2019年4月              更新




                         バンクーバー 福村まこと

     身の丈を越すと壊れる家庭劇

     子育てに迷彩服を染め直す

     韻律につまずく春に踊る鬼

     養殖の言葉で傾ぐ車椅子

     空調で無声映画がひび割れる

     狩人の原野に探す免罪符

     割り箸の隙間に善がる蒙古斑

     早咲きの桜撃ち抜く句読点
                
                    作者よりコメント 今年は観測史上最も寒い冬でしたが、
                              お彼岸になりやっと春めいてきました。
                              梅も桜も辛夷も同時に開花し、北国の
                              春は少し乱暴にやって来るようです。
                              今夜もオーロラが現れると伝えています。








                           京都市 西田雅子

   三月はヒトも桜も霞ゆく

   春だもの引き止めないで風だもの

   つばめスイっと「の」の字を掠め去る

   相田みつを的たんぽぽ的暮らし

   足りません墨も言葉もたましいも

   にんげんの「ん」の字が森へにげてゆく

   鳥になろうみどりになろう詩になろう






                     仙台市      月波 与生


         人間だもの

     前向きな意見振り込め詐欺に遭う

     帳尻が合わずにシャドウボクシング

     歯並びが悪いまま私小説終わる

     泡立草から失禁パンツ脱ぐ

     焼香の列で女王蜂死産

     腹黒い男と烏食う話







                      西宮市      田村ひろ子



     迷っていることもすぐに忘れます 

     ひいらひら春の黄色とひいらひら

     うやむやは置いてまっすぐ土筆坊 

     列はずれひょひょいの春のひとりじめ

     五線譜通りにステップしない指 

     どちらへと聞くとフフフと笑う春

     残照の息をつないでもう一歩  

     綱渡りもうこのへんにいたしましょ








                       城陽市   木口 雅裕



     矢印は闇の方へと身をよじる

     片隅で朽ちかけている杵柄

     悔恨はエッシャーの絵に紛れ込む

     静脈に百姓一揆の血は流る

     暗闇をまっすぐにらむ土偶の目








                       八戸市   笹田かなえ


     静って争い青し相模灘

     心ここにあらずの心どこですか

     かん詰に言って聞かせてみたところで

     真夜中のかすれ加減も春うらら

     指先はなぞるあなただった頃の黒








                        京都市  中林 典子



     皺くちゃの顔を伸ばして逢いに行く

     よく笑うてるてる坊主を部屋中に

     桃の傷やさしく撫でてやればよい

     美しく別れたはずの花鋏
   
     恋になる雨の匂いのする男





                      大阪市      宮井いずみ


     完璧な肯定新月など要らぬ

     にんげんだものどどどどどっと般若心経

     息継ぎもせずに言うほど信じてる

     反省をしてると言うが山葡萄

     腕組んでいるが目尻が下がってる

     欲張ればどこでもドアも透き通る

     笑わしてもろてポコンとたまご産む








                      大阪市   オカダ キキ



     フォークロア癖字に込めたメッセージ

     傍線を引いた所をリフレーン

     泣きなさい笑なさいとアカペラで

     時に速度を緩めカーブするme too

     どこまでも重ね行くプラスレッスン

     写経の筆跡に成長は見えず









              石川県    堀本のりひろ

    
     生きてきたおもいがままに七十五

     恐れ入る自由に奔る筆力

     存在感落ち着き見せて揺ぎ無し

     魅せられるアンバランスな描写力

     存在感がつんと示し『の』がいます

     見ていればじわじわとくるガッツ




       大阪狭山市          八木 侑子

   太く生き深く沈んで這い上がる

   あまたのアートに抱かれ恋もする

   見せたくないわこんなぶざまな跳び方を

   立ちどまりたち止まりして今ここに

   充ちたりた流れと掠れた流れ

   いじいじと這いつくばって進めない

   こざかしい智恵に足もとすくわれる

   恋みのる 足裏で春の色を嗅ぐ

   「にんげんだもの」と言い切れぬニ・ン・ゲ・ン



                  ××ばつ×××××××××××

    
以下 前月の入力ミスが解消されていません。見苦しい点をお許し下    さい。          
            
































                                         2019年3月           更新                             

            カナダ バンクーバー  福村まこと 


        濡れ衣のいきさつ暴く雨の色

     チンピラの喪服虫干しする五月

     枕絵をバイリンガルで刷り直す
     
     地平線持ち上げ回答迫る虹

     水洗いだけで溶けだすプロポーズ

     判決に漂白剤のかけ流し

     湯上りの背開きになる尼僧の緋

     前菜に鼻水たらす崖崩れ      
                   
      作者よりのコメント
                             北米大陸中央部に寒気団が居座り、
                             雪が降り続いています。街は真っ白で
                             春はまだ遠いようですが、雪雲が切れた
                             夜はオーロラの楽しめる時季です。

