◆野宿者は、全国に25000人います。
厚生労働省の2003年調査によると、
全国に野宿者は25,296人おり、野宿者がいると報告した自治体は581市区町村に上っています。
都道府県別では、大阪府(7757人)、東京都(6361人)、愛知県(1984)の順に
多くなっています。
野宿者がいた最北の街は旭川市(1&2月の平均最低気温は−12.6度)で、
21人でした。
三鷹周辺にも野宿者が50人ほどいます。
◆野宿者は、暇でぶらぶらしている?
厚生労働省の調査によると、65%が、収入のある仕事をしていると答えています。
3割の人が、高齢・病気・障害で「働けない」と答えているので、体の具合が悪くない人の多くは
働いています。しかし、野宿者には住所・電話がないため社会が許している仕事は限られており、
68%が「廃品回収をしている」と答えています。1カ月の収入は、5万円未満が5割を占めています。
廃品回収の代表的な仕事、アルミ缶集めをみてみましょう。
アルミ缶は、1Kg(約60個)で約80円です。
1日に12時間(朝4時〜夕方5時)くらい自転車で走り回って15Kgを集められたとして…
15Kg × 80円 =1200円 1カ月に27日働いたとして…
27日 × 1200円 = 32400円
身を粉にして働いても、報われない収入なのです。
◆野宿者の状況
1.野宿生活は、貧困が極まった状態にあり、命を落とす危険にさらされています。
大阪市内の2000年の路上死は213人に上っており、餓死が18人もいました。
2.野宿者は、社会的・物理的に排除されています。
☆社会的排除……住所や住民票がないため、基本的な権利が剥奪された状態にあります。
住民票がないので、住民サービスを受けられない。選挙権を行使できません。
年金受給の手続きができません。年金を受給していても、市役所から家に送られてくる現況届を出せないので、
年金がストップしてしまいます。
運転免許や調理師など、資格の更新手続きできずに失ってしまいます→就職がさらに困難になります。
健康保険証がなく、医療を受けられません。
ほとんどの手続き書類には住所&電話欄があるので、あらゆる手続きが難しくなる。就職活動すらできません。
☆物理的排除
公共施設を、野宿者には使わせないという動きもあります。私的空間(住居)を失った人を公的空間からも排除したら、「地球上に存在するな」と野宿者にいっているようなもの。
井の頭公園の池の回りのベンチは、仕切りのあるベンチにどんどん変わっており、野宿者が寝転がれなくなっています。こうしたベンチ設置は、全国的な動きです。
子ども・若者による野宿者襲撃事件が度々起こっている。2002年1月25日には、東村山市にある西武多摩湖線八坂駅近くのゲートボール場で生活していた鈴木邦彦さんが、 中学生と高校生の計6人に されて殺されました。図書館で騒がしいことについて鈴木さんに注意されたことを恨んだ少年たちが、角材やパイプイスで鈴木さんの腹を殴り、 鈴木さんの上に金属製ロッカーを乗せてその上に乗るなどしたのです。高校生は、懲役になりました。こうした悲しい事件は、なくなってほしいと思います。こうした子ども・若者による襲撃に対し、 例えば川崎市教育委員会は、支援団体と一緒に襲撃問題に対応しています。
◆国連は、すべての人に食糧/衣類/住居/社会保障の権利を認めている
世界人権宣言(1948年12月10日採択)
第25条
1 すべて人は、衣食住、医療及び必要な社会的施設等により、 自己及び家族の健康及び福祉に十分な生活水準を保持する権利並びに 失業、疾病、心身障害、配偶者の死亡、老齢その他不可抗力による生活不能の場合は、 保障を受ける権利を有する。◆日本国憲法では、最低限度の生活を営む権利を保障している
第13条【個人の尊重、生命・自由・幸福追求の権利の尊重】
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利についは、 公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
第25条【生存権、国の生存権保障義務】
1 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
→生活保護法(憲法第25条を具現化している)
第1条 日本国憲法第25条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、 その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。
◆野宿者対策の現状
☆国は何をしているの?
2002年、ホームレス自立支援法が成立(10年間の時限立法)。法律の目的 = 野宿者の人権に配慮し、国(厚生労働省と国土交通省)は、何をするのか、以下の点について基本方針を作る。
就業機会の確保 / 安定した居住場所の確保 / 保健及び医療の確保/生活の相談・指導 / 各人に対応した総合的支援事業 / ホームレスになりそうな人が多い地域などでの生活上の支援 / ホームレスへの緊急援助 / 生活保護法による保護の実施 / ホームレスの人権の擁護 / 地域における生活環境の改善と安全の確保 / ホームレス自立支援の民間団体との連携都道府県は、必要に応じて、基本方針に即した計画を策定する。
☆東京都の対策は?
国の「ホームレスの自立の支援等に関する基本方針」(2003年5月)を受け、23区は、東京都が23区と一緒にシステム化した施策を行なっている。 「シェルター」→「就労希望者のための施設」→「低家賃住宅の提供」
市町村による施策は、東京都実施計画には非常に限られた記載しかない。
生活に関する相談・指導☆三鷹市の対応
東京23区以外はホームレス自立支援法による計画を立ててないので、 野宿者に対応する福祉制度は、現在のところ、生活保護制度でカバーしているのが実情です。