2019年4月 更新
バンクーバー 福村まこと
身の丈を越すと壊れる家庭劇
子育てに迷彩服を染め直す
韻律につまずく春に踊る鬼
養殖の言葉で傾ぐ車椅子
空調で無声映画がひび割れる
狩人の原野に探す免罪符
割り箸の隙間に善がる蒙古斑
早咲きの桜撃ち抜く句読点
作者よりコメント 今年は観測史上最も寒い冬でしたが、
お彼岸になりやっと春めいてきました。
梅も桜も辛夷も同時に開花し、北国の
春は少し乱暴にやって来るようです。
今夜もオーロラが現れると伝えています。
京都市 西田雅子
三月はヒトも桜も霞ゆく
春だもの引き止めないで風だもの
つばめスイっと「の」の字を掠め去る
相田みつを的たんぽぽ的暮らし
足りません墨も言葉もたましいも
にんげんの「ん」の字が森へにげてゆく
鳥になろうみどりになろう詩になろう
仙台市 月波 与生
人間だもの
前向きな意見振り込め詐欺に遭う
帳尻が合わずにシャドウボクシング
歯並びが悪いまま私小説終わる
泡立草から失禁パンツ脱ぐ
焼香の列で女王蜂死産
腹黒い男と烏食う話
西宮市 田村ひろ子
迷っていることもすぐに忘れます
ひいらひら春の黄色とひいらひら
うやむやは置いてまっすぐ土筆坊
列はずれひょひょいの春のひとりじめ
五線譜通りにステップしない指
どちらへと聞くとフフフと笑う春
残照の息をつないでもう一歩
綱渡りもうこのへんにいたしましょ
城陽市 木口 雅裕
矢印は闇の方へと身をよじる
片隅で朽ちかけている杵柄
悔恨はエッシャーの絵に紛れ込む
静脈に百姓一揆の血は流る
暗闇をまっすぐにらむ土偶の目
八戸市 笹田かなえ
静って争い青し相模灘
心ここにあらずの心どこですか
かん詰に言って聞かせてみたところで
真夜中のかすれ加減も春うらら
指先はなぞるあなただった頃の黒
京都市 中林 典子
皺くちゃの顔を伸ばして逢いに行く
よく笑うてるてる坊主を部屋中に
桃の傷やさしく撫でてやればよい
美しく別れたはずの花鋏
恋になる雨の匂いのする男
大阪市 宮井いずみ
完璧な肯定新月など要らぬ
にんげんだものどどどどどっと般若心経
息継ぎもせずに言うほど信じてる
反省をしてると言うが山葡萄
腕組んでいるが目尻が下がってる
欲張ればどこでもドアも透き通る
笑わしてもろてポコンとたまご産む
大阪市 オカダ キキ
フォークロア癖字に込めたメッセージ
傍線を引いた所をリフレーン
泣きなさい笑なさいとアカペラで
時に速度を緩めカーブするme too
どこまでも重ね行くプラスレッスン
写経の筆跡に成長は見えず
石川県 堀本のりひろ
生きてきたおもいがままに七十五
恐れ入る自由に奔る筆力
存在感落ち着き見せて揺ぎ無し
魅せられるアンバランスな描写力
存在感がつんと示し『の』がいます
見ていればじわじわとくるガッツ
大阪狭山市 八木 侑子
太く生き深く沈んで這い上がる
あまたのアートに抱かれ恋もする
見せたくないわこんなぶざまな跳び方を
立ちどまりたち止まりして今ここに
充ちたりた流れと掠れた流れ
いじいじと這いつくばって進めない
こざかしい智恵に足もとすくわれる
恋みのる 足裏で春の色を嗅ぐ
「にんげんだもの」と言い切れぬニ・ン・ゲ・ン
××ばつ×××××××××××
以下 前月の入力ミスが解消されていません。見苦しい点をお許し下 さい。
2019年3月 更新
カナダ バンクーバー 福村まこと
濡れ衣のいきさつ暴く雨の色
チンピラの喪服虫干しする五月
枕絵をバイリンガルで刷り直す
地平線持ち上げ回答迫る虹
水洗いだけで溶けだすプロポーズ
判決に漂白剤のかけ流し
湯上りの背開きになる尼僧の緋