                             日本では麻疹が流行しているとか。
                             どうぞご自愛ください。





                八戸市   笹田かなえ

     どこからが空でガラスで二月逝く

     前世は底冷えのする波がしら

     とくんと脈打つ 三月がきている

     虹を着て曇りガラスの薄じめり

     三月の空をめくればまだ黒い




                        西宮市  田村ひろ子


     からっぽになって聞こえた春の声

     なりゆきのままに座っておりました

     巣づくりのできぬ旅人青い鳥

     とまどいの隙間に滑り込む光 

     放心の大地にひらり白カラス

     ときめきはあなたのなかの水の音

     虹色の誘いをずっと待っていた

     ここまでにしますここからは湖





                         京都市 西田 雅子


     追いかけて虹の生まれる湖へ

     七彩の音が聴こえてくる湖畔

     待合せ虹のふもとと言われても

     お湯かけて3分待てばできる虹

     完璧なスキップをして渡る橋

     スカーフは鳥になりたい虹になりたい

     シュレッダーされる前に消えましょう








                         城陽市 木口 雅裕


     伝説の虹の遣い手現れる

     最初から無言のままで消える虹

     荒れ狂う海のうえにも虹は出る

     傷心のこわれたハートにじむ虹

     自殺するその寸前に虹を見る






                     大阪市   オカダ キキ

     まぁこんなこともあるのねサプライズ

     鐘ひとつ鳴らさずそろりと吉兆

     虹色のスカーフまるで験担ぎ

     ずっと水面見ていただけのひとり旅

     もう一度待って更なる虹の橋









     
                    大阪市  宮井いずみ

     ただ海を見たくて車走らせる

     よく来たねなんて言わない冬の海

     あの沖に答があると目を凝らす

     言わなければよかったあんなキツイこと

     寒風を受け止め片足のかもめ

     この世界にはただ波の音冬の虹







                        仙台市     月波 与生


     玉乗りができるまで同性婚隠す

     モアイにもなれず抜け駆けする土偶

     身構えてしまう等身大の穴

     振り込め詐欺帰りNHKが来て

     HeyJude陳腐なものをみる悪夢







                        京都市    中林 典子


    続編はピアノの蓋を開けてから

    元栓を開けた途端に虹が出る

    家計簿の余白はいつも晴れている

    落札された瓶詰のペンネーム

    能面の顎をぐいぐい一身上





                     大阪狭山市    八木侑子


     彼方へかなたへ誘う水平線

     さそい込み果ては途切れた冬の虹

     私をどこへ運ぶか銀の波

     冬の海破船の涙呑み込んで

     ひき潮があまたの秘密持ち去った

     嵐去りやがての虹をみています

     虹の下七色の海抱いている

     七色の雫分けあう虹の下

     消えたいなあ虹のようにふうわりと

     ひとりが良い海が明るくなる時間


                        石川県    堀本のりひろ


   わたくしの向かう先には虹の街

   虹の橋私をどこへ導くの

   この虹をひょいと渡ればユートピア

   あのひとがに静かに眠る虹の街

   孤独の人導くように虹の橋

   わたくしがあこがれてきた虹の街

   泡沫の虹に託した愛の便

   彼の国へ架けられた虹渡ります
             
   虹の橋ゆるゆるわたり終の家

                                      

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                  カナダ バンクーハー  福村まこと



     
ままごXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX
との目つきになった逃亡者
     
     ゆっくりと歩いて冬にあおられる

     終活を嗤ったあとの揉み返し

     雨の日は転んだままの遍路宿

     冤罪に乾ききれない水溜まり

     足跡に売値問われるノミの市

     風花の赤ちゃんポスト抱くサプリ

     骨組みを晒し蛍にぶら下がる


                     
                    作者よりコメント

                     冬至の頃は午後3時すぎには暗くなり、
                     人影もなく街は沈んだように静かです。
                     山間部は雪ですが、太平洋海岸地帯は
                     雨が続き、ホワイトクリスマスにはならない
                     ようです。
                     新年が皆様にとり、より良い年でありますよう
                     お祈りいたします。
                     Merry Christmas and A Happy New Year!!












                       八戸市    笹田かなえ


     じゃんけんはチョキで勝ちたい夏生まれ

     「神田川」だったねカタツムリだったね

     祓い給え清め給えとただ這って

     カタツムリのたくる謂わば古代文字

     天敵はお天道様もそのひとつ










                        京都市  岩根彰子



     蝸牛寓話のスターになる素養

     殻はもう深くて重い業背負う

     ガウデイも嫉妬マイマイ螺旋階段

     左の触覚右の触覚から戦争

     源氏名を「まいまいつぶり」と申します

     とても楽ちん向き合わなくなってかの角











                       京都市   西田 雅子




     ゆっくりを背負って夏の裏側へ

     追憶の旅を始めて一千年

     雨の降るあじさい寺を予約する

     平成を全力疾走しています

     一行詩月まで曳いてゆくつもり

     たましいの渦が背中を離れない

     やわらかいツノで真冬を押し返す

     ここからが始まり夏の物語









                    京都市    中林 典子

 
     恋人を探して天の岩戸まで

     正体がゆっくりばれる百葉箱

     ヒロインのつもりパレットとベレー帽

     寝付けない話と午後のカタツムリ

     のんびりと再放送で暮れる街









                     城陽市     木口雅裕



    ででむしののたりのたりの回顧録

    ヤドカリとちゃうで家主のカタツムリ

    斥候はかたつむり型ロボットに

    かたつむり何はともあれマイホーム

    左巻きつるむの好きなかたつむり











                      仙台市    月波 与生



     首のないマネキン母の名を付ける

     七ならべ処女の王女が見つからぬ

     ひとりだけ裸足に縊死の痕付ける

     人間になるまで黒を嘗め尽くす

     太陽の塔へ何度も頭突きする









                 京都市        越智 ひろ子



     つのが私へ向いてくるいくさだな

     鈍色に光るあなたとの暮らし

     右巻きの話が僕を粘らせる

     ゆっくりでいいよ画面の指の先

     殻だけが残る重たき冬の空

     平成の先へと急ぐカタツムリ








               大阪市   宮井いずみ



     戦場に紙の鎧で身をさらす

     気負いたち走ってみても神のてのひら

     底抜けの明るさなんて恋なんて

     左巻き右巻きちょっとへそ曲がり

     雨が好き静けさが好き銀の道

     触角でとらえた風のひとりごと













        蝸牛           石川県    堀本のりひろ



     スローライフでもこの歩み続けたい

     ノロノロと歩む私はカタツムリ

     カタツムリカタツムリしか解らない

     ドウシテモツイテユケナイカタツムリ

     カタツムリ見上げてみれば魑魅魍魎










               大阪狭山市    八木 侑子



     草の露木の露恋し炎天下

     磯に棲む仲間 森を恋うわたし

     夜の森わたしひとりの遊園地

     雨と闇 身体がうずうずしています

     細い雨でんでん虫は角を研ぐ

     銀の雨でんでん虫の甲みがく

     雨だれがくぎりをつけてくれました

     転がった幸を探しに虹の下







                                   2018年12月          更新





                    カナダ バンクーバー 福村まこと


   時効まで弱酸性の付け睫毛

   危な絵を奴さんまで折る介護

   耳朶に駆け落ち誘う保冷剤

   プリズムで隠す手負いのテロリスト

   透明な音階紡ぐ女人坂

   影踏みの鬼に白夜の甘い声

   ストーカーに天使が招く備考欄




   作者よりのコメント

   日がどんどん短くなり、午後4時過ぎには
   真っ暗です。畑も凍り冬眠に入りました。
   街にはクリスマスの飾りをするお店が増え、
   各家庭では越冬準備に忙しそうです。
   我が家でも暖炉に火が点いています。










