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第3回 問診(医療面接)
 □ 問診(医療面接)の意義と注意点
 □ 医療面接の内容
 □ 医療面接の進め方
 □ 「あはき師」における医療面接


 今回は医療面接。臨床実習という科目では、実際に患者さんに対して医療面接を行うことになります。でも実は医療面接の授業は、この時間と臨床実習くらいなんです。ここで習ったことが、いきなり臨床実習で要求されてしまうわけですね。といっても、最初のうちは、僕らが医療面接をします。そして、みなさんが臨床実習の雰囲気に慣れてきた頃を見計らって、医療面接をして頂くことになります。いきなり最初から面接をして下さいとはならないのですが、それにしても時間が短すぎますよね。ということで、臨床医学総論では2コマ時間を使って、1コマ目はお話を、この時間ですね。2コマ目は実際にみなさんに面接をしてもらおうということで、模擬患者か、ある疾患を抱えた人をお招きしようと思います。



 □ 問診(医療面接)の意義と注意点


 医療面接の意義は、まず第一に診断の手がかりを得ることです。患者さんとの会話から診断に必要な情報を収集するということですね。
 また、医療面接は、患者さんと会話すること自体に意義があります。つまり、会話による人間関係の形成です。患者さんとの会話を通じて、良好な医師-患者関係を確立する。これも医療面接の大きな意義ですね。良好な関係を形成できれば、検査や治療に対するコンプライアンス(指示に従って遵守すること)が高まり、理想的な医療を提供することができるようになります。反対に、関係をうまく形成することができなかった場合は、適切な医療が実現できなかったり、些細な事でも医療訴訟へ発展しやすい状態になったりします。不信感を抱かせない対応が望まれますね。
 そして、医療面接を通じて、治療的・教育的効果が得られることがあります。患者さんは何らかの苦痛を抱えています。その苦痛を医師に伝えることで不安が取り除かれたり、医師から説明を受けることで安心したりして、抱えている苦痛の精神的な部分が、取り除かれる場合があります。また、日常生活における注意事項の説明により、教育的効果を得られる場合があります。
 このように、情報収集だけでなく、人間関係を築いたり治療的・教育的効果を得るのが医療面接の意義といえるでしょう。


 次は医療面接における注意事項です。実践においても重要ですが、国家試験にも時々でてきますので、しっかり覚えておいて下さい。

 一つ目は「信頼関係を築く」ということです。医療面接の意義にもありましたね。診察者の態度・言葉づかい・身なりなどに注意して、適切な医師-患者関係を樹立するよう心がけます。でもどういう対応で信頼を獲得できるかというのは、患者さんによって様々なようにも思えて、実際は難しい問題ですよね。
 以前、骨髄移植の検査を受けた時なんですけど、3次検査では医師から移植手術についての説明があるんですね。それで、骨盤内血腫ができてしまったという事故が昔あって、その件について、僕に説明をしてくれた医師は「そんな間抜けなことは絶対しない。」と。おそらくその言葉に安心する人もいるかとは思うのですが、僕の場合はその言葉に軽く不信感を抱いてしまいました。軽視してるように聞こえたからだと思います。医療者の態度や言葉づかいも大切なのですが、信頼を得るためにはその患者さんにとって最も適切な対応を選択することも重要だと感じました。

 二つ目は、「人格を尊重し、患者に解りやすい表現を用いて接する心遣いが必要」だということです。患者さんが理解しなければ医療面接の意味がなくなるばかりか、不安感を生じさせる原因にもなります。患者さん自身が身体の状態や疾病の事等を理解することは、積極的に治療に参加したり、様々な自己決定を行う際の前提となります。患者さんが理解できるよう解りやすい表現を用いる配慮が必要ですね。

 三つ目は、「カルテには医学的専門用語は使用せず、訴えのまま記載する。」ことです。医療面接で得た情報はカルテに記載します。その際に、患者さんが訴えたことをそのままの表現で記載しましょうということです。訴えを医学用語に置き換えると、それは面接者の解釈になってしまいます。訴えや症状の表現等は、患者さんの表現で記載します。

 四つ目は、「ある疾患を想定した誘導尋問をしない。」という事です。誘導尋問、ということで例えば、「夜寝ているときに肩が痛くなって起きてしまう事がありますよね。」とか、「そのめまいは午後になるとなくなりますよね。」といったような聞き方ですね。こういう聞かれ方をすると、患者さんによっては、そうでなくても「は、はい、そうです。」などと答えてしまうかもしれません。そうなると誤った情報を得てしまうことになりますよね。
 医療面接を進めていくと、この疾患だろうという察しがつくことがあります。そんな時は質問の仕方がつい誘導尋問のようになります。でもその疾患でなかったり、その疾患であっても違う疾患と併発していたりと、個々の患者さんについて様々な可能性があります。医療面接では、そういう可能性を考えて、必要な情報を得ていくことが重要です。そして、医療面接を終えて、身体診察や臨床検査等の他覚的所見から、初めてある疾患であろうと判断することになります。

 五つ目は、「過度の緊張状態にある場合、話しにくい訴えを持っている場合、痛みや苦痛状態にある場合など、患者の気持ちを充分に察しながら面接を進める。」とあります。患者さんがどのような身体的・精神的状態にあるか、常に伺って、状態に合わせた対応を行うことは大切です。話しづらい内容や考えながら話している時等は、面接者が少し待つことも必要です。また、苦痛が激しい場合等は、患者さんが少しでも楽に話ができるようにベッドに横になって面接を行っても良いと思います。その患者さんの状態に応じて適切な対応を臨機応変に行う配慮は重要ですね。

 最後に、「守秘義務を守る」ということです。これは、全ての医療従事者には、その法令に、守秘義務を守らなくてはいけないという条文が書かれています。「正当な理由なく、その業務上知り得た人の秘密を漏らしてならない。施術者でなくなった後においても同様。」というような内容のものですね。これは、どんなに些細なことだと医療者が判断しても、患者さんにとって秘密であれば、それは秘密になります。



第3回 問診(医療面接)  おわり


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