ジョイント・アカウントが(中略)遺留分の算定基礎に含まれるかといった問題もあり」ともある。

死因贈与や生前贈与とみなされれば遺留分減殺請求の対象になり得るということであろうか。

 

 

訟務税理士朴木直子の国際税務NOW!

ジョイントアカウントを巡る贈与の問題

http://hohnoki.jugem.jp/?eid=39

 

 

こちらでは条件によって共同名義人間の贈与が認められ贈与税を課される可能性が検討されている。

 

色々難しい所があるようだ。利用の際はご注意を。

「殉愛」はいい加減だし、必ず共同名義口座があったはず、と主張するつもりではないので念のため。

 

 

「殉愛」の問題点を追求し続けてきたのは、インターネット上に集う名もなき奥様方やガール達。そのたゆまぬ努力と熱意には頭が下がる。

 

 

 

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