                   京都市  西田 雅子



   遠い日のわたしに呼ばれ振り返る

   まなざしの深いところに咲くスミレ

   右頬の秋の部分が欠けている

   キスチョコと真珠ひと粒取りかえる

   鏡の奥昨日の岸へ舟が着く

   ターバンを青の吐息で染め上げる

   クリスマス銀の聖地へ行かなくちゃ










                         八戸市  笹田かなえ



   私が何をしたって言うの青に染めて

   耳飾りパンと換えてもいいですか

   真珠ぽつりとミルキーウェイのしずく

   これ以上近付かないで何も言わないで

   この先の闇には青が欠かせない












               京都市   岩根 彰子



    振り向いた瞳に子午線を引こう

    あれやこれぎゅっと押し込む青いターバン

    コオロギが通過土蔵の黒い壁

    床紅葉潜り込んでるフェルメール

    つぶやきを忘れていった紅い唇

    人だかり対角線をイヤリング














                         西宮市  田村ひろ子




    わたくしの知らないわたくしがいます

    雨だれの音かすかなるレクイエム 

    独りではなかった夜のガラス窓

    一歩二歩三歩決めたのはわたくし 

    ほほえんでいます分厚い肩パット 

    消えそうな言葉をそっと抱きしめる 

    どのような赤にもなれるまなじりよ












                  京都市  中林 典子



    妹は母似で青を食べ尽くす

    私です美し過ぎる人相書き

    初恋の青かも知れぬ霧の駅

    口紅を剥がすと冬の海になる

    額縁の青を眠らすブラームス











                    大阪市     宮井 いずみ



    捨てられぬ片方だけのイヤリング

    金平糖だった私がそこにいる

    逆光のように若さが眩しくて

    三日月は昇るあの日のあの空に

    夜の風夜の匂いと哀しみと

    その青はとても優しい露の色










                     城陽市  木口 雅裕



    フェルメールの青を指名手配する

    美男美女の物語なら遠慮する

    澄んだ目で醜い心見ないでよ

    青い薔薇ボクは絶対ゆるさない

    たちまちにイエローモンキー恋に落ち








                     京都市        越智ひろ子




    少女は何を誰なのかウルトラマリンブルー

    タテ45ヨコ39振りかえる影ひかり

    肉体はななめ線上深くして

    何枚描いても青ばかりつづく

    にっぽんへ浮かびみせくるマリンブルー













                   仙台市   月波  与生




    ふりかえるふじさんろくのおうむなく

    虹色になったわ妊娠検査薬

    退屈な自己紹介に小半日

    贋作が多い女神のデスマスク

    キャバ嬢に箸の持ち方直される










                 石川県     堀本のりひろ



    永遠の処女の輝きクリスタル

    悪女でもかっては純に輝いた

    太陽の明るさ秘めたその瞳

    透明感むさい男に縁はない

    純な時期何時の間にやらエトセトラ










                      東京都  佐藤 幸子



    眼底に屯している好奇心

    モナリザは何処か問われても困る

    終着駅は遠いと告げに来る孫ら

    再会か徘徊か遊覧船に乗せられて

    眠れ子よ滞りなく終わる旅












                   大阪狭山市   八木 侑子




    帆船のもたらす蒼い未知の国

    待つことの多い日々です風の音

    ぬれた口もとほんわりあおい風におう

    歌わねばうたわぬままに青いターバン

    沸点をくすぐる真珠の涙

    前略後略まっ正面の愛

    月光に未来はぐくむ真珠貝

    限りなくうるわしゼロとなる雫

    行先の違うこころにかかるひと

    「さすらい人」を奏でる冬の月

    砂山に風の落とした愛の文

    ジェラシーを知り鈍くひかる真珠

    石も歌いたくなった青い日溜り


















                                       2018年11月            更新

   
     

      前月のフォト 冠鶴





                           カナダ バンクーバー    福村まこと

     ローソクを片手に女顔上げる

     花街の灯りの下で買うおもちゃ

     袖を引く原発跡のマッチ売り

     野辺送り踊る手足が揃わない

     勲章の裏に消えない秘話の痕

     人形を返す 中身を入れ替えて

     仲人の勃起止まないタキシード

     隠してた傷に産卵するピエロ

     自画像の背景覆う世間体

     咲くだけで終わりたくない罌粟の赤  
  


                              作者より コメント

                                 秋も深まり、街は落ち葉で埋まっています。
                                 専用の清掃車が走り回っていますが
                                 追いつかず、歩道と車道の区別が付かない
                                 状態です。夜の長い冬の始まりです。







