幸福になった鳥は
不幸だったころのことを
すっかり忘れてしまうものです。
それが多くのものの
たどる生きかたです
そうなると
かつて心にしみた言葉も
もうなんの魅力もないようになり
そんな言葉を尊ぶ者を
かえって変人あつかいにさえするのです
そして
かつて開かれた目もとじてしまい
ひからびてしまうものです

幸福になった鳥は
不幸な鳥のことなど
思い出すこともありませんでした
いやむしろ不幸な鳥たちを
さげすむようにながめ
わたしはお前さんたちとは
縁もゆかりもないものだといわんばかりに
肩をはり羽音をたかくひびかせて
飛んでゆきます

呼びとめない方がいいでしょう
神さまにおまかせしておきましょう
さびしいけれど



by 坂村 真民


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