前菜に鼻水たらす崖崩れ
作者よりのコメント
北米大陸中央部に寒気団が居座り、
雪が降り続いています。街は真っ白で
春はまだ遠いようですが、雪雲が切れた
夜はオーロラの楽しめる時季です。
日本では麻疹が流行しているとか。
どうぞご自愛ください。
八戸市 笹田かなえ
どこからが空でガラスで二月逝く
前世は底冷えのする波がしら
とくんと脈打つ 三月がきている
虹を着て曇りガラスの薄じめり
三月の空をめくればまだ黒い
西宮市 田村ひろ子
からっぽになって聞こえた春の声
なりゆきのままに座っておりました
巣づくりのできぬ旅人青い鳥
とまどいの隙間に滑り込む光
放心の大地にひらり白カラス
ときめきはあなたのなかの水の音
虹色の誘いをずっと待っていた
ここまでにしますここからは湖
京都市 西田 雅子
追いかけて虹の生まれる湖へ
七彩の音が聴こえてくる湖畔
待合せ虹のふもとと言われても
お湯かけて3分待てばできる虹
完璧なスキップをして渡る橋
スカーフは鳥になりたい虹になりたい
シュレッダーされる前に消えましょう
城陽市 木口 雅裕
伝説の虹の遣い手現れる
最初から無言のままで消える虹
荒れ狂う海のうえにも虹は出る
傷心のこわれたハートにじむ虹
自殺するその寸前に虹を見る
大阪市 オカダ キキ
まぁこんなこともあるのねサプライズ
鐘ひとつ鳴らさずそろりと吉兆
虹色のスカーフまるで験担ぎ
ずっと水面見ていただけのひとり旅
もう一度待って更なる虹の橋
大阪市 宮井いずみ
ただ海を見たくて車走らせる
よく来たねなんて言わない冬の海
あの沖に答があると目を凝らす
言わなければよかったあんなキツイこと
寒風を受け止め片足のかもめ
この世界にはただ波の音冬の虹
仙台市 月波 与生
玉乗りができるまで同性婚隠す
モアイにもなれず抜け駆けする土偶
身構えてしまう等身大の穴
振り込め詐欺帰りNHKが来て
HeyJude陳腐なものをみる悪夢
京都市 中林 典子
続編はピアノの蓋を開けてから
元栓を開けた途端に虹が出る
家計簿の余白はいつも晴れている
落札された瓶詰のペンネーム
能面の顎をぐいぐい一身上
大阪狭山市 八木侑子
彼方へかなたへ誘う水平線
さそい込み果ては途切れた冬の虹
私をどこへ運ぶか銀の波
冬の海破船の涙呑み込んで
ひき潮があまたの秘密持ち去った
嵐去りやがての虹をみています
虹の下七色の海抱いている
七色の雫分けあう虹の下
消えたいなあ虹のようにふうわりと
ひとりが良い海が明るくなる時間
石川県 堀本のりひろ
わたくしの向かう先には虹の街
虹の橋私をどこへ導くの
この虹をひょいと渡ればユートピア
あのひとがに静かに眠る虹の街
孤独の人導くように虹の橋
わたくしがあこがれてきた虹の街
泡沫の虹に託した愛の便
彼の国へ架けられた虹渡ります
虹の橋ゆるゆるわたり終の家X
お絵描き 空想
カナダ バンクーバー 福村まこと
刺青は秩序正しく破水する
天辺に卑弥呼を飾るちらし寿司
盂蘭盆会言葉が闇で自爆する
冤罪を叫び続ける火焔土器
判決に極彩色の絵文字書く
太陽の舌打ち ビルの排卵期
祈らねば仏の肌着透けてゆく
あぶな絵のサプリを配る保護者会
目薬に自白を迫る万華鏡
いきさつは省略虹の離縁状
作者よりのコメント
こちらは2か月以上雨が降らずカラカラです。
州内で400ヵ所余りの森林火災が発生し、
バンクーバー市でも火災の煙のため太陽が
赤く見えます。消火活動は町の近くだけで、
雨による自然鎮火を待つしかありません。
日本の暑さも少し和らいだと聞いていますが
ご自愛下さい、
ゲストの椅子
2020年
Photo で Art で 川柳