                              西宮市   田村ひろ子


     語り部をやめた頭のふうわふわ  

     からっぽの呑気さみしい紙コップ

     リラックスしているふりの夕間暮れ 

     すこしだけ月の砂漠におりました

     カラフルになったの夢が叶ったの  

     ふっくらのお口で堅いことを言う 

     古寺で笑う尼僧の赤い頬  

     モノクロの写真に紅をさしました






                                城陽市 木口 雅裕



     またの名を秀吉公と申します       

     冠を脱いで裸で勝負して

     あなたさま後光が射しておられます

     目指すのはノーベル賞でございます

     彼こそは孤高の人と称される









                             仙台市     月波  与生




     電波系の隣人がやはり気絶する

     1000人目の恋人イソップ読んでない

     浣腸を買うたび職質を受ける

     童貞のままで輪廻を繰り返す

     陣痛も生理痛もない哲学








                              大阪市  宮井いずみ



     アフリカの大地と空をキャンバスに

     青空の雲の流れを早送り

     嘴でつつくポトンと落ちた秋

     羽ばたいてやはり飛べない籠の鳥

     頬かむり取ればきれいな髪の色

     着飾って派手な帽子の寂しがり

     ポジティブに行こう金色クレヨンで









                             京都市     中林 典子


     戌年に生まれた鳥を飼っている

     恩返ししそうな顔で立たないで

     髪の毛を逆立ててみる待ちぼうけ

     滅相もない包帯を巻く手首

     昨日の毬と偶然の曲がり角









                              大阪市  オカダ キキ



     四季折々草冠を愛でながら

     ツルのマークでハネムーンから半世紀

     客室へ案内しますウ冠

     気象情報雨冠は気まぐれで

     鶴の一声だったか雷だったか

     古希の現役金髪のロックンローラー

     かんむり鶴に決めたハロウィン先取り

     初飛来越冬は南のコース








                               京都市    越智ひろ子



     おやおやあなた私を誰だと知ってかい

     憧れは憧れとして君を追う

     復活へ整いました王妃の座

     カラスとて僕には僕の誇る美が

     私に無くて貴女にはある 乱反射

     美の革命目指す王冠その毛並










                             石川県       堀本 のりひろ



     華やかなそのシルエット罪作り

     華やかに装いながら冷たい目

     冷やかに心見透かす鋭い目

     嘴で拾った種は甘い罠

     孤独だが勇者ですから凛とする

     ただ一点瞳みつめる先の明

     気迫籠め魑魅魍魎を見逃さぬ








                               東京都    佐藤幸子



     一人では生きては行けぬ独りぼち

     好き嫌い激しく樹海へ迷い込む

     冠を捨ててはならぬ国の為

     成仏は出来る細身になったから

     痛み止めたっぷり塗って藪の中

     転寝の零余子隈なくかき集め

     自己主張だんだん濃ゆくなる夜景








 

                           大阪狭山市     八木 侑子



     切っ先を隠し輝く金の髪

     不発弾かかえているなあかい頬

     しずやかに哲学してる細い首

     くるまれたいぬっくりとした君の羽

     悠久の先を追ってる長い首

     身を削ってまで返す重い恩

     孤愁溜め突っ張っている長い脚

     白の濃淡しろい背景白い息

     鶴は北へ 夢の捥がれた芸術家

     折鶴の目覚めぬうちに眠りましょ

















                                        2018年10月          更新



        



     
                          八戸市    笹田かなえ

    問題は色取月の過ごし方

    天高く膝の青あざいつの間に

    お茶碗を伏せアフリカっぽい話

    木の匂い水の匂いに晒されて

    ため息を連ね八重垣神無月





                      
カナダバンクーバー 福村まこと


    騙し絵の視線が痛い被告席

    裏山の瘡蓋剥す遺産分け

    夕焼けに燃えないゴミが絡みつく

    益荒男に手足継ぎ足すちんどん屋

    流木に馬乗りをする安楽死

    回春の兵舎跡から鶴が飛ぶ

    ビー玉の丸さに潜む出世欲

    空き箱の城でミイラの花見酒

    臨月に外野フライが降り注ぐ

    焼香の順をめぐって蟻地獄


    
作者より コメント

    こちらはすっかり秋になり、公園にも街路樹にも紅葉が
    拡がっています。秋が短く、すぐに冬がやって来るので、
    各家庭では越冬準備に大わらわです。
    今夜はオーロラが出ると天気予報が告げています。






