実践「高機能自閉症・アスペルガー症候群」
朝日新聞厚生文化事業団主催、日本自閉症協会後援
内山登紀夫(大妻女子大助教授)、吉田友子(よこはま発達クリニック)
@「高機能自閉症・アスペルガー症候群とは」
◎自閉症(カナー)
・情緒的接触の重度の欠如
・強い同一性保持(こだわり)
◎アスペルガー症候群
・社会的に奇妙、未熟、不適切(かかわりはある)
・回りくどい、反復的、字義通りの話、相互的会話になりにくい
・非言語性コミュニケーションの未熟
・不器用、奇妙な歩き方・姿勢
・常識の欠如
◎自閉症スペクトラム
・カナー型の自閉症
・アスペルガー症候群
・ウイングの3つ組(社会性、コミュニケーション、イマジネーション)
をもつ類似の状態の総称
◎自閉症スペクトラムの認知特性
・中枢性統合の弱さ(部分だけみて統合しない)
・実行機能障害
・心の理論
心理化(他者に感情や自分と異なる考えがあることを理解すること)の障害
A「幼児期の支援の原則と実際」
◎幼児期の療育
・幼児期の療育は毎日の生活の中にある
・子どもに適した支援 → 生活が快適に
・子どもがより手がかかるようになる ← 療育的でない対応
◎いつもはできるのに今日はやらない
・叱責しない ← 即効性はあるが苦痛な経験の積み重ねとなる
・何故今日は出来ないか考える → わかりやすいコミュニケーションの工夫
◎コミュニケーションを育てる
・まず、コミュニケーションが便利・楽しい・求められていることを気付かせる
・可能なコミュニケーションレベルは日々のコンディションで変わるので合わせる
・質問攻めにしない ← コミュニケーションがイヤになる
・文法や発音に必ずしもこだわらない
・意思表明できるようになることが大切
・パターンに馴染みやすいことを活用する
◎イマジネーション障害を支援する
・「見通しが持てれば実力が出しやすい」という長所を活用 → スケジュール
☆安心と自信のために
☆柔軟性・プランニングの練習、受信・社会性向上の後押し
☆イヤなことをスケジュールで無理にやらさない → スケジュールがイヤになる
・こだわりはなくすのではなく、置き換える
☆こだわるにはわけがある、気持ちの安定のためにも必要なこともある
☆子どもが許容できる範囲で少しずつ置き換える
・パターン的な学習
・何かに強い興味が持てることは大切な財産
◎社会性の障害に対応する
・社会性は教えることができないが、社会的な行動は教えられる
・社会経験を増やすだけでは支援出来ない ← 不適切な行動が日常化するリスク大
・同年齢の子ども集団は不快な刺激の渦
・一人遊び(リフレッシュスペース)の確保
・大人も介入しながら決まった遊びなどで同年代児とかかわる練習を
・楽しい経験を増やし、イヤな経験は避ける
◎感覚異常に配慮する
・辛い刺激に耐える必要はない(運動会のピストルなど)
・偏食もOK
◎支援プランの立て方
・子どもの状態、状況を正確に評価する
・子どもにあった環境(見える刺激、聴こえる刺激などの排除)、指示、課題
◎幼児期の高機能自閉症スペクトラム
・自閉症特性に合わせて支援すれば技術の獲得されやすい時期
・スキルアップの先には「治癒」があると感じてしまう時期
・保護者が今教えなくては、と焦る時期 ← 親にとっても子どもにとっても無理な注文
B「学童期〜成人期の支援の原則と実際」
◎支援の原則
・診断を支援に生かす
・障害・状況を予測して予防する
・「スキルアップ」を強調しすぎない
◎学童期
・子どもの興味と能力に合った教育を
・健常児との統合教育で社会性が必ずしも伸びる訳ではない
・個別支援学級で全て解決する訳でもない
◎青年期、成人期にもそれぞれ問題点が出てくる
◎支援の実際
・本人や家族より、周囲の人々の態度が変わることが重要
・本人への敬意が大切
・何歳でも診断が必要かつ有効 ← その人に合った教育や療法
・プランニングの指導
・ワーキングメモリー(複数のことを頭で処理できない)の問題 ← 予定表、リマインダー(メモ)
・薬物療法 ← 精神的な落ち着きのために
C本人への告知
・本人の納得、不適切な罪悪感、特性への対応のため
・本人のコンディションのよい時に、わかりやすくポジティブに
・先生にも伝えた方がよいがタイミング(先生との相性など)重要
・友達には伝えない方がよい
Q&A
Q:遺伝は?
A:遺伝的要因はあるが、自閉症になる遺伝子のようなものがあるわけではない。
ある遺伝子群にスイッチが入れば自閉症になるが、
スイッチの入り方が違えば違った能力が発揮されることも。
Q:暴言、暴力にどう対処すればよいか?
A:高機能でない場合、意味がわかっておらず、状況が本人の能力を超えている場合が多い。
原因を排除して、がまんさせない。
Q:独り言はどうすれば?
A:ほっておいてOK。こだわりであれば、原因は考えてみる。
Q:てんかんについて
A:10歳過ぎてから起こる例が多いので、脳波検査はしたほうがよい。
Q:療育を始めるのが遅くて手遅れになったのでは?
A:手遅れということは決してない。過去の経験は全て意味のあること。
Q:本人の劣等感にどう対処するか?
A:難しい問題。一般的にはできることをやらせて達成感を与えること。
Q:よこはま発達クリニックで診察を受けられるか?
A:新患は1年待ち。