 
                     京都市   岩根彰子


    流氷はどんぶらこっこ多産系

    山高帽の話しの腰を撫でておく

    寝転ぶとへのへのもへじの眉の峰

    稜線に引っ掛けてある銀河のキー

    レシピ道りに憧れの鳥葬ぞ








                    西宮市    田村ひろ子


    カラフルな山にデンデン虫がいる 

    巻き戻すたびに変わっている笑顔 

    迷いごとどんと詰めこみ万華鏡 

    エイままよ全部見せましょブラインド 

    ギザギザのなかに蠢く愛の種  

    ときどきはホームドラマに蓋をする 

    そうだねをふんわり敷いている昼寝










                    大阪市   宮井いずみ



    トリケラトプス並んで夢を闊歩する

    恐竜の涙の化石地割れから

    隈取をした思い出に風いれる

    長月は左脳に電波とどかない

    一枚ずつ鱗を貼ってゆく0時

    白竜湖めざして鳥になりました

    一瞬の永遠 真っ白い泡の中

    青と緑混ぜれば記憶よみがえる

    世話好きなイルカが話しかけてくる

    引き波が海へ帰れと言うのです









                 大阪市    オカダ キキ

    台風一過ビニールハウスのため息

    5W1H消えているポスター

    几帳面きみ大雑把よく揉める

    黒のマーカー縁取りはまずかった

    歌声日和夕焼け小焼け村祭り








                     城陽市    木口 雅裕


    真実は誤変換され転々と

    還暦に越えた山とか消えた波

    他人には見えない波長感受する

    天空の城から降ってくる雫

    言の葉は色彩として生き延びる








                    京都市  中林 典子


    ぎくしゃくの二人のままの秋景色

    パリパリのシーツに種を蒔いてみる

    息を継ぐ仕立て直しの風景画

    点滴のしずく数えて信号待ち

    お日柄をたっぷり褒めるリハーサル







                  京都市   越智ひろ子


    連なってラインダンスの秋に入る

    デンマーク ドイツそれとも恋のまち

    一列に並んだ山とヨーイドン

    バックミラーに映す山 君を伴走す

    思い入れがあり 画像保存の彩の中

    あたたかい絵だ なだらかな線が優しい







                     石川県  堀本のりひろ


    山粧う見渡す限り厚化粧

    ホタルイカ浪間波間で夢世界

    不夜城をさまよっている酔っ払い

    さらさらと風に吹かれて山紅葉

    カンバスに気ままに描いたユートピア









                      大阪狭山市   八木侑子



    いろいろなロマンをたたむ山の襞

    山の朝霧小鳥の声を包み込む

    なにもかも霧に溶かしている至福

    おいでおいでと柳絮ふりちる河童橋

    霧深き山のホテルのティータイム

    かわいいお尻澤水を飲む親子鹿

    秘事晒しあいつつ登る 沢桔梗

    赤い実を食む山猿の頬真っ赤

    小石ける 水さわさわと黄釣舟 

    更けゆく夜の濃くなる話山の宿







                     東京都     佐藤 幸子



    恋しきは山のあなたのエトセトラ

    迷い箸今日は何処まで行ったやら

    平凡に生きて足跡だけ残す

    薪能ならば迷わず尋ね来よ

    道連れが欲しいと叫ぶ金木犀













                     2018年9月                     更新


              

             お絵描き  空想




       カナダ バンクーバー  福村まこと


     刺青は秩序正しく破水する

     天辺に卑弥呼を飾るちらし寿司

     盂蘭盆会言葉が闇で自爆する

     冤罪を叫び続ける火焔土器

     判決に極彩色の絵文字書く

     太陽の舌打ち ビルの排卵期

     祈らねば仏の肌着透けてゆく

     あぶな絵のサプリを配る保護者会

     目薬に自白を迫る万華鏡

     いきさつは省略虹の離縁状








      作者よりのコメント

     こちらは2か月以上雨が降らずカラカラです。
     州内で400ヵ所余りの森林火災が発生し、
     バンクーバー市でも火災の煙のため太陽が
     赤く見えます。消火活動は町の近くだけで、
     雨による自然鎮火を待つしかありません。

     日本の暑さも少し和らいだと聞いていますが
     ご自愛下さい





                     西宮市  田村ひろ子



     チチンプイほうら並んだ美魔女の手

     イントロをわすれて騒ぎだす花火

     ためらってひらくページに愛の文字

     聞いているときのお口は半開き

     さしあたりクッション並べひと眠り

     星空のどこかで汽車が呼んでいる

     空っぽのところが病んでおりました








              八戸市        笹田かなえ



     水中花満開玉虫厨子

     王様ははだかだはだかだはだかだーっ!

     水に溶く絵の具たっぷり創世記

     西瓜メロンいちごあなたにはチェルシー

     色水のゆらゆらオフェーリアが立つ








                   城陽市   木口雅裕



     蓑虫のパッチワークで美術展

     特注の花火を君にプレゼント

     ヘタうまを天才的と言われても

     クレパスの淡い想い出あったよね

     性格はシンメトリーで几帳面









                 大阪市    宮井 いずみ



     ペディキュアに花を咲かせているニンフ

     よく笑う君は獅子座のプリンセス

     喜びが炸裂 花火咲くように

     爽やかな香りは地中海性気候

     メロディが流れる夏の記憶をなぞりつつ

     泣き止まぬ子にカラフルなキャンディーを

     チャレンジの喜び今を咲いている

     夏野菜きざんで三原色のルンバ

     よしよしとビタミンカラー塗ってやる

     大空に咲き続けるわ晩夏まで







                  京都市   岩根 彰子



     ばあちゃんは極彩色にならはった

     ネス湖へ歩く伴はコスモス

     向日葵の血判状は深緑

     仁王立ちして挽歌を引いて

     指の腹虹の根っこに手を掛けて








                  仙台市     月波  与生




     戦争を思う八月だしひとりだし

     自画像か花か余白にみつおの詩

     赤子の写真にウイルスうじゃうじゃと

     怒っているので記憶にないという

     砂絵屋の猫は安部公房が好き












                     京都市    中林典子




     絵手紙の桃が熟れてく夏時間

     証拠写真の真後ろの花畑

     時は熟したハーメルンの笛を吹く

     皺を伸ばしてピンボケの夏の庭

     打ち水と風船釣りの地蔵盆











                    大阪狭山市      八木侑子





     読み切りの男と女花くらべ

     素性ばれたプレパラートの花びら

     ポケットのおくの草花出番待つ

     花びらとなる消したい記憶

     花吹雪紙の吹雪になっている

     花ごよみ凛々しい白い塩に恋

     マリンブルー寄り添う色を選ばない

     やわらかいタッチを待っている蕾












                大阪市  オカダ キキ




     ぱらぱらとゴマ粒程の夢の種

     指先のマジック蕾がふくらむ

     ひしめきて咲く花もまた寂しがり

     パステルカラーふんわりと意思表示

     線香花火ひと夏の片思い

     何だっけ教えましょうか花言葉

     スカーフに引き立てられて照れてます









                京都市    越智ひろ子



     絵筆が語るプレートに花八月忌

     返り花ふと揺れてまたここに咲く

     涙粒ぽとりぽとりと花の景

     ビー玉が飛び散るがごと君が好き

     赤青黄 自己陶酔の絵がここに

     美しく居ろなんて無理 塗り潰す

     全てにおいて言い当てる花占い












                    石川県  堀本のりひろ



     ありがとうこの絵はがきは宝物

     この色合い自由奔放この子だけ

     大輪の花火弾ける二人の夜

     星空に私の夢が飛び散った

     この気持ち大輪の花星空に

     この子には夢がいっぱい咲いてます

     吟醸酒天然色の夢をみる


      玉屋ーと夜空に咲いた根無し草












                     東京都    佐藤幸子


     願い事ひとつふたつと成就する

     モードからすんなり孫の手に縋る

     八月の引揚船の紙テープ

     米寿去る笑顔いつぱい振り巻いて

     前世では蟻んこだったと自認する

     野晒しの果ての身体髪膚かな

 





     本多洋子の印象吟は 「テーマで川柳」の欄に出ています。



     ★    ★    ★    ★    ★    ★    ★    ★    ★    ★    ★    ★





                                             2018・8月     更新

           大阪中之島にてフォト



     
           カナダ バンクー 福村まこと


     血の歓喜テーブルマナーの格闘技

     モノクロの太陽墓地でセール中

     七色の鬼が孵化する反抗期

     文字化けをJアラートが操作する

     胎内で徘徊続く黄信号

     説教をするたび蛇口取り替える

     やきとりの衣裳を探す夏の陣

     お見舞いに刺青さらす冷奴

     言いそびれ「ん」を枕に閉じ込める


   作者よりコメント

      カナダも東部では暑さのため60名が死亡しています。
      地球的な異常気象なのでしょうか。
      暑さはこれからも続くと思われます。どうぞご自愛ください。




 



                            京都市  岩根彰子



     共通の話題のきっかけ探す鳩

     八月の光って吠える石のテーブル

     覚えたての手話ありったけの手のひら

     銀色の影の向こうの父の旗

     街角のドラマ創ってきたフエンス







                          仙台市  月波 与生



     間人間みな滅んだという知らせ

     天気予報はずれ剥奪されていく

     市役所の裏にあふれるエキストラ

     鳥語まで話せてなんでカタキヤク

     石化する慌てて懺悔せぬように





                              西宮市  田村ひろ子



     街なかの作り話のうつくしさ
     
     遊び相手は乾いたほうにいたします

     ときめきの呪文ならべる通せんぼ

     パワーストーンきままな風のほうが好き

     ありふれたことばで通りすぎる雨

     かたくなる記憶こつこつ突きましょ

     ふんばってホラふんばって地蔵さん 








                           城陽市  木口 雅裕



     宇宙から来た少年が橋の上

     石像の背なのほうから崩れだす

     クレヨンの黒で描かれた雨になる

     雨風にさらされさらに丸くなる

     この橋もいつか危なくなる予感







                         大阪市  宮井いずみ



     パンの耳持って帰れば叱られる

     待っていてくれる喜んでくれる

     わたしにもかつて翼がありました

     ハヤブサが見ているそっと裏口へ

     飛び込めばパラレル世界行けるかも

     ぼくの星へきみも一緒に来ませんか





                       大阪狭山市  八木 侑子



     空襲の警報響く夕餉時

     灯り消し防空壕に縮こまる

     甲高い鶏の鳴き声地の響き

     爆風で飛んでしまった壕のドア

     煤あびたご飯真っ黒汗にじむ

     低空飛行ガムを噛みつつ弾落とす

     野良帰り直撃うけたその骸

     夕日包むばあばの背なのかたるもの

     あかあかとUFJの夜の祭り









                         青森県 笹田かなえ



     厨子王を呼べば安寿もやってくる

     鳥船をはぐれた二羽であるまいか

     キノウココデナイテイタノハオニイサン?

     つるりんとパンナコッタな間柄

     探偵は尾行の途中 中之島







                       京都市 越智ひろ子



     ・向かい合うヒンヤリと自負忍ばせて

      何となく味方のように通い合い

     ・君一途白より白いウソをつく

     ・青い鳥の話聴かせる鉄男

     ・やんわりと輪に染まりゆくモノトーン

     ・妥協点残り時間は惜しまない

     ・ヒト ハト ボク私の中を季が移る

     ・そうこうしてる内に禍転じをり







                     京都市   中林 典子



     脱皮したつもりで朝のバスを待つ

     頬被り取るとつるんと良い男

     あと一羽鳩を待ってる交差点

     彼だとわかるメンソール味の息

     午後からは金切り声の鳩時計








               石川県 堀本 のりひろ



     フムフムフム今度は何処が揉めてます

     鳩さんよ平和の使者はお休みで

     そうなんだ争い多く疲れたの?

     お二人さん仲睦まじくお散歩ね

     鳩さんよ私の悩み聞いてよね




                                       
2018年 7月更新



             はーとの美女 イメージ吟





               カナダ バンクーバー 福村まこと



     尼寺に卑弥呼の絡むスクワット

     日の丸に目隠しされた鶴の舞

     産道の壁画 すし詰め自由席

     毛穴から虹を噴き出す外来種

     勲章の裏に首なし万国旗

     王様の夢を煮詰めたチョコボール

     口紅に自白を迫る恵方巻

     焼け跡に輪郭探す花時計

     リカちゃんの寝返り 無名戦士の碑

     地下街に奇襲前夜の熱気球








                    仙台市   月波 与生

 
     犬だった頃の友だちばかり来て

     どうしても思い出せないアキエサン

     ユーミンをドレミで歌うのはやめて

     二次元のままで双子を産みました
    
     後輩の絵の具で描いた疑似恋愛








                   青森県 八戸市 笹田 かなえ



     あかねさす…ハニートラップじゃないから

     百物語の絵ろうそくを抜けてきた

     はんぶんはあけぼのになる夏椿

     水無月のくちびるフェラーリの赤

     わたしをあげると言ったら叱られた









                         京都市  岩根彰子


     赤いチューブ黄色いチューブ~マグマ

     地下道をモンローウオークピンヒール

     ワイキキの消印半開きの恋

     いっぽんの向日葵頷いたりしない

     闘う気満々エナメル質なハート






                      西宮市   田村 ひろ子



     さっきなら分けてあげたわ 少しだけ

     指先のしずくも熱くなりドキリ

     跳びあがるたびに小さくなる踵

     ありふれた夜を語ったいくじなし

     あの春の記憶はぜんぶ赤に塗る

     ぽかぽかの背中に羽が生えてきた

     しがらみをかかえはみ出す湿布薬








                        城陽市 木口 雅裕




     ハートにはためらい傷の二三本

     着信にやたらハートが付いてくる

     傷心の少女の顔が大人びる

     なにもかもハートに見えて恋疲れ

     マントまでハートになるの切なくて








                       京都市 越智ひろ子



     ハッとする私に負けぬ艶がある

     嵌められた事すら知らず紅を引く

     直感的に捉えなおす愛の味

     若さゆえハートハートと連呼する

     注文のレバ刺しすっと啜る口

     人間不信心臓音も消し風と

     アンドロイド赤い鴉を纏うよに

     恋は恋ピエロはピエロ慈しむ








                      大阪市 オカダ・キキ



     晴れ渡る空の下花ものがたり

     アンスリュウム遠い日の恋語り種

     奥底は風もないのに揺れている

     問われても問われなくても焦がす胸

     眩しくも有難い光たっぷり

     金髪の天使登場サプライズ









               石川県      堀本 のりひろ



     希望の灯君のハートを赤く染め

     真っ赤なハート君の心の叫びです

     なんでも来いわたしのハート無限大

     ねたみます幸がいっぱい大ハート

     ぐっとくる君のハートのおおらかさ

     真心がどきっと迫る貴女から

     愛溢れ心臓肥大止められぬ











                     東京都    佐藤幸子




     鮮やかな変身でした澪標

     咲く花があれば淋しくない塒

     お邪魔ですかと身の程考える

     虚弱児で育つ三女の叫び声

     一生に一度のチャンスだと思う

     さて此処でドボルジャークを聴くとする

     どん底を覗く良い事ありそうで

     ふる里のマトリョウシカが呼んでいる









                     大阪市   宮井 いずみ



     さえずりで目覚める抹茶パフェな朝

     金髪に染めて陽気なキャラになる

     コラーゲン美白マスクが効いてきた

     歌姫の叙情歌 万華鏡のような過去

     スポットライト浴びて綺麗な色になる

     聞いてよね夾竹桃の言い分も

     ペルソナはガラス タフな心臓隠し持つ

     抱きしめるようにあなたを守りたい







                 大坂狭山市    八木 侑子



     モンマルトルは燃えるこころに包まれて

     風車くるくるハートもくるり定まらぬ

     哀しみは舞台衣装と化粧です

     さらさらとアートの芯は砂ばかり

     君にささげるのは本物の花束

     囀りの森をあなたと駆けている

     グリーングリーン裳裾も森も

     虚飾を脱いでみどりを紡ぐ

     ふうわりと羽衣まとい天国へ


                                
     2018年6月      更新


    
    サハリーパークにてふくろう

     


               カナダ バンクーバー市 福村まこと

    
    夜明けには独り立ちする四コマ目

    マネキンの衣装で踊る不寝番

    この闇を破って夜が落ちて来る

    竜宮の合鍵削る宮大工

    満月に仮釈放の殉教者

    袖を引く古代遺跡のマッチ売り

    寒冷地仕様で出口ない牢屋

    突然の起床ラッパに探す髭

    啼く鳥の産道埋める余命表

    急がねば方舟に積む檻がある



    作者 コメント


    こちらもやっと春らしくなり、新緑が眩しくなってきました。
    夏の短いカナダですが、人々は貪欲に日光を浴びようと
    裸にちかい軽装で過ごしています。
                        福村まこと拝








                   大阪市       宮井 いずみ


 

     野ネズミの大言壮語聞いたふり

     ムササビの滑空 ボクは平和主義

     一陣のかぜに若葉がまた笑う

     赤松にクマの爪痕 森の息

     陽が落ちて森の匂いは群青に

     賢人は何も言わずに見てるだけ

     ふくろうも恋人を待つ月明かり

     夜をついて噴火の地鳴り 心臓の鼓動









                       西宮市  田村ひろ子



     はっきりとさせるか熟慮しています

     はじまりはみんなキラキラまん丸い

     暗闇の襟足つたいゆく驕り

     ぽかぽかの背中の疑問符の昼寝

     ほどほどの風に満足しています








                          京都市  岩根彰子



     歯抜きしてムソルグスキー面構え

     金色のカラコン鏡くもりなく

     梟に父に通過する轍

     きのうパックをしましたのよ妬心
   
     視線の先が同じでいいね十三夜









                      鳥取市       平尾正人



     目は二つ口は一つである理由

     系統樹の森をGPSで追う

     見つめたり見つめられたりする夜更け

     肉食系ですが文句はありますか

     よく回る首だ視野狭窄だから







                             京都市     石田和雄




     ようこそここへ森のフクロウ眼科です

     飛蚊症ならオレにまかせろ取ってやる

     ウイルスも詐欺師もわしが見張ってる

     警戒セヨ ふくろうアラート発令中

     戦争の狼煙はわしが見張るのだ

     眠り猫おまえと戦う日を待つぞ

     幸運の前髪だけを狙ってる

     濃~いお茶 何杯も飲んださけぇ

     わたくしも出るぞなんでも鑑定団







                         広島市    三由もとこ


     年輪が微かに動く午前二時

     本当よ台風の目はふたつある
  
     ほら見っけ間違い探し初級編
  
     宇宙船眼窩の奥に飛び交って
   
     出会ってる億年前のあの森で









                          城陽市  木口 雅裕



     梟にキスしましたと謝罪する

     梟は哲学の道極めてる

     魔女はまず梟たちを手なずける

     梟は真正面から洞察す

     梟はステルス性の飛翔する

     森の木の洞で昼は一休み

     フクロウのお守り下げて苦労する

     梟は五郎助奉公と鳴きはせぬ

     梟も絶滅危惧に瀕してる

     梟は360°恫喝す







                       仙台市      月波与生



     未必者のカオになったら嗤うべし

     蜚蠊を喰う蜚蠊で帰る家

     絶滅種の横で廃鼠の多産

     剥製はみな下半身針の山

     木兎の耳に火星と似た軌道








                  大阪市       オカダ キキ

     


     守一かフクロウにも見え山崎努

     おじいさんの返答ふくろうのホーホー

     験担ぎのコレクション大中小

     空気清浄機ON梟カフェ賑わう

     あの眼光に負けず劣らずアイメイク









                    東京都  佐藤幸子



     オホーツクの海穏やかなツーショット

     語り部としての鎧を身に纏う

     鮮明に覚えています終戦詔書

     晩年は母に似ている浅蜊汁

     木漏れ日があれば百まで生きれそう

     劣化した後ろ姿は見せられぬ

     花咲かず鳥は歌わぬ自由律

     乏しくはあらず瞬く北斗星

     十字架の真下ダミアがすり抜ける     









                     京都市  越智ひろ子




     ホーホーと積り行く音抱き眠る

     人間とは面倒くさい邪魔くさい

     闇を突き裏山の主から訓示

     愛は無限深き眼差し声とせず

     飛ぶことより静止のこころ解く梟

     羽たたみぐるりぐるりと静思観












                       大阪狭山市  八木 侑子




     漆黒の闇わたしひとりの世界です

     ほうたるよ仲良くしましょ淡い水

     闇泳ぎ闇をひさいでいる人よ

     闇が好き気ままに描く私の絵

     闇しんしん極彩色が塗るこころ

     奥深い童話を紡ぐ夜の森

     私には見える 他者には見えぬもの

     闇を引っ張り夢をひっぱり果てもなく








                                     2018年5月    更新

    ポストカードより  印象吟



 
                カナダ バンクーバー市   福村まこと


     モザイクのあぶな絵吊るす哲学者

     千年の笑い シベリア寒気団

     首のない埴輪で鬼のかくれんぼ

     雑踏に踊る匿名頭蓋骨

     新発売青いラーメン平和論

     打ち上げは公民館で鰓呼吸

     透明になるまで化粧する尼僧

     アンパンのおへそが語る飢餓地獄

     反対に地球を回す模範生

     勲章の原価は国家機密にて









     沈思黙考 私のそばによらないで     大阪狭山市 八木侑子

     連戦のナポレオン恋うジョゼフィーヌ

     青銅の仮面の中で泳いでる

     あれもこれもと言いたいことはあるけれど

     いつの世もあったパワーハラスメント

     恐ろしくそんなことまで言えません

     あと少し策略練ってからにする

     見えてますずーっと先のことまでも
 
     とりあえず飾り物だけお見せする








               石川県    堀本典洋(雅号 のりひろ)



     眼の奥の朱が燃え盛る嫉妬心

     朱の色は嫉妬爆発一歩前

     おぞましい人差し指で突く嫉妬

     このでかい頭の中は嫉妬だけ

     大きい手ぐっと押える嫉妬心

     ベルト巻き嫉妬爆発封じてた

     黙の奥に隠した嫉妬心







    
               大阪市  宮井いずみ



     エニシダの香り仲睦まじかった頃

     クロゴケグモの化身だなんて言えないわ

     激情を閉じ込めてから紫に

     どこからか「アルハンブラの思い出」が

     退屈をハーブ効かせて生き延びる

     常識という圧力だんまり押し通す

     キャンドルが揺らぐ予言者の眼が光る

     平静を装い指先までも青くなる

     
パンドラの箱見えているのは私だけ

     エンジェルは卵の殻の裏側に









                     西宮市   田村ひろ子


     覗いてはいませんじっと見ています

     花色に染まる流れの頭脳戦

     一つずつ重ねた業の鎧着る

     つぎつぎとドラマ作ってきた仮面

     嘘に酔う裸の王よキリギリス 

     見えるものだけを見ている青い石

     こわばりを忘れガハハハとるポーズ







                      京都市    越智ひろ子



.     結界へ分け入る女のターバン

     ターバン男片側の影彫りすすむ

.     間に合わず揺れて指輪の積もる夜

     すっと差す細い指先 春の雪

     父が逝く母も逝く鼻筋すっと

.     赤い目に止まるある画家の一生

.     カルテから青いマスクの四方山話

.     狂れるまで何も言わずに肉を削ぐ




                   城陽市    木口 雅裕



     口の無い神を崇める青部族

     青色の代償は耳削ぎ落とす

     伝説は恐怖に近い青仮面

     かろうじて叫びを止めて夢は青

     目の色は深い哀しみ沈む青

     特徴はモディリアーニの禿頭で

     辺境の崖に集まる群青の

     言わざるの女神は青の化身なり

     天空の城の遺跡の出土展

     仮面の目はるかな闇を凝視する









                     京都市       石田和雄



     シネマにはとっても強い僕がいる

     ウオンティッド 非常口から出た男

     非常口に駆けているのは私です

     マチュピチュの姫でありんす撃たないで

     枝豆だって涙ぐらいは持ってます







                      東京都 佐藤幸子 



      闘いは終わった視力奪われた

      緊急通報蛋白質を補給せよ

      淋しくて寒くて滑り込むライン

      青銅にすっぽりはまり懺悔する

      怖いですねぇはいさいならさいなら







                   京都市  岩根 彰子



     オレンジのバーを軽く跳んで初夏

     掌にちょこんと座る蒼い脳

     牛の胃袋を持つ山越えのカーブ

     ソーダ水1つみたいな緩い別れ

     障害物競技ちゃちゃっとお茶しましょ

     長い指青い話を聞き齧る

     大曲り腹式呼吸して時雨

     緩やかなカーブの先は合掌造り

     瞼からバロック真珠を出しませう

     カーブミラーに愛の未練が横たわる






                       鳥取市     平尾正人



     太古から続く何でもないカーブ

     アオのアで始まり終わるのはブルー

     穴という穴を塞いでから眠る

     視線より目線感じていたいのは

     緩やかに曲がる家族も心根も










                  広島市          三由もとこ



     深海の宝箱からもる嗚咽

     もうすでに悪女その一崩れてる

     史実なら外せないでしょこのマスク






















































ゲストの椅子

         
         
    2020年


 
 Photo で Art で 川柳
 



 2020年5月より この欄は ゲストの皆さんの川柳作品やエッセイの応募作品の欄として ブログ洋子の部屋に移転しますので 今後ともよろしく 御愛読をお願申し上げます。      
                     
本多洋子